あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と人事労務系の記事が多め。

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二人の友情が泣ける!「マティスとルオー展」が予想外に良くて大満足だった!

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(汐留駅地下街の巨大ポスター!)

かるび(@karub_imalive)です。

パナソニック汐留ミュージアムで開催中の、「マティスとルオー」展に行ってきました。二人の巨匠の40年以上にわたる心温まる交流をベースに、彼ら2人の作風の変化や、書簡のやりとりなどを時系列で展示していく渋い展覧会です。

展示スペースがそれほど広くないので、正直あまり期待せずに気楽に行ってきたのですが、ほぼ限界まで作品を詰め込んで、約150点もの作品数が展示されていたこと、そして何より二人の強い絆が感じられる「泣ける」直筆書簡は非常に印象に残りました。

以下、感想として展覧会レビューを書いてみたいと思います。

1.混雑状況と所要時間目安

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僕が行ってきたのは、平日の13時台。いつもは割と閑散としていることも多いパナソニック汐留ミュージアムですが、この日はかなりのお客さんが入っていました。

展示スペースが狭い分、土日は結構息苦しい時間帯があるかもしれません。

そうそう、この美術館の特徴は、汐留の高層ビル群の真っ只中にあるため、やたらと休憩中サボり中のサラリーマンが目立つこと!今回は特に多かったです(笑)

僕も、以前仕事がピンチでどうしようもなかった時、平日昼間に、外回りのついでにフラッと美術館やクラシックのコンサートに入って、フェルメールやベートーベンのお世話になったこともあるので非常に良く分かる!

そういう意味で、パナソニック汐留ミュージアムはサラリーマンの憩いの場として素晴らしい機能を持っているのです^_^

2.2017年はペアの展示会が非常に目立つ

「◯◯展」と、誰か一人の作家を単独でフィーチャーして回顧展や個展をやるのは一般的ですが、「◯◯と△△展」という2人の同時代の巨匠を取り上げる展覧会はそこまで多くはありません。

が、2017年は、オールドマスター達を「2人セット」で取り上げて、彼らの作品の関係性や交流に焦点を当てた展覧会が偶然にも結構重なりました。ざっと挙げてみると・・・


・マティスとルオー展(開催中/パナソニック汐留)

・ゴッホとゴーギャン展(開催中/愛知県立美術館)
・ピカソとシャガール展(3月/ポーラ美術館)
・レオナルド×ミケランジェロ展(6月/三菱一号館)

4つもありますね。そして、マティスとルオー以外の組み合わせは、必ずしも凄い仲が良かったというわけではないのが面白いところ。

いつの時代も、その時代のトッププレーヤーたちは、お互いのことを意識し、仲が良い・悪いにかかわらず、お互いにライバルとして影響を与えあって高めあっていたからこそ、そこに生まれたドラマやストーリーが面白くなっていくのでしょうね。

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3.展覧会の見どころは?

3-1.マティスとルオーの作品の変遷がよくわかる

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(引用:マティス(左)/Wikipediaより)
(引用:ルオー(右)/Fondation Georges Rouault

展覧会でも紹介されていますが、マティス、ルオーともに、20世紀を代表するフランス出身の芸術家です。彼らが最初に出会ったのは、共に20代前半、エコール・デ・ボザール(パリ国立美術学校)でした。共に、象徴主義の代表的な作家、ギュスターヴ・モローの下で学び、特にルオーは「レンブラントの再来」と呼ばれたほど学生時代は出来が良かったようです。

学校卒業後、若い時は共に1905年のアンデパンダン展に出展し、フォーヴィスムの一派として一括りに分類された時代がありましたが、やがて二人は独自の道を歩んでいきました。

ルオー「秋の夜景」(1952)
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(引用:Fondation Georges Rouaultより)

ルオーは、緑・黒・赤・青・黄と、色を絞り込み、醜さの中に美を見出すような大胆なモチーフや構図で個性を確立し、最後は油絵の具を厚塗りした宗教画にたどり着きました。その独自の作風と評判から、「20世紀最大の宗教画家」と賞賛されるようになります。

マティス「窓辺の女」(1920)
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(引用:展覧会パンフPDFより)

