あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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今度の東山魁夷展はスケール感が凄い!唐招提寺障壁画の再現セットを見逃すな!【展覧会レビュー・感想・混雑対策】

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かるび(@karub_imalive)です。

10月24日から、国立新美術館で生誕110年を記念した回顧展「東山魁夷展」がスタートしました。東京では10年ぶりの大型回顧展となります。わずか36日間と非常に短い会期ながら、キャリア初期から絶筆となった晩期の作品まで、代表作がほぼ全て集結した、非常に力の入った展覧会となりました。東山魁夷の画業の集大成とも言える、唐招提寺御影堂の障壁画が美術館内に再現された展示は圧巻です。

さっそくですが、プレス内覧会にて取材をさせて頂くことができましたので、感想や見どころをレポートしてみたいと思います。

※なお、本エントリで使用した写真・画像は、予め主催者の許可を得て撮影・使用させていただいたものとなります。何卒ご了承下さい。

1.東山魁夷展とは

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東山魁夷といえば、「青の巨匠」「国民的画家」と呼ばれるなど、第二次世界大戦後、日本の復興・高度経済成長とともにキャリアを歩んできた現代日本画作家のうち、もっとも成功した有名作家のうちの一人です。

そんな東山魁夷の生誕110周年を記念して、京都・東京の2会場を巡回する、過去最大規模の回顧展が2018年に開催されることになりました。

すでに、京都展は大盛況のうちに終了。続いて、いよいよ36日間限定開催での東京展が10月24日から東京・国立新美術館でスタートすることになりました。東京では約10年ぶりの大回顧展となります。

ちょうど、東京展の主催者であるテレビ東京の公式Youtubeにて広報用動画がアップされていましたので、こちらを参考に貼り付けておきますね。館内風景や主な出展作品が30秒動画の中で簡潔にまとめて説明されています。

2.東山魁夷について最低限知っておきたいこと

さて、美術館に通い慣れた中級以上のアートファンの中には、すでに何度か東山魁夷展を見たことがある方も多いのではないかと思います。ここでは、【初心者が知識ゼロから】東山魁夷展に参加する時、事前に知っておくと鑑賞の満足度が深まる最低限の事前知識を整理しておきたいと思います。

旅する「国民的画家」東山魁夷

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展覧会場写真パネルより引用

没後約20年経過した現在でこそ「巨匠」として位置づけられていますが、東山魁夷は、実はかなり遅咲きの日本画家なのです。

学生時代は非常に優秀でした。父を説き伏せ、日本画家として身を立てようと東京美術学校に合格して以来、やまと絵の名手、松岡映丘と、西洋画の技法に長けた結城素明に師事するなど師匠にも恵まれ、2年次から卒業するまでの4年間は特待生に選ばれるなど、成績優秀で前途を期待される存在でした。

しかし、画業において本格的にブレイクしたのは、意外にもかなり遅く、39歳になってから。渾身の風景画《残照》が第3回日展で特選を獲得したことで、躍進のきっかけをつかみました。それ以降、日展を中心に活動を続け、90歳で亡くなるまで「風景画家」として活躍しました。

魁夷のインスピレーション源は、旅行先で魁夷が出会った「いいなと思える風景」です。旅先で描きためたスケッチやメモを頼りに、自らの心象風景を投影して、幻想的・叙情的な作品を作り出しました。

魁夷は、作品制作のために、京都をはじめとして日本全国へとスケッチ旅行へ出かけた他、北欧4カ国やドイツ・オーストリアの「古都」めぐりなど、定期的に海外にも赴きました。本展では、写生旅行でのスケッチ・習作に基づいて制作された様々な風景画が展示されています。

「青の巨匠」東山魁夷


Amazon.co.jpより引用

東山魁夷の作品における最大の特徴は、「東山ブルー」とも言われる、独特な青の使い方。彼は生涯において約1260点の作品を描いていますが、うち、青系の色彩が多用された作品は1/3以上の約470点にもなるのです。(『別冊太陽』東山魁夷』より)

