あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「IT イット それが見えたら終わり」感想・疑問点の徹底解説!/ホラー要素もある、王道的ジュブナイル冒険活劇!

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【2017年12月9日最終更新】

かるび(@karub_imalive)です。

11月3日に公開された映画「IT/イット”それ”が見えたら、終わり。」(2017年版)を見てきました。公開館数は少ないながらも、口コミで若い映画ファンを中心に人気が広がり、この秋「台風の目」となっている作品です。

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー等、詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「イット(2017)」の予告動画・基本情報

▶映画「イット」公式予告動画
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【監督】アンドレス・ムシェッティ(「MAMA」)
【配給】ワーナー・ブラザーズ映画
【時間】135分
【原作】スティーブン・キング「IT」

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引用:IT - Pennywise Featurette - YouTube

本作でメガホンを取ったのは、アルゼンチン出身のイケメン若手監督、アンドレス・ムシェッティ。

すでに1990年に一度テレビドラマ化されていた「IT」ですが、少年期と大人時代の2本立てにしてリメイク&映画化企画が始まったのは今から7年前でした。紆余曲折を経て、当初企画&監督を務めていたキャリー・フクナガが方向性の違いから降板したあと、お鉢が回ってきたのがムシェッティ監督だったのです。

まだキャリアが浅い青年監督ですが、7人の主人公たちを上手に描き分けながら、、自然な形でチームへとまとまっていく前半のスキのないシナリオの流れや、過去作や原作を大切にしつつも、各種美術・演出での豊富なアイデアは確かな才能を感じさせるものがありました。

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引用:IT - Face Your Fears - YouTube

そして、原作はエピック・ホラー小説の世界的巨匠、スティーヴン・キングです。この「IT」は、彼のキャリア前半10年を締めくくる節目の重要作であり、実に4年もの歳月をかけて書かれた超大作でした。過去、映画史に残る名作「シャイニング」の出来には不満を漏らしていたキングですが、本作については、自身のイメージに近いものが出来上がったとのことで、かなり満足しているようです。

これは面白い!自由に視点を変えられるVR予告動画!

映画公開後、公式サイトから追加で公開されたのが、映画冒頭の4分間を再現したマウス(スマホなら指)で360度操作できるVR動画です。ペニーワイズに誘われて、下水道の奥底へと進んでいく動画は、ちょっとしたミニゲームのようで面白かったです!是非試してみてくださいね。

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2.映画「IT イット それが見えたら終わり」主要登場人物・キャスト

主演の7人の子役たちの確かな演技力も、作品のクオリティを支えた重要な要素ですが、本作での主人公たちの会話はその8割以上が現場でのアドリブによる即興芝居だったそうです。7人とも、本作が出世作になると思われ、将来が楽しみです。

主要登場人物

ビル(ジェイデン・リーバハー)f:id:hisatsugu79:20171115182741j:plain
引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube
難易度の高いどもりの演技をきっちりこなした演技力の高さはさすが主役。メインキャラクター7人の中では、俳優としてのキャリアは一番抜けており、日本未公開ながら「The Confirmation」(2016)、「The book of henry」(2017)等、子役として映画出演が続いており、本作のあとにも2018年に2作「The True Adventures of Wolfboy」「Low Tide」など、引っ張りだことなっています。

ベバリー(ソフィア・リリス)f:id:hisatsugu79:20171115182723j:plain
引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube
7年前に映画企画がスタートした当初は、クロエ・グレース・モレッツが起用予定でしたが、企画が頓挫しているうちにクロエがティーネイジャーではなくなってしまい(笑)、オーディションを最初からやり直した結果抜擢されたラッキーな経緯があります。撮影当初14歳だったソフィアですが、少女から大人になりかけの思春期特有の不安定な感じの妖しいエロさは、原作のイメージ通りでした。

