あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】「スプリット」感想・レビューとあらすじ徹底解説!/シャマラン監督完全復活!超心理サスペンス傑作映画!

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かるび(@karub_imalive)です。

5月12日に公開となった、M・ナイト・シャマラン監督の待望の新作「スプリット」を見てきました。シャマラン監督の鮮烈な復活を強く印象づけた秀作でした!面白かった!

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「スプリット」の基本情報

<「スプリット」公式予告動画>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】M・ナイト・シャマラン(「シックス・センス」「サイン」他)
【配給】東宝東和
【時間】117分

緊迫の心理サスペンスに叙情的な親子、恋人同士の絆を描き、ラスト結末のどんでん返しが大評判となった「シックス・センス」(1999)で世界的に有名なハリウッド映画監督となったM・ナイト・シャマラン監督の最新作。

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(Twitter/シャマラン監督の来日時ツイートより)

「アフター・アース」「エアベンダー」と、シャマラン監督らしくない不振の時期を乗り越えて、初心に帰ったかのようなオリジナル脚本での超心理サスペンスもので勝負をかけた今作。

スマッシュ・ヒットした前作「ヴィジット」のスタッフが再結集し、総製作費900万ドルと低予算のインディペンデント映画ながら、余計な干渉抜きで作家性を前面に出して制作された本作は、すでに世界中で3億ドルを超える興収を叩き出しています。映画成績だけ見ても、まさに大復活ですね!

2.映画「スプリット」の 主要登場人物とキャスト

本映画は、主演2人の素晴らしい演技、特にジェームズ・マカヴォイの怪演につきます。低予算映画らしく、登場人物もぐっと少なめな分、主演のカメレオンのように変化する味わい深い演技を堪能してください!

デニス/パトリシア/ヘドウィグ/ビースト/バリー/オーウェル/ジェイド/ケビン・ウェンデル・クラム(ジェームズ・マカヴォイ)f:id:hisatsugu79:20170515192931j:plain

「X-MEN」新シリーズでの活躍や、演劇界でも実力を評価され、その演技力は折り紙つきのジェームズ・マカヴォイ。そんな彼でさえ、「最後の方は今誰を演じているのか、自分でもわからなくなってしまったよ(笑)」と語るほど、沢山の人格を短時間で演じ分けた本作。作品の成功や好評価は、彼の演技力によるところが非常に大きいはずです。

ケイシー(アニヤ・テイラー=ジョイ)f:id:hisatsugu79:20170515193104j:plain

ハリウッド期待の新星としてデビュー作「ウィッチ」(2017.7公開予定)で主演を務め、話題になったほか、2017年は「Thoroughbred」「Marrowbone」が待機中。アジア系でもなく、黒髪のロングヘアーの若手女優。独特の存在感は将来大物になる予感十分です。童顔ながらスタイル抜群なのも良かった^_^

クレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)f:id:hisatsugu79:20170515193046j:plain

現在公開中の「スウィート17モンスター」他、「ブロンズ~私の銅メダル人生~」など、16歳でハリウッドデビューを果たした早熟の演技派。今作では主演が引き立つ演出もあり、それほど目立ちませんでしたが、演技力は確かでした。「Columbus」が現在待機中で、これからますます楽しみな俳優です。

マルシア(ジェシカ・スーラ)f:id:hisatsugu79:20170515193021j:plain

主にTVドラマで活躍中のイギリス出身の俳優。出世作は、「スキンズ」(第5、第6シーズン)だそうです。ハリウッド映画ではこれが初めてのキャスト抜擢となりました。

Drカレン・フレッチャー(ベティ・バックリー)
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2012年には演劇界で栄誉の殿堂入りを果たした米演劇界の超大物。映画では「私の中のもうひとりの私」など、1980年代か、それ以前での出演作多数。2010年代は、シャマラン監督作品「ハプニング」と今作の出演。超ベテランですが、役作りにあたっては、この歳になっても専門医に色々ヒアリングをしに行くなど、意欲的なところもあります。ケビンとのカウンセリングシーンはちょっとした心理戦っぽくて、意外なみどころでした。

3.ラスト結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)

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唐突に起こった女子高生3人の誘拐事件

その日は、クレアの誕生日パーティが華やかに開かれていた。親友のマルシアはもちろん、普段は絶対誘わないようなクラスのトラブルメイカー、ケイシーまでほぼ全員を招待したパーティが終わると、クレアの父はマルシア、クレア、ケイシーを車で自宅まで送ろうと申し出た。