特に、昭和40年代~50年代にかけて日展でともに活躍した「赤」の色使いを得意とした日本画家、奥田元宋と合わせて、「魁夷の青、元宋の赤」と呼ばれていたそうです。

一口に「青」といっても、エメラルドグリーンのような色合いから群青のような濃い青、青紫色までバラエティに富んだ「青」が表現されていますが、共通するのは、透明感のある澄んだ「青」が表現されているということ。

魁夷は、清冽感あふれる「青」を最大限活用して、誰もがどこかで観たことがあるような普遍的な美しい風景を、叙情的・幻想的に表現しました。時代の空気ともマッチした魁夷の作風は、日本人の感性にぴったりフィット。国民的画家として不動の評価を得ることになったのでした。

より理解を深めるには、「肉声入り」音声ガイドがおすすめ

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東山魁夷が亡くなったのは1999年。生前から、常に国民的画家として画壇から注目され続けてきただけに、肉声を収めた取材テープなども数多く残っています。展覧会場で用意された音声ガイドでも、通常の作品解説に加えて、生前に東山魁夷が作品について本人の肉声で語ったトラックが2つ聞くことができますので、非常におすすめです。

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3.見どころ1:風景画

それでは、僕が展覧会を観てきた中で、見どころと感じた展示を、印象的な作品を取り上げながら紹介していきたいと思います。

風景画に目覚めた1枚「残照」

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《残照》東京国立近代美術館

上記でも書きましたが、本作は東山魁夷が自然の雄大さに心打たれて風景画に開眼し、風景画家としての巨大な成功を掴むきっかけとなった作品です。

「青の巨匠」とは言われていますが、意外にも売れっ子画家としてのきっかけを掴んだ作品は赤/茶系統の暖色系の色彩が優勢でした。澄み切った空の水色から手前の茶色の山肌まで、色合いのグラデーションが見事な作品です。

第二次世界大戦での過酷な疎開生活と従軍で疲弊し、両親や弟に先立たれた上、第1回日展でも落選し・・・と、本作を描く直前、30代後半にして人生のどん底にあった魁夷。まさに国破れて山河あり。しかし傷心のうちに写生旅行に出かけた近所の山で開眼することになるのだから、人生何があるかわかりませんよね。

未来の国宝?!国民の精神的支柱となった代表作《道》

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《道》東京国立近代美術館

ご存知、歴史や美術の教科書にも掲載される、戦後日本美術史の中でもっとも有名な絵画となった作品です。絵のモデルとなったのは青森県八戸市の種差海岸。戦前、戦後と時間をおいての2度の取材を元に、自らの心象風景を重ね合わせて、より普遍的・抽象的な風景画へと仕上げられました。本作に対して、1967年に出版された『風景との対話』で、魁夷自身、

「道」という作品を描いたことは、私にとって大きな意義を持つものであった。過去への郷愁に牽かれながらも、未来へと歩みだそうとした心の状態、これから歩もうとする道として描いたところに、生への意志といったものが感じられる。その二年前の、川のある青い風景「郷愁」と、この「道」の間には、一つの線が引かれているように思える。

と語っています。

《道》を評価するための大切な先行作品として考えられているのが、夕暮れの農村風景を描いた《郷愁》です。《郷愁》は、失われた故郷や過去の思い出への愛惜の意をこめて制作された作品でした。

▼自ら先行作品として位置づける《郷愁》(写真左)f:id:hisatsugu79:20181024144235j:plain
左:《郷愁》長野県茅野市
右:《月宵》香川県立東山魁夷せとうち美術館

これに対して、《道》は過去への郷愁を未だ引きずりつつも、その一方でしっかりと前途を見定め、未来志向で取り組んだ一作だったということです。

本作は、明快な構図やテーマ性が、戦後復興を目指した日本国民の心情にぴったり寄り添った作品として、国民に幅広く支持を得ましたが、本作を手がけた魁夷自身が、作品から一番エネルギーをもらえていたのかもしれませんね。

