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あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

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実写版「3月のライオン(後編)」ネタバレ感想・考察とあらすじ解説!/感動の結末は必見!素晴らしい傑作でした!

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かるび(@karub_imalive)です。

4月22日に公開された実写版「3月のライオン」後編が公開されたので、今日映画館で見てきました。前編同様、かなり厳しい動員状況のようですが、前編をはるかに上回る出来の良さに感服しました。アニメ、原作が好きな人は、絶対後編だけでも見たほうがいいです!

ということで、早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。ちなみに、映画前編についても、レビュー記事を書いています!もしよろしければ、こちらもご覧くださいね。 

※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれます。予めご了承ください。

1.実写版「3月のライオン」(後編)の基本情報

<映画「3月のライオン」後編公式予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】大友啓史(「るろうに剣心」他)
【配給】アスミック・エース
【時間】139分
【原作】羽海野チカ「3月のライオン」

上演時間は、前編同様、大盛りの139分。ただし、登場人物の紹介や場面設定の説明シーンが不要な後編では、内容をじっくり掘り下げた丁寧な作りゆえの長時間構成となり、全く長さを感じさせません。

公開直前には、5分感の「前編まとめ」公式動画もアップされましたので、前編未見の人にも、復習のためにも映画に行く前に見ていくと良いと思います。

<映画「3月のライオン」ダイジェスト動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

2.実写映画「三月のライオン」(後編) 主要登場人物とキャスト

後編から新たに出演する主要キャラは、川本三姉妹の実父とひなたのクラスメイトや先生くらいのもので、基本的には前編で登場したキャラが出てきます。後編では、特に後藤正宗、幸田柾近、宗谷冬司の出演時間が増えますよ。

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(引用:http://www.3lion-movie.com/chart/

桐山零(神木隆之介)
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原作者羽海野チカ、大友啓史監督ら、製作者サイド全てから、主演は神木隆之介しかいない!と一致してオファーが出た逸話があるほど、今作での桐山零にぴったりフィットしています。神木自身も、出演が決まる前に「3月のライオン」原作を愛読していたそうですし、インタビューでも、零の雰囲気が普段一人でいる時の「素の自分」に通じるところがあると言うあたり、自他共に認めるぴったりの配役となりました。

川本あかり(倉科カナ)
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後編では夜の仕事のシーンがなく、露出度は減りました(笑)川本家の働き手の大黒柱として、また妹二人の母親代わりとしてそつなくこなすあかりにも初めての試練が。家庭的な母性あふれる日常生活での姿と夜の仕事で大人な雰囲気に変身する二面性を持つあかり役は、なかなか適役なんじゃないかと思いました。過去にグラビアアイドルをやっていたキャリアが見事に生きています。安心してみていられる好演でした。

川本ひなた(清原果耶)
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早熟でこれまでもリハウスのCMやNHK系の大作ドラマに重点的に起用されるなど、同年代の女優の中では実績を積んでいるので、演技的には問題ありません。ひとつ気になるのは、まだ中3なのにお姉さんより体格的にすでに一回り大きいという点(笑)モデル体型ですね。後編では、極めて重要な役どころになってきそうなので引き続き楽しみです。

川本モモ(新津ちせ)
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「君の名は。」で大ブレイクした新海誠監督の娘さんだそうです。後編では、原作・アニメで伝説的な名場面となった「まんじゅうに何いれる?」というお爺ちゃんの問いかけに「ガム!」と答えるシーンは、期待通り入っていました(笑)

桐山香子(有村架純)
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正直俳優の持っているイメージ感と全く違う配役だったので、「意欲的だなぁ」と思いましたが、決してミスキャストという感じはありませんでした。演技も熱演で良いと思います。ただ、もっと後藤9段からぞんざいな扱いを受ける原作と違い、割と大切に扱われていたし、川本三姉妹の出番を凌ぐほど出演シーンが多いのは、事務所サイドの意向なのかな・・・?

