あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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映画「インフェルノ」の感想とネタバレ解説!今回もスリリングな謎解きロードムービーが楽しめる!

【2016年12月22日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。

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10月28日に日米同時公開された映画「インフェルノ/Inferno」。美術史家のラングドン教授がアート作品を巡って謎解きを進めていくサスペンス・ストーリー第4弾の映画化。原作も、文庫本で(上)(中)(下)と別れた大長編で読み応えがありましたが、アートファンの僕としては、映画化を非常に楽しみにしていました。

ラングドン教授が街中を駆け巡る今回の舞台は、イタリアのフィレンツェ、ヴェネツィア、トルコのイスタンブール。目まぐるしいスピード感あふれるストーリー展開の中で、中世の大文学者、ダンテの「神曲」にまつわるルネサンス期のアーティスト作品を楽しむことができます。

個人的には大満足でしたので、以下感想を書いてみたいと思います。

1.映画の基本情報

<オフィシャル予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】ロン・ハワード
【原作】ダン・ブラウン
【脚本】デヴィッド・コープ

「ダ・ヴィンチ・コード」以来、ヨーロッパ中を駆け巡り、壮大な謎解きを展開するラングドン教授シリーズの第3弾として、同名のダン・ブラウンの原作小説「インフェルノ」を映画化した作品。興行的には一定の成功を収めた過去2作を受け、一旦は2015年12月公開予定でしたが、スター・ウォーズとのバッティングを避け、ようやく10ヶ月後の10月28日公開となりました。

文庫では上・中・下と合わせて1000ページ以上の大長編ですが、映画とは終盤の展開や登場人物も違い、非常に読み応えがあります。おすすめ。

2.登場人物と役者

主役は、引き続きトム・ハンクスがラングドン教授を担当。年齢を重ね、恰幅も良くなったトム・ハンクスは、ハリウッド版加山雄三にしか見えなかった・・・。俳優陣で良かったのは、雰囲気たっぷりの狂信者役のベン・フォスターがはまり役で良かった。普通に喋っているだけで怪しい雰囲気が出せるのって凄い。

フェリシティ・ジョーンズは、今作の他にも年末のスター・ウォーズのスピンオフシリーズ、「ローグワン」で主人公を務めるなど、今年は大活躍の年となりました。

 

ロバート・ラングドン(トム・ハンクス)
ハーバード大学教授。宗教象徴学専門

シエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)
医師

エリザベス・シンスキー(シセ・バベット・クヌッセン)
WHO事務局長

クリストフ・ブシャール(オマール・シー)
WHOフランス支部職員

ハリー・シムズ(イルファン・カーン)
危機対応大機構の最高責任者

ヴァエンサ
危機対応大機構の隊員

バートランド・ゾブリスト(ベン・フォスター)
人口爆発を憂える狂信的な生化学者。

3.映画のみどころ

3-1.暗号の謎解き

今作でも、ラングドン教授はダンテの「神曲」にちなんだテーマで、ゾブリストが仕掛けたり、仲間たちから託された暗号を解いていきます。原作からは少し単純化され、短縮されていますが、それでも映画中に最低5つの謎解きポイントがあります。

3-2.美しい美術品とフィレンツェの抜け道

ボッティチェリやヴァザーリの作品、フィレンツェ、ヴェネツィアの町並み、名だたる大聖堂を舞台に撮影された今作は、最初から最後まで美術品や遺跡など、アートファン必見の作品。特に、五百人広間の四方の壁にびっしりと中世の宗教画が描かれているのは凄かった。行ってみたくなります。

また、マニアックな古い抜け道や隠し扉などを抜け、フィレンツェを駆け巡るスリリングな展開も見どころです。

3-3.原作との違いに注目する

今作は、大筋では原作と同じですが、エンディングが改変されています。また、原作にいた人物が省略されていたり、原作にない人物が登場したりと、人物の役割がそもそも違っていたりと、細かいところではいろいろな変更点がありました。ロン・ハワード監督も、英文ソースのインタビューにて、「原作の大きな流れには忠実に、悩んだ結果映画向けに大胆にエンディングを変更した」と語っていましたね。

原作との違いに注目して見ていくのも面白いと思います。

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4.ラストまでのあらすじ(ネタバレ有り)

フィレンツェの町中、ある男が3人の男に追いかけられているシーンから映画は始まる。一人は黒人、もう二人はその部下と思しき集団に塔の上の追い詰められ、男はその塔の上から身を投げた。