リッチー(画像左/フィン・ウルフハード)f:id:hisatsugu79:20171115183803j:plain
引用:IT - MTV First Look - YouTube
NETFLIXで大人気のジュブナイル冒険ドラマ「ストレンジャー・シングス」シリーズでも活躍中。本作では、R指定となったことを受け、のびのびと「FXXX」ワードを連発していました。この時期の子供なのでただ背伸びして「FXXX」と言いたいだけなのかもしれませんが^_^;

マイク(チョーズン・ジェイコブス)f:id:hisatsugu79:20171115182814j:plain
引用:IT - Official Teaser Trailer - YouTube
6歳の時から地元・アトランタでコーラスを始め、10歳から子役俳優としてローカルな舞台・演劇でキャリアを積んできた、次世代を担う黒人俳優の若手ホープ。日本のマンガ「ナルト」ファンで、俳優としての将来の夢はマーベル映画への出演なのだそうです。本作では人種差別に悩み、目立たないように振る舞う内気な少年を好演。

エディー(ジャック・ディラン・グレイザー)f:id:hisatsugu79:20171115182954j:plain
引用:IT - MTV First Look - YouTube
幼少時から子役としてテレビやコマーシャル等で活躍してきたそうで、現在CBSのTVドラマ「Me, Myself and I」にも出演中。本作では母親の病的な過保護に悩む一番末っ子的な「チビ」キャラを演じました。

スタン(ワイアット・オレフ)f:id:hisatsugu79:20171115182850j:plain
引用:IT - MTV First Look - YouTube
7人の主人公の中では、主演のジェイデン・リーバハーの次にハリウッド映画で実績を残しており、映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」冒頭の、ピーター・クイルの幼年時代を演じた実績を買われての今回の抜擢となりました。(だいぶ変わってて全然気づかなかった・・・)

ベン(ジェレミー・レイ・テイラー)f:id:hisatsugu79:20171115183141j:plain
引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube
映画では貴重な「おデブ」キャラとして、セリフは少ないながらも存在感は抜群だったベン。クレジットはされていませんが、マーベル映画「アントマン」(2015)にもチョイ役として出演していた実績があるそうです。

ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)f:id:hisatsugu79:20171115183246j:plain
引用:IT - Pennywise Featurette - YouTube
1990年のドラマ版「IT」から大幅に若返った今回のペニーワイズ役。主演の7人とは敢えて事前に顔合わせをせず、フレッシュな恐怖感を演出しようとした制作陣の仕掛けも奏功し、画面からは、子どもたちが本当に怖がっている感が伝わってくる好演でした。 

3.途中までの簡単なあらすじ

1988年秋、メーン州の田舎町、デリー。大雨が降った日、ビルの最愛の弟、ジョージイが行方不明となる事件が起きた。風邪を引いて静養中のビルをおいて、雨の中一人で外に出て完成させた紙製の船を走らせているうちに、ジョージイは下水道の側溝へと何者かに引き込まれ、連れ去られたのだった。

1989年6月。ジョージイの事件以降も、デリーでは子どもたちが度々行方不明になる事件が頻発していた。弟の失踪以来、すっかりどもりがひどくなったビルは、学校でいつも親友のリッチー、エディー、スタンと一緒にいた。彼らは、クラスメイトから「負け犬」と呼ばれ、不良少年のヘンリーたちにいつも目をつけられていた。

ヘンリーたちは、同じく「あばずれ」として女子から嫌われていたベバリー、他校から転校してきたものの、学校になじめなかったベン、内気な黒人のマイクなども目の敵にしていた。

ヘンリーたちと対決する中で、やがて「負け犬」グループとして結束を強める7人だったが、彼らには、もう一つ共通項があった。それは、それぞれ「ペニーワイズ」と名乗るピエロに襲われる怪奇現象を経験していたことだった。ペニーワイズは、ピエロ以外にも変身し、幻影を見せ、人の心を操ることもできた。彼ら7人が最も「こわい」と考える形をとって、学校や自宅、空き家など、様々な場所で出没するのだった。