マティスは、遠近法を敢えて無視した平坦な画面に自由な色彩を表現して「色彩の魔術師」と呼ばれるようになりました。その後、体力的に絵画を描けなくなると、晩年にはインスピレーションを即興で表現し、自身の作風を煮詰めてデフォルメしたデザイン的な「切り絵」で新境地を開拓していきます。

20世紀は、美術史の中で最も混沌として流行の流行り廃りも早かった時代ですが、もちろん二人もそんな中でかなり作風を変化させていきました。そんな二人の作品を、学生時代~晩年まで、一気に時系列でチェックできる展覧会です。

多作で、自館のコレクションが充実しているルオーはともかく、マティスは少ないだろうなぁと思っていたら、結構な数のマティス作品が集結していたのは驚きでした。その数、40点以上。国内の各美術館から結構持ってきています。

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3-2.マティスとルオーの心温まる直筆の手紙が泣ける!

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上記でも見たとおり、同時代の巨匠たちは、強い個性や作風へのこだわりなどもあり、必ずしも絶対的に仲が良いわけではありません。しかし、マティスとルオーだけは、その作風は正反対と言っていいほど大きく違うにもかかわらず、出会った頃から亡くなるまで、終始お互いへの深いリスペクトに溢れた親密な関係でした。

それがわかったのは、実は最近のことなのです。2006年、ルオー財団が未整理だった資料を分類調査していたところ、マティスからルオーに当てた書簡が資料の山の中から大量に見つかりました。

手紙のやりとりは、二人の師、キュスターヴ・モローが死去して、お互い独立して画業を始めた1906年からスタートしており、マティスが亡くなる1953年まで、実に47年間にわたって続きました。

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(引用:InternetMuseum - YouTubeより)

展覧会では、二人の間で交わされた書簡が沢山展示されていますが、特に第2次大戦の厳しい時代から、亡くなるまでのエピソードが泣けます。詳しくは会場でじっくり見てほしいのですが、例えばこんなやり取りがありました。

・第二次大戦中、ナチスドイツに子供2人を捕虜に取られ、手持ちの作品も強奪されて生活や画業に困窮していたルオーに対して、マティスが油絵で使う貴重なアマニ油を送り、元気づけた手紙。(しかも、この時マティスは体調も悪く、マティスの子供もまたナチスの捕虜になっていた!

・マティスが亡くなる直前、ルオーは南仏で病床にあったマティスを訪ねました。訪問後お互い送りあった書簡からは、ルオーはマティスの体力を気遣い、当初15分程で面会を切り上げる予定だったが、マティスが引き止めて面会が1時間ほどに延びたこと、二人が美術学校時代の昔話に花を咲かせたことが書かれています。お互い、これが最後の訪問になることを予感していたのか、特に最後のやり取りではお互いへの気遣い、親愛の情に溢れた文面でした。その半年後、マティスは亡くなり、これが最後の書簡のやり取りになりました。

20世紀美術の最先端で活躍した巨匠2人の熱い友情と、お互いへの深い思いやりが感じられる素晴らしいエピソードでした、、

3-3.雑誌への寄稿や、物語の挿絵などの展示が充実

19世紀頃までの西洋絵画の巨匠たちの作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチのようなバケモノクラスの一部の天才は除き、主に「絵画」や「彫刻」という形で残されてきました。しかし、20世紀に入って雑誌や書籍など出版物が広く流通するようになると、画家たちは絵画以外に「出版物」に関わる様々な作品を残していきます。

今回の展覧会では、後半部分で、二人が実際に手掛けた雑誌への寄稿作品、物語や詩集への挿絵などが非常に充実しており、20世紀の画家たちは様々なフィールドで活躍していたのだな、と改めて実感しました。

特に、第二次大戦下、ギリシャ出身の出版人、テリアードが制作し、「世界一美しい」と讃えられた美術誌「ヴァルヴ」の表紙を何度も飾ったマティスの切り絵や、ルオーが15年かけてようやく出版までこぎつけた詩画集「気晴らし」の原画15枚は見どころです。

マティスが表紙を手掛けた「ヴァルヴ」f:id:hisatsugu79:20170126150854j:plainf:id:hisatsugu79:20170126150934j:plain
(上記2枚引用:InternetMuseum - YouTubeより)

ルオー「気晴らし」より原画集f:id:hisatsugu79:20170126152224j:plain
(引用:InternetMuseum - YouTubeより)

