あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

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【ネタバレ有】映画「昼顔(2017)」感想・レビューとあらすじ徹底解説!/衝撃の結末と映像美が予想外に素晴らしかった!

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かるび(@karub_imalive)です。

6月9日にリリースされた映画版「昼顔」を見てきました。平日の昼間に他の男性と不倫を楽しむ主婦「昼顔妻」をフィーチャーして、話題になった2014年TVドラマのスピンオフ作品です。当初は見る予定がなかったのですが、オンデマンドサイトでTVドラマ版を見始めたら面白くて止まらなくなったので、勢いに乗って映画も見てまいりました!

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「昼顔」の基本情報

<「昼顔」予告動画>
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【監督】西谷弘(「真夏の方程式」「アマルフィ-女神の報酬-」)
【配給】東宝
【時間】125分
【脚本】井上由美子

今回監督を務めたのは、ここ数年、フジテレビのドラマスピンオフを主に手がけてきた西谷弘監督。テレビドラマ版に引き続き、映画版でもメガホンを取ります。

ちなみに、TVドラマ版はDVDで発売されている他、現在「フジテレビオンデマンド」で全話配信されていますが、ドラマ版を未見でも、こちらのドラマ版ダイジェストを事前に見ておけば問題ありません。TV版を見た人にも良い復習になりますね。

<ドラマ版「昼顔」ダイジェスト>
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2.映画「昼顔」の 主要登場人物とキャスト

映画では、紗和の3年後にストーリーを絞り込んだため、ドラマ版で人気だった吉瀬美智子演じる利佳子は残念ながら登場しません。ストーリーに全く関係ないとは言え、カメオ出演さえなかったのはある意味潔かったかも。

木下紗和(上戸彩)
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プライベートでも1児の母となったこともあり、表情からどことなく幼さも消えて「昼顔妻」としての貫禄が出てきました。演技の幅も物凄く広がり、本作で俳優としてレベルアップした感があります。「ソウルメイト」と言い切るほど気がある齋藤工との息もぴったり合っていました。映画ではあまりヒット作に恵まれない上戸彩ですが、今作は果たしてどうなるでしょうか?!

北野裕一郎(斎藤工)
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ここ最近、バラエティ番組のトークやインタビューで、タガが外れたように個性的な受け答えが目立つ齋藤工。映画出演でも、特に最近変なキャラクターのチョイ役ばかりが目立っていたため、久々にきちんとした主演クラスでの出演となりました。ちなみに、今年の抱負は「農業を頑張る」のだそうです。俳優業じゃないんだ・・・やっぱり変わった人ですね。

北野乃里子(伊藤歩)
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木村文乃とどことなく顔が似ている伊藤歩。TV版「昼顔」のあとは、「その男、意識高い系。」「婚活刑事」などで主演を務めています。予告動画にもあった、駅前で張り込んで車のクラクションを「パァーーーン」と鳴らす修羅場シーンに始まり、後半になるに従い、徐々に壊れていき、狂気寸前の鬼気迫る演技は見事でした。

杉崎尚人(平山浩行)
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チャラいサーファー風のカフェオーナー。新キャラです。薄っぺらいくせに「大人の魅力」(?)をちらつかせ、雇用主という立場を利用して、紗和に体の関係を迫ってくるんだろうな?!と思って見ていたら、後半でやや肩透かし。今作での位置づけとしては、出演がない紗和の元夫、俊介の心情を代弁するためのキャラクターでした。何のことはなく、紗和と裕一郎の恋を邪魔する「姑」的な役回りです。

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3.結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)

3年ぶりの再会

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木下紗和は、3年前に生物学者、北野裕一郎と壮絶なダブル不倫が破綻した後、家族や友人を失い、今はひっそりと海沿いの街で暮らしていた。

生活もようやく落ち着き始め、紗和は、杉崎尚人の経営する海沿いのカフェ「ショアブレイク」で働き始めた。一方、誰にも頼れない一人暮らしのため、家では質素な倹約生活だ。いつものように紗和がわびしく夕飯を食べていたら、ふと家に入っていたチラシに目が行った。

