あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ】映画『聖の青春』/鬼気迫る対局シーンが鳥肌モノの名作!【感想】

【2017年1月11日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。

没後10年以上が経過するも、未だに事あるごとに天才個性派棋士としてファンの間で語り継がれる村山聖。その村山聖のドキュメンタリーノンフィクションを元に映画化された映画「聖の青春」が11月19日に封切となりました。

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早速初日に気合を入れてみてきましたので、以下感想を書いてみたいと思います。後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご容赦下さい。

1.映画の基本情報

<オフィシャル予告動画>

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【監督】森義隆(『宇宙兄弟』
【脚本】向井康介(『ピースオブケイク』他)
【原作】大崎善生「聖の青春」

また、KADOKAWAの公式サイトでは、松山ケンイチや東出昌大、そして羽生名人や、村山聖の師匠、森信雄のインタビューなどが見れます。非常に見応えのある動画でしたので、是非お時間のある方はどうぞ。

<特別映像・ストーリー編(約9分)>

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<特別映像・インタビュー編(約9分)>

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2.主要登場人物とキャスト

松山ケンイチ、リリー・フランキーなど、力のある役者を揃えました。キャストの演技は非常に優秀でした。危なっかしいところもある東出昌大も今作は素晴らしい出来。

村山聖(松山ケンイチ)
主演の村山聖役には、天才肌の松山ケンイチ抜擢されました。今回の収録のために、短期間に20kgも増量して臨んだ作品。先週たまたま映画「デスノートLight up the worLd」で「L」役として使われた古い映像を見ましたが、とても同じ人間とは思えませんでした、、、。さすが「憑依系」と言われるだけあります。

羽生善治(東出昌大)
良くも悪くも、キムタクや能年玲奈のように、本人の「地」がどのキャラにも出てしまう東出昌大ですが、羽生名人の持つ純粋培養されたような天才肌の持つ素朴さと上品さがよく演じられています。対局中のの仕草や声色、クセなどは本当によく研究しつくされていると感心しました。

森信雄(リリー・フランキー)
村山聖の師匠、森信雄にはリリー・フランキーが。少し世間離れしたゆるっとしたオッサン役がぴったりでした。いつもたんたんと聖を見守るあたたかい眼差しが良かった。
村山母(竹下景子)
健康体で産み育てることができなかった罪悪感を背負い、心配性な母親像が良く表現されていました。ベテランの味。
村山父(北見敏之)
母親に比べるとやや弱めでしたが、何気ない距離感で息子を見守る良き父親像を控えめに演じられていたと思います。
古本屋の店員(新木優子)
少女漫画と推理小説に目がない聖が大阪時代に通いつめていた古本屋の店員役としてチョイ役で出演。誰も注目してない役でしたが、妙に存在感を感じた。2017年1月、映画「僕らのごはんは明日で待ってる」でヒロイン役も務める成長株の女優。

3.映画の見どころ(ネタバレ無し)

3-1.松山ケンイチの鬼気迫る演技

試写会を見た、村山聖の師匠、森信雄をして、「村山そのものだった。10数年ぶりに村山に出会ったような錯覚になった」と言わしめるほど、村山聖が乗り移ったかのような鬼気迫る演技が素晴らしかったです。少し奥手でピュアな性格、酒癖の悪さや、対局中の盤面に没入する表情など、熱演でした。かわいくて笑える場面も結構ありますよ。

3-2.東出昌大演じる羽生名人がそっくり!!

先日公開された「デスノートLight up the WorLd」でも主役を務め、賛否両論あったその演技でしたが、今作で演じる羽生名人は、モノマネか!って思うくらいものすごく良く似ていました。対局中のしぐさや目線の置き方、構え方、そして名人らしい上品な立ち振舞いなど、本当によく再現されています。何時間もDVD等の映像で研究した成果が遺憾なく発揮されていました。やればできるじゃん、東出!!

3-3.クライマックスの羽生名人との対局シーン!

