あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

MENU

【ネタバレ有】Netflix映画「MUTE ミュート」感想・考察と10の疑問点を徹底解説!/評論家の評価は最低だけど、意外に楽しめたサイバーパンク作品!

f:id:hisatsugu79:20180330181853j:plain
【2018年4月10日最終更新】

かるび(@karub_imalive)です。

2017年末頃から、「ブライト」「アナイアレイション」「アウトサイダー」等、ハリウッド系のオリジナル映画大作のリリースペースが顕著に上がってきているNetflix。映画好きにとっては、映画館に行くだけでなく、毎週のように上がってくるNetflixの新作チェックもしなきゃいけなくて・・・で、嬉しい悲鳴になっていますね。

そんな中、また一つハリウッドで実績を残している映画監督・キャストで制作されたネットフリックスオリジナル映画「MUTE ミュート」が2月下旬、全世界一斉にリリースされました。

遅くなりましたが、割りと好きな感じの世界観でしたので、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、作品鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.Netflix映画「ミュート」の予告動画・基本情報

▶公式予告動画(英語版)
※画像をクリックすると動画がスタートします


動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】ダンカン・ジョーンズ(「月に囚われた男」「ミッション:8ミニッツ」他)
【配給】Netflix
【時間】126分
【原作】なし(オリジナル)

f:id:hisatsugu79:20180401011228j:plain
引用:Wikipediaより

本作でメガホンを取ったのは、ダンカン・ジョーンズ監督。彼は昨年亡くなったデヴィット・ボウイの実子であるという事実は、かなり有名な話のようですね。(知らなかった・・・^_^;)ただ、決して親の七光りでのし上がった人ではなく、作った作品がちゃんと評価されてハリウッドでステップアップしてきた人なのであります。

これまでの作品の中で、特に評価されている「月に囚われた男」「ミッション:8ミニッツ」は、共に時間・場所が限定的な条件下、主人公が同じ行動をループ的に繰り返す中で繰り広げられる人間ドラマを緻密に描き出した傑作でした。

両作品ともプロットも大筋ではわかりやすく作られているのですが、どうしても隅から隅まで楽しみたくなり、1度観た後、すぐに2回目が観たくなるような、繰り返し味わえる作品となっていたのが特徴でした。(こういう作品は喜んで円盤で買いたくなりますね)

今回の映画「MUTEミュート」は、ダンカン・ジョーンズ監督が、脚本担当のマイケル・ロバート・ジョンソンと16年もの長期間じっくり構想を温めてきたライフワーク的な作品だと言います。そんな個人的な思いの詰まった作品を、敢えて通常の劇場公開版映画ではなく、Netflixというプラットフォームを選んで勝負してきたわけですが、さて、出来の方はどうだったのでしょうか?

2.主要登場人物・キャスト

レオ(アレクサンダー・スカルスガルド)f:id:hisatsugu79:20180330181316j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube
スウェーデン出身のベテラン俳優で、ハリウッド映画作品や、アメリカのTVドラマで活躍中。特に昨年は米ドラマ「ビッグ・リトル・ライズ」で、第69回プライムタイム・エミー賞の助演男優賞、第75回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞するなど充実した一年となりました。ちなみに、昨年末「イット/それが見えたら、終わり」のピエロ役で大ブレイクを果たしたビル・スカルスガルドは、彼の実弟です。

カクタス・ビル(ポール・ラッド)f:id:hisatsugu79:20180330181430j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube
どこかで観たことがあるなぁーと思っていたら、彼はマーベルヒーロー作品「アントマン」で主役を務めていましたね(笑)調べるまで全く気づかなかった・・・。「アントマン」では終始コメディ・リリーフ的な三枚目の主人公でしたが、本作ではキレたら怖い元退役軍人役を絶妙なさじ加減で演じていました。役者って凄いですね・・・。

ダック(ジャスティン・セロー)f:id:hisatsugu79:20180330181424j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube
年末最大の話題作「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」にて、謎の男マスター・コードブレイカーを演じましたが、今作では、ジョン・レノンみたいな髪型・髪色で出てきたので全く同一人物だと気づきませんでした。2017年初頭に日本でも公開された「ガール・オン・ザ・トレイン」にも出演しています。

ナディーラ(セイネブ・サレー)f:id:hisatsugu79:20180330181740j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube
ドイツ出身の女優で、本作がはじめてのハリウッド系作品への登場。国際的には無名な人ですが、今作で主演に抜擢されたことで、今後本格的に世界進出を果たすのでしょうか?

