あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】「家族はつらいよ2」感想・レビューとあらすじ徹底解説!/今年一番笑った大爆笑コメディ映画だった!

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【2017年5月31日最終更新】

かるび(@karub_imalive)です。

5月27日に封切られた山田洋次監督の新シリーズ第2弾「家族はつらいよ2」を見てきました。「家族はつらいよ」1作目は、DVDで見て「まぁ老人向けをターゲットにしたホームドラマかな」と思って、それほど期待してませんでしたが・・・

いや~、山田洋次監督ナメてました!めちゃくちゃ笑わせてもらいました!中高年はもちろん、若者から老人まで幅広く楽しめる最高のコメディ映画に仕上がっていました!映画館に足繁く通うようになってそろそろ1年経ちますが、映画館でこれほど笑ったのは初めて!ベタベタな喜劇ですが、ここまでやってくれるなら最高です!!

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「家族はつらいよ2」の基本情報

<「家族はつらいよ2」予告動画>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】山田洋次(「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」各シリーズ)
【配給】松竹
【時間】113分
【原作】「家族はつらいよ2」ノベライズ版

「東京家族」、前作「家族はつらいよ」に引き続き、現キャスト体制で通算3作目となったコメディ作品。前作は、シリーズ化を前提として「釣りバカ日誌」よりさらにコメディ色の強い作品となりましたが、今作では喜劇色がさらに強化されていました。

恐らく、山田洋次監督の作品としては、過去作品を比較しても最高に笑える振り切った喜劇作品に仕上がっていると思います。

2.映画「家族はつらいよ2」の 主要登場人物とキャスト

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本作は、2時間弱のストーリーの中で、かなり多くの登場人物が出てきます。とはいえ、覚えておく必要があるのは平田家の主要な8人。この8人に対して、準レギュラーメンバー(小林稔侍、笑福亭鶴瓶、風吹ジュン)あたりと、ゲスト出演者が絡んでくる展開になります。

平田周造(橋爪功)
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過去日本アカデミー賞には助演&主演合わせて4度ノミネートされた大ベテラン。直近では「母と暮せば」「東京家族」「家族はつらいよ」と、映画では山田洋次の映画に繰り返し出演中。75歳と、ちょうど後期高齢者となった2017年、「免許返上」という今作のテーマがぴったりはまっています。

平田富子(吉行和子)
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映画内では60代後半~70代前半くらいにしか見えない吉行和子ですが、調べてみたらなんと1931年生まれの82歳!86歳の山田洋次監督も凄いけど、この人も80代にしてまだまだ現役でしっかりと映画作品に出続けるとは恐れ入ります。2017年も、主演を務める短編「春なれや」、「亜人」など2作が待機中。

平田幸之助(西村雅彦)
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前作「家族はつらいよ」で家族会議の一番シリアスな場面で、画面後方でひとりバランスボールからずっこけるシーンにはめちゃくちゃ笑わせてもらいました。そして、今作では、激増したスラップスティックコメディ的な要素の大半を担うキャラクター。演劇並に大げさコケっぷりが最高でした。個人的には「家族はつらいよ2」のMVPです。

平田史枝(夏川結衣)
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「家族はつらいよ」シリーズでは、まるでサザエさんが年を重ねて落ち着いたらこんな感じになるのかなという、見事な専業主婦っぷりが素晴らしいです。しかし平田家はこの人がいなきゃ本当にどうなるんでしょうか?

金井成子(中嶋朋子)
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今作からメガネフル着用で、より「税理士」らしくバージョンアップしましたね。公開週に同時上映スタートした「美しい星」ではネットワークビジネスに目覚める主婦を好演していましたが、この人は夏川結衣よりもキャリアウーマン系の方が似合っているかも。

金井泰蔵(林家正蔵)
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落語好きな山田洋次監督の「落語枠?」での起用なのか、8人の中ではずば抜けて演技がヤバい(笑)前作「家族はつらいよ」でこってりと監督に絞られたようですが、今作ではそれほどでもなく、本人としては拍子抜けで物足りなかったのだとか。本業の落語はクソ真面目な正統派で頑張ってるんですけどねぇ~(笑)

平田匠太(妻夫木聡)
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昨年から今年にかけて、「愚行録」「ミュージアム」「怒り」「家族はつらいよ2」「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」等、主演級で出演する作品の幅も広く、俳優としてのキャリアはまさに充実一途。過去2度の日本アカデミー賞受賞、4度のノミネートの実績はダテではないですね。

