あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「ハルチカ」感想とあらすじ・伏線の解説!/主役2人が美しすぎる王道アイドル映画!

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【2017年3月8日更新】
かるび(@karub_imalive)です。

3月4日に公開された映画「ハルチカ」を見てきました。先日、日本アカデミー賞新人賞を受賞した橋本環奈と、美形で知られるSexyZoneのセンター、佐藤勝利とダブル主演ということで、美形のアイドル映画に仕上がった本作。

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「ハルチカ」の基本情報

<映画「ハルチカ」予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】市井昌秀(「箱入り息子の恋」「僕らのごはんは明日で待ってる」)
【配給】KADOKAWA
【時間】118分
【原作】初野晴「ハルチカ」シリーズ

監督は、2013年に星野源をフィーチャーした単館系映画「箱入り息子の恋」でデビューし、若手監督として進境著しい市井昌秀。いわゆる「映画らしい」しっかりした映画を撮る監督というイメージがあったので、今作も楽しみにしていました。

すでに原作とTVアニメが先行する中、実写映画としてどう仕上げていくのかが個人的な見どころでしたが、以下、レビューで書いたとおり、見事な作品でした。

2.主要登場人物とキャスト

本作のテーマである「吹奏楽」を扱うので、必然的に大人数の高校生を扱うことになります。ただ、本作は何と言っても主役二人のためのアイドル映画でもあります。だから、脇役陣は、圧倒的に「華やかな」美形の二人を引き立てるために、基本的には1~2人の美形脇役を除いて、個性はあるけれど敢えて「普通」感のある人材を抜擢しています。(それもなんか等身大の高校生っぽくてよかった)

穂村千夏「チカ」(橋本環奈)f:id:hisatsugu79:20170306164003j:plain
チカ、ハルタのダブル主演ですが、映画での主演は、明確に橋本環奈扮するチカの方でした。ただ、見に来ている観客は圧倒的にSexyZoneの若い女性ファンが多かったわけですが・・・。

上条春太(佐藤勝利)
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今作では、原作より大人しく控えめなハルタを演じた佐藤勝利。ネットの前評判で「棒演技だ」と割りと散々に書かれていたのを散見しましたが、それほど悪くなかったように思います。もともと童顔なのか、20歳(撮影時)にはとても見えません・・・。

草壁信二郎(小出恵介)
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この人もなかなか年を取らない役者だと思います。若い時は老け顔でしたが、最近年相応か、少し若いくらいに見えることが多いです。若者の気持ちを理解できる指導者役は、小出恵介のハマリ役なんじゃないかと思います・・・。

その他、大勢出ているのですが、こちらのオーケストラを使った人物紹介図が非常によく出来ているので、事前の予習に役立つと思います。

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(引用:映画「ハルチカ」オフィシャルサイトより)

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3.ラスト・結末までの詳しいあらすじ(※ネタバレ注意)

3-1.チカとハルタとの再会、吹奏楽部復興に向けての取り組み

その日は、穂村千夏(橋本環奈)の清水北高校への入学式の日だった。バスに乗り遅れそうになり、ギリギリバスに乗り込むと、揺れるバスの中で目の前に座っていた上条春太(佐藤勝利)に何度もぶつかってしまった。その時は気づかなかったが、チカにとって、それが小学校以来の幼馴染、ハルタとの再会の瞬間だった。

チカは、これまで全くやったことがなかったが、高校では吹奏楽部に入部することを決めていた。入学式が終わると、チカは真っ先に吹奏楽部の部室を尋ねたが、部室にいた上級生は、4月に廃部が決まった吹奏楽部に残された機材を片付けている最中だった。

諦めきれないチカは、職員室で直接校長(志賀廣太郎)に直談判してもう一度吹奏楽部を立ち上げたいと掛け合った。ちょうど、4月から新任の音楽教師として赴任してきた草壁先生(小出恵介)の口添えもあり、4月30日までに、演奏会開催に必要な最低人数として、部員を9人集めることができたら、廃部を撤回するという言質を得ることができた。

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その日から、早速勧誘活動を再開したチカ。元部員を訪ねて回り、もう一度やろうと説得したり、ビラ配りを行った。チカは、部室で草壁の持ち込んだ荷物の中に、草壁がさ作曲中の未完成のオリジナル「春の光」の譜面を見つけ、モチベーションを高めるのだった。