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紗和の住む三浜市の市民会館で、「ホタルの光の不思議と人との関わり」という講演のチラシに「講師:北野裕一郎」と懐かしい名前があったからだ。理性ではダメだとわかっていたが、衝動を抑えきれなくなった紗和は、裕一郎の講演会に出かけていった。

講演会の質疑応答で、紗和は裕一郎と目が合った。裕一郎も明らかに動揺を隠せなかった様子だ。質疑応答のラストで「三浜自然の森へ再度立ち寄る」と言った裕一郎の言葉を信じて、紗和は、衝動的に先回りして裕一郎を待つことにした。

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結果的に、裕一郎とはニアミスに終わり、紗和はバスから「北野先生!」と呼びかけたがその日は結局会えなかった。

裕一郎が自宅に帰宅すると、書斎から妻の乃里子が顔を出した。3年前の不倫騒動以来、表面的には完全に落ち着きを取り戻し、夫婦生活を続けてきたが、裕一郎はどこか毎日物足りないものを感じていた。乃里子は勘が鋭い。裕一郎は、今日の出来事を曖昧に説明して乃里子を刺激しないようにした。

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一方、紗和は心穏やかではなく、その夜はバイト先の「ショアブレイク」で飲み明かしたが、翌日も結局気がついたら「三浜自然の森」に足が向いていた。すると、裕一郎もそこに来てホタルを探していた。ぎこちなく会話を交わした二人だったが、それ以降、二人の週に1度ホタルを探す日々が始まった。

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しかし、彼らの密かな楽しみは、感づいた乃里子の待ち伏せにより、あっさり終わることになった。大学が休みのはずの木曜日、毎週三浜へ通い出した裕一郎の行動を怪しいと感じた乃里子は、彼ら2人がささやかなホタル狩りを楽しんだ帰り道の駅前で、車中で張り込んでいたのだ。

同棲を始める二人

そのまま乃里子と二人はビジネスホテルで話し合いをすることになったが、乃里子の厳しい追及に紗和が逃げ帰るように部屋を出ると、裕一郎も乃里子の制止を振り切って紗和を追いかけていった。一人部屋で残された乃里子は泣き崩れた。

それから数ヶ月。裕一郎は、紗和のアパートで同居生活を始めていた。裕一郎は相変わらずホタルの森で、研究を続けている。頃合いを見計らって夕飯に弁当を作り、森で落ち合った。ホタルの季節にはまだ早かったが、ホタルの代わりに、夜空には満天の星空が広がっていた。

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二人は抱き合い、寝転がってキスをした。そして、その夜二人は結ばれた。「好き」と紗和から言われた裕一郎は、その思いに応えるため、乃里子と離婚して、正式に紗和との入籍を急ごうと考えていた。

アルバイト先のメンバーは、二人のデートシーンを目撃していた。田舎町はあっというまに噂話が広がるのだ。徐々に杉崎と打ち解けてきた紗和は、次第に杉崎に過去の不倫の話などを打ち明けるようになっていた。不倫関係を続ける紗和に対して、過去に不倫で傷ついた経験のある杉崎は、複雑な感情を抱いていた。

周囲との軋轢

そしてある日、紗和は、裕一郎の大学から送られてきた裕一郎の休暇申請のFAXを見て、裕一郎が「仕事」だと言って家を出た日は、大学へ行っていないことに気づいた。まさかーーー?乃里子の元に戻っているのか?と不安になった紗和は、衝動的に家を出た裕一郎の後をつけることにした。

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裕一郎を追って、横浜の桜木町で電車を下りてタクシーを乗り継いだ先は、乃里子の自宅だった。紗和は、乃里子と裕一郎が笑顔で車で出かけていくところを見て嫉妬と不安で立ち尽くしていた。乃里子とも目があったような気がした。

自宅へ戻った紗和は、その晩裕一郎が帰ってきた時、乃里子と会っていたことを言ってくれない裕一郎に動揺を隠せなかった。彼が紗和に嘘をついて隠し事をしているのがショックだった。

