あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

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【ネタバレ有】映画「たたら侍」感想・レビューとあらすじの徹底解説!/意気込みが空回り?映像は圧倒的に美しかったけど・・・

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【2017年5月31日更新】

かるび(@karub_imalive)です。

5月21日にリリースされた映画「たたら侍」を見てきました。島根県の全面的なバックアップを得て、EXILEで有名なLDH Picturesが「たたら製鉄」にかかわる秘境の山村で繰り広げられる物語を綴った時代劇映画です。

ハリウッド映画並みの潤沢な予算を投じて制作されたゴージャスなセットは圧巻。封切り後、興収、動員は苦戦しているようですが、果たして内容はどうだったのでしょうか?

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「たたら侍」の基本情報

<「たたら侍」公式予告動画>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】錦織良成(「渾身」「RAILWAYS」他)
【配給】LDH pictures
【時間】120分
【原作】松永弘高ノベライズ版「たたら侍」

錦織(ニシコオリ)監督は、ここ数作島根県にまつわる、いわゆる「地方発映画」に特化して作品を作ってきました。隠岐の島での神前奉納相撲をテーマにした前作「渾身ーKONSHINー」で配給を務めた松竹と訴訟となったからか、今回初めてEXILEのLDH Pictures自主配給での興行となりました。

前回の「渾身」から、青柳翔や宮崎美子、笹野高史、甲本雅裕らメインキャスト陣をそのままスライドさせ、島根の山間部に実際にたたら村を丸ごと作って撮影されました。セットやたたら製鉄シーン、神楽や舞などの伝統芸能が披露されるカットも多く、錦織監督の地元愛をたっぷり感じられます。

公式Youtubeには、アニメでの「1分で分かるたたら侍の世界」という解説動画も用意されています。これも映画鑑賞前に見ておくと良いかもしれませんね。

<「たたら侍」アニメ解説>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

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2.映画「たたら侍」の 主要登場人物とキャスト

本作はEXILE映画ですので、主演クラス&ヒロインは当然のごとくがっちりEXILE勢で固められています・・・。まぁ、これは致し方ないところ(笑)

登場人数も非常に多く、ほんの数カットしか出てこないキャラでも、割りと有名なキャストをがっつり起用するなど、こちらもセット同様に金がかかってそうな感じ。以下の人物関係図で事前にキャスト陣を予習していくと良いと思います。

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伍介(青柳翔)
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前作「渾身ーKONSHINー」に引き続いて錦織監督作品で2作連続の主演起用となりました。劇団EXILEの看板俳優で、EXILE以外の映画でも幅広く脇役系で出ていますね。本作では「侍になりきれない」ヘタレで中途半端な主人公でしたが、主人公の抱えるもどかしさや焦りなどは上手に表現できていたと思います。

新平(小林直己)
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映画は「HiGH&LOW THE MOVIE」シリーズくらいのもので、本格的な映画出演は今作が初めて。大柄なので殺陣シーンは非常に画面映えしますが、もう少し演技力を磨く必要があるかも。

尼子真之介(AKIRA)
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HiGH&LOW THE MOVIE」シリーズはもちろん、2017年はスコセッシ監督の「沈黙」にも出演するなど、すでに映画キャリアは10本以上。EXILEメンバーの中では実績を十分積んできました。今作は、クライマックスで主役が交代したのかと思ったほど目覚ましい活躍シーンが予定されています。ファンサービスですね(笑)

お國(石井杏奈)
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E-girlsの人気メンバーですが、パフォーマーとしてより、役者としての期待の方が高い石井杏奈。演技力も確かですし、2017年も「スプリング、ハズ、カム」「ブルーハーツが聴こえる」他、「心が叫びたがってるんだ。」も待機中。地元に伝わる神楽を踊るシーンは非常に優美でよかったです。

与平(津川雅彦)
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本作での悪役。いかにも悪役商人らしい「ずる賢さ」はきっちり表現できていました。