彼らは、ペニーワイズを「それ」と名付け、立ち向かうことにした。彼らは、ジョージイを連れ去ったのも「それ」の仕業であると考え、ベンの調査した資料から居所を突き止めた。

町外れの空き家から、「それ」の居場所に入った一行だったが、そこでエディが脱臼し、ベンがケガをしてしまった。怖気づいた「負け犬」たちは、仲間割れして活動をやめて、日常生活に戻るのだった。

そして1ヶ月が過ぎた頃、「それ」は再び活動を開始し、紅一点のベバリーを連れ去ってしまう。ベバリーの危機に、再び「それ」を倒すために集結する「負け犬」たちは、再び「それ」が待つ下水道の奥深くへと向かうのだったー。

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4.映画「IT イット それが見えたら終わり。」の感想・評価

思ったより怖くはなかったけど、画面の作り込みは素晴らしかった!

「怖い!」という前評判を聞いて、見るまではかなり怖気づいていたのですが、見終わってまず感じたのは「それほどは怖くないかな」という率直な印象でした。というのも、恐怖演出が基本的には「子供目線」でなされているからです。

ピエロのペニーワイズを始めとして、マミーやグールなど、西洋的な妖怪たちが襲ってくる感じは、どこか大仰で作り物的な「お化け屋敷感」があって、ある程度予測がつくというか、心に余裕をもって見れる感じなのですよね。

個人的には、「呪怨」や「リング」などのJホラー系や、猟奇的なサイコパスの狂気がもたらす「次に何が起こるのかわからない」恐怖感が苦手だったので、本作の恐怖演出は、そこまで震え上がるほどではありませんでした。

ただし、様々なシーンでの「IT/それ」の登場シーンは、本当によく練り込まれていたと思います。ホラー映画といえば、ハリウッドでもすっかり低予算での一発狙いが主流(?)となりましたが、本作は低予算映画ではありません。制作費は約35億円と、それなりの規模感です。

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お化け屋敷の作り込みがコテコテで良かった!
引用:IT - Official Teaser Trailer - YouTube

その潤沢な予算を活かして、一つ一つのセットや美術での作り込みや、演出での工夫は納得の出来でした。廃れた洋館の(若干やり過ぎ感もあるくらい)コテコテなセットの作り込みや、暗くて不潔な下水道、自宅の気持ち悪い地下室、ラスボスと対決する下水道のメインホールのスケール感など、見どころ満載です。

また、スティーブン・キングがこだわったR指定となったこともあり、思春期の男子特有の品のない下ネタや、Fワードの連発、さらには流血を伴ったシリアスな暴力表現なども、原作に沿ってのびのびと出来ていたと思います。

むしろ大人たちの子供に対する振る舞いが怖かった!

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超過保護なエディーの毒親ぶりの怖さが凄い・・・
引用:IT - Official Teaser Trailer - YouTube

それよりも、映画内で登場する、デリーに住む病んだ大人たちが醸し出す不穏な恐怖感がやばかったです。

映画冒頭シーンから、すでに何かおかしいことに気付かされます。ビルの母親は暗い部屋の中、無表情でピアノで不穏な曲を弾いていますし、ジョージイが雨の中不審な動きをしているのに、近くの家にいた老婆は、心ここにあらずといった具合で、子供が誘拐されているのに完全に見て見ぬふりをします。。

さらに、淡々とで電柱に行方不明者のチラシを貼るおばさんや、子供に過干渉するサイコパスなエディーの母親、いつも昼間から働かず自宅にいて、ベバリーに性的虐待を続ける父親etc・・・

あとで映画をよく見ていくと、大人たちはみな多かれ少なかれ「IT/それ」に心を操られていることがわかってくるのですが、デリーの大人は、ほぼ全員が心の中に確実に深い闇を抱えていそうな人物ばかりなのです。「負け犬」たちの生き生きとした表情と対照的に描かれていた、闇を抱えた大人たちは、じわじわと鑑賞者に恐怖をもたらしてくれます。

思春期の子どもたちの勇気と友情の冒険活劇だった!