場面は変わって病室で悪夢にうなされるロバート・ラングドン

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悪夢の中で、天変地異の中、街中にあふれる顔の変形した男や首が後ろ向きの異形の人間たち。看護婦のシエナ・ブルックス医師に介抱され、目が覚めると、ラングドンは昨日からの記憶を失っていた。窓の外からは見える見覚えのある尖塔から、フィレンツェにいることを悟るラングドン。

そこへ、急襲してきた暗殺者。同僚の医師が撃たれ、裏口から脱出したラングドンとシエナは、ブルックス医師の自宅へ。

シエナの自宅で、コーヒーを飲み一息ついたラングドンは、記憶喪失の影響か、言語もまだうまく出てこない。着替えを済ませると、ラングドンはシエナのパソコンにゲストでログインし、メールをチェック。すると、イニャツィオ・ブゾーニという知らない男からのメールに、「天国の25を探せ」と書かれていた。

ラングドンのコートの中からは見覚えのないバイオチューブが。中からは円筒印章が出てきた。その印章は、ファラデー・ポインターと呼ばれる、振ると内包された小さな発電機が動き、画像を映し出す超小型のプロジェクターだった。

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驚いたラングドンとシエナがカベに映し出してみると、映し出されたのはボッティチェリの「地獄の見取り図」。バベルの塔が逆さになったような建物の中に、世紀末的な恐ろしい絵が描かれた地獄絵だ。

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丹念にチェックしてみると、絵画の中にいくつかのアルファベットが加筆されたあとが。それをつないでみると、

CATROVACER

と書かれていた。また、絵の下部には「真実は死者の目を通してのみ見える」と書かれていた。

ゾブリストのことをネットで調べる二人。ヒットした動画では、人口爆発と疫病による人口抑制について講演中熱く聴衆に語りかけるゾブリストが映し出された。シエナによると、3日前にゾブリストは死んだという。

自分の置かれた不自然な状況から、助けを求めアメリカ領事館に電話をかけるラングドン。敢えて居場所を近くの「ラ・フィオレンティーナ39号室」と答えると、まもなくそこへ警官に偽装した先程の女の暗殺者ヴァエンサと、WHOパリ支局のブシャールがやってきた。

身の危険を感じたラングドンとシエナは、自宅を後にし、車に乗り込む。「CATROVACER」はアナグラムであり、並べ替えると、イタリア語で「CERCA TROVA」(チェルカ・トローヴァ/seek and find/探し求めよ!)という意味になる。

一方、イタリアの沖合では、ある巨大船の中に民間警備会社「危機総括大機構」の本部があった。その大総監室では、シムズ大総監が部下のアボガストとゾブリスト案件について深刻な打ち合わせ中だった。クライアントのゾブリストから、「明日、全世界へ配信して欲しい」と手渡されたビデオメッセージについて、内容を自ら事前チェックしたところ、「世界を滅ぼすウィルスを撒いた」と恐ろしいゾブリストの肉声メッセージが録画されていた。

解読したアナグラムが、ヴェッキオ宮殿内の五百人広間にあるジョルジョ・ヴァザーリの大壁画「マルチャーノの戦い」を指し示していると看破したラングドンは、ヴェッキオ宮殿へ行こうとシエナへ提案する。また、ラングドンは、このファラデー・ポインターは、ゾブリストの作りだした殺人ウィルスのありかを示す遺書なのではないかと見破る。

ヴェッキオ宮殿への道中、二人は、宮殿近くで地元警察による検問を察知。二人は車を捨て、ボーボリ庭園を横切り、生け垣をくぐりながら必死に走ってヴェッキオ宮殿へ続くヴァザーリゲートへたどり着いた。

庭園前へたどりつくヴァエンサに届いた大機構からの司令は、「見つけ次第ラングドンを殺害するように」。確保から殺害へと指示内容が変更になる。

WHO本部のエリザベス・シンスキーも現場に遅れてやってきた。ブシャールと互いを非難するシーン。WHO内でも分裂しているようだ。

ヴァザーリゲートから、橋の上のヴァザーリ回廊を抜け、ヴェッキオ宮殿の五百人広間へと到達して、「マルチャーノの戦い」に描かれたイタリア語「CERCA TROVA」(チェルカ・トローヴァ)という文字を確認する二人。次に何をすればいいのか思案していたところ、宮殿職員のマルタ・アルヴァレスがラングドンに近づいてきた。しかし、ラングドンはマルタの顔が思い出せない。

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マルタから「昨日一緒だったイニャツィオ・ブゾーニと一緒ではないのか?」と聞かれたが、記憶が全てなくなっているラングドンは、昨日と同じものを見に来た、とごまかして、ダンテのデスマスクを展示している部屋に案内してもらうことに。