一人目に入部させたのはハルタだった。再度バスの中でハルタにぶつかってしまったチカは、ハルタを見て、ようやくそれが幼馴染のハルタであることに気づいたのだった。小学生の時、ひ弱でちびで根性なしだったハルタを守り、男勝りのガキ大将的な存在だったチカは、当時の関係そのままに、ハルタを有無を言わせずホルン担当として入部させたのだった。

3-2.部員集めに奮闘するハルタとチカ

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翌日から、二人で勧誘することになったが、チカは、音楽誌の特集の中で、同級生の米沢妙子が、チューバの達人であることに気づいた。彼女には病気のため入部は不可能だと断られてしまった。また、投手で肩を壊してしまい、野球を続けられなくなった傷心の2年生、宮本恭二が小学生の時にサックスをやっていたと聞きつけ、熱心に勧誘した結果、2回目の勧誘で仲間になってくれた。

宮本を入れて勧誘活動を続けていると、それを見ていた元部員の片桐誠治と野口わかばも加わってくれた。ハルタと片桐、わかばの3人で構内で演奏を聞かせる華やかな勧誘を行ったことで、トロンボーンの中津川恵が入部してくれた。これで、6人となった。

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人数も増えて、部活らしくなった吹奏楽部は、部長を片桐誠治として、パート練習を始めるなど少しずつ活動をスタートしていった。

7人目に仲間になったのは、先日声を掛けて一旦は断られた米沢妙子だった。妙子は、練習しすぎて唇が荒れて「タラコ」と呼ばれてしまうのが嫌で、吹奏楽部を離れたのだという。全員でタラコ唇のような化粧をして説得に来たチカたちを見て、思わず苦笑いして入部することを承諾してくれたのだった。

8人目のターゲットは、パーカッション担当で、元部長の檜山界雄だった。コンクールの直前、彼が突然登校拒否になり、部活にも来なくなったことで、コンクールの結果も芳しくなく、吹奏楽部がまとまりを失っていくきっかけになったのだという。

檜山は、一方で実家でインターネットラジオのDJを続けていた。「はごろも通信」という番組で、チカもずっと聴いていた番組だった。ハルタとチカは復帰させようとしたが、片桐は最初難色を示した。

また、7人で練習中に、突然部室にクラリネットの音が聞こえてきたので、それを辿ってみると、音楽家の家に育ち、自身もプロの奏者を目指している芹沢直子だとわかった。さっそく勧誘してみるも、「一人でプロを目指す」と全く相手にされなかった。

その晩、いつも行っている「清水マリンパーク」でチカとハルタは檜山の「はごろも通信」を聴いた。彼のラジオ音声では、いつもゲストに老人が多数参加しているのだった。

その後、廃部決定まであと3日と迫った日。芹沢直子の様子を探ってみると、突然廊下側の関への席替えを先生に直訴したという。ハルタとチカは、芹沢直子が現在難聴で悩んでいて、補聴器をなくしてしまったのではないかと推理した。直子の補聴器を探し出すことで、勧誘にOKを貰えるかもしれないと考えた二人は、夜中の校舎に二人で忍び込んだ。すると、直子も校舎に来ていたのだった。3人で捜索しても全く見つからなかったが、それもそのはずで、チカが踏みつけてしまっていたのだった。

これで、直子がすぐに吹奏楽部に入ることはできなくなったが、これをきっかけに3人は仲良くなったのだった。

そして、ハルタ、チカ、部員達は、とうとう檜山界雄の実家まで押し掛けて直接勧誘に乗り出した。熱心に語りかけ、家の外で演奏した結果、彼も気が変わり、入部してくれることになった。

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最後の一人は、芹沢直子が紹介してくれた。いつも図書室で寝てばかりいる元部員、手塚耕太を芹沢が勧誘して、これでぴったり9人。9人揃ったのは、ギリギリ4月30日の午後のことだった。

そして、顧問はもちろん草壁先生となった。更に部員も増えて、20人になった吹奏楽部。部活の中で、積極的に体力づくりや息を合わせるためのワークなど様々な練習をこなしていった。