ただ、こうしたホラー要素を除けば、本作は、伝統的で王道を行く少年・少女たちの一夏の特別な経験を綴る、ジュブナイル冒険活劇として非常に良く出来ているんですよね。

「スタンド・バイ・ミー」meets「グーニーズ」みたいな感じでしょうか。また、大人たちを敵に回しての一夏の少年少女たちの戦い、という意味では、攻守は逆ですが宮沢りえの子役時代の代表作「僕らの七日間戦争」にも近さを感じます。

さて、「負け犬」グループとして集まってきた7人は、喪失感や罪悪感、親の過保護、性的虐待、人種差別など、様々なコンプレックスや課題を抱えています。弱くて、スクールカーストで言えば底辺にいるような7人が、秘密基地で集まって作戦会議を重ねる中で、次第に友情を育み、試練(=それぞれの自己の内側に抱える恐怖)に打ち勝って成長していく・・・。

と、同時に、やっぱり思春期で微妙なお年頃なので、友情だけでなく、仲間同士での恋愛関係もちゃんと忘れずに描かれているのも良かったです。男子たちの、ベバリーへの性的な興味を抑えきれない感じのそわそわした目線とか、彼女を中心とした淡い恋の三角関係が展開されていたりと、原作に沿って細かく思春期特有の人間模様も表現されていました。(もっとも、原作でのベバリーと6人の過激な乱◯シーンはカットされていて、そこはまぁ、当然、というか、、、妙にホッとしましたが^_^;)

そして、最後に「IT/それ」との最終対決後、エンディングの前に、子供から大人となるための通過儀礼的なシーン「血の誓い」もきっちり用意してあったのも素晴らしかったです。成長した少年・少女たちが、きっちり自らの子供時代に別れを告げて、それぞれの道へ旅立つラストには、大満足でした。

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5.映画「ITイット それが見えたら終わり。」に関する10の疑問点~伏線・設定を徹底考察!~

本作をより深く理解するため、ストーリーや設定について、その要点となりそうなポイントを考察してみました。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。

疑問点1:ペニーワイズには実際のモデルとなった人物がいた?

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引用:Wikipediaより

映画内で登場するピエロ「ペニーワイズ」には、実在のモデルがいます。アメリカで70年代~80年代にかけて、33人を誘拐・殺害した凶悪殺人犯、ジョン・ゲイシー(1942-1994)です。資産家で、表向きは地元の名士だったゲイシーは、その信用を隠れ蓑にして、パーティ会場などでピエロの格好に変装しては、少年を誘拐・殺害していました。

逮捕後の公判で、子供を自宅へと連れ込み殺害していた残忍な手口と猟奇的な殺害方法が明らかになり、彼は「キラー・クラウン」と呼ばれるようになり、子供達のピエロに対する親しみやすいイメージを一変させたといいます。

疑問点2:なぜイットは【ピエロ】の格好をしていたのか?

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引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube

イットの本当の正体は、ピエロではありません。ピエロ姿=ペニーワイズは、イットが子どもたちの前で姿を表す一形態にすぎません。では、なぜ「ピエロ姿」であることが多かったのでしょうか?

恐らく、それは子どもたちにとって、「ピエロ姿」が一番身近な「恐怖」の対象だったからです。本来、「ピエロ」とは、マクドナルドの「ドナルド」のように、サーカスやパーティ等での陽気なコミックリリーフ的な存在でした。

しかし、厚化粧や仮面の下の本当の表情が読み取りづらく、何を考えているのかわからない不気味さや、前述のキラー・クラウンや、映画やTV等で繰り返し登場した「ネガティブ」なピエロ像によって、現代のアメリカでは、すっかりピエロは子どもたちにとっての恐怖の対象となってしまったのです。

実際、欧米では「道化恐怖症」(Coulrophobia)と言って、劇中でのリッチーのように、ピエロを見ると強い恐怖感を覚える人が増えているようです。(代表的な有名人は、ジョニー・デップなど)

疑問点3:イットは、なぜ子供ばかりを付け狙っていたのか?

