あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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熱海観光なら外せない!MOA美術館@熱海がゴージャスにリニューアルオープン!!

かるび(@karub_imalive)です。

学生の頃から伊豆箱根が大好きで、毎年5回は最低でも日帰りや1泊2日で旅行に行っています。もう何年も行っているとあらかた行き尽くした感があって、2回目、3回目となるところが多いです。

新名所が出来たら、速攻チェックしてまずは行ってみるようにしているのですが、そんな中、2月5日から熱海のMOA美術館がリニューアルオープンしたので、早速行ってきました!

約11ヶ月間のお休みを経て、館内は豪華にリニューアルが完了。美術館としても一流でしたし、高台からの海の眺めは絶景で、純粋に観光として見て回るにも最適なスポットへと仕上がっていました。

今日は、このリニューアル工事が完了して新しく生まれ変わった「MOA美術館」について書いてみたいと思います。

※なお、館内の写真は、美術館の許可を得て撮影させていただいています

1.MOA美術館って?どこにあるの?

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MOA美術館は、新幹線で東京から39分。JR熱海駅を降りて山側に入ったすぐ丘の上にあります。正面玄関まで、タクシーで5分、歩いても(しんどいけど)15~20分程で到着します。

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英語名称は、「MOA Museum Of Art」。熱海にあるのに、「MOA」ってなに?って思うかもしれません。これは、創立者、岡田茂吉の名前を取ったもので、「MOA」=「Mokichi Okada Associates」という意味です。

創立者の岡田茂吉(1882-1955)は、大正末期~昭和にかけて、新興宗教「世界救世教」を興した人です。彼はその一方で、美術にも非常に造詣が深く、宗教家として有名になる前は、日本画家を志して東京美術学校(現在の東京芸術大学)で学んでいました。

宗教家として成功したあと、岡田は日本美術を中心とした美術品の収集を進めていきます。そして、1952年には、美麗な庭園が名物の「箱根美術館」をオープンさせました。

参考:箱根美術館
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(引用:Wikipedia)

ついで、1982年には彼のコレクションを全て網羅した、MOA美術館を熱海駅裏に開館します。MOA美術館は、開館から35年が経過し、建物の老朽化が進んだため、一旦2016年から改修のため休館していました。そして、今回ちょうど2017年2月から大幅リニューアル工事が完了して、再オープンとなりました。

MOA美術館の特徴は、何と言ってもその所蔵品に多数の国宝・重要文化財クラスの貴重な美術品を抱えていることです。特に、毎年2月に公開している尾形光琳の「紅白梅図屏風」や、専用の設置部屋ができた野々村仁清「色絵藤花文茶壺」は、美術ファンなら絶対見ておくべき一品です!

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2.リニューアルオープンしたMOA美術館の見どころ

今回、リニューアルオープンしたということで、オープン直前の内覧会に入れていただいたのですが、ものすごいきれいな館内と、気合いの入った展示スペースに度肝を抜かれました。ちょっと見どころをいくつか書いてみたいと思います。

2-1.とにかく明るくて開放的な館内

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館内が、リラックスできる雰囲気かどうか、というのは美術館・博物館にとって非常に重要な要素だと思うのですが、巨匠、杉本博司の全面監修の下リニューアルされたMOA美術館は、とにかく館内が落ち着いているし、開放的な空間が心地良い!

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東京・大阪を中心とした都心の美術館は、どうしてもその展示スペースが狭くなってしまい、限られたスペースの中に展示品が詰め込まざるを得ない展覧会が非常に多いもの。

このMOA美術館では、都心の美術館・博物館ではあり得ないほど広大な敷地を活かし、細部まで徹底的に快適さにこだわって設計されました。とにかく天井は高いし、展示スペースはゆったりしているし、敷地全体が癒やしのスペースとして気持ちよかったです。

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また、窓際の景色も最高です。美術館の窓から見える相模湾の海景は、アートなしで、この景色を見るために美術館に立ち寄ってもいいな、と思うほど素晴らしかったです。単純に観光スポットとしてもイケているのですよね。

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2-2.MOA美術館所蔵品は写真が撮影し放題!