3-3.吹奏楽コンクールに向けた試練

初夏、草壁は部員たちの前で、夏に実施される静岡県のコンクールに出場することを全員に宣言した。夏には、草壁の書いたオリジナル曲「春の光、夏の風」が完成したのだ。

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何人か技量に劣る部員が目立つ中、フルート担当のチカがどうしてもボトルネックになり、何度演奏を合わせてもフルートの独奏部分で詰まってしまうのだった。他の部員からのパート交換や譜面書き直しなども提案があったが、草壁は頑として初心者のチカには厳しい、難度の高いソロパートを変更しようとしなかった。そして、ある日チカの不出来により全体練習が中断した際に、部員同士の仲間割れも発生してしまう。

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さらに、ハルタも勉強と部活の両立で、過労のため倒れてしまった。責任を感じ、練習に出てこれなくなったチカ。部活に顔を出さず、気づいたらいつもの「清水マリンパーク」で一人たそがれていた。そこへ、復帰したハルタが勇気づけに来た。ハルタは幼い時も今もチカは自分のヒーローだ、と話し、チカを優しく抱き寄せるのだった。

これで吹っ切れたチカは、次の日一人朝練に向かうと、そこには仲間全員が待っていた。昼休みには芹沢直子からもアドバイスを受けて更に練習を重ねていった。そして、その日の全体練習で初めてソロパートを失敗せずに演奏することができたのだった。

コンクールの前日、最後の全体練習後、草壁が帰った後、機材の後片付けをしていたチカは、草壁の使っている棚からひとりひとりの各パートへのアドバイスがびっしりと書かれた譜面を見つけ出した。草壁の熱意に思わず涙するチカ。吹奏楽部の仲間全員で譜面を食い入るように読むのだった。

そして、迎えたコンクール本番。校長や芹沢直子など関係者も見守る中、清水北高校の演奏が始まった。演奏は、もちろん「吹奏楽のための狂詩曲第1番「春の光、夏の風邪」だった。順調に演奏を重ねていったが、チカは問題のソロパートで、大失敗してしまった。

3-4.感動のサプライズ演奏

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コンクールが終わり、吹奏楽部はいつもの練習シーンに戻ったが、失敗したチカは、部室から足が遠のいていた。翌日、チカは通学中、ハルタと一緒のバスに乗り合わせたチカ。バツが悪そうにしていると、なぜかハルタはチカに席をゆずり、バスが揺れた際にチカにわざとぶつかってきた。

それから少し経ったある日の英語の授業中。突然外からホルンの音が聞こえてきたので、チカがハッとして廊下へ出ていくと、反対側の校舎の屋上でハルタがホルンを演奏していた。コンクールで演奏した「春の光、夏の風」だった。

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しばらく見ていると、校舎のいろいろな所から吹奏楽部の各パートが聞こえてきた。演奏が進むにつれて、吹奏楽部のメンバーは、校舎の中庭へと集まって来た。校長を始め教師は止めようとしたが、吹奏楽部のメンバーは演奏をやめようとしなかった。

チカを元気づけようと、吹奏楽部全員が企画したサプライズ演奏に勇気づけられ、ロッカーからフルートを取り出し、校舎の渡り廊下で演奏を始めた。いつのまにか、草壁も校舎の屋上で指揮棒を振っていた。そして、フルートの独奏パートへとやってきた。そして、やはり本番同様失敗してしまう。

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すると、ハルタがもう一度その直前のホルン独奏部分から曲をスタートさせるのだった。もう一度フルートの独奏パートにさしかかり、またもチカは失敗してしまう。すると、3度目のリスタートがかかった。今度は、見事演奏に大成功するのだった。

そして、校舎の中庭は教室から出てきた学生たちでお祭り状態になった。誰もがチカの大成功を祝ってくれているかのようだった。演奏が終わると、草壁は満足そうにうなづき、チカとハルタは互いに見つめ合うのだった。

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4.感想や評価、解説(※ネタバレ有注意)