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3人が乗り込むと、クレアの父の代わりに、見知らぬ男(ケビン)が運転席に乗り込んできた。男は、催涙ガスで3人を眠らせて誘拐したのだ。

ケイシーが次に目を覚ましたのは、窓のない見知らぬ地下の部屋の中だった。マルシア、クレアらと共に誘拐・監禁されていることを理解した。まもなく、ケビンが部屋に入ってきて、マルシアを連れ出そうとしたが、マルシアは、ケイシーのとっさのアドバイスで小便をわざと漏らしたので、潔癖症(であろうと思われた)ケビンはマルシアを再び部屋の中へ追い払った。

クレアは3人で男に立ち向かって戦おうと主張したが、冷静なケイシーは注意深く様子を見て、状況を把握するのが先だと言って、その提案には乗らなかった。クレアは、昔父や叔父と鹿狩りに行き、狩りの基本的な考え方を教わったシーンを思い出していた。

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一方、セラピストのカレン・フレッチャー博士は、自宅のリビングのTVで3人の少女が誘拐されたニュースを見ていた。その時、カレンはバリーという男からの「緊急」と書かれたメールを受信した。カレンは、幼少時からDID(解離性同一性障害)、つまり多重人格者であるケビンを研究対象としており、同時にカウンセリングも担当していた。そして、バリーという人格は、ケビンの持つ23の人格のうちのメイン人格だったのだ。

明らかになってきた多重人格の犯人ケビンの特異性

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監禁部屋の中では、クレアたちは隣の部屋に女性らしき気配を感じていた。彼女たちは、この女性に向かって助けを求めると、部屋に表れたのは、ケビンの持つ女性人格、パトリシアだった。彼は、ハイヒールとスカートで女装してイギリス女性になりきっていた。パトリシアは、なぜ3人がここに監禁されているのか、その理由は間もなく明かされる、と言った。

カレンは、その日スカイプにて学会のシンポジウムに遠隔参加していた。カレンは、多重人格者の中の人格は、「照明」と呼ぶ権利を得て表に出てくること、各人格が違うと、彼らのパーソナリティによって、肉体も物理的に変化しうることを学会で強調した。

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その後、クレアたちはケビンの中の「ヘドウィグ」という9歳の男の子の人格にも遭遇した。ケイシーは、「ヘドウィグ」に「ここから出して欲しい」と懇願したが、ヘドウィグは、パトリシアとデニス(冒頭で誘拐を担当した男性人格)が怒るからダメだ、と断って部屋を出ていった。

ヘドウィグとの会話の中で、最近部屋を修繕したことを知った3人は、壁や天井を探り始めた。すると、クレアが天井の壁が薄くなっていることを発見した。ケイシーは軽挙しないよう諌めたが、クレアは天井を壊し始めた。すると、そこへ「デニス」が戻ってきた。「デニス」がケイシー、マルシアの妨害を振り切り、部屋へ入ってきたときには、クレアは天井裏へと逃げ出した。しかし、逃げ出した先で隠れたロッカーを見破られてしまい、「デニス」に別の部屋に一人監禁されてしまった。

24番目の人格「ビースト」の存在

その日、ケビンとのセッションに臨んだカレンは、話し相手がいつもの代表人格「バリー」と雰囲気は似ているが、どこか違うところを感じ、彼がデニスであることを見破った。彼女の深い共感と信頼に打ち解けた「デニス」は、「バリー」のマネを辞め、彼女に24番目の人格「ビースト」の存在を打ち明けた。カレンは、24番目の人格については、思い込みである、と否定的だった。

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ケビンは監禁部屋へ戻ると、「パトリシア」としてマルシアとケイシーに食事を与えた。「パトリシア」は、二人を監禁部屋から出してサンドイッチを振る舞ったが、パトリシアが後ろを向いている時、マルシアが椅子で殴りつけ、その隙に逃げ出そうとした。しかし、マルシアも捕まってしまい、別の部屋に監禁されてしまった。

一人になったケイシーに、今度は「ヘドウィグ」になったケビンが現れて、ケイシーにキスをしていいか迫った。ケイシーがこわごわ受け入れると、「ヘドウィグ」は気を許したのかケイシーに乗せられて自室へ連れていき、そこでカニエ・ウェストにあわせて踊りだした。ケビンの部屋に脱出できる窓がなく、落胆していたケイシーを見て、逃げ出そうとしているのを悟った「ヘドウィグ」は怒り出した。