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翌日、バイト先でも上の空だった紗和だったが、バイト仲間やいつもの魚屋の対応がよそよそしくなっていることに気づいた。杉崎のボードに乗って、沖合でホームページの写真撮影を手伝っていると、杉崎は、紗和の不倫をバラしたのは自分だ、と紗和に話した。そして、杉崎は紗和をボードから海に突き落とした。杉崎は、周りを不幸にしているにも関わらず、不倫関係で無邪気に自分自身のことだけ考えて悩む紗和に腹を立てたのだった。

紗和は自宅へ帰ると、いつまでも乃里子との籍を抜いてくれず、自分に黙って乃里子と開い続ける裕一郎を責め、二人は喧嘩になった。紗和は、二人の行く末を悲観して、そのままベッドに倒れ込んで寝てしまった。

入籍前夜、二人を襲った悲劇

翌日、紗和は思い切って、直接乃里子に会いに行った。乃里子に誠意をもって謝ると、乃里子は「私はふんぎりがついた。北野くんをよろしく」と紗和に言ってくれた。

裕一郎も覚悟を決め、乃里子と別れて籍を入れるため、紗和との結婚指輪を密かに買いに行っていた。そして、翌日。裕一郎は、乃里子と離婚届を交わすため、乃里子に会いに行った。籍を入れる日、紗和と裕一郎は二人が再会したホタルの森で二人だけの結婚式を挙げようと計画した。

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杉崎やバイト仲間と関係がギクシャクしていた紗和は、「ショアブレイク」でのバイトを辞めるため、最後の挨拶をした。しかし、午後から買い物に出かけると、市場でその日の仕込みをしていた絹江にその日地元で行われる祭りに誘われた。裕一郎を待つ間、紗和は祭りへと参加することにした。

一方、裕一郎は乃里子から離婚届を受け取ると、その帰りに乃里子に桜木町の駅まで車で送ってもらうことになった。しかし、桜木町に着く直前、乃里子の表情が変わった。これで終わりだと思うと裕一郎を解放したくなかった。乃里子は、スピードを上げて三浜へと向かった。乃里子は、車をどんどん加速させ、「私の方があなたを愛してる。なのに、どうして?」と裕一郎に迫った。裕一郎は、答えに困っていたが、その間にも乃里子はどんどん狂ったように車を加速させていった。もはやいつ事故ってもおかしくない。裕一郎は、「ただ紗和が好きなんだ」と答えた。その瞬間、車はガードレールにぶつかり、助手席に座っていた裕一郎は体を強く打って即死した。

紗和は、まもなく警察官に連れられて、遺体安置所へと向かった。遺品として残された財布の中からは、「マリッジリング」と書かれたレシートが出てきた。紗和はレシートを握りしめて泣き崩れた。そして、紗和は「北野先生!」と叫び続けるのだった。

エピローグ

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1ヶ月後、紗和はほとんど放心状態で毎日を過ごしていたが、思い切って、事故後退院した乃里子に会いに行った。病院を出る乃里子を捕まえ指輪のありかについて訪ねたが、乃里子は知らなかった。紗和は、乃里子と別れると、投げやりになって電車の線路の上に横たわった。しかし、その時ホタルが紗和の手とお腹の回りを飛んで、どこかへ行ってしまうと、急に死への恐怖が紗和を襲った。本能的に線路からホームへと上がり、間一髪で電車に惹かれずに済んだ。

紗和のお腹には、裕一郎の子供が宿っていた。神様、あなたはまた私を強くしました。と紗和は呟いた。

1年後。三浜自然の森の川べりは、遊びに来た子供達の声で賑わっていた。グループの中で、裕一郎に似たメガネの男の子が、百葉箱を開けると、そこには裕一郎が1年前に置いたエンゲージリングが置かれていた。男の子は、麦わら帽子をかぶった女の子に、ホタルの光のようなエメラルドをあしらったリングをそっとはめてやった。

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4.ストーリーの感想や評価(※ネタバレ注)