さらにすばらしいのは、このリニューアルオープン以後、MOA美術館の所蔵品は全面的に写真撮影が解禁になったこと。国宝だろうが重文だろうが撮り放題です!もちろん、1点撮り、接写も問題ありません。(※ただし、企画展示品の撮影や、フラッシュでの撮影、自撮り棒など機材を使った撮影はできませんのでご注意)

色絵牡丹文大皿(古九谷様式)
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SNS全盛時代を考慮しての決断だそうですが、これはブロガーとしては嬉しい措置でした。最近でこそ、国立の美術館・博物館でようやく写真撮影が解禁されつつありますが、まだまだ私立美術館では頑なに一律撮影不可の美術館が多い中、他の美術館に先んじて解禁した英断は、先進的で素晴らしいと思います。

もう、遠慮なく、バシバシ撮らせていただきました。皆様もお出かけになる際は、カメラを忘れずにお持ちください。

2-3.映り込みしないガラスケース

美術館で結構きになるのが、ガラスケースと照明が反射して、人の姿が写り込んで作品がよく見えなかったりするケース。今回のリニューアルでは、そのあたりも非常に改善されており、全面的に導入された高価な低反射ガラスケースのおかげで、驚くほどクリアに作品を見ることができます。

実際、かなり目をこらして見てみないと、ガラス自体どこにあるのか全く見えません!もちろん、ガラス越しに写真を撮影する際も、まったく映り込みしなかったので、鮮明な写真を残すことができました。

2-4.グッズコーナーも開放的

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展示を全部見終わると、最後にグッズコーナーが待っています。定番のクリアファイル、図録、お菓子などの他、各地方の工芸家たちによる各種工芸品の展示販売も充実していました。

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2-5.山麓口エントランスのエスカレーター~ホール

MOA美術館には、山頂側の出入り口と山麓側の出入り口の2つがあるのですが、そのうち山麓側の出入り口から入場すると、展示室まで100m以上に渡る長大なエスカレーターの回廊を上っていきます。まるで神社の参道のようです。

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そして、エスカレーターを乗り継ぐ中間地点には、天井をスクリーンに見立てて、映像装置から万華鏡のように天井の映像がリアルタイムで変化していく巨大なホール状の踊り場があって、非常に幻想的でした。実際にいろいろなイベントをここで実施するそうです。

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MOA美術館名物のこの長いエスカレーターの回廊は、ぜひ味わってみてください!なお、エスカレーターを1日動かしておく維持費だけで、毎日電気代が数十万円かかるそうです・・・。

2-6.充実したカフェレストランは全部でなんと5軒も!

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(レストラン・オー・ミラドー店内イメージ図/MOA美術館HPより)

僕が訪問したのは会館前で工事中だったので、全部を見せていただくことはできませんでしたが、リニューアル後、館内のカフェ・レストランは、なんと全部で5軒もオープンします。

・カフェレストラン「オー・ミラドー」
・the café
・二條新町 そばの坊
・和食・甘味 花の茶屋
・茶室 一白庵

このうち、特に僕が期待しているのが「the café」と「オー・ミラドー」。the caféは、海が見える絶景の中、コーヒーや軽食が楽しめます!

「the café」店内スペース
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また、オー・ミラドーは、箱根芦ノ湖畔で絶大な人気を誇る、伝説のシェフ勝又昇が手がけるフレンチ・レストランペンション「オーベルジュ・オー・ミラドー」の姉妹店。レストラン目当てでMOA美術館に来ても良いですね!

伝説の勝又シェフ(レストラン オー・ミラドー)f:id:hisatsugu79:20170209122152j:plain
(引用:MOA美術館HPより)

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3.気になった作品群

今回、2月5日~3月14日までのリニューアル記念展示第一弾は、「リニューアル記念名品展」と、リニューアルの監修者である杉本博司の写真展「海景ーATAMI」の2本立てとなっています。

この中で、特に印象深かった作品群をピックアップしてみたいと思います。

3-1.尾形光琳「紅白梅図屏風」

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まず、何が何でも見ておきたいのが、国宝「紅白梅図屏風」。1982年のオープン以来、MOA美術館から企画展で出張展示されたのは、2011年の震災復興支援で東北に貸し出した時ただ1回のみ。今後も、毎年梅の季節には目玉展示として毎回MOA美術館で展示する予定なので、事実上ここでしか見れないということです!
(※国宝・重文クラスの美術品は、法律で展示できる期間が限定されており、1年に1回しか展示できない)

低反射ガラスのおかげでクリアに見れましたし、何と言っても尾形光琳の数ある作品の中では保存状態も非常に良い作品です。

後世の日本画家達に多大な影響を与えた尾形光琳のデザインセンスが堪能できる作品なので、ぜひこれをまずはしっかりと見ておきたいところです!

