あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

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【ネタバレ有】映画「追憶」感想・考察とあらすじの徹底解説!/岡田准一の名演技と詩情あふれる風景美が最高でした!

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かるび(@karub_imalive)です。

5月6日にリリースされた岡田准一主演「追憶」を見てきました。映画館では久しぶりに味わった本格的な古き良き「ザ・日本映画」でしたが、迫真の演技、美しい詩情たっぷりの画面に酔いしれた1本となりました。

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「追憶」の基本情報

<映画「追憶」公式予告動画>
※下記画像をクリックすると動画がスタートします

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】降旗康男(「鉄道員」「駅-STATION-」他)
【撮影】木村大作(「劔岳」「春を背負って」)
【配給】東宝
【時間】99分
【原作】青島武「追憶」公式ノベライズ

大自然の厳しさや美しさ、映画的な視覚効果を大切にして詩情豊かな画面作りが得意な木村大作と、人情味豊かなヒューマンドラマに定評がある降旗康男。共に、77歳、84歳と、日本映画界では「レジェンド」となった最古参の長老級の映画人ですが、彼らがタッグを組んだのは、実に9年ぶりで通算16作目。パンフレットには「再始動」と書かれていましたが、年齢から見てこのコンビでは恐らくもうこれが最後か、あってももう1作くらいが限界なのでは・・・^_^:

ともかくも、古き良き60年代、70年代の日本映画黄金期の香りが漂う「これぞ折り目正しい日本大作映画!」という雰囲気の1本に仕上がった渋い作品となりました。

また、音楽も大仰なクラシック音楽路線が得意な千住明を起用。大河ドキュメンタリー的な雄大なテーマソングを始め、劇的にドラマを盛り上げる大掛かりな劇伴音楽の効果も見逃せません。

2.映画「追憶」の 主要登場人物とメインキャスト

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その時々に応じて、一番旬の俳優を積極的に登用する降旗監督。主演俳優陣には、日本アカデミー賞受賞歴もあり、賞レースで常連となった実力派7名が揃いました。 

四方篤(岡田准一)
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いつになく最後まで険しい表情が続き、緊迫感のある鬼気迫る演技が素晴らしかった今作。降旗康男×木村大作も認めた「高倉健の後継者」として、俳優として超一流へ上り詰めつつありますね。今作では、木村大作のススメで東京での捜査シーンの一部カットの撮影にも参加しています。将来は映画監督にもなっちゃうのかな・・・。

田所啓太(小栗旬)
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作品によっては「棒演技?」と疑ってしまうほど空回りしている時もあり、演技の出来にムラがあるイメージでしたが、今作では岡田准一とともに引き締まった演技を披露しており、素晴らしかったです。岡田准一とは、ドラマ「大化改新」(2005)以来、約12年ぶりの共演となりました。

川端悟(柄本佑)
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家族を守るために、秘密を共有する啓太を半分強請るなど、心の強さと弱さが同居する難しい役どころを見事に演じた今作。個人的には、実生活上の妻、安藤サクラとの共演シーンを楽しみにしていたのですが、1ヵ所ありました!
四方美那子(長澤まさみ)f:id:hisatsugu79:20170509101243j:plain

長澤まさみももう今年30歳の大台で、すっかり中堅クラスの女優として安定して映画・ドラマへの出演が続くようになりましたね。去年から「君の名は。」「SING」などアニメ映画での声の出演が印象的でしたが、今作では夫とのすれ違い生活で愛情に飢え、疲れ気味の主婦を好演していました。役作りなのか、少しふっくらしてきましたよね?

田所真理(木村文乃)
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主演級キャラの中では、唯一過去に縛られず、自然体で幸せオーラを出しているキャラクターでした。出自の後ろ暗さとは対照的に、里親に愛情いっぱいに育てられた真理の天真爛漫な性格は、暗く沈みがちなストーリーに明るさを与えていました。しかし、早いもので木村文乃も今年で30歳なのですね。

仁科涼子(安藤サクラ)
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「日本のマリア様」になれる人を探していたという降旗康男監督の抜擢により、涼子役に指名された経緯が映画パンフレットに掲載されていました。確かに、一種仏像のような顔つきは降旗監督の見立て通りなのかも。劇中、夕日に向かって祈りを捧げるシーンや、ラストシーンは確かに「聖母マリア」そのものだったと思います。