TV版へのオマージュに溢れた作品

引っ越しても相変わらず自転車に乗っている紗和f:id:hisatsugu79:20170610141739j:plain

裕一郎は相変わらず昆虫の夫婦関係についての薀蓄を語り、二人の再会はコガネムシ(昆虫)が媒介する。そして、TVドラマ版同様、二人は森の中で出会い、デートの約束は「昼顔妻」らしくなぜか木曜日の3時。劇中でTV版を補完する説明的なセリフやTV版からの回想シーンは一切ありませんが、二人の出会いや、持ち物、服装、映像的な演出は、ことごとくTV版を踏襲しており、思わずニヤッとしてしまいます。

紗和は相変わらず自転車ばっかり乗っているし、乃里子は相変わらず天才的なほどに勘が鋭いし、裕一郎はやっぱり最期まで決して「好きだ」って言質を与えないし。大事な局面に限って携帯が鳴り、メールが届くのも全くTV版本編と同じようなテイストですね。初見でも映画単体として楽しめるだけでなく、TVドラマ版からのファンを楽しませる姿勢がしっかり打ち出されていたのは良かったと思います。

風光明媚なロケ地や美しく幻想的な映像表現

まず、一見してすぐに気づくのが美しいロケ地の数々です。西谷監督や美術スタッフが何度もロケハンを重ね、伊豆、房総、三浦半島、埼玉西部など、関東近辺の様々な場所がロケ地に選ばれています。入念に選ばれたロケ地は、窮屈で禁じられた二人の恋愛と反比例するかのように、どこも非常に開放的で美しく、映画館の大スクリーンに物凄く映える最高の舞台でした。

加えて、今回の二人の恋愛を象徴する「ホタル」の光も非常に効果的な使われ方をしました。川床に寝転がって空を見上げると、ホタルの代わりに満天の夜空に浮かんだ星々が写り、ラストシーンでは涙で滲んでぼやけて見えた鉄道の信号灯がホタルの光に見えたりと、映画ならではの秀逸な映像表現がたっぷり楽しめました。

二人の破局を予感させる秀逸な映像表現

本作では、最初から最期までラストシーンでの二人の悲運を予告するようなメタファーに溢れていたのも「上手い!」と唸らされました。まず、映画冒頭で出てくる杉崎の経営するカフェの名前は「ショアブレイク」。破局を思わせる店名ですね。

カフェ「ショアブレイク」
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(映画パンフレットより)

波打ち際で激しく波が割れる様子を表現したサーフィン用語ですが、最終的に二人の「別れ」をいきなり強く暗示しています。

次に、入籍を決意した裕一郎と紗和が、互いへの誤解からケンカをした際、裕一郎の薬指についた切り傷。よりによってそこをケガするか!と、若干「あざとさ」さえ感じさせる破局を予告する演出でした。

薬指をケガしてしまう
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紗和は、直後に裕一郎がケガをしたことに気づきますが、すぐには処置せず、1日待ってから、裕一郎が死ぬ日の朝になってようやく絆創膏を貼るんですよね。もう遅いわ!と思いながら見ていました(笑)

キーアイテム「麦わら帽子」が暗示する結末f:id:hisatsugu79:20170610150518j:plain
(映画パンフレットより)

さらに、二人の出会いを象徴していた「麦わら帽子」。二人がホタルを獲りに行った時、紗和が裕一郎からもらったアイテムです。紗和は中盤すぎまで大切そうに麦わら帽子を扱っていますが、杉崎に海に沈められた時、ボロボロになってしまいます。

一旦は裕一郎が杉崎から取り戻して家に戻ってきますが、二人がケンカをした翌日、床にぽつんと落ちているカットを最後に、映画の画面から消えてしまうのですね。恋人たちをつなぐ大切なアイテムがこういった感じで粗末に扱われる時、大抵は破局を迎えるものですが、案の定でした・・・(笑)

「打ち上げ花火」キレイですが、その輝きは刹那的・・・f:id:hisatsugu79:20170610150648j:plain

そして、裕一郎が事故死するシーンに合わせて、派手に上がった打ち上げ花火。「ホタル」の刹那的な美しさにもつながりますが、暗闇の中で一瞬だけ幻想的な光を放ち、すぐにはかなく消えていくその光は、まさに不倫のイメージと重なります。

成長した上戸彩の鬼気迫る演技力!