実際の村山ー羽生の若い時の対戦シーン(映画には出てきません)f:id:hisatsugu79:20161119173412j:plain

注目したいのは、3度の対決が描かれた村山ー羽生戦。早朝から日が落ちるまで、雪深い東北の旅館で長時間戦ったタイトル戦、日付が変わり、午前1時過ぎまで死闘を演じた二人の最終対局を描いた将棋会館の特別対局室での戦い。

東出、松山双方が当日の棋譜を全て覚え、ノーカットで3時間カメラを回しっぱなしでプロ棋士の実戦対局並みの緊張感がリアルに再現されています。

セリフもなく、将棋盤にたんたんと打ち込むだけのシーンなのですが、タイトル戦の緊張感や熱気が画面のこちらへビンビン伝わってくる熱演でした。

3-4.エンディングで流れる秦基博の主題歌が素晴らしすぎる

感動の余韻が残る中、エンドロールで流される秦基博の主題歌が、青春時代を生き抜いた村山聖の生涯にぴったりフィットする素晴らしい出来です。映画「何者」の中田ヤスタカや、映画「君の名は。」のRADWIMPSも素晴らしかったですが、こちらも素晴らしい出来でした。ここからYoutubeで聴けますので、是非!!

<主題歌「終わりのない空」>

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4.簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)

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自宅を出たけれど、体調が悪くて動けず、路上にうずくまる村山聖(松山ケンイチ)。関西将棋会館での対局の時間が迫っていた。たまたま声をかけてくれた、三谷工業のおじさんの軽トラに載せてもらい、対局室へ肩を担がれて入っていく聖。王将戦での田中6段との対局が始まるのだった。

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対局が無い一日、聖は部屋の中で大好きな少女マンガを読んで過ごす。7段昇段記念パーティがある当日の朝も、迎えに来てくれた同じ森信雄門下の奨励会に所属する江川(染谷将太)から急かされ、ようやくスーツに着替えて出かけるのだった。

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同じ頃、最大のライバルである羽生善治(東出昌大)は、米長邦雄名人を下してとうとう名人位を含め5冠を達成。

そんな羽生と、王将戦の予選で対局した日。師匠の森信雄(リリー・フランキー)が地元の将棋教室で見守る中、対戦がスタートする。その日は、126手で羽生に敗北した。

将棋に負けた翌日は、必ずと行っていいほど疲労と失意から、自宅のアパートで高熱を出して寝込んでしまう聖。幼少の頃から患っているネフローゼの影響である。ネフローゼは、腎機能障害により、タンパク質が尿中に漏れ出す病気である。そのせいで、疲れやすく、体もパンパンに膨れ上がってしまうのだ。

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そんな聖が将棋に初めて出会ったのは、まさにネフローゼで入院中の6才の時である。父、伸一(北見敏之)の買ってきた将棋盤と入門書で一気にルールを覚えると、負けず嫌いの聖は入院中に何度も友達と対戦しながら上達していった。

寝込んでいた聖に、江川と師匠の森が看病に来てくれたが、聖は、森に羽生の側で戦うため、東京へ行く決意を伝える。森は、早速東京での世話役として将棋雑誌のライター、橋口(筒井道隆)を紹介した。

引越作業や生活面を橋口や森、母親に支えてもらいながら、聖は東京の生活に徐々に馴染んでいく。奥手でシャイな聖にも、特に荒崎学(柄本時生)や橘正一郎(安田顕)といった仲間の棋士ができて、狙い通り東京で順当に勝ち星を伸ばしていく聖。

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一方、羽生もキャリアを積み重ね、とうとう将棋界の全てのタイトルを総なめする7冠へと到達するのだった。

順調かに見えた聖だったが、ある日、突然路上で倒れてしまう。医者の診察を受けると、進行性のぼうこうがんと診断されてしまう。その日の対局(橘正一郎)はさすがの聖も体調不良と病気のことで頭が一杯で、感想戦もなしに切り上げてうわのそらで帰宅するのだった。

帰宅した村山は、医師から何度も手術前の検査を促されるも、踏ん切りがつかずに一旦住み慣れた大阪の街へ戻ってくる。この世の名残を惜しむかのように、通い慣れた食堂や古本屋、公園を見て回る聖。そして、その足で関西将棋会館へ向かう。

将棋会館では、兄弟弟子の江川が奨励会の年齢制限ギリギリの崖っぷちとなっていた。明日の一戦に負けると、プロへの道を絶たれるという江川を勇気づける聖。しかし、翌日の対局で、江川は死闘の末敗れ、奨励会の退会が決定してしまう。