3.途中までの簡単なあらすじ

西暦2052年。科学技術は発達する一方、戦争や乱開発によって環境汚染が進行し、人類は摩天楼の林立する大都市で身を寄せ合うように生きていた。ベルリンは、新たな冷戦時代における国際的な主要都市となっていた。

幼少時の事故により声帯を損傷し、しゃべることのできないバーテンダー、レオ。物静かで控えめなレオには、たった一つの生きる意味があった。共にストリップクラブで働く恋人のナディーラの存在である。ナディーラには、レオには言えない秘密があったが、レオは、過去のことよりも今、ナディーラと共に過ごすことができれば、他には何も必要がなかった。

そんな恋人のナディーラだったが、ある日、彼女はレオの元から、連絡もなしに忽然と姿を消してしまう。ナディーラを取り戻すため、レオは、数少ない手がかりを元にベルリンの街を奔走する。やがて、ナディーラの失踪の原因には、ナディーラの元夫カクタス、その親友である元従軍医師ダックが深く関係していたことがわかってくる。

ナディーラはなぜ突然失踪したのか?事件の真相を突き止め、ナディーラを取り戻すため、粘り強い捜索を続けたレオ。やがて、ナディーラが囚われているであろう秘密の隠れ家へとたどりついたレオだったが、そんな彼に悲劇的な運命が降りかかるのだった・・・。

スポンサーリンク

 

4.映画内容の簡単なレビュー!(感想・評価含め)

ブレードランナー?あからさまなサイバーパンク色あふれる画面

f:id:hisatsugu79:20180401011654j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

まず、観始めて30秒で気づくのは、「あれ、これはあからさまにブレードランナー的な世界観なのかな?」ということ。摩天楼が映る大都会の夜景をバックに、1台の飛行艇のような乗り物がスーッと画面を横切っていく演出は、もうそのまんまですよね。

これは確信犯だろう?と思って調べたら、案の定、ブレードランナーのような近未来の退廃的な国際都市の中で起きる人間ドラマを描きたかった、と監督もインタビューで答えており、もはやパク・・じゃなくてオマージュを隠すつもりもないということですよね。

f:id:hisatsugu79:20180401011730j:plain
芸者の格好をしたゲイの娼婦なども典型的??
引用:Netflix「MUTE ミュート」より

人物描写や美術なども、これまでのブレードランナーや一連のサイバーパンク的世界観を共有する映画群からの、色々な引用が感じられます。例えば、ストリップバーなどで踊っているアンドロイドや、芸者の格好をしたゲイの男、80年代系の角ばった乗り物のデザインなど、挙げていくとキリがないわけです。

正直言って、こういった設定が物語に直接深みを与えているかと言えば、必ずしもそうとは言えない感じもして、ここまでしっかりしたサイバーパンク的な作り込みって必要だったのかな?とも思えましたが、そこはNetflix。細部まで細かく美術・世界観を作り込めるだけの潤沢な予算を用意してあったのでしょうね。決して映画館の大画面で上映される機会もない割に、ここまで純粋に世界観をがっちり作り込んでくれたのは、サイバーパンク系SFが好きな人にはたまらなかったのではないかなと思います。オリジナリティはないけど、確実に「頑張っている」と感じました。

主人公の「設定」は物語に確実に見どころと深みを与えていた

f:id:hisatsugu79:20180401015150j:plain

その反面、主人公の「設定」は物語に確実に見どころと深みを与えていたと思います。主人公・レオは幼少時にしゃべれなくなったことをきっかけに、内向的で物静かな大人へと成長しています。別の感覚が研ぎ澄まされた結果なのか、世俗的な成功や利害関係には疎い半面、繊細さとアート的な感覚を発達させた芸術家肌の青年であることが、開始数分の日常のルーティーンを描くことで上手に視聴者にわからせていく。このあたりの演出は実に渋くて上手だったですね。

でも、普段は物静かで人畜無害だけど、愛する彼女が失踪してからは、伝統的なアーミッシュの家に生まれたゆえの機械音痴も乗り越えて、一途で有能な戦士に一変するという。彼女への一途な愛が、冴えないバーテンダーをタフな戦士へと激変させ、行く手を阻む悪そうな奴らをバシバシのして彼女の行方を追跡していく様は、まさに宇多丸いわく「ナメてたやつが実は最強の殺人マシーンでした」的なパターンのカタルシスを感じさせてくれる展開であり、自然と主人公に肩入れしたくなる展開になるのですよね。

そして、このレオを演じたスカルスガルドも、細かい顔の表情だけで苦悩や不安、怒りを見事に表現できていて、上手だなぁと唸らされました。

分かりづらいストーリーはNetflixならではの特徴なのか?