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そして、何よりも驚いたのは上戸彩のパワーアップした演技力!3年前のドラマ版でも、まだどこか幼さ・あどけなさの残る無邪気な表情がコケティッシュな感じで良かったですが、今作では、破局後の苦悩を反映したような、悲しみや苦しみを湛えた表情が絶品です。

プライベートでも色々あったのかもしれませんが(笑)、暗く一段沈んだ抑えめの演技は、映画では描かれなかった、紗和が過ごしてきた苦悩の3年間を見事に表現できていました。西谷監督が「喉を絞り込んで胸の奥からこぼれるように言葉を吐く」演技が素晴らしかったと褒めちぎっていますが、全く同感です。「昼顔」は上戸彩の代表作になりましたね。

奪われる側の苦悩もきっちりと描き出されていた

TV版で残念だったのは、やはりTVという媒体特性上、社会通念やコンプライアンスの観点から、不倫がとにかく「悪いもの」として終始強調されすぎていたこと。紗和や利佳子は常に罪悪感を感じながら不倫を続け、最後にはそれぞれ「罰」を受けて終わります。単に不倫をする側の苦しみと罪悪感だけが残って終わりました。

今作では、不倫=「悪」という単純な図式ではなく、不倫関係を乗り越えて幸せになろうとする裕一郎と紗和の焦りや苦しみを描く一方で、彼らが結ばれることで苦しむ「残された側」の苦悩にも焦点を当てていきます。乃里子や杉崎は、裕一郎と紗和を見て大切な人を失う苦しみを味わうのですよね。

紗和は、すでに3年間の孤独な生活で十分苦しんだ後、さらに乃里子や杉崎と直接相対することで、「奪われる側の苦しみ」を胸に刻み込みます。自分が裕一郎と幸せになることで、残された彼らは確実に苦しむことになる。自らの罪深さを自覚した上で、彼らの苦しみを背負ってまでも、裕一郎と一縷の幸せをつかもうとする本能的な欲求。胸が締め付けられるような思いにさせられました。

不倫が「良い/悪い」という倫理観を単純に問うのではなく、恋愛の持つ普遍的な性質(誰かが結ばれると誰かが傷つくという「ゼロサムゲーム」的な側面)を描き出していたことが、映画に深みを与えていました。

5.もっと映画「昼顔」を楽しむための5つのポイント~伏線・設定の解説!~

ポイント1:映画タイトル「昼顔」は何を意味しているの?

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直接は、日中に高級娼婦として働く女性が主人公だった1967年のフランス映画「昼顔」のオマージュから来ています。ドラマ版で吉瀬美智子扮する上流家庭の主婦、利佳子がネット上で不倫相手を探す時のハンドルネームが「昼顔」でした。

また、「昼顔」は、「不倫」のメタファーとして使われています。小さくて可憐なピンクの花をつけるのに、「実」をつけることがほとんどない昼顔。しかし、繁殖力が強くどんどんツルを伸ばすので、雑草としてしばしば駆除の対象になります。鉢植えで大切に育てられる「朝顔」とはまさに対称的な扱いを受けるこの植物に、主人公達の運命を重ね合わせて見ることができますね。

ポイント2:映画版で出演がなかった利佳子はどうなっているのか?

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アンアン6月14日発売号に、映画「昼顔」の脚本を担当した井上由美子が、映画の前日譚として、裕一郎視点でのショートストーリーを寄稿しています。前日譚によると、夫のところへと戻った利佳子には、すぐに第3子が出来ました。ドラマ版のラストシーンで、利佳子と紗和は「もう連絡をお互い取らない」と電話で話すシーンがありましたが、その後お互い簡単な情報交換はしたものの、紗和は利佳子に住所までは教えていません。

ポイント3:当初予定されていた別の結末とは?

脚本構想段階では、紗和と裕一郎は普通に別れる設定でした。困難を乗り越えてやっと裕一郎と結ばれた紗和が、「幸せになると愛は覚めるんじゃないか」と怖くなり、裕一郎に別れを告げるというストーリーだったそうです。しかし、最終的には「報われない恋愛に人生を賭ける、大人の女性の恋愛映画にしよう」ということで、この案はボツになったそうです。

ラストシーンについても、当初の案では、裕一郎が死んだ事故の事件性を問われた乃里子は、収監されてしまい、紗和と乃里子が最後にもう一度会うシーンは、刑務所内を予定していたそうです。ただ、それでは典型的過ぎて物語に深みが出ない、ということで却下されたようです。

ポイント4:二人が出会いを重ねた「三浜自然の森」のロケ地はどこにあるの?