平次郎(豊原功補)
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新平の兄。主役クラスで、一番最初に死にますが、唯一の非エグザイル系。ドラマ・映画・舞台を問わず、名バイプレイヤーとして大活躍中。声優やバラエティ、ナレーション等でもたびたび見かけますね。今年50歳になるとは思えない若さです。

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3.結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)

平次郎の死

1582年。出雲の山奥にあるたたら村。伍介は、幼い頃、村が盗賊たちに襲われた日のことを思い出していた。あの日、伍介と母の命を盗賊たちから救ってくれたのは少し年上の尼子真之介だった。

たたら村では、伍介の家が代々たたらでの鋼作りを取り仕切る「村下」(むらげ)を務めてきた。その日伍介の祖父、喜介に代わって弥介が新たに村下に就くことになったのだ。

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伍介には幼少時から共に育ってきた村の仲間がいた。その日も、幼馴染の新平と、新平の兄、平次郎と剣術の稽古に励んでいた。伍介は、村一番の剣術使いである平次郎にいつも勝つことができなかった。稽古から帰ると、伍介の幼少時からの許嫁、お國が待っていた。

翌日、新たに「村下」となった弥介の元で、初めての鉄作りが始まった。伍介も跡取りとしてたたら作りから参加したが、鉄を町の外に売りに出た平次郎が野盗に襲われているという報告が入り、慌てて現場へとかけつけた。

平次郎は木刀1本で2人の野盗と対峙していたが、斬られてしまい息絶えた。

大好きな平次郎を助けられなかった伍介は、己の無力さを責め、より強くなるために村を出て侍になりたいと決意した。そこで、村へ逗留中だった馴染みの商人、惣兵衛に頼み込み、侍になるため織田家に士官するツテを紹介してもらうことになった。

侍になるため、村を出た伍介

新平や弥介は反対したものの、最終的には黙って送り出してくれた。村の祭祀を務めるお國からは、お守り代わりに揃いの勾玉の片割れをもらった。

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翌日、港に着くと、越前敦賀行きの大型船に乗った伍介は、海を渡り、敦賀から近江へと入り、そこで惣兵衛の知り合いの商人、与平を紹介してもらった。与平は、近々織田家の家来、蜂須賀小六の足軽舞台の長、井上辰之進にちょうど武器弾薬を届けるところだという。与平は、その際に伍介を井上に紹介する約束をした。

また、与平の計らいで、伍介は村から持ち出した鋼を刀匠に打ってもらった。

井上辰之進の陣中での伍介の役割は、飯炊き係だった。そこで仙吉という気のいい足軽に世話をしてもらった。しばらく従軍していた時、敵襲に遭遇した。

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あまりの迫力に伍介は腰を抜かしてしまったが、後ろから鉄砲を放った仙吉に助けられ、戦場を逃げ出すことができた。

逃げながら、略奪に遭った農民や、逆に落ち武者狩りにも遭遇した。逃げる中、仙吉とは別れてしまったが、翌日戦場に戻ってみると、井上辰之進の陣は壊滅しており、仙吉の死体もあった。

伍介は、完全に行き場を失ってしまい、迷った挙句村へと帰ることにした。村に戻ると、新平を始め、温かく迎え入れてくれた。

たたら村へやってきた与平

翌日、以前のように鉄づくりに復帰すると、村へ与平が訪ねてきた。いつしかの惣兵衛同様、織田軍に納品するための鉄砲を作って欲しいという。弥介は即座に断ったが、与平は、良質の鉄を求めて織田軍がここにも攻め込んで来る可能性があるから、せめて武装すべきだと主張した。

村の外で戦場を見てきた伍介は、与平を信用していなかったが、鉄砲で守りを固める必要性は納得できた。伍介と村の若い者たちは、新平、弥介や喜介、村の長老たちの反対を押し切り、鉄砲づくりと物見台や村の入口に門を作った。新平は、頑として作業を手伝おうとはせず、村の外の何処かへと出ていってしまった。

ある日、櫓から見えた馬に乗った不振な武士の一団が遠くに見えた。織田軍の斥候と思われたが、その中になぜか新平の姿があった。村の誰かがその斥候に向かって鉄砲を放ったが、もし織田軍だとすると、村は織田軍と敵対状態に入ったことを意味していた。