二海堂春信(染谷将太)
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公式戦中に倒れたり、いきなり零の学校にリムジンで乗り付けたりと大暴れだった前編とは違い、後編では活躍シーンはありません。ただ、映画中盤で出てくる仰々しい二海堂御殿はシリアスな本編の中で数少ない笑いどころかも。

島田開(佐々木蔵之介)
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前編のクライマックスで宗谷冬司に敗北して以来、こちらも後編では出番はぐっと減ってしまいます。二海堂同様、零の仲間/メンターとして蔭で零を応援する役回りでした。

後藤正宗(伊藤英明)
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前編での「悪役」という立ち位置から、後編では零の「ライバル」として描かれ、描かれ方は徐々に変わっていくものの、前後編を通して非常に存在感を発揮したキャラクター。相変わらずマッチョな体型に、重厚感溢れるどっしり構えた対局中の威圧感が半端ないです。好演でした。

宗谷冬司(加瀬亮)
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将棋界で共に「神童」と讃えられ、永世名人位を持つ羽生善治と谷川浩司を合成して作られたキャラクターですが、前半での神がかった神秘的な雰囲気から一転して、後半ではより人間的で意外なとぼけた一面も描かれたのが印象的でした。若い時の羽生善治になんとなく似ていたと思います。

3.結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ)

3年目になった桐山零のプロ棋士生活

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桐山零の棋士生活3年目が始まった。学校では新人王戦で見事優勝を飾った零は、全校生徒の前で校長から「ようやく”と金”になれた」と祝賀スピーチを受けた。自宅では相変わらず一人で研究を続ける日々だったが、ある日、将棋会館に行ってみると、零の新人王獲得を記念した、宗谷名人との記念対局が企画されていた。若い将棋ファン獲得のため、連盟会長の肝いりの企画だった。

零もまた、将棋を志した幼い頃から、宗谷名人は雲の上のあこがれの存在だった。正直実感も沸かなかった。

自宅に帰る前、零はいつものように川本家に立ち寄った。その日は、祖父、相米二が経営する和菓子屋「三日月堂」の夏の新商品を全員で検討中だった。

5月に入ると、いよいよ各棋戦が本格的にスタートした。その日、零は昨年は準決勝まで進んだ相性の良い「獅子王戦」の1回戦をクリアして控室に行くと、TVモニター上では昨年の宗谷冬司への挑戦者、島田8段が1回戦から敗色濃厚となっていた。宗谷と戦った後は、みな一様に一度自分と向き合うことを余儀なくされるために、成績を一時的に落とすことが多いのだという。

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しかし、三角から零の義父、幸田柾近8段に不戦勝した、と聞かされた零は、幸田が入院中の病院へと急行した。病室で対面した幸田に入院の理由を聞くと、「自宅で転んで頭を打った」のだという。奇しくも、同じ病院には後藤9段の意識不明で寝たきりの妻も入院中だった。零は、遠目に後藤を見かけたが、特に声をかけずに病院をあとにした。

その晩、自宅でいつものように棋譜を並べて勉強していたら、突然2人前の出前とともに義姉の香子が零の家にやってきた。香子は、幸田が入院した本当の理由は弟の歩(あゆむ)との諍いが原因だと零に告げた。零が家を出て1年経つが、まだ幸田家は荒れていたのだった。

宗谷名人との記念対局で得た確かな感触

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そして、5月末、盛岡での宗谷名人との記念対局の日になった。「勝つことだけを考えて全力で戦え」と二海堂から熱いゲキをもらいつつ、零は前夜祭に臨んでいた。前夜祭のインタビューで零は気づいたのだが、宗谷はたまに記者からの質問への受け答えが噛み合っていないことがあった。

記者会見を終えてホテルの自室に戻ると、零は明日の対極に備えて最後の棋譜検討を行った。緊張から無意識の手の震えが止まらない零に、義父、幸田は電話で元気づけるのだった。

翌日の記念対局は、寺のお堂で戦われた。途中、慎重な駒組みが続いたが、零は途中で不用意な一手を差してしまう。そこから怒涛のように宗谷が攻め込む展開となったが、この時不思議と零はこれまでになく盤面に純粋な気持ちで向き合えるようになっていた。

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回りの風景が全て消え、宗谷と将棋盤と自分だけになる中、一手一手夢中で差し続けた。結果、勝負には負けてしまったが、宗谷との戦いの中で、自らの将棋に新境地を見出した零だった。

後に研究会で島田と宗谷との対決を振り返ったが、宗谷には自分の限界を引き出してくれるとともに、宗谷自身も耳が時折聞こえない、という秘密も持っていた。

川本家に訪れた試練~ひなたのいじめ問題~

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零は、東北土産を持って久々に川本家へ行くと、泥だらけに汚れた格好でひなたが泣きながら帰ってきた。話を聞くと、中学3年生になり、仲の良かった「ちほ」がいじめられるようになり、その「ちほ」が転校していくと、今度はひなたがクラス内でのイジメ対象となったのだった。担任は見て見ぬふりだった。