階段を上がり、デスマスクの部屋に入ると、そこにあるはずのデスマスクが消えてしまっていた。ビデオテープをマルタと確認すると、イニャツィオ・ブゾーニとラングドンがデスマスクを取り出すシーンが写っていた。

信じられない、という表情をしてあっけにとられるマルタ。そこへ、不審者のセキュリティアラートが鳴り響く館内。ブシャールが追って来ているのを確認した二人は、マルタのセキュリティカードを奪って五百人広間の天井裏へ逃げ込む。

梁を渡って脱出中に、ヴァエンサが天井裏へと追いかけてきて、ラングドンを殺そうとする。シエナがヴァエンサに体当たりすると、ヴァエンサは梁から落ち、五百人広間へ落下して即死してしまった。

イニャツィオ・ブゾーニからのメール内容「天国の25」から、ダンテの「神曲 天国篇 第二十五歌」のことを指していると見破るラングドン。ネット検索した結果、

「わたしの洗礼盤の前で・・・」

という表現から、ラングドンは、次に行くべき場所をサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂内のサン・ジョヴァンニ洗礼堂であると割り出す。雑踏に紛れて歩いて洗礼堂へ向かう二人。追うブシャールは、WHO同僚からの連絡を無視し、携帯電話をゴミ箱に投げ捨てると、単独で二人を追うのだった。

大機構では、ビデオを見てゾブリスト案件の状況の悪化を悟り、ヴァエンサからの連絡もないことから、シムズ総監自ら、ラングドンを追うことを決意するのだった。

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サン・ジョヴァンニ洗礼堂に到着した二人は、すぐに洗礼盤をチェックすると、水の中からダンテのデスマスクが出てきた。

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デスマスクの裏側の水彩絵具を水で洗い流すと、そこには、ゾブリストの創作で、こう書かれていた。

おお、健やかなる知性を持つ者よ
あいまいな詩句の覆いの下に
隠された教えを見抜け。
馬の首を断ち
盲人の骨を奪った
不実なヴェネツィアの総督を探せ。
黄金色をした聖なる英知のムセイオンのなかでひざまずき
地に汝の耳をあて
流れる水の音を聞け。
深みへとたどり、沈んだ宮殿に至れば・・・
かの地の闇に地底世界の怪物が待ち
それを浸す池の水は血で赤く染まるが
そこでは水面に映ることはない・・・星々が。

これを見て、ラングドンはヴェネツィアに行くことを決意する。そこへやってきたのが、ブシャール。ブシャールは、警戒するラングドンを「2日前に会った。WHOではゾブリストを追って、ウィルスの拡散を防ごうとしているが、同僚のシンスキーが、ウィルスを手に入れて横流しをしようとしている」と騙して説明し、二人の警戒を解いて同行することに。

一方、「ラングドンはジュネーブへ渡航しようとしている」とブシャールの出した偽情報を掴まされたシンスキーは、空港に行くもラングドンを捕まえられなかった。そこにシムズ大総監がやってきて、これまでの2年間、ゾブリストを指名手配して追っていたWHOを邪魔し、対立していたが、ゾブリストの仕掛けたバイオテロを防ぐため、WHOと一緒にラングドンを探すための協力を申し出る。そして、シムズ大総監は、シンスキーとラングドンが過去、恋仲にあることも知っていた。

ヴェネツィアへの道中、記憶が戻り、ブシャールの説明に嘘があることを見破ったラングドンは、ヴェネツィアに到着した際に一芝居打ち、ブシャールを電車内に置き去りにする。

ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂の4頭の馬像の前で、「コンスタンティノープルから運ばれてきた」という逸話を聞いたラングドンは、場所を間違えていたことを悟り、ウィルスのありかをイスタンブールの「アヤソフィア」であると見破る。

そこへ急襲するブシャール。シエナはラングドンを裏切り、置き去りにする。ラングドンはブシャールに捕まってしまう。

実は、ウィルス情報を横流しして不正を働こうとしていたのはシンスキーではなく、ブシャールだった。ラングドンに、ウィルスのありかを吐くように銃で脅迫するブシャール。そこに間一髪現れたシムズ大総監がブシャールを殺害し、ラングドンを救い出した。シムズから、記憶喪失が大機構から誘拐された際に打たれた薬物注射によるものであり、当初ラングドンを誘拐するためシエナと協力していたことも明らかになった。

ラングドンは、大総監とシンスキーと共にイスタンブールへ向かう機上で、シンスキーからWHOがゾブリストを監視対象としていたことなどを聞かされた。イスタンブールに着くと、一行はアヤソフィア構内のエンリコ・ダンドロの墓の前へ。墓に耳を当て、地下水の音を探知したラングドンは、地下貯水池「イエレバタン・サラユ」内へ急行する。