ただ、その反面、やっぱり今回のこの映画、ストーリーがわかりにくすぎる展開に少しイライラさせられました。Netflixという、気軽に戻して見直せるという媒体の特性に甘えて、ちゃんと集中して観ていなかったのもあるのかもしれません。でも、僕がストーリーの全体像をちゃんと把握できたのは3回目の鑑賞時でした。

極端に説明的なセリフが少ない上、。暗くて猥雑でごちゃごちゃしたサイバーパンクな世界観もあって、本当にわかりづらい・・・。細部まで目を皿のようにして画面に食いついて観ていないと、人間関係やストーリーが浮かび上がってこないのですよね。

「月に囚われた男」「ミッション:8ミニッツ」も、確かに1度で全てのストーリーや伏線を味わい切るのは至難の技でしたが、それでも全体として何が起こっているのかは1度目でもしっかり把握出来たと思います。これに対して、今作では、特に1度目の鑑賞では何が起こっているのか、全体像もおぼろげにしかわからなかったりと、やや難易度が限度を越えている感があります。

もうちょっと難易度を下げて、丁寧に描いてくれても良かったかなと思いました。これを、「Netflixなので何度も観て楽しめるからいいじゃないか」とわかるまで忍耐強く観続けることができるか、「こんな駄作!」と開始30分で再生ストップボタンを押下してしまうかは、人によって反応が分かれるところでしょう。ただ、アメリカの大手評価サイトRotten Tomatoesあたりでの評価が異様に低い理由の一つに、このわかりにくさがあったのではないかなと思います。

f:id:hisatsugu79:20180404095408j:plain
評論家からの評価は最低レベルの15%!!
引用:Rotten Tomatoes

ただ、個人的には、わかり易いほどベタベタ説明される話より、多少アラがあっても最後まで謎解きを楽しめる方が好きなので、本作の分かりづらさについては、そこまで気にはなりませんでした。何度でも再生できますからね。

スポンサーリンク

 

5.映画「MUTE ミュート」に関する10の疑問点~伏線・設定を徹底考察!(※強くネタバレが入ります)~

ストーリーや設定について、本作をより深く理解するために要点となりそうなポイントについて、考察や情報をまとめています。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。

疑問点1:映画のタイトル「MUTE」の意味とは?

f:id:hisatsugu79:20180401012911j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

「MUTE」(ミュート)とは、翻訳すると「口がきけない」という意味を持つ英単語です。つまり、直接的には主人公のレオをそのまま意味しているわけです。

また、ダンカン・ジョーンズ監督によると、「月に囚われた男」(原題「MOON」)、本作、さらにもう1作品と、共通する世界観の中、別々のアンソロジーを並べた、ダンカン・ジョーンズ・ユニバース的な3部作構想があるようです。本作は、第1作目「MOON」に続く2作目として、「M」で始まる4文字のタイトルは収まりが良かったのかもしれませんね。

疑問点2:主人公レオはなぜしゃべれないまま成長したのか

f:id:hisatsugu79:20180330181452j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

レオの母親が、宗教上の信条から、医師から強く勧められた手術を断ったからです。本来手術すれば完治したはずでした。しかし、レオの家庭はキリスト教の宗派の中でも、特に近代以前の伝統的な生活様式に厳格にこだわる「アーミッシュ」に属しているため、現代的な医療機器を使った施術を嫌ったのでしょう。

なお、「アーミッシュ」に属する宗派は、現在でも全世界で20万人ほどいると言われ、アメリカではドイツ系の移民がその大多数を占めています。

疑問点3:映画の設定年代は?

f:id:hisatsugu79:20180330181506j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

本作で描かれた舞台は、近未来となる2052年。舞台も、アメリカのどこかではなく、ドイツのベルリンでした。映画中では、アメリカ脱走兵を厳しく取り締まる憲兵のような存在も匂わされていましたし、恐らく何度かの世界大戦や混乱を経て、近未来での国際的な覇権はドイツへと移ったということなのでしょうか?(映画内で使用されていた紙幣も、すでにユーロではなかった)

ちなみに、ダンカン・ジョーンズ監督は、いくつかのインタビューにおいて、「移民によって様々な人種のぶつかりあう文化のるつぼのような大都市としてベルリンが思い浮かんだ」と答えています。

疑問点4:映画でのキーマン、カクタスとダックの正体や特殊な関係性とは?

f:id:hisatsugu79:20180330181533j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