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引用:IT - Face Your Fears - YouTube

イットは、27年毎に冬眠から覚めて、デリー周辺の人間を大人子供問わず捕食対象としましたが、中でも小さい子供を好んでターゲットにしていました。その理由としては、子供は「純粋な恐怖」に染まりやすいからです。

イットが捕食対象とするのは、「恐怖」に怯えた人間の肉体です。「恐怖」というのはイットにとって食事の「味付け」のようなものなのです。だから、劇中でも、イットが人間を捕食する際は、まず相手を「怖がらせてから」捕食していますよね。

精神状態も複雑で、恐怖だけでなく様々な感情が入り混じった反応をする大人よりも、単純でわかりやすく純粋な「恐怖」に染まりやすい子供のほうが「美味しく」感じたのです。

疑問点4:イットは、なぜデリーに住み、27年おきに猟奇殺人を冒していたのか?

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引用:IT - Face Your Fears - YouTube

小説版の説明によると、イットがデリーに住み着いた・・・のではなく、元々気の遠くなるほど太古(何億年前から)の昔から、地中深く住み着いたイットがいるところに、後からアメリカ人が入植して「デリー」という街を作り上げたのです。映画版では描写がカットされましたが、アメリカ人が入植を開始した16世紀には、すでにイットはデリーに住んでいたのですね。

イットの行動原理は、非常に単純です。食べて冬眠して、起きて、食べて冬眠して・・・を太古の昔から27年周期で行ってきたに過ぎません。昔から、その「狩り」の仕方として、人間に恐怖を与え、恐怖に染まった人間を捕食するという単純なパターンを繰り返しているだけなのですね。

疑問点5:デリーの大人は、なぜ子供たちに無関心だったのか?

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引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube

デリーの大人たちは、揃いも揃ってイットに苦しむ子どもたちに対して冷淡で無関心でした。ビルの父親などは、息子が殺されたにもかかわらず、まるで臭いものにフタをするように、原因を突き止めようとするビルに辛く当たっていましたね。

この理由としては、デリーの町全体の捕食対象ではない(不味い)大人は、イットの行動の邪魔をしないよう洗脳され、操られていたのではないかと思われます。

たとえば、映画後半でヘンリーが、自宅へ戻って父親をナイフで刺殺するシーンがありましたが、その際にリビングにかかっていたピエロのコメディ番組は、映画のどのシーンでも流れ続けていました。このことから、イットによってデリー全体のTV放送が乗っ取られた結果、住民が知らず知らずのうちに洗脳されていたのかもしれません。

実際、ベバリーの父親はイットに操られていたことが明白です。彼には、イットによって血まみれにされた自宅のバスルームの惨状が全く見えませんでした。また、ベバリーがビルに会おうと外出しようとした時、彼女を突然呼び止め、無理やり虐待しようとしました。これに対して、ベバリーは父親を便座のフタのようなもので殴り倒しますが、その直後、イットはベバリーを拉致し、壁に子どもたちへの警告を残して去っていきました。イットはベバリーの父を通して、陰からベバリーを監視していたのでしょう。

長年、27年周期で大量殺人を繰り返し、皆が忘れた頃に町全体を慢性的な不安や恐怖に陥れてきたイットにとって、大人たちをマインドコントロールするのは容易い仕事だったのでしょうね。

疑問点6:イット(ペニーワイズ)の本当の正体とは?