アイドル映画の王道を押さえた作品

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映画を見ていて、まず強く感じたのは、主役の二人が凄く美しいこと。橋本環奈を映画で見るのは、「セーラー服と機関銃ー卒業ー」に次いで2回目でしたが、相変わらず黒髪ストレートで抜群の可愛さです。一方、これが映画初主演となるハルタ役の佐藤勝利も、ホルンを演奏する姿が凛々しすぎて惚れ惚れしました。Sexy Zoneのセンターとして、たまに歌番組で見かけるたびに、イケメンやなぁーと思っていましたが、人形のように上品に整った顔立ちは橋本環奈以上にハイレベルですね・・・。

吹奏楽部でも、上白石萌歌や平岡拓真など、次世代の主演級を目指すそれなりの人たちが配されているのですが、主役の二人と比べると(敢えて際立つように地味に振る舞っているのもあって)全く「華」が違いました。

このあたりは監督もよーくわかっているようで、映画中は要所要所で二人のアップが映され、クライマックスで交互にアップの顔で終わったのは象徴的でした。いいものを見せてもらいました。。。

市井作品でよく走らされる主人公たち

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青春映画において、若者が走り出すシーンはアニメ・実写を問わずもはや「様式美」の世界ではありますが、市井監督の作品では、この「若者走り出し率」が100%なんですよね(笑)

パンフでも指摘がありましたが、2013年のデビュー作「箱入り息子の恋」では、奥手でコミュ障だった星野源演じる主人公が、ラストシーンで必死な顔して走りますし、2017年「僕らのごはんは明日で待ってる」でも、HeySayJUMPの中島くんが、カーネル・サンダース像を持ってヒロインの待つ病室へ走っていきます。(もちろん原作にそんなシーンはない/笑)

今回も、映画の冒頭すぐに、入学式への希望を胸に橋本環奈が走り出したので、思わずニヤッとしてしまいました。そして、冒頭のシーンと呼応するかのように、クライマックス直前の挫折シーンでも、泣きながら海へと走っていきます。いや~青春ですねぇ・・・。

沈黙のシーンも要チェック

また、今作はセリフ回しを控えめに抑え、重要な場面で、登場人物が「沈黙」するシーンが効果的に使われていました。

夜の校舎で、回りから聞こえてくる音に耳をすませる場面や、チカのソロパートが上手く行かず、残されたメンバー全員が重苦しく黙りこくる「沈黙」、コンサートで出番を待つまでの緊張のあまり「沈黙」する場面、演奏がスタートする直前、草壁が万感の思いを込めてタクトを振り下ろす前の「沈黙」etc。。。

言葉にならない思いが沈黙の中に溢れ出しているようでした。なんでもかんでもセリフの中に埋め込んでしまわずに、効果的にその場面での人物たちの心情を投影した素晴らしい映像表現だったと思います。

小出恵介扮する草壁先生の存在感も良かった

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今作品では、主演2人と仲間たち以外では、極端に「大人」の関与が低く、主人公たちの世界だけにフォーカスして作られています。若者の青春映画や恋愛映画では、大抵両親が出てきて主人公の恋愛を邪魔したり、時に良き理解者としてサポートしたりしますが、本作では一切「親との交流」が描かれません。

その代わり、顧問の草壁先生が、時には彼らに試練を与えたり、時には見守る存在であったり と一手に「大人」役を引き受けており、この脚本が素晴らしかったです。

指導中、必要以上に多くを語らず、部活の運営は生徒の自主性に任せつつも、決して放任するのではなく、生徒一人ひとりの才能を見抜いて的確な指導をする。なかなかできることじゃないと思います。

草壁は、吹奏楽部を立て直したチカを、部の活性化のキーマンと見立てて、フルートを高校時代ゼロから始めたド素人の彼女に、敢えて難易度の高いソロパートを与えました。この「春の光、夏の風」は、チカが入部した春の段階では完成していなかったので、明らかに意図的な措置です。できないとわかっていて、敢えて難しいパートを用意したのでしょう。

そして実際の練習場面でも、草壁は、吹けていない「事実」だけを全員の前でチカに伝え、あえて練習場を後にします。こうして、メンバーに時間を与え、自分たちだけで考えさせる時間を作ります。言葉として「全員で団結しろ!」と上意下達で押し付けるのではなく、自然なかたちで「チカがぶつかった試練を全員の課題として捉え、全員で支え合って乗り越える」、いわば団結する大切さを悟らせる指導法を確立していました。