4.その他、気に入った作品について

4-1.ロザリオ礼拝堂のビデオ動画展示

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(引用:http://www.liceolocarno.ch/Liceo_di_Locarno/materie/storia_arte/matisse/opere/collegamenti_opere_analizzate/chapel_of_the_rosary/chapel_of_the_rosary.htm

晩年に南仏に移住して創作活動を続けていたマティスが最後に手掛けた作品が、有名な南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂の壁画やステンドグラスなどの設計でした。実に4年もかかって完成させた大仕事でした。今や南仏の名物観光コースにもなっているこの礼拝堂ですが、本展では出口直前に、その内部でのマティスの作品をビデオ動画として展示しています。

初めて動画で中の様子を見たのですが、ステンドグラスのデザインを筆頭に、「あぁ、これはどう見てもマティスだな」とわかる強い個性が感じられる礼拝堂でした。

4-2.マティスの切り絵シリーズ

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(引用:InternetMuseum - YouTubeより)

うらわ美術館、宇都宮美術館にて所蔵されている、マティス晩年の切り絵シリーズ「ジャズ」がまとめて展示されています。その題名の通り、即興でインスピレーションの赴くまま制作したであろう作品ですが、どこからどうみてもマティスなんですよね。

アートにはまって最初の頃は、この切絵の凄さがわからなかったのですが、やっとちょっとわかってきたような気がします。不思議な魅力に溢れた切り絵集、見れてよかった。

4-3.常設展示コーナーもちゃんとあります

毎回、パナソニック汐留ミュージアムと出光美術館の小さなルオーの常設コーナーは楽しみにしているのですが、今回もちゃんと常設コーナーはいつも通り見れます。キャリア中期の新規収蔵品もありました。

4-4.記念写真コーナーも!

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出口のところに、アトリエで作業中のルオー晩年の写真と一緒に記念写真を撮れるコーナーが設置されています。特に、パナソニック汐留ミュージアムは飲み食いをするカフェなどのスペースがないので、記憶の「アンカー」として展覧会を覚えておくにはこういう試みは凄く大事だと思います。

願わくば、何点かだけでもいいので、著作権の切れているルオーの自館所蔵品を撮影させたり、オーディオガイドをつけてくれるとなお良かったかな・・・。

5.まとめ

展覧会では直接触れられていないのですが、ルオーは、画家としてデビューする前は、ステンドグラスの職人でした。マティスは画家として大成したあと、キャリア最後の大仕事として南仏のロザリオ大聖堂の設計を行い、ステンドグラスを手がけました。

彼らの画風や志向するスタイルは全く違っていましたが、奇しくも彼らのキャリアの最初と最後で同じ「ステンドグラス」の仕事を手がけたとは、面白い共通点だな、と思います。

本展覧会は、20世紀の巨匠である、マティスとルオーの2人の作品を沢山堪能できるだけでなく、彼らの間で紡がれた様々なストーリーも合わせて楽しむことができる展覧会です。作品の数も多くて見どころ満載ですし、勉強にもなる良い展覧会でした。
それではまた。
かるび

展覧会をもっと楽しむための関連書籍など

ルオーの未整理の資料群の中から、莫大な量のマティスとの書簡のやり取りを最初に見つけた、パリ市立美術館で学芸員を努めるジャクリーヌ・マンク氏がまとめたマティスとルオーの往復書簡集。日本での展覧会開催に合わせて、パナソニック汐留ミュージアムの監修の下、日本語訳されました。

これは凄い。ちょっと高いけど、ある意味図録よりも貴重なマニア必見の資料かも。これが普通にAmazonで売っているのですから、いい時代になりましたね~。

展覧会開催情報

「マティスとルオー展」は、東京展の後、あべのハルカス美術館に巡回予定。

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◯開催美術館・所在地
パナソニック汐留ミュージアム

〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック 東京汐留ビル4階
◯最寄り駅
JR新橋駅「烏森口」「汐留口」「銀座口」より徒歩約8分

東京メトロ銀座線新橋駅「2番出口」より徒歩約6分
都営浅草線新橋駅改札より徒歩約6分
都営大江戸線汐留駅「3・4番出口」より徒歩約5分
ゆりかもめ新橋駅より徒歩約6分
◯開館時間・休館日
午前10時より午後6時まで

1月18日、25日/ 2月1日、8日、15日
◯公式HP
http://panasonic.co.jp/es/museum/