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あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

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「幸せの国」ブータンがまるごとわかる?!ブータン展@上野の森美術館に行ってきました

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かるび(@karub_imalive)です。

5月に退職してから、すっかり落語会と美術展とクラシックのコンサートに出かける日々が続いています。さて、6月に入って最初に行った展示会は「ブータン展」でした。結構良かったので、以下内容を紹介したいと思います。

1.混雑状況と所要時間目安

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平日の昼間から入ったので、貸切状態かな?と思ったらそうでもなく、それなりに人が入っていました。結構どうみてもこれは仕事中だろうとおぼしきサラリーマン風の人が多かったです。ブータン展に癒やしを求めているんだろうか。

展示会はコンパクトにまとまっており、速い人なら1時間以内に見終わると思います。僕も、1時間45分と、2時間以内に見終わりました。

2.音声ガイドは鶴田真由

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上野の森美術館といえば、展示規模はそれほど大きくないので音声ガイドとかあるのかな?と思って行ってみたら、ちゃんとありました。ガイドには女優の鶴田真由を起用。

鶴田真由といえば、数年前からNHKBSのドキュメンタリーで、キューバやミャンマー、あるいはミクロネシアの小国など、世界中の開発途上国などマイナーな外国に行きまくっていますが、ブータンには2008年と今年、2回行き、国王にも謁見しています。

今回は、そのあたりの実績を買われて起用されたのでしょう。

鶴田真由って、音声が割と癒し系でいいなと思いました。もう40代後半なのですが、年齢の割に声が若い。いい年の取り方をしていると思います。

3.ブータンってどんな国なの?

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ブータンは、この図の通り、インド、中国(とバングラデシュ)に囲まれた山岳地帯の小国です。人口はわずか75万人程度と、国家というよりどこかの地方都市レベル。

日本とは1986年に国交が樹立され、2011年にはブータンの現イケメン第五代ワンチュク国王と王妃が来日し、国会で演説を行ないました。来日中は、皇室との交流や震災被害地の視察もされていましたね。

イケメン5代目 ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王

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来日時の国会演説。展示会出口前で放映されていました。

日本人にとって、ブータンのイメージって言うと、「秘境の山岳国」という漠然としたイメージしか無いと思います。あまりブータンという国が知られていないのは、一つは小国だからということもありますが、もう一つは、歴史的・政治的理由から、21世紀になった現在も半鎖国状態が継続しているからです。

例えば、ブータンへの入国には、全員が旅行計画書を政府に提出し、1日250USドルの供託金を支払って同行ガイドの監視付きで行動しなければなりません。外国人観光客には非常に不便な国です。

しかし、隣国のチベットが中国に占領され、また同じく隣国(だった)山岳国、シッキムがインドに武力を背景に併合された歴史を見てきているため、こういった特殊な少国家が21世紀まで生き残っていく為の戦略としては、致し方ないものがあるかもしれません。

副題に、「しあわせに生きるためのヒント」とあるとおり、ブータンでは、4代目国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクが1972年に「経済成長よりも、国民一人ひとりの幸福をめざそうよ」っていうことで、GDP(GNP)に代わる、GNH(国民総幸福量)という指標を掲げました。

このGNHという考え方では、いわゆる物質的な成功だけでなく、精神的な満足、自然との調和といった、貨幣価値として計量が難しい概念も積極的に国民一丸となって追求していく、と謳われています。

後進国として、大国に挟まれながら国家独立を維持し、内政を安定化させるにはこうした特殊な国王を中心とした開発独裁体制を取らざるを得なかったわけですが、ブータンの幸運だったところは、歴代の国王が政治家としてバランス感覚があり、有能だったこと。後発の開発途上国特有の難民問題等、負の遺産は確かに残ってはいるものの、伝統的な仏教的価値観に基づいた、王様による一種の中世的な徳治主義が有効に機能したということなんでしょうね。

4.ブータン展のコンセプトとは

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今回のブータン展は日本・ブータン国交樹立30周年事業の目玉として開催が決まりました。ブータンの人々の古来から大切にしている伝統的な仏教文化に基づいた民族衣装や、仏教行事で使用する仮面などの道具、それから仏像や仏画といった美術品が展示されています。

先述した通り、ブータンは経済的・商業的な国際競争から一線を画し、代わって仏教精神に根ざし、自然と調和して物心両面で本当にゆたかな国になる目標をかかげ、その成功や達成の度合いを、GDP≒経済成長で図ることを放棄しました。

その独自の幸福追求の在り方を直接ガツガツ学ぶのではなく、まずは、素朴にブータンの人達の生活や文化、美術に触れてみようよ、そこからなんか幸せに生きるためのヒントがあるんじゃないの?というのが今回の展示会のコンセプトです。