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夜になると、その日は村で神楽が奉納された。村の中央広場に設置された部隊では、ヤマタノオロチが退治される神楽が舞われていた。伍介は、しばらくお國と見ていたが、やがて神楽の最中、新平と落ち合って近況を話し合った。新平は、織田軍に味方する、真之介のところにいるという。

村中に広がっていく不穏な空気

翌日、村人たちに無断で与平がゴロツキのような野武士の傭兵を村へと迎え入れた。伍介は抗議したが、「これは伍介が望んだことだ」と与平は相手にしなかった。野武士の傭兵軍団は、別の日に尼子真之介の使いの者が来た際も、鉄砲で追い返してしまった。

伍介は、密かに村を出ると、尼子真之介の館へと向かった。真之介は、新平とともに温かく迎えてくれた。側には、お京という密偵の若い女がいたが、伍介は以前、村に帰り着く途中でこの女に会ったことがあった。伍介は、久々に真之介と剣術の稽古をして、現在の天下の情勢を真之介から聞くことができた。

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毛利攻めも終わり、中国地方も織田信長の手中に落ちそうな今、織田家と敵対するのは非常にまずいという。

後日、激しい雨の夜、村の外で斬り合う音が聞こえてきたので、伍介は慌てて外へ飛んでいった。新平が、与平を倒そうと独り村へと忍び込んできたのだが、感づいた傭兵衆が新平を取り囲んだ。新平はよく戦ったが、背後から鉄砲で撃たれて死亡した。そして、新平の元に駆け出した伍介も何者かに後ろから袈裟斬りにされてしまった。

伍介が目を覚ますと、尼子真之介の館だった。事態を把握した真之介は、手勢を連れて与平とその傭兵衆を討つため、たたら村へと攻め入った。

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そこで、頭領の佐吉以外を切り伏せると、真之介は、最後に佐吉と1対1の斬り合いになった。何とか勝利したが、その瞬間、与平が真之介を鉄砲で撃ち殺した。

伍介は、与平に対して切りかかり、渾身の力で与平の持つ銃の砲身を切り落とした。こうして、伍介は自らが撒いた災厄の種を何とか刈り取ることができたのだった。

たたら作りに戻った伍介

しかし、今回の騒動で、伍介は幼少時からの大切な仲間である平次郎、新平、真之介をみな失う羽目になってしまった。自分だけ生かされた天啓を感じ、伍介は定めであるたたらづくりに今日も打ち込むのだった。

後日、徳川家が戦国の世を統一して幕府を開いた後も、たたら村で作られる最高級の鉄は、徳川家康への献上品として重宝されたという。

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4.ストーリーの感想や評価(※ネタバレ注)

本作は、良かった点もありますが、残念な点もいくつかありました。いくつか感想をピックアップしてみたいと思います。

すばらしい出雲地方の風景美と精巧なセット

映画を見てすぐに気づくのが、とにかく非常に美しい出雲地方の風景美です。島根出身で、過去に「RAILWAYS」「渾身-KONSHIN-」など、島根県周辺を何度も映画で撮影している錦織監督の郷土愛が120%感じられる素晴らしい風景でした。

この日、TOHOシネマズ日本橋で本作を見たのですが、終わったあと、歩いて1分のところにある島根県のアンテナショップに行って観光ガイドを沢山もらって来たくらいですから(笑)日本にもまだこんなに秘境のようなすごい風景美を味わえる地域があるんだな、と映像の驚異的な美しさに見惚れてしまいました。

そして、まるで高山都市マチュピチュを想起させるような奥深い山あいに、村一つ分をまるごと作り出した巨大セットは、見ているだけで圧巻でした。NHKの大河ドラマを遥かに上回るリアルな中世の農村風景に非常に目を奪われます。

農村一つをまるごと作った巨大セット「出雲たたら村」f:id:hisatsugu79:20170524084151j:plain

もちろん、特に炉の置かれた茅葺きの建物や、中に設置された炉の様子は、使い終わったらそっくりそのまま博物館の展示にできそうなレベル。実際にEXILEのイベントで「いずもたたら村」として使われているようですね。

たたら製鉄の設備や鋳造プロセスをリアルに再現した様子は、地元などの学校や観光案内所等で社会科や観光の映像資料としてそのまんま使える優れた映像でした。

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伍介が海路で敦賀まで旅立った際に使った中世の帆船もすごい迫力でした。ほんの1~2分程度の船での渡航風景を撮影するだけなのに、CG/VFXに頼らず、わざわざ巨大な木製の帆船を組み上げて、それを海で走らせる贅沢な映像は圧巻!