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ケイシーは、部屋においてあった無線のトランシーバーを掴み、外部へ助けを求めたが、そこで2人は取っ組み合いになった。ケイシーは最終的に「ヘドウィグ」に抑え込まれ、監禁部屋へと連れ戻された。ケイシーは、狩りに行った日、初めて叔父に性的暴行を受けたことを思い出していた。

前回のセッションで異変を感じ取ったカレンは、直接ケビンの家へと行った。デニスとして出迎えを受けたカレンは、ケビンの家で急遽セッションを行うことにした。デニスは、引き続き24番目の人格「ビースト」について語り、現在は「群れ」と呼ばれる主人格(デニス、パトリシア、ヘドウィグ、バリー)が交代で「ビースト」が表れるのを待っていると語った。

ここで、初めて恐怖を感じたカレンは、セッションを中断し、トイレに行く途中で監禁されているクレアを発見した。すると、後ろから追いついてきたデニスに催涙スプレーで眠らされてしまった。

「ビースト」の覚醒と対決

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その後、「デニス」は街へ出ていき、花屋で花束を購入して、無人の列車が停泊する駅のプラットフォームに花束を手向けて祈ると、その無人列車に乗り込んだ。そこで、デニスは肉体的にも精神的にも怪物のような24番目の人格「ビースト」に変身した。変身を終えると、ビーストは上半身裸のまま、野生の獣のように一目散にケビンの自宅へと駆け戻っていった。

ケビンが不在になると、ケイシーは、床で拾ったネジを使って、錠前を外して、建物の外に出るためのカギを探し回った。インターネットは不通だったが、PCのデスクトップにはケビンの持つ23の人格が残した動画メッセージが残されていた。彼女は、歴史オタクとみられる「オーウェル」や、糖尿病の症状を持つ「ジェイド」などのファイルを見つけた。

「ビースト」がケビンの家に戻ると、意識が戻りかけたカレンが、書き置きを残していた。「ビースト」はカレンを見つけると、カレンを後ろから抱きしめ、圧死させたのだった。その頃、ケイシーはクレア、マルシアを探して建物の中を歩き回っていた。しかし、マルシアは腹を「ビースト」に食い破られすでに死んでおり、クレアは、まさに今から行きたまま食われるところだった。

恐怖にかられ、逃げ出したケイシーだったが、まもなく「ビースト」に追いつかれてしまう。ケイシーは、部屋に置いてあった「ケビン・ウェンデル・クラムと名を呼べ」と書かれたカレンのメモを見て、「ビースト」に「ケビン・ウェンデル・クラム」と叫んだ。すると、「ビースト」は、その言葉がケビンが3才の時に受けた虐待のトラウマを呼び起こし、ショック状態を経て主人格のケビンに戻った。ケビンは、2014年9月18日に最後にバスに乗っていた時から、記憶が一切なかった。

ケビンは、まもなく自分のしでかした行為を悟ると、ケイシーに猟銃の在り処を教え、自分を殺してほしいと懇願した。ケイシーがためらっていると、「群れ」人格たちが次々と表れ、そして、最後にもう一度「ビースト」が現れた。

「ビースト」との決着、そして意外な結末へ

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ケイシーは、逃げながら猟銃を探し出し、建物奥の動物の檻のような空間へと逃げ込んだ。「ビースト」追いついてきて、驚異的な腕力で檻の金属棒を曲げて、ケイシーの檻へと入ってきた。ケイシーは、至近距離から「ビースト」を2発撃ったが、「ビースト」は全く意に介さなかった。いよいよビーストに殺されそうになった時、ビーストはケイシーの腹部や肩に残された激しい自傷跡を見て、ケイシーを見逃したのだった。

その時、ケイシーは、父が心臓麻痺で死んでから、叔父が新たな保護者になった時のことを思い出していた。彼女もまた、「ビースト」同様、長い間叔父から性的虐待を受けて来たのだった。

まもなく、ケイシーは動物園の職員に保護された。ケビンは、動物園の管理人の仕事に就いており、その地下にあった彼の居室に、監禁されていたのだ。警察へと引き渡されたケイシーに、叔父が迎えに来たが、ケイシーは車から出ようとはしなかった。