平田憲子(蒼井優)
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シリーズ1作目「東京家族」でいわゆる”マドンナ"役だった流れを受けて、ハチャメチャな平田家の中では一番まともでヒロイン的に描かれ続けています。主演でも脇役でも存在感のある演技はさすがですね。2017年は後半に「東京喰種」「ミックス。」「彼女がその名を知らない鳥たち」と話題作が待機中。今年も大活躍です。

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3.結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)

持ち上がった周造の「免許返上」問題

平田周造は、最近毎朝ラジオ体操に出かけるのが楽しみな日課だ。行きつけの小料理屋「かよ」の女将、かよも来ているからだ。その日も体操を終えて自宅に帰る途中、息子の幸之助とばったり出くわした。周造は、なぜか他人のふりをするのだった。

自宅に帰ると、妻の富子は北欧旅行の準備に忙しかった。念願だったオーロラを見に行くのだという。周造も誘われたのだが、寒い地方は苦手だと言って断ったら、あっさり富子は友人と一緒に行くことになったのだ。

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別の日、周造がラジオ体操に出かけた時、幸之助の妻、史枝は周造の車にまたキズがついていることを不安に思い、幸之助に相談した。幸之助は、「そろそろ親父から免許を取り上げる時期だな」と賛同したが、頑固者の父を説得する気になれなかった。そこで、妹の成子にやらせることにしたのだ。

一方、その話を受けた成子も、説得する自信はなかった。その為、ちょうど自宅に次男の匠太が娘のピアノの調律に来ていた時に、匠太に押し付けることにした。しかし匠太もまた自信がなかったので、ここは憲子に言わせよう、ということになった。

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そこで、後日憲子と匠太は久々に実家を訪れ、ちょうど免許の高齢者講習から帰ってきた義父に免許返上の件を切り出してみたが、やはり憲子でも説得することはできなかった。家族全員から立て続けに言われ、富子と2人でマンション暮らしをしたいと拗ねた周造だったが、富子は「嫌よ~」と全く相手にしなかった。

家族の心配が現実に?!周造、交通事故を起こす

富子が北欧旅行に出かけた日、周造は昼食を加代と楽しもうと電話して、うきうきして車で出かけていった。天ぷらでも食べに行こうと、加代と車を走らせている道中、周造は道路工事の整理員をしていた老人が、高校時代の旧友、丸田だということに気づいた。丸田とは、サッカー部で切磋琢磨した仲だった。

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そして、色々考えごとをしながら車を走らせていた時、周造は前を走っていたダンプカーに追突事故を起こしてしまう。相手側にキズはなく、ほぼ自損事故に近い形だったので、加代が機転を利かせてその場で示談となったのだった。

事故を起こしたことは、子供たちにサイドミラーの破片を拾われてしまい、あっさり史枝にバレてしまった。保険や補償の件を細かく突っ込まれた周造は、思わず「加代ちゃんに払ってもらった・・」ともらしてしまい、富子のいない間に女性とデートしていたことが家族にバレてしまったのだった。富子が旅行中で何よりだった。

同窓会で飲んだ翌日、平田家で亡くなった旧友

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翌日の晩、周造は高校時代の同級生、向井を誘って居酒屋「かよ」で飲んでいた。話のネタは、もちろん数十年ぶりにバッタリ道端で再会した丸田についてだった。周造は昼間にもういちど丸田に会いに行ったが、もう工事が終わっていてどこにいるかわからなくなっていた。そこで、探偵をやっている向井の弟が警備会社を当たって探し出すことになった。

一方、匠太はその日、調律師として勤務している島村楽器で、成子の娘、加奈のため新調するピアノ選びに付き合っていた。匠太は、加奈のピアノの才能を伸ばすには、良いピアノが必要だと考えていた。それが終わると、匠太は仕事帰りの憲子と合流し、憲子の祖母、母の自宅を訪問した。

憲子の両親は性格の不一致からかなり前に離婚していた。そして、母は保険営業の仕事をしながら認知症の祖母の介護を引き受けていたのだ。祖母の家からの帰り道、経済面の負担も考慮し、つらい母の状況をおもんばかって、匠太は憲子に母、祖母と一緒にくらさないか、と提案した。