5.展示会の内容について

今回の展示会は、1Fフロアは写真撮影がOKでした。入り口の1Fでは、まず主にブータン独自で発達した仏教行事の「チャム」で使用する仮面の展示から始まります。ブータンでは、仏教を国民に浸透させるため、難解な仏法や経文の内容を踊りで表現することにより、わかりやすくしました。教えの違いごとに8種類の異なる仮面を付けて踊る、宗教的な仮面舞踊が発達しました。f:id:hisatsugu79:20160604083211j:plainf:id:hisatsugu79:20160604083220j:plain

このあたりの仮面のデザインは、東洋的なものを感じました。日本にそのまま持ってきて、なまはげや獅子舞の中に混ざっていても何の違和感もありません。

これを着て、こんな感じで踊ります。f:id:hisatsugu79:20160604083724p:plain

(引用:ブータン ~しあわせに生きるためのヒント~ <オフィシャルサイト>

いや、これは中の人は暑いだろうな。と思ったら、案の定、展示物から使い込んだ剣道の防具によくある汗臭い匂いがしていました(笑)

仮面のコーナーを抜けると、宗教的な公式行事や儀礼に使う刀剣類、アクセサリー等の展示が続きます。f:id:hisatsugu79:20160604084235j:plainf:id:hisatsugu79:20160604084249j:plain

つづいて、人々が公共の場で着用が義務付けられている男女の民族衣装展示がありました。1989年より、民族としてのアイデンティティを守り、国内繊維業界を保護するため、勅令により、国民は公共の場で男性は「ゴ」、女性は「キラ」という民族衣装の着用が義務付けられました。

衣装は、王族が着るような絹製の最高級なものから、ヤクの毛や綿、イラクサなど様々な原料を用いて作られていますが、そのパターンの豊富さや、デザインの独自性はブータンならではのものがあるそうです。

女性用民族衣装「キラ」f:id:hisatsugu79:20160604085150j:plain

こちらでは、マネキンを使った展示も。f:id:hisatsugu79:20160604085234j:plain

これら民族衣装は、基本的には機織り機を使った手作業での地道な作業により作られているそうです。複雑なデザインの衣装は、1日1センチ程度しか織れないものがあるんだとか。f:id:hisatsugu79:20160604085406j:plain

2Fに上がると、仏像や仏具、そして曼荼羅に似たチベット密教独自の宗教画「タンカ」と言われる仏画などの美術品が展示されていました。18世紀頃から、20世紀初頭までの、ブータン王立国立博物館に展示されている貴重な展示品が並べられています。

残念ながら、2Fの展示からは撮影禁止となります。

グル・ダクボ立像
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おすすめは、仏画「タンカ」です。ちょうどアフガニスタン展で、インド系の仏様を見てきたばかりだったのですが、ブータンの仏様は、どちらかというともう少し東洋系。インドの香りも漂ってきますが、どちらかというと我々が普段京都や奈良などでよく見る仏像に非常によく似ています。

ドルジェ・チャン父母仏タンカ
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様々なタンカが掲示されており、釈迦や菩薩をテーマにしたものから、ブータン建国にかかわった歴史上の重要人物や仏教普及に大きな貢献をした高僧をセンターに据えたものまで、多種多様なものが展示されていました。

面白かったのは、死んだ高僧や建国の偉人達がみんな仏教上の重要人物として崇められる点は、日本の仏教や神道と同じで、そういうところにも日本との類似点を強く感じました。

驚いたのは、非常に細密に描かれた繊細な仏画が、ガラスケースもなく至近距離でガツガツ見れる点。若冲展で遠くガラスと人の壁に阻まれ、ちゃんと細かく見れなかった鬱憤をここで晴らしました(笑)

聞いた所によると、ブータンの王立博物館で陳列されている時は、ちゃんとガラスケースに入って保護されているんだとか。至近距離で見れるのは、ここ日本だけです!

6.まとめ

全体的な感想としては、極力政治色が弱めに打ち出され、代わって生活文化やブータン独自で発展した仏教文化・美術がカジュアルに展示された、地に足がついた良い展示会だと感じました。

この展示会の前に、書店や図書館で予習のための文献を漁ったのですが、旅行ガイドブックはないし、文献は少ないし、あっても古いか、個人的な体験談がメインとなる旅行記ばっかりで、さっぱり予習ができませんでした。

そういう意味でも、今回の展示会は何の予習や事前知識がなくても、見て回るだけでゼロから展示物を理解できるよう、わかりやすく展示されていてよかったです。

アジア最後の秘境となったブータンが少し身近に感じられるようになる、非常に良い展示会でした。おすすめです。

★今後の巡回予定

今回のブータン展は、上野の森美術館を皮切りに全国地方の美術館5館を1年以上かけて回っていく予定が組まれています。東京含め6箇所を巡回する息の長い展示会です。

2016年7月30日(土)~9月19日(月・祝)愛媛県美術館 
2017年1月28日(土)~3月5日(日)岩手県民会館 
2017年3月18日(土)~5月15日(月)山梨県立博物館 
2017年7月1日(土)~9月3日(日)兵庫県立美術館 
2017年11月2日(木)~12月24日(日)広島県立美術館

それではまた。
かるび