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引用:IT - Face Your Fears - YouTube

小説版の説明を総合すると、イットの本当の正体は、太古の昔、別宇宙からやってきた邪悪なオレンジ色の光(意識体?)でした。地球では、通常はピエロやグールなど、「恐怖」を象徴するような何らかの物質的な形を取り、肉体を持っています。しかし、ベバリーがピエロの顔を覗き込んだ時、イットの本来の姿が垣間見えていました。その顔の奥に広大なオレンジ色の空間が広がっていましたね。

ちなみに、人間がこのオレンジ色の光を直視すると、人間の持っている恐怖と反応して、精神が崩壊して死に至ります。ベバリーが助かったのは、すでにイットに対して恐怖心を全く感じていなかったからなのでしょう。

疑問点7:キーフレーズ「浮く」とは何を意味していたのか?

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引用:IT - MTV First Look - YouTube

本作で繰り返しペニーワイズに扮したイットが子供に語りかけた「君も浮いてみる?」という言葉。「IT(1990)」でも多用されており、非常に謎でしたが、2017年版では、わかりやすく直接的に表現されていました。

すなわち、クライマックスシーンで、井戸の最深部のイットのアジトにおいて、イットが殺害した子どもたちの死体が実際に「浮いて」いたわけですが、要するに、「浮く」≒「イットに捕食されて死ぬ」と捉えて良いと思います。

実はもう一つえげつない解釈もあって、映画秘宝2017年12月号で紹介されていた解釈を引用すると・・・ペニーワイズのモデルになったウェイン・ゲイシー(上記「疑問点1」参照)が、殺した少年たちを自宅の床下に埋めていたところ、腐敗した死体の一部が泥の中から浮いてきてしまった逸話から、「浮く」という言葉を採っているのだとか・・・。怖い・・・。

疑問点8:べバリーはなぜ「浮いた」けど死ななかったのか?

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引用:IT - Pennywise Featurette - YouTube

ベバリーは、イットの放つオレンジ色の殺人光線を直視しましたが、仲間に奪還され、ベンにキスされることで精神を取り戻し、生還することができました。

ベバリーが助かった原因は、すでにイットに対して恐怖心を全く感じていなかったからなのでしょう。彼女は、彼女が最も恐怖を感じる対象=性的虐待をしようとする父親に対して、最後にハッキリ「ノー」を突きつけ、襲い掛かってくる父を撃退しました。これ以後、ベバリーにとっては、もはやこの世で怖いものはなく、イットですら恐怖の対象にはなり得なかったのでしょう。

子どもたちに「恐怖」を味わせて弱体化したところに襲いかかるイットにとって、「恐怖」克服したベバリーは強敵であり、何とか仮死状態で眠らせるのが精一杯だったのでしょうね。

疑問点9:描写が省略された「亀」について

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引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube

原作では、イットと対決するにあたって、少年たちにアドバイスをくれるのが、イットと敵対関係にある、超古代から生きてきた「亀」という存在。彼らは「亀」の力を借りて、肉体を離れて精神世界のような別次元でイットと対決するのですが、やはり映画ではわかりづらいと判断されたのか、バッサリカットされ、イットとの対決は、通常の物理次元での攻防のみとなりました。

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引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube

しかし、ビルが自宅で弟の幻影を見たシーンでは、彼は「亀」のレゴを持っていたり、全員で川遊びをした時、川の中に亀を発見したり(セリフだけ)と、原作に対して最低限の関連性を持たせていました。果たして、「Chapter2」では、この「亀」というすべてを超越するような超常的存在と交流するシーンがあるのか、要チェックですね。

疑問点10:結末・ラストの解釈は?続編はあるの?