ちょうどそこへ、幸之助から家族会議開催のLINEメッセージが入った。週末、父の免許返上の件について話し合いたいという。うな重を用意して待ってくれているようだ。

翌日、周造は居場所の判明した丸田も誘い、久々に高校時代の同級生達と同窓会へと出かけていった。奇しくも、その夜は史枝は歌舞伎観劇に、幸之助は夜まで接待があり、大家族にしては珍しく子供たち二人で過ごす夜となった。子供たちは、宅配ピザを注文していた。

深夜になって相次いで幸之助や史枝が帰宅してきたが、周造は居酒屋「かよ」で丸田、向井と飲み直した後、丸田を自宅の2Fにつれてきて、さらに飲み交わしていた。妻、子供とも音信不通になり、今は独り孤独に老後をすごしていた丸田にとって、その日仲間たちと久々に飲み交わしたのが非常に嬉しく、かなり深酒となっていた。

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そして、翌朝周造が目を覚ますと、丸田は血を吐いて冷たくなっていた。ちょうど幸之助が招集していた家族会議の日だったので、匠太、憲子、成子、泰蔵も集合していたため、第一発見者は匠太だった。

中止になった家族会議と丸田の葬儀

看護師の憲子が見たところ、すでに冷たくなっていて蘇生の可能性はなかった。救急車を呼んだが、蘇生措置を辞めて警察による現場検証が行われることになった。

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日取という担当の刑事から家族全員が事情聴取されたが、現場を見た日取はすぐに事件性はないと判断し、死体を警察署へと運んでいった。ちょうど、うな重が届いたが、その日は家族会議どころではなく、うな重はタッパーに入れておみやげに持ち帰ることになった。

その後、憲子と匠太が警察署で手続きに向かったが、丸田の親族には、随分前に絶縁したといい、引き取りを拒否されてしまった。丸田の娘は香港にいて連絡先もわからないという。こういう場合、自治体の福祉課で形式上葬式を行い、ひっそりと火葬されるのだという。

警察を出て、丸田の家に向かった匠太と憲子は、大家に部屋を見せてもらい、仏花として菊の花を花瓶に挿したのだった。大家の話では、丸田は再三周りから生活保護の申請を進められていたが、国の世話にはなりたくないと頑なに断っていたという。

一連の話を聞いた周造は、翌日の火葬場での立会に家族の皆も賛同して欲しい、といつになく低姿勢で頼むのだった。

翌日、質素な火葬場で丸田との最後の見送りには、結局家族全員と向井が出席してくれた。周造は、丸田が生前大好きだった銀杏を山ほど棺桶に入れた。火葬が始まると、爆竹を鳴らしたような音が鳴ったので何事かと火葬場の職員が出てきたが、それは銀杏がはぜた音だった。

その日、上海出張が迫っていた幸之助は一足先にタクシーで帰ることになったが、帰り際、「今度こそ家族会議で周造の免許を取り上げるからな!」と言い捨てて去っていくのだった。

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4.ストーリーの感想や評価(※ネタバレ注)

とにかく面白かった!

「家族はつらいよ」1作目は、劇場で見ることができなかったのでDVDであんまり期待せずに見たのですが、これが予想外に面白かったんですよね。だから、まぁ高齢者向けの映画なんだろうけど、今回はしっかり劇場で笑ってやろう、と行ってきました。

そして、今回の感想は、一言で言うと、

「面白かった!」

これにつきます。

間違いなく、今年一番映画館で大笑いしました。周りのお客さんも最初から最後まで爆笑で、すごく雰囲気のいい中、気がついたら笑いっぱなしでエンディングへ。

あらすじでも書いたように、映画中盤で平井家で周造と深酒して盛り上がった旧友の丸田が、平井家に泊まった翌朝にぽっくり死んでいる場面が出てきます。普通の映画なら死体を目の前にしてシリアスに泣いたり悲しんだりするシーンなのですが、「家族はつらいよ2」では、ここから笑いが一気に加速していきます。家族会議のために集まった平井家の面々が、突然現れた死体を目の前に、繰り広げるドタバタ劇。そして、クライマックスの葬儀場シーンへなだれ込みますが、最後に出棺するまで笑えるシーンがどっさり・・・。