一方、シエナもイスタンブールに入り、現地の同志2名と地下貯水池にいた。リモートで作動する爆弾を持ち、ラングドン達に確保される前に爆破しようとしていた。

赤く光る地下水が充満した地下貯水池は、優れた音響を利用してコンサートホールとして活用されており、運悪く今日は世界中から人が集まる著名なコンサート中だった。

シエナの連れてきた男2人と激しくもみ合うシムズ。そこへシエナがトドメをさし、シムズは息を引き取る。シエナを見つけたラングドンは、思いとどまらせようと必死で説得するが、シエナはリモート爆破装置を押してしまう。

しかし、地下貯水池はWHOにより携帯電波が切られており、シエナは水の中へ飛び込んで手動で起爆装置をオンにして、自爆する。

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シンスキーがウィルスの入ったビニール袋を発見し、ケース内に入れて確保するも、爆発に乗じてケースから袋を取り出そうとする男ともみあうラングドン。間一髪で男は射殺され、ウィルスの封じ込めに成功した。シンスキーとハグし、名残惜しそうな二人。

後日、ヴェッキオ宮殿を訪れ、秘密裏にダンテのデスマスクを返却し、笑顔で立ち去るラングドンの姿があった。

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5.原作との違い(★ネタバレあり/随時追加)

上述した通り、映画向きに原作を改変した部分がいくつかありました。例えば、以下の部分です。

5-1.ウィルスについて

原作では、ラングドンがアヤソフィアでウィルスを発見した際、すでにウィルスは1週間前に放たれ、世界中に蔓延した後であることがわかります。そして、ウィルスの効果も、一定の割合で人間の生殖能力を奪うだけで、即死するようなものではありませんでした。

それに対して映画では、シムズが死に、シエナが爆死するなど激しいアクションシーンの後、凶悪な致死性の殺人ウィルスの封じ込めに成功します。これが最大の改変で、映画らしいメリハリを付けるために苦渋の選択だったそうです。

5-2.ヒロインたちの立ち位置

原作でのシエナは、ゾブリストの遺志を継がず、ウィルスの封じ込めを試みて単独行動します。ラングドンは裏切られたと感じつつも、シエナへの共感を捨てきれず、エンディングでも良い雰囲気のままでした。それに対して、映画ではヴェネツィア以降は単なる裏切り者として描かれ、シエナはあくまでゾブリストの恋人兼信奉者として振る舞うことになります。

これを解決したのが、後半から第二のヒロインに昇格するシンスキー。

原作では、単なるWHO長官として「良い知人」として描かれたシンスキーは、映画では後半部分で「過去にラングドンといい関係があった人」として描かれます。イスタンブールへ向かう機内以降、完全にヒロインとなりました。そうくるのか!と驚愕。ハリウッド映画ではラブロマンスは欠かせないのですね・・・。

5-3.登場人物たち

<原作から付け足されたメインの人物>
・ブシャール(WHO)
WHO職員でありながら汚職に手を染め、後半から完全に職場を逸脱して私利私欲に走る悪役として描かれました。原作にはありません。
<原作から削除された人物>
・ノールトンとブリューダー(大機構)
原作では、大総監の下で船上(ノールトン)、現場(ブリューダー)とアクティブに働きましたが、映画では大総監自ら現場で大暴れし、原作のノールトンとブリューダーの役までこなしていました。強いて言うと、原作でのノールトンの位置づけとして、映画ではチョイ役のアボガストという中間管理職が、いくつかセリフが与えられていました。

・フェリス(大機構)
原作では、映画冒頭で、ヴァエンサに撃たれて死ぬ医師役を演じ、さらにラングドンとシエナの逃避行に途中からヴェネツィアまで同行しました。シエナの機転で、振り切られますが、大機構の現場支援のために一人二役の役回りを演じていました。映画では、ブシャールに置き換えられたということですね。

<原作と役回りの違う人物>※シンスキーとシエナ以外で
・ヴァエンサ
原作では、ラングドン拉致に失敗して作戦から「排除」された失点を挽回しようと単独行動で動きましたが、映画中では排除されず、細かく本部から指示を受けていました。最終的に五百人広場に叩きつけられ死亡するのは同じでしたが・・・

6.その他映画のポイントを解説(★ネタバレ、随時追加)

6-1.映画の冒頭、尖塔で追い詰められていたのは誰だったのか

冒頭、走って尖塔の端に追い詰められ、自殺したのはゾブリスト。他の二人の男と共にゾブリストを追い詰めていたのはWHOの悪徳職員(笑)、ブシャールでした。自殺したゾブリストが隠し持っていたのが、本来シエナに遺書代わりに手渡されるはずだったファラデー・ポインターでした。

これがシンスキー経由でラングドンへと託されることになったのが、映画冒頭までの流れとなります。

6-2.WHOと大機構はなぜ対立していたのか?