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その晩、師匠の森、江川と飲み明かした聖。酔うと酒癖の悪い聖は、店を出ると自暴自棄になって「こんなもの、死んだらなんにもならんのじゃ」とお札を破り捨て、ぐずぐず言う江川に殴り掛かる。死と直面し、残された時間が少ないことを強く自覚し、やり場のない悔しさがにじみ出た夜だった。

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気分転換に北海道旅行から戻ると、聖はいよいよ羽生とのタイトル戦での対決に臨んだ。紋付袴を師匠にあつらえてもらい、戦った大一番は見事に聖の勝利となった。

その晩、関係者の打ち上げを出て、羽生を誘い出し、二人だけで2次会へ出かける聖。羽生と大いに語り、将来の再戦とお互いの健闘を誓い合うのだった。

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タイトル戦が終わり、病院へ行くと、膀胱がんの状態がステージ3Bまで進行しており、前立腺と膀胱を切除しなければ、余命3ヶ月と宣告される聖。手術後は最低1年間復帰できないと聞き、ショックを受ける聖。悩んだ結果、手術を受けて長期休養に入ることになった。

手術は成功し、実家の広島で久しぶりに家族と合流してつかの間の休息を取った聖だったが、回復すると、医師の反対を振り切って棋戦へと復帰していくのだった。

復帰してはじめての棋戦は、羽生名人との対決だった。緊急時に備え、ナースを控室に呼んで特別対局室で深夜まで及んだ熱戦は、聖の痛恨の悪手(6六角)にて決着がつく。その後、すぐにガンが肝臓へ転移して再度の入院を余儀なくされ、今度は懸命の治療もむなしく、29歳で亡くなった。

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聖の弔問には師匠の森を始め、羽生も広島までかけつけてくれた。

聖の死後、追悼記事をまとめる橋口。橋口の所属する将棋雑誌社へ再就職した江川に原稿を託すと、江川は自転車に乗って将棋会館を出ると、そこに聖の気配を感じた。実際は何も見えなかったが、なぜか聖がそこで笑っているような気がしたのだ。(以降エンドロールへ)

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5.映画の感想や、伏線や設定などの解説(※ネタバレ有注意)

棋士として人間としてどう生きたかに焦点を絞った名作

少年のようなピュアな心を保ったまま大人になり、短い29年の生涯を太く生き抜いた聖。映画を見る前から、「亡くなる」ことが前提として制作されたため、体調を崩して、最後に入院してから亡くなるまでのシーンはむしろ簡略化されています。

その代わり、(恐らく自らの余命が長くないことを悟っていたであろう)聖がその生涯を通して「何を大切にして」「どう生き抜いてきたのか」に焦点を絞って描かれていました。結果、それが羽生名人と対決する長時間にわたるタイトル戦の熱戦であり、すべてを将棋をささげた1日1日の生活シーンだったのですよね。

映画のどのシーンを見ても、「泣かせる」ための特別な演出はなく、どちらかというとドキュメンタリー風にたんたんと進んでいくのですが、気がついたら泣かされている、そんな映画でした。

ハイライトは羽生と語り合うシーン

タイトル戦の夜、羽生と旅館を抜け出して、二人でしっぽりと語り合ったシーンが今作のハイライトです。趣味嗜好や性格はまるで違う二人ですが、将棋にかける情熱と目指すものは同じ。

村山「僕たちはどうして将棋をえらんだのでしょうねぇ」
羽生「ただ、私は今日あなたに負けて死にたいほど悔しい」
村山「負けたくない」
羽生「そう、それが全てだと思います」
村山「羽生さんの見ている海はみんなとは違う」
羽生「でも、村山さんとなら一緒にいけるかもしれない。そこはどんな景色なんでしょうね。いつか、一緒に行きましょう」

お互い内向的で静かな棋士なので、決して熱いトークではありません。寒い冬に、若くして将棋をきわめつくした二人が、淡々と感想戦のように語り、静かに共感し合うシーンは、本当に見ごたえがありました。

衣食住は完全に将棋の二の次だった村山の私生活は、時にコミカルに映る

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(引用:Yahoo知恵袋より)

写真のように、将棋以外の衣食住全般について、完全に無頓着だった村山。銀行の通帳は記者に預け、もらってきた対局料はゴミ同然で床に投げ捨てられ、そして酔っ払うと札束を破りだすエピソードは強烈でした。