この草壁の思いが全員に伝わり、そしてラストシーンでのハルタの機転から最後の大団円へとつながっていくわけです。この映画で表現されている、『自主性を重んじ、全員の団結や奮起を促す指導スタイル』は、映画を見た指導者たちにも、重要なヒントになったかもしれません。

また、配役も見事でした。2009年、初主演した映画「風が強く吹いている」で駅伝部のプレイングマネージャー役を演じた時も強く思いましたが、後輩や生徒を暖かく、時に厳しく指導する演技は小出恵介のハマり役だと思います。インテリ風音楽教師らしく丁寧な言葉づかいの中にも、指導者としてのあたたかさや厳しさを的確に表現した演技ができていました。

ミュージカル仕立てのラストシーンが素晴らしい!

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色々ポイントはありましたが、一番のみどころはやっぱりラストシーンでしょうね。結婚式のフラッシュモブのように、校舎全体をいっぱいいっぱい使って大掛かりなサプライズを演出し、沢山の観衆が見ている前でチカが失敗したコンサートのリベンジを果たすシーンは、まさに映画的な高揚感につつまれて、感動的な場面になりました。

これぞ青春!といった若さとエネルギーが爆発したようなお祭り騒ぎの中、互いに試練を乗り越えて成長したチカとハルタがアップで見つめ合うシーンでスーッと終わっていく潔いラストシーンも良かったです。

スイーツ映画にありがちな、エンドロールでエピローグ的な写真(静止画像)がアルバムのように流れる演出もなく、心地よい余韻を残して終わってくれました。

前半の部員集めがやや御都合主義的だったり、何人か棒演技な俳優もいましたが、終わりよければ全て良し。YahooやFilmarksなどの感想を見ても、最後のシーンで文句をつけているレビュワーはほとんどいませんでしたね。

5.原作小説・アニメとの関係は?

本作の大元の原作は、2008年からスタートした初野晴の原作小説「ハルチカ」がベースとなっています。原作は、第1作「退出ゲーム」からスタートして、最新作「惑星カロン」と外伝を含むと、シリーズ化された人気作品となっています。

これまで、この原作小説をベースに、コミカライズ、TVアニメ(1クール12話)が先行して製作されました。実写映画版「ハルチカ」は、いわばメディアミックスの集大成として最後に製作されたわけですが、結論としては、原作小説とは全く違うジャンルの作品に仕上がっています。もはや原作というより「原案」レベル程度の大改変が施されたオリジナル映画だと言ってもいいかもしれません。(というより、この段階で全く原作やアニメとシナリオが同じだったら実写で作る意味もないかも)

この改変については、原作者、初野晴も望んでのことだったようで、映画パンフレットには、

[・・・]市井監督との初顔合わせのとき、「ハルタとチカと草壁先生が出ていれば何をやってもいいです。その代わり、原作者と原作のファンに映画の尺に合った完全新作を観せてください」とお願いしました。

改変ポイントとしては、大まかにみて以下の2点に集約されます。

改変ポイント1:物語のジャンルが大きく変わっている

原作は、「高校生」「吹奏楽部」をテーマとした学校生活を舞台として、オムニバス形式で描いた日常系の推理小説です。高校1年生の秋から物語がスタートし、ハルタがいわば「探偵」役、チカが「アシスタント」役として、彼らの日常生活で起こる事件を推理して解決していくのです。

これに対して、映画版では、前半部分の「仲間集め」の場面でこそ推理要素が多めに残っていましたが、あくまでハルタとチカを中心とした吹奏楽部での活動に焦点を当てた青春モノとして仕上がっていました。

改変ポイント2:恋愛要素の有無

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原作者も明言しているそうですが、原作小説では、推理小説としての自由度を高めるため、青春につきものである「恋愛」要素は敢えて排除されていました。しかも、恋愛モノにしないために、敢えて上条春太を「ゲイ」設定にして、ハルタとチカで顧問の草壁先生を取り合う展開となっているのです。

映画では、予告動画でもしっかり「恋じゃない。けどー友達より、特別」とナレーションが入るとおり、高校で再会した元幼馴染の二人は、部活での切磋琢磨を通じて、恋愛関係一歩手前の関係にまで発展していきます。少なくとも、ハルタが男性を追いかけるシーンや、ハルタとチカが草壁先生を取り合うシーンはありませんでした(笑)最初ハルタが赤い上履きを履いていたので、おぉ、ゲイ設定来た!とすこし勘違いしかけたのですが、単に学年によって上履きの色が違ってただけですね・・・

もっとも、映画製作が決定した当初、主演が佐藤勝利(Sexy Zone)になると聞いて、こりゃハルタは「ノンケ」決定だな?!ってなんとなく思ってはいましたが・・・

アニメシリーズとの関係は?