初期の代表作《秋翳》

その他、初期作品で特に目を引いたのは、紅葉に染まる秋の山を描いた第1回新日展出展作品《秋翳》。

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《秋翳》東京国立近代美術館

「単純な形の中に複雑なものを表したい」として、非常にシンプルな構図を採用する半面、秋から冬へと移りゆく季節の中で、木々が見せる様々な表情を、微妙な色彩の濃淡や細かく1本1本の形状を描き分けることで豊かに表現しようとしています。

よーく見ると、確かにピンク、オレンジ、朱色、茶色と様々な色合いが描き分けられていたり、木々の形も少しずつ変化を付けて描かれています。自然の多様性と統一性(あるいは単純さと複雑さ)が一つの絵画作品の中で同時に表現された見事な作品だと思いました。

幻想的な作品が多数!北欧旅行で作風を広げた魁夷

日展でブレイクし、売れっ子作家として多忙な日々を送っていた魁夷は、1962年4月18日~7月29日まで、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの北欧4カ国を3ヶ月以上かけて旅して回りました。帰国後、北方で味わい尽くした雄大な自然風景をモデルとして、精力的に作品に落とし込んでいきます。

本展でも、そのうちの代表作がいくつか展示されているのですが、個人的には第8回新日展へと出展された《白夜光》のスケール感に圧倒されました。

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《白夜光》東京国立近代美術館

取材地は、森と湖の国、フィンランドのクオピオ。魁夷は、丘の展望台から見えたモミの木がどこまでも広がる雄大な景色を写し取ったスケッチを元に、本作を描きあげました。

ポイントは、画面中央で水平に大きく広がった湖。雄大な景色が画面のはるか奥や、外側にまで無限に広がっているように思わせる効果をもたらしています。弱く灰色に光った湖面の表情も、北欧らしい、穏やかな陽光を感じさせました。

もう1点紹介しますね。 

▼第7回新日展に出展された《冬華》f:id:hisatsugu79:20181024144256j:plain
《冬華》東京国立近代美術館

霧氷に覆われ、珊瑚を思わせる1本の大きな木の上に描かれたのは、薄霧の中でぼーっとした日輪を浮かび上がらせた白夜の太陽。(※月ではないのです!)

半円形に描かれた樹木と太陽が相似形で互いに向き合ったシンプルな構図、そして白とグレーの2色のみで表現された色彩。にもかかわらず、画面は幻想的で荘厳な雰囲気に満ちており、ずーっと足を止めて観ていたい気持ちにさせられます。

古都・京都を描いた「京洛四季」シリーズ

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魁夷が手がけた作品として、特に有名なのが京都を描いた連作作品《京洛四季》シリーズです。本展では、その《京洛四季》シリーズのためのスケッチや習作がまとめて展示されました。

往復書簡が合計で100通残されているなど、生前に文豪・川端康成と篤い親交があった魁夷。康成は京都を舞台にした名作「古都」を書き上げましたが、魁夷にも「京都を描くなら今のうちです」と、失われゆく古都の風情を絵画作品にするように薦めていました。

そんな康成に触発されて魁夷が京都の四季を描いた作品が、一連の《京洛四季》シリーズです。本展では習作・スケッチの出展ですが、ただの下絵ではありません!習作であっても、きっちり最後まで作品として仕上げられていました。

巨大な代表作品群に囲まれ、つい見過ごしてしまいそうになりますが、古き良き京都における四季の風景美を叙情的に描いた傑作でした!