山形光男(吉岡秀隆)
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昨年「海賊とよばれた男」での岡田准一との共演が記憶に新しいところですが、今回の役のほうがより素に近い役どころかもしれません。相変わらず少し弱気で頼りなさそうな役柄はアテ書きだったのかも。

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3.結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)

封印された記憶

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1992年12月24日。北陸地方を中心に日蝕が観測されたその日、厳しい雪と風が吹きすさむ能登半島の海沿いの街での出来事は、当時まだ少年だったアツシ、ケイタ、サトシの3人には忘れられない記憶となった。

それぞれの事情で、家庭の温もりを知らない少年たちにとって、母親同様の存在だった涼子。その涼子に乱暴を繰り返す、出所してきた元ヤクザの愛人に涼子との共同生活を脅かされた少年たちは、ヤクザの愛人を襲撃し、殺害してしまったのだ。最初に計画したアツシが男にバットで不意打ち同然で襲いかかり、涼子が止めに入る寸前に、抵抗した男をケイタがナイフで止めをさしたのだ。

ぐったり動かなくなった男を目の前に呆然とする3人に対して、涼子は、「全て忘れなさい」と3人に言い含め、3人の代わりに自首して刑務所へと投獄されたのだった。それっきり、3人はバラバラとなってしまい、再びしばらく会うことはなかった。

2017年、3人の近況

あれから25年。3人の少年たちは大人になり、それぞれの生活を営んでいた。

アツシこと四方篤は、現在は富山市内で刑事として働いていた。激務の中、確実に実績を重ね刑事としてのキャリアは順調だったが、その反面、私生活はうまく行っていなかった。課長の紹介で、保育士として働いていた美那子と結婚して5年経過していたが、子供にも恵まれず、ほぼ別居状態が続いていた。また、奔放に男性と遊び歩き、幼少時に篤を放置した母は、晩年になって精神的に不安定な状態が続いていた。その日も、筋の悪い借金を作ってしまったと電話をかけてきて、篤を悩ませるのだった。

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一方、サトシこと川端悟は、都内のガラス職人として入婿となり、義父の跡を継いで工務店の社長となっていた。現在は小川という社員一人にも給与を遅配するほどの苦境にあったが、悟は受け継いだ会社と家族を守ろうと、必死で働いていた。

悟は、金策のため旧友を富山に尋ねると妻に打ち明けると、妻は妹夫婦に借りた香典万円の入った封筒を悟に持たせて富山へと送り出した。

ケイタこと田所啓太は、妻、少数の従業員と地元、輪島市で土建屋を営んでいた。臨月を迎え、第一子の出産を控える妻、真里との新居の契約をその日、丁度すませたばかりだった。

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啓太が契約した売りに出されていたその土地は、彼ら3人が涼子と幸せな日々を過ごした場所で、涼子は、好きだった雪割草の花にちなんで経営していたスナックに「ゆきわりそう」という名前をつけていた。3人はそこで出会ったのだ。

25年後に再会した篤と悟

篤は、ある日富山市内のラーメン屋で昼食を取っていたら、偶然金策に来ていた悟と出くわし、そこで夜まで飲みに行くことになった。あの日、「もう2度と会わない」と涼子に言い含められていたのに、色々と私生活を詮索してくる悟を警戒し、篤は厳しい表情を崩さなかった。しかし、もう一人の旧友、啓太にお金を借りに行くという悟の話を聞き、篤は別れ際に手持ちの金を手渡したのだった。

翌日、啓太は「ゆきわりそう」跡地を義理の両親に案内した後、啓太の会社で待っていた悟を見ると、悟と別の場所へと移動して、悟のためにお金を用意してやるのだった。悟は、啓太から金を受け取ると、その足で妹の家に行き、妻から託された香典代を返却した。

一方、篤志は久々に捜査が一段落したので、保育施設で働く美那子を食事に誘い出してみたが、美那子の都合がつかずそのまま別れた。

何者かに殺された悟、捜査に動き出す篤

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次の日の朝、殺人事件発生との一報を受け、篤が現場へ急行してみると、そこには昨日25年ぶりに偶然再会し、飲んだばかりの悟の刺殺体があった。まもなく妻の小夜子も富山に来て、事情聴取を受けることになった。