また、収入がアップしても少女漫画とゴミにあふれた汚部屋に住み続け、フロにも入らない。タイトル戦になるまで紋付袴すら持っていない(師匠にあつらえてもらった)など、個性的な逸話に溢れています。

とにかく将棋以外のことはまったく眼中にない村山の日常生活は、時としてコミカルでマンガチックでもあります。コメディ映画でもないのに映画館で頻繁に笑いが起きていました。おもしろエピソードは、原作からほぼ全部盛り込まれたのではないかと思います。片時も目が離せない映画でした。

その反面、原作からのエピソードを詰めこみすぎた嫌いもある

喜怒哀楽、様々な感情を呼び起こすエピソードに事欠かない村山ですが、映画内でも原作からのエピソードが大盛りになっています。村山が冬場に北海道へ一人旅をしたシーンやお気に入りの更科食堂のシーンなど、数秒しかなくて原作を読んでいなければ何のことだかわかりづらい場面もありました。

特に、原作を読んでいないお客さんは、映像の意味を考えているうちに、次のシーンに飛んでしまい、やや集中力が散漫にさせられる場面も何箇所かあったかなと思います。もう少し盛り込むエピソードを削っても充分にフックのあるストーリーラインはキープできたはずなので、ここは少し惜しい感じ。

6.細かい設定や伏線などの解説

映画中、駆け足で通り過ぎてしまった部分などもあるため、ここではいくつか詳細な設定や伏線を補足しておきたいと思います。

冒頭で聖を運んだ軽トラのおじさんは誰なのか?

近所の「三谷工業」という電気工事屋のおじさんです。家を出たけれど、動けなくなっていた聖を、何度か聖に頼まれて将棋会館まで送ってあげた縁から、毎朝9時頃に聖のアパート(前田アパート)の前の様子を毎日伺ってくれるようになったエピソードがあります。このおじさんのおかげで、聖は何度か不戦敗を逃れたことがあったそうです。

映画中での羽生との対局は実際にあったもの?そのモデルは?

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(引用:https://www.youtube.com/watch?v=F_V0pp5_Euw

 羽生名人との雪国でのタイトル戦の対局は、架空の棋戦の対局です。(棋譜自体は多分実践譜から持ってきている)村山聖がタイトル戦を戦ったのは、1992年の王将戦7番勝負が唯一の機会で、その時は谷川浩司9段に0-4でストレート負けしています。

映画終盤での亡くなる前の対局は、1998年のNHK杯決勝です。終盤秒読み将棋となった時、羽生は攻め切れ寸前。あと1手受けきれば、勝利を不動のものにできた瞬間、村山の痛恨の角打ち(6六角打)で形成が一気に逆転。そのまま数手後に村山投了となりました。
痛恨の角打ちのシーン
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(引用:https://www.youtube.com/watch?v=F_V0pp5_Euw

NHK杯は準優勝となり、これが最後の村山ー羽生戦となりました。村山から見て、対羽生善治は生涯で6勝8敗(うち1不戦敗)でした。大名人と互角の勝負だったわけですね。

何度か、一瞬だけ写った食堂は?

関西での奨励会時代から、プロ棋士になりたての頃まで、聖がよく通っていた更科食堂です。ネフローゼのため、病院食や、母親が作る料理は薄味で味気ないものだったので、たまに行く更科食堂では、塩気の利いた焼き魚定食を好んで注文していたようです。

脇役(荒崎、橘)のモデルとなった棋士達は?

荒崎学→先崎学9段
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(引用:日本将棋連盟 棋士データベースより)

先崎学9段は、同じ村山世代で、羽生名人や森内俊之、佐藤康光らとともに「チャイルドブランド」と呼ばれ、若手時代は大活躍しました。「新人類」と呼ばれた同世代の中では、旧世代以上に飲む打つ買うなんでもやる古風な面もある、個性的な棋士です。

ちなみに、映画中で酔った聖が荒崎の車内で吐きますが、実際は、佐藤康光9段の所有する高級外車の中で吐いてしまった実話に基づいているそうです。

橘正一郎→滝誠一郎7段

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(引用:日本将棋連盟 棋士データベースより)