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引用:IT - Official Trailer 1 - YouTube

7人との戦いに敗北して傷ついたイットは、粉々になりながら、「Fear」(恐怖)と言い残して、さらに井戸の奥深くへと消えていきました。これは、イットが約1年にわたる活動を終えて(1988年10月~1989年8月)27年後までの冬眠に入ったと解釈して良いと思われます。

なぜなら、オリジナル原作小説も、「IT(1990年版)」も、彼らの27年後を描く後半部分が残っているからです。その証拠に、ラストシーンで表示されたタイトルには「Chapter1」と出ていましたよね。また、スタッフロールの最後には、ペニーワイズの高笑いする声が響き渡っていました。これは何よりもイットが「死んでいない」何よりの証拠でしょう。

さて、そんなChapter2のアメリカでのリリース日が、ワーナー・ブラザーズ映画から正式に2019年9月6日と発表されました。脚本家の留任と、ペニーワイズを演じたビル・スカルスガルドの続投も決まり、監督のアンドレス・ムシェッティも続投が正式に決まる見込みだそうです。

肝心のストーリーですが、Chapter2では、彼ら7人が大人になった27年後、イットとの最終対決が描かれるはずです。キャストは一新される予定ですが、おそらく回想シーンも多用されるはずなので、今作で出てきた7人の姿もスクリーンで見れそうです。今から楽しみですね。

6.難解なストーリーを徹底的に解説したパンフレット!

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本作は、スティーブン・キングの文庫本4冊分の原作小説を、ギュッと120分程度の1本の映画へと圧縮しています。その分、非常に複雑な背景や難解なストーリーの謎が隠されていました。

今回、パンフレットを買ってよかったなと感じたのは、まさにこの点。ペニーワイズの正体を分析したページや、スティーブン・キングの原作小説を読み解きながら、「イット」の世界観をじっくり解説してくれるコンテンツが満載です。

▼ペニーワイズを徹底解剖!果たしてその正体は?f:id:hisatsugu79:20171129201704j:plain

▼スティーブンキングの原作を徹底分析した対談・コラムf:id:hisatsugu79:20171129202015j:plain 

このパンフレットは、Amazonでも買えるようです。リンクを置いておきますね。

7.まとめ

2部作に分けられたスティーブン・キングの大作の第1章であることが明らかにされた本作。少年たちの一夏のかけがえのない冒険として、非常に上質な文句のないクオリティでした。おすすめです!
それではまた。
かるび

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8.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

名作!TVドラマ版「IT(1990年版)」

1990年版のディム・カリー演じるピエロは、まるでマックの「ドナルド」そっくりで、ピエロに限って言うと2017年版以上に怖いです。少年時代・大人時代の両方を連続で1作品として編集されました。TV放送版なので若干表現は穏当になっていますが、それでも古さを感じさせない力作。2017年版と見比べるのも楽しいですよ!

スティーブン・キングの原作小説「IT」

1985年と1958年の描写を少しずつ交差させながら、2回に渡るイットとの対決を鮮やかに描ききった長編小説。文庫本4冊分の大ボリュームですが、一度読み始めると詳細な心理描写に引き込まれ、ページを捲る手が止まりません。完成するまで実に4年以上をかけた大作だけあって、映画とはまた違う奥深い味わいがあります。Kindleでの合本バージョンもオトクですよ。(4冊合本版はこちらから

ユリイカ2017年11月号「スティーヴン・キング特集」

本作公開に合わせて、満を持して大特集が組まれたユリイカでの「スティーヴン・キング」特集号。これまで20作以上が映画化され、中でも『キャリー』『シャイニング』『スタンド・バイ・ミー』など人々の記憶に残る名作も多いキング。「ホラーの帝王」スティーヴン・キングについて、その「小説」「映画」の両面から、魅力を徹底解説したディープな評論本でした!

スティーヴン・キング作品は、まとめてU-NEXTで!

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2017年、「セル」が公開され、さらに2018年初頭には、キングのライフワークでもある超巨編「ダークタワー」のリリースも控えるスティーヴン・キング原作映画作品。

実は、彼の代表作は、そのほとんどをU-NEXTで「見放題」にて見れるのです!スタンド・バイ・ミー」、「キャリー」、「グリーン・マイル」など、まず抑えておくべき作品が、気軽に見放題=無料でチェックできるのは非常に嬉しいところ。

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