零は、思わず外へ走り出していったひなたを追いかけ、ひなたに「僕がついてる」とフォローするのだった。「後悔なんてしない」「間違ってなんかない!」と言うひなたの芯の強さに、逆に零自身が勇気づけられているような気がした。

祖父、相米二もひなたをしっかり受け止め、その日の夕食はひなたの好きなメニューで食卓が埋め尽くされた。また、翌日相米二は浅草にひなたと出かけるなど、家族全員でひなたを守るのだった。

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ひなたの中学校では、いじめがさらにエスカレートしていた。登校すると机一面に落書きが書かれ、給食当番でも嫌がらせを受けた。また、教室の黒板にも一面に悪口が書かれていた。しかし、酷くなるいじめに対して心身に異常をきたした担任が教室内で暴れ、それがきっかけで生活指導の教師が新しい担任になったことをきっかけに、学校側が本格的な事態収拾に乗り出した。そして、夏祭りが始まるまでにはいじめ問題は収束したのだった。

ひなたは、夏祭りに手伝いに来ていた零に、お礼の気持ちとして零の顔に似た手作りのネコのお守りを作って零に手渡した。

後藤の妻の葬儀

秋になり、獅子王戦を順調に勝ち進んだ零は、いよいよ次が準決勝となった。しかし、同じく勝ち残っていた後藤の寝たきりの妻が対局中に亡くなるといった事件があった。対局中、危篤との一報を受けた後藤は対局を中座してそのまま病院へと向かった。しかし、妻の死に目には会えず、人知れず病院のトイレで男泣きした。そして、そのまま対局室へ戻り、その対局に勝って獅子王戦の準決勝へと進んだのだった。

後藤の妻の葬儀には、零を初め、現役棋士が総出で出席した。宗谷名人も遅れて焼香に現れた。しかし香子は葬儀に参加することが叶わなかった。葬儀が終わると、零は久々に自宅へと帰宅して、義父、幸田柾近の体調を気遣った。

三姉妹の父、誠一郎の突然の帰宅と獅子王戦決勝

冬になると、数年前、別の女性と家出して突然出て行った三姉妹の父親、誠一郎が帰ってきた。ただならぬ雰囲気に、零は三姉妹の代わりに誠一郎の矢面に立って誠一郎を追い払おうとした。零はなんとか川本家の力になりたかったのだ。

誠一郎から川本家との関係を聞かれた零は、「ひなたさんと結婚する予定です」と答え、家族を驚かせ、ひなたがその場に卒倒してしまうこともあった。

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しかし、モモを勝手に連れて出かけて戻ってきた誠一郎と3度目の対決をした時、零は家族と誠一郎の距離感を掴みきれず、つい追い詰めすぎてしまい、逆にひなたとあかりから窘められ、今日は帰ってくれ、とあかりから言われてしまった。

零は久々に寝込み、川本家から拒絶された今、やはり自分には将棋しかないと自分を追い込んでいた。研究会の仲間や、学校でも獅子王戦の決勝に向けて応援してくれたが、今ひとつ身が入らなかった。

一方、香子もまた獅子王戦の直前に後藤から振られてしまう。将棋に集中するために出ていってくれないか、と後藤の家を追い出された香子は、帰宅して「全て将棋に奪われた」と泣いた。

そして、迎えた獅子王戦決勝の日。将棋会館で零と後藤の対局が始まると、川本家も実父、誠一郎と最後の一日を過ごしていた。実父と1日時間を過ごし、その後思い残すことがなくなったあかりは、誠一郎にこれを機に縁を切ると宣言した。

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一方、零と後藤の対局は夜まで続いた。終盤戦になり、零は敗色濃厚となり、頭を抱えて次の一手に苦しみだす。しかし、長考し悩み抜いたとき、突如逆転の一手を思いつくとともに、これまでの自分の将棋人生の意味や回りへの感謝の気持ちが怒涛のように湧き上がってきた。泣きながら、終局まで差し切り、見事零は獅子王戦で優勝し、宗谷名人への挑戦権を得たのだった。

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対局が終わると、零は走って川本家へと向かった。泣きながら戸をたたき、先日の非礼を詫びると、ひなたとあかりはいつものように暖かく迎え入れてくれた。