火葬場でボケ続ける西村雅彦!f:id:hisatsugu79:20170530021004j:plain

人が死んでるのに、なぜか不謹慎だけどめちゃくちゃ笑えるという、まさに振り切った喜劇映画なんですね。恐らく、昔の「8時だよ全員集合!」や「吉本新喜劇」などが好きな人は間違いなくツボにはまる作品です。

映画のテーマは、若干老人目線ではありますが、きちんと2017年現在の最新の時事問題を扱っているので、笑えるけど、劇中で描かれる出来事には一定のリアリティがきちんと確保されています。そこが、永遠の昭和40年代を描くサザエさんとは違うところ。一通り笑い転げたあとは、ちゃんと鑑賞者の問題意識にも食い込んでくるという作品に仕上がっています。

ほんと、山田洋次監督ナメてました。劇場の客席には、僕ともう一人の男性以外、あとは全員高齢者しかいませんでしたが、全年齢で楽しめる素晴らしい続編になっていました。

主義主張は老人寄りな分、若者達をキレイに描く絶妙のバランス感覚

本作設定されているテーマは、前半部分が「高齢者の免許返納問題」、後半が「無縁社会」「下流老人」といった、高齢者をめぐる最新の時事・社会問題。しかし、あくまで高齢者側から見た問題提起であり、高齢者に優しい目線でストーリーが描かれるのです。

物語前半で、自損事故を繰り返す周造は、家族全員から「免許返納」を執拗に迫られますが、周造は頑なにそれを拒否し続けます。物語後半では、過去の借金問題から妻と子供に逃げられ、親類からも縁を切られていたにも関わらず、丸田は頑なに生活保護を申請せずに、厳しい肉体労働をしてまで自活することにこだわっていました。

免許返納どころか、新車を買おうとする周造f:id:hisatsugu79:20170530021052j:plain

ここで、周造と丸田に共通する思いは、「プライド」です。後期高齢者といっても、まだまだ体はそれなりに動くし、気持ちの上では老け込んでいるわけではないのです。だから、周りからある意味「子供扱い」される余計な親切は、彼らにとって押しつけでしか無く、我慢ならないのです。

また、周造にとって免許を取り上げられることは、自らの自由が奪われることにも等しいでしょう。特に、今の40代以上の男性にとっては、車はある意味「自由」の象徴でもありますよね。車がなくなったら、ゴルフや友人とのレジャーはどうするのか?足腰がそれほど強くない周造にとって、郊外の自宅から最寄り駅まで徒歩で往復するのはムリがありますよね?

傷だらけの周造の愛車「マークⅡ」f:id:hisatsugu79:20170530004705j:plain

しかし、客観的に見ると、周造の運転能力は危機的なレベルであり、今すぐ強制的に免許を取り上げなければならないレベルにあります。家族会議とかしてる場合じゃありません。これだけ短期間で自損事故を繰り返し、実際に自家用車が傷だらけでボロボロになっているような状態では、いつ命にかかわる重大事故を起こしてもおかしくはないからです。また、持病を抱え、いつ入院してもおかしくない丸田も、体に負担のかかる肉体労働をやっている場合ではありません。すぐに生活保護を申請して当然のレベルにありました。

ですが、映画内では、あくまで周造と丸田に対する視線は非常に優しく、あくまで同情的に描かれます。老人目線に立った情緒的な心情表現が優勢で、一貫して山田洋次監督の老人たちへの優しい目線を感じました。しかし、これは裏返して若者目線から見ると、かなり違和感があったのではないでしょうか?

その代わり、山田監督は若者をキレイに描くことで、うまくバランスを取っているのですよね。前作同様、物語後半にかけて平田家の面々が家族会議へと集まってきますが、中高年、老人達は周造を筆頭にみな一様にわがままで、自分勝手な主張ばかりするダメキャラなわけです(笑)

丸田の死体に全員が動転する中、ひとり冷静な憲子f:id:hisatsugu79:20170530021256j:plain

これと対比するように、「東京家族」「家族はつらいよ」から一貫して、蒼井優扮する最年少の憲子が、良識も思いやりもある、一番まともな存在として描かれ続けます。(もともとのインスパイア元の小津安二郎「東京物語」でも一番若い原節子以外はダメキャラでしたしね)

表面上は若者を美しく描いてしっかり持ち上げつつ、老人たちへのシンパシーを作品全体へ浸透させる、このあたりのバランス感覚は非常に上手いなぁと感心しました。

解決策は、「大家族」での支え合いなのか?