聖が東京に本拠地を移してから、原作の筆者、大崎善生とともに甥弟子にあたる聖の面倒をよく見たと言われる滝誠一郎。面倒見がよく、親分肌でもあるとのことです。将棋の腕前は・・・まぁまぁといったところでしょうか。

原作との違い(谷川9段が原作では聖の目標となっている)

今作は、大崎善生の原作「聖の青春」を忠実に再現していますが、一番大きな変更点は、原作での最大のライバルは羽生名人ではなく、谷川9段だったことです。

現在はB級1組へと陥落し、無冠となった谷川9段ですが、村山聖がプロ棋士を目指して奨励会入りした当時は、今の羽生名人のような立ち位置にいました。名人位をはじめタイトル戦の常連だった「雲の上の人」であり、当時の将棋少年たちのあこがれでした。

「谷川を倒すには、いまいくしかないんじゃ」と言って、奨励会入りをした村山でしたが、あこがれの存在だった谷川9段には当初なかなか勝てなかったようです。

7.まとめ

今年見た実写映画の中では、一番深い感動と満足感を与えてくれた一作。元々将棋が好きで、原作や周辺作品を読み込んでいたこともありますが、そうでない人でも充分に楽しめる作品だと思います。

彼の生きざまから、人それぞれ受け取るものは違うと思いますが、幅広い年齢の対象者におすすめできる珠玉の良作でした。主役たちの熱演に心打たれますよ!

それではまた。
かるび

8.映画を楽しむための小説やガイドなど

8-1.大崎善生の原作「聖の青春」絶対おすすめ!

映画では表現しきれなかった聖の幼少時代のエピソードや、プロになってからのさらなる心打たれるストーリーが満載のすばらしいドキュメンタリーです。それまで将棋ライターとしてずっと雑誌編集等に関わってきた大崎善生氏は、2001年に出版した本作品が絶賛され、文学賞を受賞し、小説家としてデビューを果たしました。原作がまだの人は絶対オススメです!

8-2.大崎善生の珠玉のノンフィクション「将棋の子」

「聖の青春」のサブストーリーで、奨励会員の江川は、年齢制限で3段リーグを勝ち抜けず、あと一歩というところで敢えなく強制退会となり、プロ棋士への夢を絶たれてしまいました。将棋でもプロ棋士になる前の若手達が所属する「奨励会」に密着したドキュメンタリーには非常に心打つ迫真のドラマがあります。

プロになれるのは年間でたったの4人。狭き門を目指して、村山聖同様青春時代を賭け、心を締め付けるような仲間と切磋琢磨し、年齢制限とも戦った10人の奨励会員達を追ったノンフィクションです。これは超おすすめ!

8-3.マンガ「聖 -天才・羽生が恐れた男-」

「聖の青春」をベースに、村山聖の半生を描いたマンガ作品。こちらも、映画同様羽生善治を終生のライバルとして緊迫感ある将棋風景を描いています。将棋自体への解説も結構しっかりしているので、読み物だけでなく、勉強にもなるかも。おすすめ!

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8-4.将棋ソフトとの戦いをテーマと迫真の将棋ドキュメンタリー「不屈の棋士」

ドワンゴ主催の将棋ソフトNo.1とプロ棋士の五番対決「叡王戦」が広く認知されるなど、将棋界でも現在、人工知能搭載の将棋ソフト全盛時代を迎えつつあります。

本作は、将棋界の権威や構造を揺るがしかねない将棋ソフトに対してトップ棋士がどう考え、2016年現在どのように戦っているのか、丹念にインタビューで本音を聞き出した労作。読み応えがありました。下記で、レビュー記事も別途書いたのでもし良ければ覗いてみて下さい!

【レビュー記事はこちら】
書評:「不屈の棋士」は人工知能に追い詰められ苦闘するプロ棋士達をリアルに描く傑作でした!

8-5.その他おすすめの将棋マンガ!

2012年頃から現在に至るまで、静かに広がりつつある将棋ブームの中、「知識ゼロ」でも楽しめる将棋マンガが多数出版されています。先日、おすすめの将棋マンガについて記事を書いたので、もし良ければ覗いてみてくださいね。

【レビュー記事はこちら】
知識ゼロでも心から楽しめる、絶対面白いおすすめの将棋マンガ15選!