▼秋をテーマとした作品f:id:hisatsugu79:20181024144154j:plain
左:《京洛四季習作 照紅葉》長野県信濃美術館 東山魁夷館
右:《京洛四季習作 初紅葉》長野県信濃美術館 東山魁夷館

▼冬をテーマとした作品f:id:hisatsugu79:20181024144210j:plain
左:《京洛四季習作 年暮る》長野県信濃美術館 東山魁夷館
右:《京洛四季習作 北山初雪》長野県信濃美術館 東山魁夷館

ドイツ・オーストリア旅行でも新境地を開拓

北欧旅行から5年後の1969年、60歳と還暦を迎えた魁夷は、妻・すみを伴って、前回の北欧旅行より更に長期間となる、約5ヶ月間のドイツ・オーストリア写生旅行に出かけます。学生時代、ドイツへ私費留学した時には観ることができなかった古都の数々を回り、人間と自然が美しく調和した風景画を描き出しました。

その中で、特に面白かった作品をいくつかご紹介します。

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左:《古都遠望》個人蔵
右:《晩鐘》北澤美術館

それぞれ、街や森の中に高くそびえる尖塔を中心に、古都を象徴するような風景が描かれています。右の《晩鐘》は、分厚い雲の切れ間から下界へと差し込む木漏れ日の表現が、非常にスピリチュアルな雰囲気を醸し出していました。 

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《窓》長野県信濃美術館 東山魁夷館

こちらは、風景画と言うより17世紀オランダの風俗画のような趣きもある、魁夷にしては珍しく、スケッチそのままに現地の庶民生活の一コマを描いた作品。しかし画面にわらわらと人物が登場するオランダ風俗画と違って、断じて人物を画面上に持ち込まないのは、実に魁夷らしいと感じます。 

1年限定で登場!「白い馬」の作品群

1972年、それまでほどんど作品の中に生き物を描いてこなかった魁夷が、突如としてこの年だけ「白馬」を画面の中に描くようになります。1972年に描いた作品は全部で19作ありますが、19作品すべてに、「白馬」が登場しているのです。

魁夷いわく、「白馬は祈りの象徴」として画面に現れたとのこと。より一層叙情性・幻想性が増した「白馬」の作品は、魁夷作品の中でも特に人気になっていますね。あなたは、この「白馬」を何の象徴として観るでしょうか?

 ▼妖しく幻想的な大作《白馬の森》
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《白馬の森》長野県信濃美術館 東山魁夷館

青一色で表現された深遠な森の中、突如現れた白馬。闇に迷い込んだ鑑賞者を導いてくれているのか、あるいは白馬自身が迷い込んでしまったのか。ファンタジー小説の一場面のような、幻想的な作品です。

▼大人気!《緑響く》f:id:hisatsugu79:20181024142134j:plain
《緑響く》長野県信濃美術館 東山魁夷館

本作では、魁夷が繰り返し好んで描いた、湖に反射して写り込んだ「倒影」が楽しめます。また、魁夷十八番の「青緑」の色使いも冴え渡っています。鏡のような湖面、東山ブルー、白馬と、まさに東山魁夷作品のエッセンスを凝縮して詰め込んだような作品。

ちなみに、魁夷が《緑響く》のモデルとした湖へと聖地巡礼した方が、動画をYoutubeにアップしています。お時間があれば、チェックしてみてください!

晩年の傑作群も見どころ満載!

晩年の魁夷は、足を悪くして長旅でのスケッチ旅行ができなくなってしまいます。そこで、過去にストックしてあった手元のスケッチや下絵などを元に、より自由にイマジネーションを飛翔させ、神聖な雰囲気が漂う幻想世界を描くようになりました。

本展では、晩年の作品は最後の展示室にまとめて展観されていますが、どれも本当に素晴らしい作品ばかり。

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《静唱》長野県信濃美術館 東山魁夷館

朝もやに霞む中、背が高く二列に並んだポプラ木々が静かに居並ぶ風景。湖面すれすれの目線や深い奥行きから、壮大なパノラマ感が得られる作品です。かすかに描かれた微風に揺れる湖面や、淡く霞んだ柔らかい色彩に惹きつけられました。