また、香子もその日、父、柾近から「幸せになることを諦めるな、応援している」と言われ、父と和解していた。負けて戻ってきた後藤の元に向かい、優しく後藤の手を取って後藤のマンションへと入っていった。

宗谷名人への挑戦

後藤との獅子王戦決勝を経て、大きく成長した零は、いよいよ宗谷名人に挑戦することになった。義父、柾近と新調した紋付袴で、一歩一歩、山深い寺の境内の階段を上り詰めたところにある対局場には、すでに宗谷名人が待っていた。零は、ひなたから貰った人形を大切に傍らに置き、名人との対局に臨むのだった。

4.感想や解説・考察(※ネタバレ含みます)

個人的には圧倒的に満足度が高かった後編

冗長で時に退屈な展開に思えたパートも散見された前編に比べて、最初からスムーズにストーリーへと入っていけた後編は見違えるように面白く、ムダのない素晴らしい出来でした。前編同様、139分と大盛り長尺でしたが、全く時間を感じさせず、あれ?もう終わり?という感じ。

ひなたの強い気持ちに心打たれ、勇気をもらう零f:id:hisatsugu79:20170428123624j:plain

主人公の零は、後編を通して対宗谷戦、対後藤戦、と2つの対局でそれぞれ異なる気づきを得て成長するとともに、零をとりまく川本三姉妹や香子など脇役たちも、零との交流を通してそれぞれの人生における大きな課題に向き合っていくのですが、その全てが最後に良い形で収束していきます。

前編で登場人物を多数登場させ、複数のサイドストーリーを進行させるなど、広げるだけ広げた風呂敷が見事に後半で一気にまとまったのは見事でした。羽海野チカの作り上げてきた原作の力も間違いなくあったと思いますが、それらを土台にしてきっちり映画として気づきや感動をもたらしてくれる秀作だったと思います。

むしろこの出来なら、原作かアニメを見たことがある人は、なんなら今から「後編」だけ見てもとりあえず満足できるかも。期待以上の大団円に素直に感動したし、大満足でした。

前半は原作に忠実に、後半はオリジナル展開で綺麗にストーリーが収束!

今回、物語の前半部分までは、前編同様に時系列を入れ替え、原作から「ひなたのいじめ問題編」と「実父との対決編」をピックアップして川本家を集中的に描きつつ、同時に零の棋士としての3年目の棋戦や、香子のストーリーが進んでいきます。ここまでは、台詞回しも含めて意外なほど原作に忠実な流れでした。

そして、後半になると時系列上は原作を越えて、待ちに待ったオリジナルストーリーが始まります。後藤の妻の死、獅子王戦での後藤との対局を経て、大きく成長した零がラストで宗谷名人との2回目の対決に臨むところでエンドロールとなりました。とは言っても、それ以外の結末は考えづらく、だいたい想定内でしたが・・・(笑)

何が零を大きく変えたのか?2つの対局が成長への「鍵」となって描かれた

後編において、零は2つの棋戦でそれまでにない「気づき」を得て、棋士として、人間として大きく成長を果たします。対宗谷戦では棋士としての自信を得て、対後藤戦では自分自身を取り戻しました。

対宗谷戦(記念対局)
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まず、最初に零を待っていたのは宗谷名人との記念対局。「宗谷と対戦する者はみな、自分自身と向き合わされ、自分の弱さや心の中をしっかり見透かされてしまう」と劇中のセリフでもあるように、純粋で孤高の存在である宗谷はプロ棋士達にとってある意味「神」に近い立ち位置であり、心を映し出す「鏡」のような存在なんですよね。(だからいつも勝負衣装は「白」系の紋付袴ばかり)

そこで零が見たものは、自分の中に広がる無限の可能性、インスピレーションでした。不用意な7四歩を咎められ、宗谷に攻め込まれた零は、他の棋士同様、心の中を裸にされてしまいます。しかし、零が並の棋士と違っていたのは、そこから盤上に没入し、無心で差し回すうちに、一種「ランナーズハイ」のような神がかった悟りに近い状態を体験したことです。敗色濃厚の中、一心に盤上没我して最善手を打ち続ける中で、確実に自分自身の棋士としてのアイデンティティに目覚め、自信をつかんだ一局になりました。