ビーストは、現場を逃げ出して生き延びていた。ケイシーの放った2発の銃弾は致命傷になっていなかったのだ。近くの食堂では、TVで事件の残虐性・猟奇性がちょうど報道されているところだった。女性客が、15年前のある車椅子の男が引き起こした事件に似ているが、犯人の名前が思い出せない、とつぶやくと、その隣りに座っていた男が、「ミスターグラスだよ」と答えた。その声の主は、デイビッド・ダン(ブルース・ウィリス)だった。(映画「アンブレイカブル」の主演)

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4.ストーリーの感想や評価(※ネタバレ注)

4-1.原点回帰して、大復活を遂げたM・ナイト・シャマラン監督の傑作!

「エアベンダー」「アフター・アース」と、立て続けにブロックバスター大作で大コケして悟ったのか、前作「ヴィジット」に引き続き、今作でもシャマラン監督の十八番とも言える、独特の世界観を反映した心理ホラーサスペンスの勝負作を放ってきました。

映画館に行く前は、低予算映画らしいし正直どうなのかな?と半信半疑だったのですが、見てみるとすごく面白かった!映画のデキは予算規模とは全然関係ないですね(笑)

ジェームズ・マカヴォイの演じた各人格たちは、成人男性、女性、子供など、様々なキャラクターがいましたが、みな一様に薄ら寒い怖さや狂気を内に秘めた感じが良かったですし、ケビンVSケイシー、ケビンVSカレンの腹の探り合い、つばぜりあいも見ていてドキドキさせられました。

また、映像的な面白さも映画の随所に散りばめられていました。唐突に入る上空からのカットや、過去作品で少しずつノウハウとなってきたスカイプ/動画などPC画面の活用が非常に効果的でした。

自宅へ戻るビースト。街灯越しに上空からのカットがぞくぞくするf:id:hisatsugu79:20170516161750j:plain

シャマラン監督が多用するPC画面を活用したシーンf:id:hisatsugu79:20170516161903j:plain

4-2.「意外性」に溢れた描写は今作でも健在?!

そして、シャマラン監督作品が毎回公開されるたびに期待されるのが、いわゆる「どんでん返し」的なサプライズエンドです。映画序盤~中盤にかけて、巧妙に散りばめられた伏線が、ラスト結末で、鑑賞者の視点を180度ひっくり返すような意外な収束へ繋がり「えぇ~っ、そうだったの?!」と驚かされるんですよね。(逆に「サプライズ」への過度の期待が彼の場合評価の足かせになっているともいえますが・・・)

特に、「シックス・センス」「アンブレイカブル」など、初期作品の秀作は、結末を知り、新たな視点を得た2周目の鑑賞からは全く違う映画として見れてしまうのも凄いところ。

そういう意味で、今作も過去作ほどではないですが、主人公、ケイシーにまつわる背景説明やストーリーテリングの上手さには舌を巻きました。映画冒頭で監禁された時、ひとり騒がずすまし顔だったケイシーの最初の印象は、単純に「冷静で頭が切れるクレバーな子なんだな」という感想でした。

しかし、数度に分けて挟まれる回想シーンを経て、実は「叔父の日常的虐待を生き延びるために必死に頭を回転せざるを得なかった」暗い過去があったことが間接的に浮かび上がってくると、その痛ましい過去こそが、彼女の命を救う決め手となったという数奇なプロットに驚かされました。なるほど、そう来るか!と・・・。冒頭から丁寧にラストに向けた伏線を静かに仕込んでいき、一気にクライマックスで収束させる手法は、今作も健在でした!

また、囚われた女性は少しずつ脱がされて行くんですが、それが必ずしもステレオタイプ的に性的な暴行につながるわけではなく、単に「デニス」の潔癖症に由来するものだったり、幸せそうなブロンド女性から先に殺されるという、少しずつホラージャンルの王道的お約束を外してきた意外性も良かったです。

4-3.「スプリット」のもう一つの意味~2人の主役の対照的な結末~

今作での2人の主役の共通点は、幼少時に痛ましい虐待を受けていることです。その結果、ケビンは自分自身を守るため、複数の人格を作り出しましたし、ケイシーは自傷行為を繰り返したり、わざと学校で騒ぎを起こして、居残りさせられ、独りになろうとしていました。

