読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

MENU

小説「ちょっと今から仕事やめてくる」の感想~仕事で悩む全ての人におすすめ!~

スポンサーリンク

【2017年5月28日更新】

かるび(@karub_imalive)です。

最近、映画化とコミカライズが決まり、60万部を突破したベストセラーとなった、北川恵海のデビュー作「ちょっと今から仕事やめてくる」をようやく読みました。前職が、元ブラック・・・気味の企業での採用担当だったので、読了後は万感の思いでした。

福士蒼汰主演による映画も、就活のピークにあたる2017年5月27日に公開されましたね。筆者は、当然いち早く見て来ました。ネタバレ全開にはなりますが、こちらにレビューのリンクを貼っておきますね。 

 さて、本作ですが、いわゆる「ライト文芸」ジャンルらしく、(良い意味で)小学生でも読めてしまう平易な文体に、「泣き」のツボも押さえたフックのあるわかりやすいストーリーは、若者だけでなく、仕事で悩むサラリーマン全員が読んで損なしの良作でした。

今日は、この「ちょっと今から仕事やめてくる」について、読書後の感想を書いてみたいと思います。(※ネタバレが少しだけ入るかも)

1.おおまかなあらすじ(ネタバレ無し)

いわゆる「ブラック企業」で勤務し、仕事で疲弊して「自殺」を考えるところまで追い込まれた主人公が、友人のサポートによって無事に退職を決意するところまでを描いたエンターテインメント小説です。

主人公のは、適当な就職活動の結果、とりあえず中堅企業の印刷会社に新卒として働き始めますが、隆が入社した会社は、パワハラと長時間の違法労働が横行する「ブラック企業」でした。

過酷な労働環境の中、徐々に心身を蝕まれていく隆は、無意識に電車のホームから飛び込もうとしてしまいますが、間一髪で小学校の同級生だったという「ヤマモト」と名乗る若者に助けられます。

その後も、親身に隆を支えてくれる「ヤマモト」でしたが、隆はどうしても「ヤマモト」のことがどうしても思い出せません。そして、ある時、同級生だった本物の「ヤマモト」はニューヨーク勤務中で、目の前の「ヤマモト」は赤の他人であることが判明。

ネットで懸命に調べたところ、3年前に隆同様、ブラック企業の勤務に耐えられず自殺した同じ顔の男が引っかかってきたー。目の前のヤマモトとは、一体誰なのか?なぜ隆にこんなによくしてくれるのか?

謎が深まる中、隆はいよいよ会社内で孤立・疲弊し、自殺寸前のところまで追い込まれますが、またしてもそこへヤマモトがあらわれーーー。クライマックスでは意外な涙ありのエンディングへ?!

2.つらい職場環境には、誰しもが「ハマって」しまう可能性がある!

本書の冒頭で、隆より1年先に就職したアメフト部の主将だった橘先輩が、新卒就職後3ヶ月で精神的にダウンして「サザエさん症候群」にかかる様子が描かれます。大学の現役時代、厳しい練習と上下関係の中で心身を強く鍛錬した体育会系の部長が、新卒となってわずか数ヶ月でダウンしてしまう様子が、サラッと描かれるところから始まります。

それを見た主人公の隆は、

「本当にできる人間っていうのはどんな環境にいてもできるんだよ。社会に出てから一番重要なのは、体力でも、我慢強さでもない。頭の良さだ」

と先輩をこき下ろしました。ここで、読みながら「おいおい、おまえまったくわかってないな?!そう言っているやつに限ってうつになるんだよ?!」と思わず心のなかで突っ込まずにはいられなかった(笑)

隆も、大学時代はそれなりに友人や頼れる仲間などもいて、社交的で人間関係も良好でした。そして、就職するまでは自分自身に対してどんな環境でも適応できるという「人間力」に自信がありました。

しかし、そんな隆も、就職したブラック企業での長時間残業と日常的に繰り返されるパワハラですっかり魂を吸い取られてしまい、わずか6ヶ月後に飛び込み自殺を考えるところまで追い込まれてしまいます。いとも簡単に。だからいわんこっちゃない・・・。

どんなに精神的にタフな人であっても、配属された職場や人間関係、業務への適性などの要素が重なると、簡単に人間は厳しい局面へと追い込まれる可能性があるっていうことなんですよね。

僕も、社会人生活17年間で、職場や職種は何度も変わりましたが、2005年に配属された常駐先現場(当時エンジニアだった)で、度の過ぎたパワハラを受けて、実際に精神的にかなり追い込まれました。自殺までは行かなかったけど、明らかに体調不良に陥りました。その時は、現場を変えてもらって脱出できましたが、あのまま行ってたらかなりやばかったと思います。