対後藤戦(獅子王戦決勝)f:id:hisatsugu79:20170428123423j:plain

対して、クライマックスとなる対後藤戦では、なんと対局中に涙を流します。最初見えたときは、汗なのかな?と思ったのですが、泣いていたんですよね。神木くんの凄まじい演技に脱帽です。対後藤戦も後半敗勢となりますが、頭をかきむしってあきらめずに考え抜いた時、たった1手で大逆転できる手が見えたのです。それは、単に勝敗を分けた一着にとどまらず、零が人生の暗がりから抜け出した瞬間だったんですよね。

敗色濃厚となった苦しい盤面でもあきらめずに考え続け、ひねり出したたったその1手で局面が180度変わってしまったまさにその時、彼は盤面の将棋に自分自身の人生を重ね合わせて見ていました。ずっと暗がりの中で一人きりで、自分には「将棋しか無い」と思っていたけど、心から切望していた「幸せ」や「愛」は、あきらめずに探し続ければ必ず見つかるし、実は最初からすぐそこにあったんだという大きな気づきを一瞬で得たのです。

仲間や先輩、家族に囲まれ、彼が求めた「愛」は日常生活の中で、手を伸ばしたらいつでも手の届く所にあったのですが、零はいつも見過ごしていました。いや、零がきちんと「見ようとしていなかっただけ」なのでした。そして、彼が見過ごしていた大きな幸せは、実は彼が幼少時から「将棋しかねぇんだよぉ~」と絶望、苦悩とともに打ち込んできた「将棋」こそが運んできてくれた最大の贈り物だったんですよね。そういう意味でやっぱり零には「将棋しかなかった」のでした。

今なぜ自分がこの場に存在しているのか、自分の幸せはどこに落ちていたのか、こうした気付きが一瞬でもたらされ、怒涛のように押し寄せる様々な感情の中、震える手で最後トドメの飛車を盤面に打った時、涙が止まらなくなるのは自明の理ですね。本当に素晴らしい演技でした。

幸せは与えられるものではなく、自分で気づくもの

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「幸せは自分で気づき、つかみにいくもの」というテーマは、後編での川本家三姉妹や香子を取り巻くストーリーにも通奏低音のように流れていました。

クライマックスシーンで、あかりは彼ら三姉妹にとって愛憎入り交じる実父に対して、「次の一手を打つ」として、遊園地で最後の1日を過ごし、そこで三行半をつきつけます。平手打ちまでして実父に別れを告げたあかりの大胆な行動力は、彼らが「幸せ」であることへの貪欲さの現れでした。

いつも愛情で溢れた温かい食卓や家庭環境は、決して最初からあったわけでも与えられたわけでもなく、彼らがそれを選び続けたからこそなんですよね。一見理想的な温かい家庭に見える川本家にも、放蕩三昧の父親やいじめ問題など、普通に問題や試練は訪れるのです。しかし、あかりやひなたのようにお互いを思いやり、自分自身で「幸せである」ことに対して素直であり続けることで、彼らはいつも笑っていられたのだなと思います。

将棋のために何かを犠牲にして戦う、不器用なプロ棋士達

ある意味「将棋」に人生を翻弄され続けた香子f:id:hisatsugu79:20170428124215j:plain

しかし、それにしても「3月のライオン」で描かれる棋士たちはみな揃いもそろって不器用で、何かを犠牲にしながら懸命に生きる姿が印象的でした。前後編を通して、「将棋」のために全てを差し出して対局に臨むプロの厳しさもきっちりと描かれます。

たとえば、各棋士が将棋のために犠牲にしたものは、リストにするとこんな感じ。

<桐山零>
普通の高校生活。将棋漬けで友人もいない。
<後藤正宗>
結婚生活。香子との不倫関係さえも最後に捨て去る。
<幸田柾近>
子供2人の才能を見切り、親子関係が冷え込む。
<宗谷冬司>
極限までのプレッシャーから難聴になる。
<二海堂春信>
腎臓の持病が対局中にたびたび極度に悪化する。
<島田開>
プレッシャーから、慢性的な胃潰瘍を患っている。

パンフレットにも書かれていましたが、「将棋」のため、日常的に常に何かを犠牲にしながら生きている棋士たちにとって、彼らが犠牲にしたものの象徴=後藤の奥さんの葬儀は、いわば彼らが前進するために必要な大切な儀式だったのかもしれません。

宗谷名人とのラスト対決の舞台はどこなの?