ある意味、主役と敵役は非常に似た者同士であったわけですが、ストーリーを通して2人の対照的な方向性が描かれました。物語中、ケビンは、あくまで自分を守るため、24番目の最強人格「ビースト」を作り出し、生贄を惨殺して凶悪犯へと墜ちて行きます。これに対して、ケイシーは自分と向き合うことを選択し、「ビースト」=「叔父」の犯罪行為に対して銃で立ち向かえるようになりましたし、ラストで迎えに来た叔父を拒否する素振りを見せます。自分の意志で、心の痛みを終わらせる前向きな選択が出来たのですよね。このあたりは、「痛み」や「心の傷」からの再生を丁寧に描くシャマラン節炸裂!といった感じでした。

本作題名で提示される「スプリット」とは、悪役ケビンの24個に分かれた人格を指しているだけでなく、物語を通してケイシーとケビンが取る選択と、その後の運命が対照的に分岐していく様を暗喩したキーワードでもあったのでしょうね。

5.伏線や設定などの考察・解説(※ネタバレ注)

5-1.ケビンの人格の構造や、その種類はどうなっていたのか?

ケビンは、「ビースト」を含め、24個の副人格を持っていたわけですが、今作ではさすがに全部は出てきません。「群れ」(The Horde)と呼ばれるバリー、ヘドウィグ、パトリシア、デニスの4人格を中心に、オーウェル、ジェイド、そして最終24番目のビースト、元々のケビンを含め、今作で主演のジェームズ・マカヴォイが演じ分けたのは8つの人格でした。

彼らが表面に出てくるためには、彼らの中で「照明」と呼ばれる権利を取得しなければなりませんが、最近までは明晰で社交的な「バリー」が「照明」のコントロール役を担ってきました。

しかし、何らかのタイミングで、「ヘドウィグ」にも「照明」を自在に操れるようになり、「バリー」は主導権を失います。代わって、それまで「バリー」のコントロール下で不遇だった「ヘドウィグ」と「パトリシア」「デニス」が結託して、ケビンのメイン人格群として表に出てくることになりました。

彼ら3人の人格は、奥に潜んでいた24番目の人格「ビースト」を表面化させるため、少女たちの誘拐を計画するに至りました。

ここで、出てきた人格を一覧にまとめておきますね。

★ケビンの人格一覧

人格 短評
バリー ファッション・アート好きで社交的。「照明」を管理できる唯一の人格で、全員の司令塔。カレンとの面会も、通常バリーがこなしている。しかし、ある日、ヘドウィグに「照明」を奪われ、全体のコントロールを失う。
デニス バリーが仕切っているときは、その先鋭的な思想ゆえ、冷遇されて「照明」をなかなか取れなかった。ヘドウィグ達と結託し、「ビースト」の覚醒に向けて誘拐を主導する。極度の潔癖症。
パトリシア ケビンの中の女性人格。女性らしい細やかさの中にも切れた時の狂気が宿る
ヘドウィグ 9才の小学生男子。無邪気だが頭は切れる。バリー以外に「照明」を取れるようになった。
ビースト 24番目の人格。鋼鉄のような筋肉や素早い動き、圧倒的なパワーは、野獣そのものである。ケビンを守るための最終進化形態。
オーウェル 歴史オタク。小難しいことを延々と喋り続ける。
ジェイド 糖尿病を患い、インシュリン注射が欠かせない。
ケビン 主人格。2014年9月18日から副人格達に乗っ取られ、まるで記憶がなかった。

5-2.なぜ3人はそもそも誘拐されなければならなかったのか?

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「デニス」や「パトリシア」達は、不安定な「ビースト」をケビンの幼少時のトラウマを乗り越え、ケビンを外敵から守る守護者として、確実に彼らの中に定着させたいと考えていました。

そのためには「ビースト」の好物である「痛みを知らない無垢な少女たち」を生贄として捧げる必要があると考えていたためです。実際、「デニス」は、劇中、ビーストを完全に呼び出すには「あと10人ほど必要だ」と語っていました・・・。

5-3.ラスト結末で明かされた「アンブレイカブル」と地続きの世界

今回用意されたサプライズは、実は「スプリット」が、15年前のシャマラン監督作品「アンブレイカブル」と同じ世界線上での出来事で、互いのストーリーがつながっていたということが明らかにされたことです。