カクタス、ダックは、ともに元アメリカ軍の軍医で、ベルリン基地から中東方面へ派遣されていました。映画では言及されていませんが、カクタスは何らかのきっかけで軍を脱走して、きちんと兵役を終えたダックと合流し、犯罪組織に雇われて犯罪者等を扱う違法な外科手術で日銭を稼いでいました。

f:id:hisatsugu79:20180330181702j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

娘を連れてアメリカに帰りたかったカクタスですが、脱走兵という立場であるため、正規ルートでは脱出できない身分となっていました。そのため、ベルリンの犯罪組織を通じて自分と娘二人分の出国書類を偽造することで脱出を図ろうとしていたのですね。

ちなみに、ダックとカクタスの二人の関係性は、絶妙の味わい深い描かれ方でしたね。短気で癇癪持ちのカクタスに、気が弱く幼児好きなダック。ともに一歩間違えたら犯罪者予備軍になりかねない精神面の脆さを抱えつつ、軍隊時代の強い絆で結ばれている。そして同時に、一人の女を取り合った結果、取られた側のダックはカクタスに愛憎両面の感情を抱いている・・・この絶妙な関係性がストーリーをわかりにくくもしているし、深みを加えているとも見ることができました。何度も見直して、味わい直してみてくださいね。

疑問点5:ジョージーは誰と誰の子供なのか?

f:id:hisatsugu79:20180330181547j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

映画中盤までの段階で、ジョージーがカクタスの娘であることはすぐにわかります。映画最終盤において、かつてナディーラとカクタス、ダックは三角関係にあったが、やがてナディーラとカクタスが結ばれたことが示唆され、この子供は、ナディーラとカクタスの間に生まれた娘であることが判明します。

疑問点6:ナディーラがレオに明かせなかった過去の秘密とは?

f:id:hisatsugu79:20180330181602j:plain
引用:Mute | Official Trailer [HD] | Netflix - YouTube

レオは、明らかにナディーラから、彼女の過去について何も知らされていない感じでしたね。(もっとも、今、そばにいてくれればあとのことは問題ではない、と言い切るレオの器の大きさ/ピュアさも素敵なのですが)ナディーラがレオに明かせなかった過去の秘密とは、過去において、自分がカクタスと結婚しており、さらに二人の間に娘がいて、現在親権を係争中である、という事実なのでしょう。

疑問点7:ナディーラはなぜカクタスに殺害されたのか?

f:id:hisatsugu79:20180401010839j:plain
引用:Netflix「MUTE ミュート」より

ここの解釈が非常に難しいのですが、 ナディーラは、カクタスから一人娘を取り返し、レオと一緒に故郷の母親の元で幸せに暮らそうとしていたのではないでしょうか?そのため、ナディーラは憲兵にお金を払って、違法な活動に手を染めるカクタスを憲兵に逮捕させようとしていたのでしょう。

しかし、娘を奪われたくないカクタスはそんなナディーラの行動を察知し、先手を打ってレオの家に侵入し、飲み物に薬を混入させて眠らせたすきに、隠れ家へと誘拐し、窒息死させたのでした。

疑問点8:なぜカクタスとダックはニッキーを誘拐したのか?

ニッキーは、ギャングの親玉、マクシムの許可なく、売春を斡旋していたからです。しかし、レオがナディーラを探し回る過程で「副業」がマクシムにバレてしまったため、その見せしめとしてカクタス、ダックに命じてニッキーを誘拐・拷問しようとしたのですね。もうすぐアメリカに帰れると思っていたカクタスは、嫌そうに対応していたのが印象的でした。

疑問点9:映画「月に囚われた男」との関係性は?

f:id:hisatsugu79:20180401011053j:plain
引用:Netflix「MUTE ミュート」より

本作は、実はイースターエッグ的に、テレビのニュース映像の中で、物語中盤で映画「月に囚われた男」のその後の後日譚がしれっと描かれていました。

ダンカン・ジョーンズ監督の出世作となった映画「月に囚われた男」では、「ルナ産業」という巨大企業が月の裏側へ社員を送り込み、「ヘリウムガス」の生産を軌道に乗せることで、人類のエネルギー問題、環境汚染を解決していました。しかしその事業は、ある男の無数のクローンを作り出し、月の裏側での非人道的&過酷な労働において使い捨てにすることによって成り立っていたのでした。

f:id:hisatsugu79:20180401011111j:plain
ルナ産業が経営するガソリンスタンドが映画内で登場
引用:Netflix「MUTE ミュート」より

これに気づいたあるクローンが、会社を出し抜いて地球へと帰還するところでストーリーは終わるのですが、本作ではその後の状況がダイジェスト的にニュース報道として描かれましたね。すなわち、地球へ帰着したクローンが会社を相手取って訴訟を起こしたことにより、大スキャンダルへと発展している様子がニュース画面で描かれました。