3-2.野々村仁清「色絵藤花文茶壺」

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続いて、17世紀に焼き物の世界で「京焼」を完成させ、プロの陶芸家として芸術作品を多数残した陶工、野々村仁清の国宝「色絵藤花文茶壺」も絶対見ておきたい所。

とは言っても、今回のリニューアルで、この壺専用の鑑賞スペースができるほどの力の入れようで、展示を回っていると、すぐに「あ、これか!」と自然に気づきます。

専用展示コーナー
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(引用:MOA美術館HP)

色絵藤花文茶壺は、専用の部屋に鎮座しています!f:id:hisatsugu79:20170209112153j:plain

個人的には、トーハクの「色絵月梅図茶壺」のほうが好みなのですが、日本の陶芸美術史において、画期的な一作として知られる本作品を、特別の部屋、特別な照明の下で見れたのは非常に意義深かったです。

3-3.洋人奏楽図屏風

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最初これを見た時、「えっ、なにこれ?」と度肝を抜かれてしまいました。そこまで上手なわけではないのですが、遠近法を取り入れ、描かれた人物達の顔立ちは欧米人であり、どう見ても一見洋画にしか見えません。でも、よく見ると日本産の岩絵の具を使って描かれているんです。(※例えば「緑青」を使った緑色などは典型的)

左隻部分拡大
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これは、海外で描かれた洋画ではなく、ポルトガルやスペインの宣教師、商人を通して入ってきたヨーロッパの絵画などを手本に、日本の画家が洋風に描いた屏風なのだそうです。19世紀の幕末近くなってから秋田蘭画の画家たちや円山応挙、葛飾北斎などが描いたのであればまだしも、これが16世紀の作品である、というのが非常に驚きでした。

3-4.勝川春章「雪月花図」

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初期の浮世絵作家、勝川春章の手がけた3対一組の肉筆画。保存状態が非常に良く、しかも低反射ガラスでの鑑賞ということもあり、細部までくっきりと鑑賞することができました。浮世絵作家の肉筆画は、やっぱり素晴らしい!

3-5.喜多川歌麿「桟橋二美人図」

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同じく、浮世絵作家、喜多川歌麿による肉筆画。哥麿の肉筆画は、浮世絵以上にやわらかな表情と繊細な描き込みが大好きなのですが、この深川の川沿いでポーズを取る芸者を描いた肉筆画は非常に印象的でした。

3-6.黄金の茶室

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豊臣秀吉が、その治世全盛期の頃、1586年に正親町天皇と宮中で茶会を開いた時に使われたという「黄金の茶室」を、昔の資料から再現して展示したものです。

中に入ることは当然できないのですが、実際に中に入ったことがある学芸員さんの話では、黄金の放つやわらかい輝きや光は、決して派手になりすぎず、意外にも室内は静謐な雰囲気で満たされるのだそうです。

なお、このセットは以前に天皇家が視察に訪れた時、1度だけ使用された実績があるそうです。

4.MOA美術館の混雑状況は?

最後に、少し混雑状況についても学芸員さんに聴いてみましたが、毎年2月に公開する尾形光琳の「紅白梅図屏風」と、熱海梅園の最盛期にあわせて、2月が一番来客が多いとのことです。

大体平均して1日1500人程度の来客を見込んでいるとのことです。1日1500人の来客なら、快適そのものですね。混雑の心配はまずなさそうです。

5.まとめ

伊豆箱根熱海エリアは、ポーラ美術館、岡田美術館など、見どころ満載の気合の入った「本気の」美術館が多く点在しています。そんな中、このMOA美術館も、日本美術を中心として、多数の貴重なコレクションを揃えている上、開放的な館内でゆっくりと鑑賞できるという意味で、間違いなくアートファンなら一度は訪れておきたい美術館です。

熱海駅すぐという好立地もあり、アクセスも良いので、日帰り温泉や観光のついでにフラッと立ち寄ってみてもいいかもしれませんね。美術館から見える絶景も非常におすすめです!

それではまた。
かるび

MOA美術館概要

◯所在地
〒413-0006 静岡県熱海市桃山町26−2
◯最寄り駅
JR新幹線・在来線熱海駅から徒歩15分程度
タクシーで5分
◯マイカー

「MOA美術館3階駐車場」200台/無料
利用時間 9:00〜17:00
◯開館時間・休館日
9:00~16:30(入場は30分前まで)・木曜日休館

◯公式HP
http://www.moaart.or.jp/
◯周辺地図
f:id:hisatsugu79:20170209123842j:plainhttps://www.google.com/maps/@35.108578,139.07719,16z?hl=ja