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さらに、お國を演じた石井杏奈の巫女姿での神楽シーンも素晴らしかったです。夕陽が映える中、神楽風の音楽に合わせて踊るシーンは、男臭い映画の中、一瞬の清涼剤のような感じでした。

現代にも通じる複数のテーマ性を持たせたのも良かった

本作のメインテーマは、映画開始早々に青柳翔がセリフで「力とは何か?本当の強さとは何か?」とアッサリ語っちゃうのですが(笑)、それ以外にも、日本の伝統芸能、ものづくりへの礼賛や、日本の美しい原風景、郷土愛などがたっぷり感じられる映画でした。

1500年以上出雲で続いている「たたら製鉄」f:id:hisatsugu79:20170524084711j:plain

良かったのは、「たたら村」で作られる「鉄鋼」を、例えば「石油」や「石炭」などのエネルギー資源に読み替えた時、たたら村を巡って起きる「鉄砲」と関連リソースの奪い合いは、現代のにもそのまま適用できるストーリー展開でした。

たたら村は、最終的に武装せず鎖国状態で中立を守ることを選びます。現代でも例えば実際に資本主義を避けて鎖国を続けているチベットの秘境、ブータンのような国もありますし、エンディング後のたたら村がどういう結末を迎えたのか興味深いところです。

また、村の若いメンバーと長老メンバーの間、または外の世界を見てきた伍介と外の世界を知らない新平のような「価値観」の対立は、歴史の大きな転換点においては必ず起き得る混乱だと思います。

このように、メインテーマである、いわゆる「放蕩息子が帰ってきて、自らの真の使命に目覚める」という王道ストーリー以外にも、いくつも読み取れるテーマ性があったのは非常に良かったと思います。

格調高い映画を台無しにした脚本・演出の拙さ

しかし、残念ながら試写会の段階からかなり視聴者の満足度は低く、本作品は結果的に評判も伸びなかったため、公開初週から非常に厳しい興行成績となっています。自主配給で広告宣伝が少なかったのもあるかもしれませんが、最大の原因は、「脚本」の拙さだと思われます。

まず、各キャラクターのセリフが酷い・・・。村の長老や、伍介の先輩格のキャラクターが、次々に「良さげな」格言めいた、あるいは謎掛けめいたセリフを話すんですが、わざとらしすぎて逆に白けてしまいます。

その一方で、語られるべきストーリーの骨格部分は、ふわっと流れていってしまいます。なぜ今それが起こっているのか?今出てきたキャラは誰なのか?というストーリーの詳細や因果関係については、映像的な工夫やセリフでの説明が少なく、なんとなく物語が進んでいくのです。あるいは、編集で切りすぎて、前後がロジカルにつながっていないシーンもありました。

風景やセットはきれいなんですが、非常に単位あたりの情報量は少ないのですよね。ストーリーテリングを後押ししたり、キャラクターの心情を暗喩するような使われ方をせず、単にきれいな風景を撮って終わってしまっています。

だから、例えば何か村に不吉なことが起こっているのを暗示する場面も、判で押したように毎回「おばば」の不吉な予感を告げるもったいぶったセリフや、「長老」の苦虫を潰したような表情のみ(笑)

物語の不穏な展開を暗示する「おばば」の予感
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また、モブキャラたちはきちんと方言を喋っているのに、主演のEXILE勢だけはバリバリ標準語なのはなぜなんでしょうか・・・。リアリティを出すなら主演の彼らこそ濃ゆい出雲ことばを喋らせるべきだったと思います。

一体この映画の主役は誰なのか?