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ラストシーンで、宗谷名人との獅子王戦第1戦の対決で、宗谷名人が先に待つ対局室まで階段を踏みしめるように一歩一歩登っていく零の姿は、映画全体を通して少しずつ成長していった彼を象徴するような美しいシーンで、心しびれましたね。

そして、何よりも素晴らしかったのはそのロケーション。将棋の本場、山形県の立石寺(りっしゃくじ)が選ばれました。開山して1200年以上の由緒ある古刹です。

立石寺HP
http://rissyakuji.jp/

まるで修験道のお寺や昔の山水図などの水墨画に出てくるような急峻な山に立つ立石寺は、映像にしてみると非常に趣がありますね。近いうちにぜひ聖地巡礼したいと思います!

先に結末が描かれた映画に対してマンガ原作はどうなるの?

獅子王戦の対局中に、妻の危篤を知る後藤が描かれるところから、原作の進行を越えて映画オリジナルのストーリーが進んでいきました。そこから、零は後藤との獅子王戦決勝を制して、最後に宗谷名人との獅子王戦七番勝負に挑んでいくところでエンディングとなりました。

すでに複数のソースで原作者の羽海野チカが語っているように、この結末は当初原作でも想定していたエンディング案だったようです。しかし、映画化を受けて、改めて後編のパンフレットでのインタビューで、羽海野チカがこう語っています。

映画には、当初予定していた最終回をそのまま提供しました。そこへオリジナルのアイデアが加えられて、圧倒的な”映画”としての正解を見せてくれたなという気持ちです。[・・・](映画を受けて、原作が)全く同じとはいきませんよね。具体的には、七番勝負を全部描くという手段をとらざるを得なくなりました。しかもそこで終わりではなく、さらなるエピローグも描かなければいけない。

おお!これは楽しみ!原作マンガでは、もっとドラマチックで心躍らされる展開を期待するとしましょう!

5.まとめ

ネコを拾ってきては、温かい場所で愛情をこめて育てるのが好きだったあかりに道端で拾われた零は、川本三姉妹や将棋仲間たちとの交流を通して、自分を取り戻していく中で、体こそ痩せたままでしたが、心はしっかりフクフクになりました。

でも、映画の前後編を通して一番心豊かにフクフクになれるのは、映画を見ている我々なんだと思います。マンガ原作と雰囲気こそ少し違えど、作りてとして同じ魂を持った羽海野チカと大友啓史は、確実にその世界観や目指すところを共有していたと思います。原作同様、「3月のライオン」は素晴らしい映画でした。おすすめです。

それではまた。
かるび

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年4月現在上映中映画の感想記事一覧

6.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

原作マンガ「3月のライオン」

今作を見て、まだマンガ原作を未読の方は、是非後編に向けて予習をしておくと良いと思います!コメディ要素とシリアス要素が絶妙にMIXされた羽海野チカの独特の作風はいちどはまると病みつきになります。特に、映画後編の話の核となった「ひなたいじめ編」「捨男編」までの展開(7巻~11巻)は必見!是非、これを機に試してみてくださいね!【Kindleで一気読みはこちら!

別冊クイック・ジャパン 3月のライオンと羽海野チカの世界

マンガ原作、アニメ、実写映画を含め、これまで発表された「3月のライオン」関連の全てのコンテンツを振り返る意欲的な総特集。原作者羽海野チカをはじめ、実写映画監督の大友啓史、TVアニメ監督の新房昭之、監修した先崎学9段、神木隆之介らへの豪華インタビュー他、極めつけに羽生三冠へのインタビューまであります!!

また、「3月のライオン」だけでなく、デビュー作「ハチミツとクローバー」の回顧特集までついています。過去に出版されたどの「3月のライオン」特集本よりも素晴らしかったムック本でした。超おすすめ!

アニメ版「3月のライオン」動画配信はHuluで!

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2016年10月~2017年3月に渡ってNHKで放送されたアニメ版「3月のライオン」(第1話~第23話)が現在Huluで見放題となっています!

原作漫画で描かれる零の心象風景や個性的な棋士達が命を削って戦うシリアスなシーンから、川本3姉妹とにゃんこたちも絡んだコミカルなシーンまで、原作の世界観を忠実に再現したハイクオリティなアニメは、絶対見て損はありません!

加入後2週間はトライアル期間で「無料」、その後も月額933円(税抜)とかなりの低額で海外ドラマや見逃し配信など、膨大な作品が楽しめます。このGWシーズン、無料期間中に全23話見てしまうことも可能です!是非検討してみてくださいね。

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