3.周囲の大切な人のためにも、自殺を考える前にまず「辞める」のがすごく大事

つい最近も、過重労働の結果、自殺してしまった広告代理店の新入社員の痛ましいケースが話題になりましたが、自殺を考えるところまで追い込まれたのであれば、まず、仕事を辞めるか、会社を休むべきです。

なぜなら、自殺してしまったら自分自身の苦しみは終わり、楽になるかもしれませんが、残された周囲の家族や大切な友人たちを一生後悔させ、苦しませてしまうからです。

小説のクライマックスでも、「ヤマモト」のセリフでこのように語られます。

「なあ、隆。お前は今、自分の気持ちばっかり考えてるけどさ。一回でも、残された者の気持ち考えたことあるか?なんで助けてあげられなかったって、一生後悔しながら生きていく人間の気持ち、考えたことあるか?」

家族や恋人、大切な友人を悲しませたくないのであれば、彼らのためにも、自殺する前に会社を辞めて環境をリセットしてから、正常な自分を取り戻すのが大事なんだという重要なメッセージが本書から読み取れます。

4.できれば、病気になる前に退職を考えたい

また、自殺まで行かなくても、我慢を続けた結果、うつ状態など、精神疾患を発症してしまったら、回復にはものすごく時間がかかります。

僕は、前職で人事労務職として、休職者との面談や事務処理を相当数担当しました。ほとんどのケースにおいて、仕事を通していったんうつ状態に陥ってしまった人が、完全に治癒することはありませんでした。また、同じ職場・職種で復帰してからも、以前と同じパフォーマンスが出せる人もほとんどいませんでした。

さらに、復帰してもすぐにまた精神的に不安定になってしまう。結果として、退職せざるを得なくなってしまった人もかなりいて、そういう人をたくさん送り出してきた苦い経験があります。

だから、僕は本書より一歩踏み込んで主張したい。

心身の体調不良が慢性化する前の段階で、「退職」を真剣に考えないといけないのではないかと。自殺するしないまで追い込まれる、そのはるか前段階で、決断のポイントがあるんじゃないでしょうか。

現代の日本では、極論すれば餓死することはないわけです。だから、まずは自分自身が心身ともに健康であることを最優先すれば、必ず職場や環境を変えて復活できる可能性も最大化できる。そう思います。

5.そうは言っても踏ん切りがつかないという人や、誰にも相談できない、という人こそ、気楽にこの本を読んでみるといいと思う

でも、真面目で誠実な人ほど、「そんな簡単に辞められれば世話ないよ」と本書のタイトルのように「ちょっと今から・・・」と、割り切って考えることができないのもまた事実。

僕自身も、優柔不断で自己評価が低い性格が災いして、やりたくない仕事に就いていたにもかかわらず、退職できずに7年間もうだうだ悩んでいました。「早く辞めたほうがいい」と自分自身で思っていても、失職後の様々な不安を考えると、どうしても踏ん切りがつかないのですよね。

そういう人こそ、こういったエンターテインメント小説という、いわゆる「変化球」的なアプローチを気軽に試してみると良いと思うのです。本書をケーススタディとして消化することにより、違った角度から決断できたり、自分の気持ちが整理できるかもしれませんから。

また、悩んでいても周りに相談できる友人などがいない人にも、作中の「ヤマモト」を擬似的なカウンセラーとして見立てて何度も読み返してみるのも良いと思います。

6.まとめ

「ちょっと今から仕事やめてくる」という響きはカジュアル過ぎて、このタイトルだけ見たら、昨今のお手軽な転職ブームを煽っているようにも思えます。でも、それは心身が健康な健常者に限った話。ブラック企業に当たったら、話は別。

今やブラック企業に限らず、どんな会社に所属していても、ちょっとした展開のアヤで偶発的に、つらく厳しい職場環境に遭遇し心身の不調をきたしてしまうリスクがあります。

そんな中、一番大切なのは自分の心身の健康であり、自分を支えてくれる周りの大切な人たちの存在です。自分自身のためにも、かけがえのない友人・家族のためにも、「ちょっと今から仕事やめてくる」くらいのスタンスでちょうどいいんだな、と実感させられた良作でした。

読んでいて、胸のすくような痛快なシーンもある、楽しくそしてちょっと切ないエンターテインメント小説です。働く全ての人にお勧め!

それではまた。
かるび