映画フライヤーや宣伝記事では、「新しい武士道」像を提示する!と書いてありますが、そもそも主人公の伍介は、戦場で一度も剣を振るっていませんし、侍になりたい、と言って挫折して村に逃げ帰ってくるわけです。

稽古の場面は勇ましい伍介ですが・・・f:id:hisatsugu79:20170524091424j:plain

代わりに、この映画では伍介の親友、新平や、彼のメンター的な尼子真之介が、伍介の目の前で敵と渡り合い、そして敵の放つ火縄銃の前に無念の死を遂げるわけです。その間、やっぱり伍介は戦闘シーンを見ているだけ・・・。

だから、伍介が村に帰ってきてからは、主役は新平に移り、さらにクライマックスで尼子真之介になったかのようでした。

ある程度EXILEメンバーのアイドル映画である、という側面もあるかもしれませんが、さすがにこれだけ主役に無力感があると、映画的なカタルシスを感じるのは非常に難しいのではないかなと思います。最後にほぼ無抵抗なヴィランが持つ鉄砲の砲身を斬って終わり、じゃ物足りません。

殺陣シーンはもう少し何とかならなかったのか

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それから、本映画で何度か出てきた戦闘シーン。戦国時代らしく、殺陣シーンはまずます高頻度で出てきます。ただし、その全ての画面において、映画の「レーティング」を気にしたのか、「血が一切流れない」演出が非常にひっかかりました。

かなり頑張って演技でカバーしようとしていたのですが、血糊がある程度出ないと、やっぱり斬ったか斬られたのかよくわからないので、見ていてイライラするのですよね。特に、同時期に「無限の住人」でやり過ぎなほど殺陣シーンが血まみれになる映画を見たから余計そう感じたのかも。

ヒロイン役「お國」の掘り下げ方も甘いと感じた

最後ですが、石井杏奈の演じたヒロイン役「お國」のキャラクターについて、少し類型的・記号的すぎる描かれ方もちょっとどうかな?と感じました。聞き分けが良すぎて、まるで牢獄に囚われたお姫様のようなキャラクターだったのは残念。

ひたすら待ち、祈るだけの従順なヒロインf:id:hisatsugu79:20170524084912j:plain

小さい頃からの幼馴染で、しかも許嫁なんですよね?勾玉を渡して旅の無事を祈る神楽を踊るシーン以外にも、主人公ともっと積極的に絡むシーンがあっても良かったはず。現代でも通用する普遍的なテーマ性を込めるなら、もう少し主演女優は受け身一辺倒ではなく、アクティブな方が自然な気がしました。

5.伏線や設定などの考察・解説(※ネタバレ注)

「感想」でも書きましたが、この映画で問題だと感じたのは、具体的な心情表現や格言めいた意味ありげなセリフは饒舌に語る反面、ストーリーや設定・伏線等の因果関係が明確ではなく、映像での状況描写やセリフでの説明が非常に薄かったこと。モントリオール国際映画祭に出品した時より、最終的にそこから15分間編集で詰めたことも影響しているようです。

ノベライズ版原作では、前後関係がきっちり説明されていますので、本作のストーリー上、ポイントになる疑問点をここでまとめておきたいと思います。

疑問点1:本作はいつの時点の話なのか?

1582年(天正10年)でした。クライマックス直前になって、尼子真之介が織田軍の状況を語るシーンがあります。ちょうど、織田軍の大将、羽柴秀吉がたたら村を間接統治する毛利家と戦っており、物語ラストでのお京の報告でちょうど本能寺の変が起きたことが知らされました。

疑問点2:平次郎はなぜ村を出ていく時に襲われて死亡したのか?

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平次郎は、村長の長次郎の長男として、たたら村で作られた鉄を外部へ売りに行く担当だったのです。殺された日も、ちょうどできた鉄を持って下山するところでした。(野盗たちがそれを知っていたかどうかは定かではありませんが)

ちなみに、平次郎が「木刀」しか持っていなかったのは、彼は人を殺めたくなかったからです。村一番の剣の達人でしたが、決して「刀」を帯刀しようとはしませんでした。

疑問点3:尼子真之介(AKIRA)とはどんな人物なのか?なぜ物語最後ギリギリになるまでたたら村を守ろうとしなかったのか?