各種インタビュー等を読むと、本作での山田洋次監督の問題意識は、特に「無縁社会」と、政治や行政側の対策の遅れに向けられています。物語中では、丸田だけでなくアパートで2人暮らしを続ける憲子の母と祖母の厳しい状況も描かれます。保険営業の仕事の合間に、認知症の母の世話もして、家事もこなす、1人3役状態の憲子の母の疲れた表情。こちらも「老老介護」一歩手前状態です。

これに対する解決策は、やはり劇中で匠太が憲子に提案した通り、「家族全員で住む」という大家族化の復活が有力な手段になるのではないでしょうか?

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映画パンフレットによると、2017年現在、3世代以上が1つの世帯に同居する「大家族」は、全世帯のわずか6%強しかないのです。3世代で同居する、サザエさんのような家族構成の平田家は、今となっては非常にレアなケースなんですよね。

家族のメンバーが多くなれば、本映画のように「熟年離婚」「免許返上」など様々な問題は増えますが、単純に人数が多い分、子育てから介護まで、確実に全員で負担をカバーし合えるメリットは物凄く大きいのでは?と感じました。「家族はつらいよ」シリーズは、大家族に起こる様々なドタバタ劇を描きつつも、大家族でいることの「強さ」を見直すきっかけになる映画でした。

5.伏線や設定などの考察・解説(※ネタバレ注)

「家族はつらいよ」1作目とのストーリー・演出での共通点

将来のシリーズ化を見据えたのか、今作では前作「家族はつらいよ」1作目と多くの展で全体的な雰囲気やストーリーの構造、演出面での共通点が見られました。「2」を見た後、改めて前作を見てみると、すでに2作目にしてストーリーに定型的なパターンが出来つつあることに気づきます。見ていて気づいた共通点を、少し列挙しておきますね。

★家族はつらいよ「1」と「2」での脚本/演出上の共通点

・家族が周造の悪口を言っていると、2Fから周造が下りてくる
・周造は居酒屋「かよ」に昔の同級生と飲みに来る
・その同級生は当時冴えなかったが、部活のマドンナと結婚する
・しかしその同級生はマドンナとすぐに離婚してしまう。
・酔っ払って、必ず「フレーフレー」とやりだす(笑)
・物語中盤で「家族会議」が幸之助により招集される。
・しかし、当日になると幸之助は自分が招集をかけたことを忘れている。
・「家族会議」の当日、別のトラブルやイベントが突発的に発生する。
・そして、会議のために奮発したうな重は絶対に食べられない。
・「家族会議」の翌日に、幸之助の上海出張が必ず入っている。
・周造が憲子を「嫁」呼ばわりして、匠太がキレる。

と、ちょっと見ただけでもかなりありますね。これらは、3作目でも様式美のように踏襲されるのか、あるいは変化があるのか、凄く楽しみです。是非、「2」を見た後、「1」を是非もう一度見直してみてくださいね。結構色々発見があって面白いです。

逆に、1作目と違っていた設定もいくつかあった

ほとんど同じでしたが、中にはしれっと特に説明もなく変わっている設定もありました。特に、犬がいなくなったり、周造が高校時代所属していた部活が変わっていたりと、辻褄が合わない設定も散見されました。ちょっと列挙してみます。

★家族はつらいよ「1」と「2」での設定相違点

・成子がずっとメガネを着用している。
→前作では結構外していました。付けていたほうが税理士らしくて良いかも。
平田家のペットが犬から文鳥へと変わっている。
→調べたけど特に理由や経緯は不明。犬は死んだのか?
・「2」で自家用車「マークⅡ」が出現。
→「1」では、平田家の駐車スペースはいつも空車でした。
・周造がタバコを吸わなくなった。
→前作で倒れてから禁煙したのか?
周造は「1」では高校時代テニス部に所属していたが、「2」ではサッカー部に変わっている。
→パラレルワールド??