飯能市「観音の滝」がロケ地
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今回、二人が再会したホタルの川床がある「三浜自然の森」のロケ地となったのは、埼玉県飯能市上名栗にある、「観音の滝」という場所でした。スピリチュアルな趣もある滝の音、川のせせらぎが素敵な秘境でしたね。これは映画公開後、聖地巡礼先として人気が出そうです。

ポイント5:昼顔「アナザーエンド」での紗和と裕一郎の結末とは?

映画版とは違う、一種のパラレル・ワールドとして、異なった結末を描いた「昼顔ーアナザーエンドー」というノベライズが存在します。それによると、紗和は、裕一郎と強制的に別れさせられてから、夫とも離婚し、一人暮らしをはじめます。すると、紗和は裕一郎の子供を身ごもっていることに気づきます。裕一郎には何も告げず、出産した息子に、「一生」(かずき)という名前をつけて育てますが、その2年後、裕一郎と乃里子は正式に離婚することになります。乃里子と別れた裕一郎が、紗和に会いに行く時、息子の姿を見てハッとするところでノベライズは結末を迎えます。こちらは、映画版よりもう少しはっきりしたハッピーエンドだったわけですね。

6.まとめ

従来のフジTV系列のドラマの安易なスピンオフ企画とは違い、映画的な美しい映像表現や比喩的表現に満ちた、一つの独立した恋愛映画としてきちんと作り込まれていた良作でした。TV版より大人の深みを増してパワーアップした上戸彩の演技も素晴らしかったですし、見どころたっぷりの作品でした。おすすめ!

それではまた。
かるび

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年1月現在上映中映画の感想記事一覧

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

公式ノベライズ「昼顔」

映画の脚本に忠実に書き起こされたノベライズ。セリフでは読み取りづらかった各キャラクターの心情表現や背景説明もしっかり描かれているので、映画と合わせて愉しめば、より深く作品を味わえます!読みやすい文体なのも良かった!

「アンアン 6月14日発売号」

アンアンの「昼顔」特集の中に、脚本を担当した井上由美子が寄せた、TV版昼顔の後を描いた裕一郎側のサイドストーリー。映画では惜しくも出演がなかった利佳子についても言及するページがあります。僕はこれを読むためだけにKindleで買った(笑)

「昼顔」アナザーエンド

TVドラマ版の忠実な書き起こし・・・かと思ったら、ラスト結末はTV版と大きく異なる衝撃の結末。むしろ映画版よりこちらの終わり方のほうがハッピーエンドに近い形で納得感があったかも。TVドラマ版の振り返りや、TV版とは違うもう一つの結末を知りたい人は是非!こちらも非常に読みやすい文体です!

ドラマ版「昼顔」は、フジテレビ・オンデマンドで![AD]

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映画「昼顔」を120%楽しむなら、やはり3年前に放映されたTVドラマ版「昼顔」全11話のチェックは外せません!なぜなら、映画中でのセリフ・映像表現・脚本、全てがTVドラマ版へのオマージュと、TV版との関係性をもたされているからです!

さて、そんなTVドラマ版「昼顔」は、現在FOD(フジテレビ・オンデマンド)で独占配信中。Huluは日テレ系なのでまず配信してないにしても、AmazonやU-NEXTでも未配信。

DVDは買うと結構高いので(笑)、一度見た!という人も、未見の人も、是非1ヶ月間は完全無料の「FOD」を検討してみてはいかがでしょうか?僕も、「昼顔」をチェックするために「FOD」に加入しました!

そして、FODは無料期間が31日間。「FODプレミアム」コース(月額888円)加入初月に一気に見てしまえば、実質上タダで見れますね! 

FOD(フジテレビオンデマンド)へのリンク
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