▼最晩年の作品f:id:hisatsugu79:20181024173802j:plain
左:《木枯らし舞う》長野県信濃美術館 東山魁夷館
右:《夕星》長野県信濃美術館 東山魁夷館

絶筆となった作品が写真右側の《夕星》。魁夷は、本作制作中に90歳で亡くなりました。夜の暁光の中、対岸に立つ4本の木々は、まるで三途の川の向こう側で魁夷のことを手招きしているような最愛の両親・弟・義父に見えてきます。まるで魁夷が自らの最期を悟っていたかのような印象的な構図でした。 

4.見どころ2:唐招提寺御影堂障壁画

そして、本展のハイライトとなるのが、展示後半で一挙展示される唐招提寺御影堂の障壁画です。1970年~1981年の間、10年以上をかけて全5部屋の障壁画を2期に分けて完成。襖絵と床貼付絵全部合わせて全68面の大仕事でした。

「青」を堪能できる第一期制作

制作第1期で手がけたのが、「濤声」「山雲」足掛け12年をかけ、失明しながらも5度目のチャレンジで執念の来日を果たした鑑真に対する最大限のリスペクトを表したのが、得意の「青」で表現した海景画と山水画でした。

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《唐招提寺御影堂障壁画 濤声》唐招提寺

近づいて見てみると、強烈な吹き抜ける中、じっと岩礁の頂きで耐えて根を張る1本の松が、不屈の折れない心を持つ鑑真に見えてきたり。

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《唐招提寺御影堂障壁画 濤声》唐招提寺

また、この岩の間からこぼれ落ちる水の表現や、岸壁に打ち寄せる波しぶきの表現なども非常に見事でした。

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《唐招提寺御影堂障壁画 濤声》唐招提寺

続いて、《山雲》。深い霧が降りてきた山中に流れる滝や、丁寧に1本1本描き分けられた繊細な木々の描写が見どころ。

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《唐招提寺御影堂障壁画 山雲》唐招提寺

そして、違い棚の上部の引き出しには、1羽の鳥が青いシルエットで描かれています。唐招提寺障壁画で唯一描かれた動物です!

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《唐招提寺御影堂障壁画 山雲》唐招提寺

「水墨」に目覚めた第二期制作

第二期となる残り3部屋では、魁夷はキャリア初挑戦となる水墨画を手がけました。中国へ3度渡航しての取材旅行を経て着想された大作です。「異国に生涯を終えた鑑真のたましいを、せめて祖国の風景でお迎えしたい」という魁夷の思いを乗せて、中国の山水風景が描かれました。70歳を過ぎてから、まだ新たな技法に挑戦しようとする旺盛な意欲はさすがです。 

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《唐招提寺御影堂障壁画 黄山暁雲》唐招提寺

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《唐招提寺御影堂障壁画 桂林月宵》唐招提寺

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《唐招提寺御影堂障壁画 揚州薫風》唐招提寺

いくつかの風景では、城郭都市や湖に浮かぶ小舟などが描かれていますが、やはり人影だけがありません。徹底して風景のみ描き出す、という方針はブレず。 

▼人物は描かれず、小舟だけが湖上で浮いているf:id:hisatsugu79:20181024142628j:plain
《唐招提寺御影堂障壁画 揚州薫風》部分図 唐招提寺

ちなみに、障壁画が展示されていた唐招提寺御影堂は、現在大掛かりな工事中。しばらく唐招提寺に参拝しても観ることができません。だからこそ、本展で是非見ておきたいところです。

お時間のある方は、御影堂の工事シーンをYoutubeでチェックしてみてください。建物自体をレールでスライドさせるもの凄い工事が始まっています!

 

5.会場限定の公式グッズも充実!

さて、展示を見終わったら、会場限定の公式グッズをチェックしてみましょう。今回も、魅力的なグッズが多数あなたを待っています!