続編「家族はつらいよ3」に向けて、ストーリーの要注目ポイントまとめ

まだ正式決定には至っていませんが、主演の橋爪功の初日舞台挨拶内容や、山田洋次監督へのインタビュー、公開されてからの興収推移を見ると、山田監督の体調に問題さえなければ「3作目」以降も確実に製作されるでしょう。(松竹もまさかレジェンドに対して「嫌」とは言えないと思います・・・)

そこで、前作も含め、「家族はつらいよ2」で未回収となった伏線や、新たなストーリーの種となりそうな設定を、以下の通り「要注目ポイント」としてまとめてみました。

★「家族はつらいよ」続編での要注目ポイント

・最終的に周造は運転免許を返上したのか?
・周造と加代の関係は今後追及されるのか?
・匠太と憲子は、母と祖母と同居を始めたのか?
・匠太と憲子の間に子供ができるのか?
・博多に住む憲子の父との対面シーンはあるか?
・次回登場する周造の同級生はどんな人物か?
・次回も家族会議は開催されるのか?
・うな重(肝吸付)は再びオーダーされるのか?
・笑福亭鶴瓶と小林稔侍はどんな役柄で再登場するのか?
笑福亭鶴瓶→「1」救命医、「2」火葬場職員
小林稔侍→「1」探偵、「2」丸田

 6.劇場用パンフレットが秀逸だった!

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僕は、毎回劇場に行くとパンフレットを必ず買いますが、意外だったのが、「家族はつらいよ2」のパンフレットのクオリティの高さ!やっぱり中高年の方々はパンフレットをしっかり読み込む人が多いんでしょうか?

最初は、どうせよくあるスイーツ映画のように内容スカスカなんだろうなと思って全く期待していなかったのですが、思わぬ情報量の多さと、しっかり整理された各コンテンツ群に嬉しい悲鳴です(笑)

きめ細かい編集で読みやすいし、ボリュームも凄い!f:id:hisatsugu79:20170529234406j:plainf:id:hisatsugu79:20170529234418j:plainf:id:hisatsugu79:20170529234430j:plain

是非、劇場に行った方はパンフレットを購入してみてくださいね!おすすめです。

一応、Amazonにもマーケットプレイスで出ていますね。どうしても劇場に足を運べない方は、ネット等で購入して、パンフを先に読んでおいても良いと思います。

7.まとめ

1作目がある程度ヒットすると、2作目以降は作品のパワーが少しずつ落ちていくものですが、「家族はつらいよ」は、間違いなく今作の方が断然面白いです!86歳にしてここまで振り切ったキレ味の作品を作れる山田洋次監督、凄いの一言でした。おすすめ作品です!

それではまた。
かるび

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年5月現在上映中映画の感想記事一覧

8.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

小説版「家族はつらいよ2」

映画を忠実にノベライズ化した小説版。全10章を、それぞれ周造、史枝、憲子、匠太が持ち回りでそれぞれの主観目線から語り下ろす、小説ならではの工夫が面白いです。映画内ではニコニコマドンナ役の憲子も、心のなかで色々と家族達にツッコミをいれているのがツボでした!楽しくカジュアルに読めるライト文芸(キャラ文芸)調なのもいいと思います。

(前作)映画「家族はつらいよ」

本作でハマった人は、是非旧作もチェックしてみてくださいね。コメディ要素は2作目で強化されていますが、物語の構造や様式は1作目でよく練られ、シリーズ化しやすいようにしっかり作り込まれていたことがわかります。

映画「東京物語」

キャスト陣は「家族はつらいよ」シリーズと同じですが、人物の細かい設定は違います。小津安二郎「東京物語」の忠実なリメイク作品として制作された1本。本作品のスマッシュヒットと好評価をきっかけに、よりコメディへと振り切った作品を作ろうと山田洋次監督が思い立ったのが、「家族はつらいよ」シリーズでした。シリーズ原点として、チェックして損はない「泣ける」作品です。

山田洋次監督作品は、まとめてHuluで!

前作「家族はつらいよ」、シリーズ化原点となった「東京家族」、代表作「男はつらいよ」シリーズ、「釣りバカ日誌」シリーズ、「学校」シリーズなど、山田洋次監督には、膨大な過去作品があります。そして、山田監督作品は、その大半がネット上の動画配信サービスで見られるようになっています!

U-NEXTやAmazon等、他社もわりと充実しているのですが、山田洋次監督作品は、Huluが一番充実していておすすめです。
2017年5月末現在、72作品が全て見放題!

山田洋次監督作品を楽しむには、間違いなくHuluがベストなオンデマンドサービスだと思います!

最初の2週間は、完全無料で試せますので、無料期間中に「家族はつらいよ」「東京家族」だけ取りあえず見てしまうのもありですね!

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