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尼子真之介は、もともとたたら村近辺を治めていた尼子家の分家筋の武士で、たたら村の警護担当でした。戦場に出ることを許されなかったため、通常時に特別な「から紅」の陣羽織を着用することを代々許されてきたのだそうです。

しかし、1566年、毛利家に尼子本家が滅亡させられて、尼子家の残党・家臣たちは、打倒毛利の旗の下、山中鹿之介らを筆頭に、織田勢に加勢していくことになります。「敵の敵は味方」という論理ですね。

真之介は村人たちから非常に慕われていたので、いつでも村に気兼ねなく出入りできる立場でした。しかし、いつまでもたたら村周辺に真之介が出入りすることで、毛利家を刺激して村に被害が出てはいけないと考えた真之介は身を隠し、村が危機に陥ってもギリギリまで出ていくことができなかったのです。

疑問点4:なぜたたら村では「鉄砲」を作ることに消極的なのか?

1566年に尼子宗家が滅びた時、戦乱の世で振り回されないため、村の掟として人を殺す武器として「鉄砲」を作らない、と決まったからのです。これが奏功し、その後この地方を統治することになった毛利家では、人里離れたたたら村に価値を認めず、代官すら置かなかったという経緯もあります。

疑問点5:伍介が士官した井上辰之進とは誰なのか?

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井上辰之進は、織田信長の子飼いの配下、蜂須賀小六の抱える足軽衆を取りまとめる上級下士官といった位置づけの武士です。戦慣れしておらず、戦場においてそれほど戦力として機能しない足軽部隊は、鉄砲隊や騎馬隊も含めた全軍の雑務を引き受けていました。

足軽を取りまとめる井上辰之進は、その役柄上、武器や食料に関する出入り商人との接点が多かったため、士官を希望する農民達を新兵として商人から調達することもよくあったのでしょう。

疑問点6:村に入ってきた浪人衆は一体だれなのか?与平は何をしようとしていたのか?

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村に入ってきた浪人衆は、与平が関わりがあった羽柴秀吉の発破衆(忍者や間者)とされています。与平は、織田軍本体とは別ルートで鉄砲の入手を試みていた羽柴秀吉の意向を先読みして、たたら村に鉄砲を作らせて秀吉に鉄砲を届けようとしていました。(しかしそれも「本能寺の変」が起きて、秀吉が中国地方を離れたため結果的に無意味なものとなった)

疑問点7:なぜ新平は村で襲われて殺されたのか?

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真之介の拠点に出入りするようになった新平は、彼らからの情報をいち早く得て、たたら村にとって「ガン」なのは与平であることを見抜きました。彼は、与平を殺してしまえば、また村に平和が訪れると考えて、闇夜に紛れて村に忍び込み、与平の暗殺を試みましたが、それを読んでいた与平とその傭兵集団に逆に殺されてしまったのです。

6.まとめ

島根県や地元関係者の支援を受けて制作された本作は、幻想的で美しい出雲の自然風景と、伝統的な鉄づくりや地元に伝承された神楽など、出雲地方の魅力が満載でした。残念だったのは、ストーリーや演出の弱さ。ちゃんとした脚本家を招いて作り込めば素晴らしい映画になっていたと思われるので、詰めの甘さが悔やまれます。

でも、個人的には島根に旅行に行きたいなと強く思いましたので、地域おこし映画としてはかなり成功してるんじゃないでしょうか?近日中に、奥出雲のたたら製鉄の博物館などを見てきたいと思います。

それではまた。
かるび

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

ノベライズ版「たたら侍」

映画本編で不足しているストーリーの全体像や背景知識の説明も十分なされていますし、編集で公開前にカットされた部分も収録。映画ノベライズ作品としては、手堅くまとまったレベルの高い小説。映画を見た後にモヤモヤした人は、合わせて読んでおくと理解が深まります。