ゾブリストは、過去にWHOに人口抑制のための食品普及を提案していましたが、WHOから要注意人物として指名手配されてしまいます。困ったゾブリストは、ウィルスが完成するまでの間、WHOから逃れるため大機構に保護を依頼し、かくまってきました。そのため、過去2年間は、常にWHOと大機構の間は緊張関係にありました。

6-3.大機構はなぜシンスキーに協力を申し出たのか

匿っていたゾブリストが契約の切れる数日前に自殺し、ゾブリストの最後の依頼事項であるビデオメッセージの公開に先立ち、シムズが中身を事前に改めました。人類滅亡につながる超危険な殺人ウィルスの拡散予告を見たシムズは、民間セキュリティ会社の手に負えない取り返しのつかない大惨事に繋がる前に、WHOに協力を申し出たのでしょう。

6-4.ラングドンはなぜ拉致され記憶喪失になっていたのか?

前日、フィレンツェでシンスキーと一緒にいた所を大機構に車で拉致され、拉致された時、大機構に従わせる目的で、車内で化学物質であるベンゾジアゼピンを首に注射されたため、短期記憶が全部失われました。映画中、ラングドンの背中や手首に湿疹ができていたのは薬品の副作用と思われます。(まるでラングドンが疫病にかかったかのようなミスリードになっていました)

ラングドンが拉致された理由は、映画中盤まではWHOと対立していた大機構が、依頼人であるゾブリストの意に反して進むWHOの謎解きを阻止したかったからですね。

6-5.イニャツィオ・ブゾーニとは誰だったのか?

映画中では、イメージのみで直接の言及はありません。原作では、シンスキーが探し当てたフィレンツェでラングドンの謎解きの助けになる人材ということで、ラングドンのイタリアでの謎解きの元々のパートナーだった人です。

原作では、ヴェッキオ宮殿から持ち去ったダンテのデスマスクをサン・ジョヴァンニ大聖堂の洗礼盤に隠したあと、心臓麻痺で倒れてしまいます。映画では、ラングドンがシエナの家で見た幻覚で、首にヘビが巻き付いているシーンがありました。その後、映画でも出てこなかったため、死亡したとみなして良いのではないでしょうか。

7.まとめ

ダ・ヴィンチ・コードから10年。アクションシーン重視の流れから、映画向きにエンディングは作り変えられましたが、全体的なコンセプトは原作に忠実な作りとなっています。ダン・ブラウンの作品は映画にするのが難しいと言われますから、これは大健闘だと思います。(前作、ロスト・シンボルは脚本の難しさから2013年に映画化が断念された)

個人的には、原作のエンディングのほうが好みですが、原作・映画と結末の違うストーリーを両方見ることで、「インフェルノ」の世界がより楽しめます。秋の夜長に両方制覇してみてはいかがでしょうか?

それではまた。
かるび

8.おまけ:インフェルノをより楽しむための小説やガイドなど

再掲しますが、原作の面白さはハッキリ言って映画以上!映画で省略された謎解きやその説明、謎解きでめぐるアートや歴史の名所についての背景解説など、大盛りすぎるほど充実しています。また、ゾブリストを「トランスヒューマニスト」と位置づけ、バイオテロを引き起こした背景として、優生学に似たその思想的なバックグラウンドもしっかり説明されています。映画を見て、物足りないな?と思った人も、満足した人も、原作を是非読んでみて下さい!

あくまで原作がベースですが、「インフェルノ」の謎解き、アイテム紹介、立ち寄ったスポットの美術品や歴史の解説、ゾブリストの理論についての誤りなど、ネタバレを前提として、あらゆる角度から作品にメスが入った物凄い解説本です。これは凄い!!

『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』『ロスト・シンボル』『インフェルノ』。これまで出版されたダン・ブラウン原作の「ラングドン・シリーズ」について人物相関図、対決する敵の組織の謎や設定、美術、関連する中世の歴史を1冊でまとめた攻略本。これもなかなか読み応えがありました。タイトル通り著作が丸裸にされ、「徹底攻略」されています。

映画のサントラです。最後の地下宮殿のシーンなどは、映像と合わせて非常に迫力のある音を出していました。ハリウッド映画はいつも音楽で持って行かれちゃうんですよね・・・。