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公式図録

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展示作品が約70作品と少なめなこともあり、図録の価格は2,000円と非常にリーズナブルな価格に抑えられていました。特に、唐招提寺障壁画の襖絵は他の画集に比べてもかなりの高画質で掲載されており、お得感があります。

クリアファイル

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魁夷の代表作が1作品ずつあしらわれたクリアファイル。複数種類用意されています。

店員さん一押し!ダブルファイル!

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そして、こちらが店員さんオススメのダブルファイル。合計4面に、魁夷の代表作が隙間なく並べられ印刷されている、お得感のあるグッズです。毎日たくさんの作品を楽しめますね。京都会場では、売上No.1商品だったそうです。

ポストカード

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出展されている作品の大多数が揃っているポストカード。これは凄い!選びたい放題です!

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ちなみに、《京洛四季》シリーズから選ばれた、展覧会オリジナルの10枚セットは少し価格的にお得。1枚あたり80円で購入できます!

スマホケース

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スマホケースも、人気の2作品から選ばれています。特に、スマホを手にするたびに《道》を見返すと、初心に帰って頑張れそうですよね。

和三盆

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最後に、ばいこう堂とのコラボ商品。展覧会場限定で発売される「和三盆」です。これからの季節、熱いお茶と一緒におやつにいただくとはかどりそうですよね。

6.混雑状況と所要時間目安

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会場風景

会期がわずか36日間と短いことから、会期後半はそれなりの混雑が予想されます。ただ、会場はかなりゆったりしていることや、作品一つ一つが大きめなので、ある程度混雑しても、全く作品が見えないということはなさそうです。後列から観るときのために備えて単眼鏡や双眼鏡を持っていくとスムーズに鑑賞できそうですね。

作品の点数はそこまで多くないので、鑑賞時間は、60分~90分あればOKかと思います。

7.まとめ

わかりやすく安定した構図、優美で幻想的な色使いで、戦後の日本を代表する国民的画家となった東山魁夷。本展は、キャリア初期から晩年に至るまで、大作や代表作がほぼ全て網羅された充実した回顧展となりました。美術鑑賞初心者でも、文句なく楽しめる展覧会です。会期が短いので、混雑しないうちにお早めにどうぞ!

それではまた。
かるび

関連書籍・資料などの紹介

もっと知りたい東山魁夷―生涯と作品

東山魁夷の画業を、キャリア初期の修行時代から絶筆に至るまで、それぞれの時代の代表作をオールカラーで取り上げながら解説してくれます。ビジュアルと文章解説のバランスが丁度よい入門書。初心者・入門者向けの中では一番のおすすめです!

もっと知りたい東山魁夷の世界

東山魁夷展に準拠して制作された、最新のムック本。 東京美術のムックとタイトルがほとんど同じですが(笑)、東京美術本に比べると、新しさと写真の大きさ、価格の安さで勝っています。ビジュアルも充実していますので、こちらでもいいと思います。

大判アートカレンダー2019

2019年のカレンダー。日本絵画をテーマとしたカレンダーでは、毎年かなり売れている定番商品ですが、1年間ずっと魁夷の絵がそばにあるのはうれしいですよね。

展覧会開催情報

生誕110年 東山魁夷展
◯美術館・所在地
国立新美術館 企画展示室2E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
◯最寄り駅
・東京メトロ千代田線乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口直結
・東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩約5分
・都営地下鉄大江戸線六本木駅7出口から徒歩約4分
◯会期・開館時間
2018年10月24日(水)~12月3日(月)
10時00分~18時00分
※毎週金・土曜日は20時まで
※入場は閉館30分前まで
◯休館日
毎週火曜日
◯観覧料(当日)
一般1600円/大学生1200円/高校生800円
※中学生以下無料
※11月23日~25日は高校生無料観覧日(要学生証提示)
◯公式HP
・国立新美術館HP
・展覧会オフィシャルHP
http://kaii2018.exhn.jp