また、映画ラストでガソリンスタンドに立ち寄るシーンがあるのですが、この時に立ち寄ったスタンドの会社名にも「ルナ産業」と書かれていましたね。

疑問点10:ラストシーン・結末の考察~本作の隠れたテーマとは~

レオは、最愛の恋人・ナディーラを殺害したカクタスへ復讐を果たし、次いでナディーラとカクタスがかつて結ばれた橋の上で、ダックを殺します。この時、印象的だったシーンが、カクタスもダックもいなくなり、レオとナディーラの娘、ジョージーだけが残った時、二人はこの映画で初めて「肉声」で会話し合うのです。二人が父娘となったことを象徴しているようなシーンでした。この時、レオは残されたナディーラの娘・ジョージーを引き取り、自らがナディーラの代わりにジョージーを育てていくことを決意ししたのでしょう。

レオとジョージーがベルリンを出て、田舎へと向かう途中の食堂で映画は終わりますが、その行き先はおそらくナディーラの母親のところだったのかもしれません。それは、ナディーラが本来思い描いていた、レオ・ナディーラ・ジョージーの3人で、ナディーラの母親の実家で幸せに暮らす、という夢を引き継ごうとしていたのかもしれません。

ダンカン・ジョーンズ監督は、本作に関連したインタビューの中で、本作の一つのテーマとして「父親になる」ということを挙げています。ちょうど、監督に取って4作目となる本作を撮影していた時、子供を授かり、現在進行形にて父親になるという経験をしていた監督自身の体験とぴったり重なる部分だったため、エンディングは特に力の入った描写だったように感じました。

6.まとめ

Netflix未加入の人には、これ1本見るために加入してみては?とおすすめすることは流石にないですが、それでも、ブレードランナーや一連の近未来のサイバーパンクな雰囲気の作品が好きな映画ファンには、それなりに楽しめるフィルム・ノワール系作品だと思います。1度観ただけじゃ何がなんだか?っていう説明が足りない感じの語り口も、何度も気軽に見直せるNeflix向けの映画だなぁと思いました。

それではまた。
かるび

映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

映画「月にとらわれた男」

ダンカン・ジョーンズ監督の出世作。低予算映画ながら、アイデアが詰まったワン・シチュエーションにおいて、主人公の葛藤や人工知能ロボットとの絆、家族・地球への郷愁など、心情描写が非常に秀逸だった作品。宇宙空間で一人(または二人)きり・・・という設定は過去の名作から最新作まで色々ありますが、本作はその中でもかなり優れた作品だと思います。

映画「ブレードランナー」

本作が強く世界観やストーリー構造を準拠する元作品。本作「MUTE ミュート」の世界観が気に入った人でまだ観てない人がいるならば、まずは黙ってチェックしてみて下さい!不滅の金字塔的作品です。こちらを観終わったら、2017年に公開された続編「ブレードランナー2049」も続けてどうぞ!

ダンカン・ジョーンズ監督作品は、まとめてU-NEXTで!

本作はNetflixでしか見ることができませんが、ダンカン・ジョーンズ監督の過去作の配信に関しては、U-NEXTがNo.1でした。代表作「月に囚われた男」「ミッション:8ミニッツ」の両作品が、ともに無料で楽しめるのはU-NEXTだけ!

f:id:hisatsugu79:20180330175234j:plain

本作「MUTE」を見て、もう少し同監督の過去作を見てみたいなと思った人は、1つずつDVDを買うよりも、まずはビデオ・オンデマンドで時間とお金を節約してみてはいかがでしょうか。

U-NEXTに加入すると、今ならこんな特典がついてきます。気軽に試して、配信の良さをぜひ味わってみてくださいね。

★最初の31日間は無料!
加入後、最初の31日間は会員料金が無料です。見放題以外の有料作品も、初月付与される600ポイントを使えば、2本まで無料で見れます。さらに、毎月自動的に1200ポイント付与されるため、月額料金も、実質上業界最安クラスの800円なのですよね。国内最大120,000点の品揃えは映画ファンにはたまりません!

★100誌以上の雑誌も読み放題!
DVDだけでなく、雑誌まで読み放題サービスがついてくるんですね。僕も、映画以外にもサブカル、マンガ、エンタメ系の情報はU-NEXTで無料購読できる雑誌から仕入れています!毎月付与される1200ポイントで、電子書籍を購入することもできますよ!

U-NEXTへのお試し申込リンク
U-NEXTを無料で試す!