ラストで出てきたブルース・ウィリス扮するデイビッド・ダンは、「アンブレイカブル」で描かれた不死のヒーローですし、そこで彼をヒーローとして見出し、最後に対決したのが「ミスター・グラス」でした。

2019年1月に「GLASS」(原題)というタイトルで続編として映画化されることまでエンドロールで明かされ、ここにマーベル的な「シャマラン・シネマティック・ユニバース」とも言うべき世界観が提示されたことが、ある意味「サプライズ」ではありました。

でも、このサプライズ提示は個人的には失敗なんじゃないかと思います。最初から「アンブレイカブル」を見ておけば、劇中で気付けるいくつかの重要な伏線・設定が用意されていたからです。これなら、広告宣伝の段階で「アンブレイカブル2」だ!と世界の繋がりをネタバレしてくれていたほうがスッキリしました。

5-4.「ビースト」に変身する前にケビン(デニス)が駅で花束を手向けた理由

実は、映画「アンブレイカブル」の冒頭で、ブルース・ウィリス扮するデイビッド・ダンは、彼以外全員が死亡した凄惨な電車脱線事故に遭遇するのですが、その事故で死亡したのが、ケビンの父だったのです。

「デニス」が花束を買って、鉄道のプラットホームに置いたのは、亡き父への手向けの花であり、「ビースト」を顕現させ、別人へと生まれ変わる前に、心に一区切り付けたかったのでしょう。

5-5.「Mr.グラス」はスーパーヒーローとスーパーヴィランを作り出していた!

「アンブレイカブル」で、サミュエル・L・ジャクソン演じた「Mr.グラス」は、名前通り、骨のタンパク質が足りないため、骨が脆弱になってしまうという先天性の重病を抱えたヴィランでした。彼はアメコミヒーローにあこがれ、大人になった時、展覧会を開けるくらい有名なコレクターになります。また、彼は病弱な自分とは対極の、不死身の肉体を持つスーパーヒーローがこの世の中に存在すると考え、世の中にテロや大事故を起こし続け、そこから生き残る不死身のヒーローを見出そうとする危険な思想の持ち主でした。

結果として、彼が首謀者だった、ある列車脱線事故で、彼は不死身のヒーロー、デイビッド・ダンを見出しますが、同時にその列車事故で間接的に「ビースト」をも生み出していたのですよね。ケビンの父親が列車事故で突然死した結果、ケビンの母親は不安定になってケビンへ虐待するようになったからです。

5-6.続編「GLASS」情報まとめ

ここまでで明らかにされている続編情報は、以下の通り。箇条書きに少しまとめてみました。4月26日に彼のTwitterで明らかになった最新の詳細です。

・次回作のタイトルは、「GLASS」(原題)で決定。
世界公開日は、2019年1月18日。
・「スプリット」「アンブレイカブル」両方に関連するエピソードが描かれる予定で、3部作の完結編となる予定。
・「Mr.Glass」をサミュエル・L・ジャクソンが、デイビッド・ダンをブルース・ウィリスが続投する。
・ジェームズ・マカヴォイも続投が決定。パトリシア、デニス、ヘドウィグ、バリー、ジェイド、オーウェル、ビースト以外に、ハインリッヒ(Heinrich)、ノーマ(Norma)といった新キャラも予定されている。
・アニヤ・テイラ=ジョイ扮するケイシーも出演が決定。

6.まとめ

全編でほとんどCGも使われておらず、ほの暗い地下の雰囲気たっぷりのセットで丁寧に作られた映画でした。低予算ながら、シナリオの素晴らしさとキャスト陣の頑張りでシャマラン完全復活を告げる作品になったと思います。面白かった!

それではまた。
かるび

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年5月現在上映中映画の感想記事一覧

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

映画「アンブレイカブル」

続編「GLASS(原題)」をフルに楽しむためにも、スプリットと同一の世界での出来事を描いた「アンブレイカブル」の復習はやはり外せないと思います。かなり前の作品ですが、シャマランが描くとアメコミヒーローモノはこうなるのか!という驚きと、結末の「どんでん返し」がたまりません。未見の方は是非!

小説「24人のビリーミリガン」

レオナルド・ディカプリオ主演で、2015年に「Crowded Room」というタイトルで映画化も発表されていますが、本作「スプリット」も、ダニエル・キイスの実話を元にした解離性同一性障害の犯罪者の主人公を描いた小説からインスピレーションを得ているそうです。世界的なベストセラー小説しとて有名ですね!

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