アニメシリーズでも、基本は「推理モノ」ですが、原作よりは「青春モノ」ジャンルとなっていて、吹奏楽部としての活動も特に最終回を中心として後半でしっかり描かれました。(その分ハルタの「ゲイ」要素は弱まっている)

原作のストーリーを抽出してまとめられていますが、アニメ独自のオリジナル回も何回かありました。

時系列での作品の流れまとめ

小説、アニメも含めて作品世界を見てみると、今作は、小説シリーズの始まる「前日譚」という位置づけなのですよね。そもそも高校名も「清水北高校」(映画)/「清水南高校」(小説・アニメ)と違うので、パラレルワールド的な位置づけで見ておけば良いと思いますが、時系列的には整合性が取れています。整理してみると、こんな感じでしょうか。

◯高校1年生春~高校1年生夏
映画「ハルチカ」

◯高校1年生秋~高校1年生冬
小説第1巻「退出ゲーム

◯高校2年生春~高校2年生夏
小説第2巻「初恋ソムリエ

◯高校2年生夏
小説第3巻「空想オルガン

◯高校2年生秋(文化祭)
小説第4巻「千年ジュリエット

◯高校2年生秋~
小説第5巻「惑星カロン」 

6.まとめ

主人公たちの淡い恋愛と成長、仲間たちとの絆など、青春映画での王道のテーマを扱いつつも、決してストレートにわかりやすいハッピーエンドが用意されているわけではなく、ひとひねりしつつようやく最後に前向きな結末が待っている作品でした。

若い人向けの映画ではありますが、すでに青春時代が終わった(僕を含め・・)人にもノスタルジックにもなれるし、意外な気づきも得られる良い映画でした。

主演の二人も文句なく美しいですし、おすすめできる作品です。

それではまた。
かるび 

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年3月現在上映中映画の感想記事一覧

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

小説版「ハルチカ」シリーズ

原作の一番の魅力は、学園の日常生活の中で起こるちょっとした出来事や事件に対して、ハルタとチカのコンビがテンポよく重ねていく推理です。先生との三角関係は斬新な設定でした(笑)一気読みするなら、AmazonではKindle4冊合本版が安くておすすめです。

コミカライズ「ハルチカ」シリーズ

こちらは、現在2巻まで出版されているコミカライズ版。こちらは原作とは若干時系列が代わり、エピソードは原作から拾い上げ、時系列は高1の春、部員集めからスタートしていきます。マンガ版では、ハルタは弁が立ち、チカを積極的にリードしていきますし、草壁先生をチカと取り合います(笑)。絵柄もかわいくて魅力的!

映画「ハルチカ」オリジナルサウンドトラック

映画中で演奏されたオリジナル吹奏楽曲「春の光、夏の風」のフルバージョンを収録。演奏曲が気に入った人は是非!ちなみに、「春の光」=春太、「夏の風」=千夏と、主人公の名前も楽曲名に掛かっているんですよね。フルートのソロパート、難しそうでした。

映画「セーラー服と機関銃」

橋本環奈が初主演した映画「セーラー服と機関銃-卒業-」は、薬師丸ひろ子の映画オリジナル、原田知世や長澤まさみのTV版など、歴代のアイドル系女優がキャリアの登竜門的に演じてきた作品。

脚本は正直???な出来でしたが、橋本環奈の可愛さと意外なほどの演技力が評判を呼んだ一作。この作品で、日本アカデミー賞新人賞もゲットしました。「ハルチカ」を見てもう少し興味が出たら、是非チェックしてみてください。今なら、AmazonPrime会員は無料で見れるようになっています!