初動の現場検証と聞き込みを終えた係員たちは、捜査会議で状況を整理すると、篤は課長より同僚2名と東京での捜査をすることになった。所持していたカバン、金銭、携帯が犯人に奪われていたことから、怨恨と窃盗の両面で捜査を進めることになった。

捜査が進む中、悟の家のアルバムをチェックしていた篤は、悟アルバムから「あんどの家」と書かれた封筒が目につき、それを密かに持ち帰った。ホテルで一人になった時、Web検索すると、そこはデイケア介護施設だった。その時、母、清美から電話があり、薬を大量服薬して自殺未遂を起こして自宅で倒れてしまったという。東京にいて捜査中ですぐに動けなかった篤は美那子に母の世話を頼み、急ぎ富山へと帰着した。

結局、母清美は服薬量が少なかったこともあり、一命を取り留めた。清美は寂しさをわかってほしくて、わざと自殺未遂を起こして篤の気を引こうとしたのだった。控室で美那子に礼を言うと、美那子もまた、心を開かない篤との距離感に悩み、寂しさのあまり別居を選択したのだと涙ながらに語った。

啓太と再会し、涼子の居場所をつきとめた篤

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篤は、母の無事を確認すると、そのまま自家用車で啓太の家へと向かった。悟の死について啓太が何らかの形で関連していると疑った篤は、25年ぶりの再会であったが、厳しい口調で啓太を詰問した。啓太は、「刑事になって自分だけきれいになったつもりか」と篤に取り合おうとしなかった。

次に、篤は「あんどの里」に向かった。車を停めると、意識の焦点があっていない感じの涼子が、車椅子でちょうど玄関から山形に付き添われて出て来るところだった。とっさに隠れて見ていた篤だったが、しばらく衝撃で手が震えていた。

事件の捜査が進んでいくにつれて、啓太らしき人物が悟と厳禁授受をしていたという目撃情報や、ラーメン屋での聞き込みや街の防犯カメラから、悟が死ぬ前日に篤が悟と会っていたことがわかってきた。篤は、課長に潔白を主張したが、これをきっかけに捜査から外れることになった。

フリーとなった篤は、別の日、再度「あんどの里」を訪問し、そこで半身不随となった涼子を世話していた山形に直接話をした。涼子は、刑務所から出所して山形と一緒になり、3年前の交通事故で半身不随になって、脳を強く打った影響で重度の記憶障害に陥ったのだという。悟や啓太は、その時に涼子の居場所を突き止めて、彼らと再開したのだという。すでに3人のことは覚えておらず、山形からは、もう事件のことは忘れてしまっても良い、と優しく篤に諭した。

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篤は、その後、今は廃墟となった「ゆきわりそう」へ行き、昔を思い出すと、その足で啓太のオフィスへと再度向かった。啓太は今や重要被疑者として現場付近に捜査員が張り込んでいたが、篤は気にせずに啓太を訪問していった。

真理の出産、真犯人の逮捕

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二人は再び言い合いになり、啓太に対して「何を守ろうとしているのだ、真実を話せ」と篤が迫った時、ちょうど真里が産気づいた。二人は言い争いを辞めて、真里を乗せて珠洲総合病院へと真里を運んだ。

予定より1ヶ月早い帝王切開での出産となり、緊急手術が行われることになった。待機中、東京で捜査を続行していた山崎から、真犯人は悟の妻、小夜子と従業員の小川だったと告げられた。二人の共謀による保険金殺人で、悟を追って秘密裏に富山入りした小川が、悟の妹の実家を出た時に刺殺したのだった。二人の不倫関係に気づいていた娘の証言が決め手となり、小夜子と小川がそれぞれ自白したという。

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篤は、啓太が真犯人ではなかったことに心から安堵したが、同時に篤と啓太はやりきれない気持ちになった。家庭を守ろうと必死だった悟が身内の裏切りにより命を失ったからだ。

そして、母子ともに問題なく出産は完了した。啓太は初めて「おめでとう、ケイちゃん」と昔の呼び名で啓太を祝福した。啓太もまた、「ありがとう、アッちゃん」と答え、啓太が3年前に涼子に再会したこと、涼子が獄中で出産し、里親に出した一人娘だった真里を探し出し、結婚したことだった。啓太は、真里と、生まれてくる子供を守るため、警察や篤に対して捜査に消極的だったのだ。

エピローグ~涼子との対面~

生まれてきた子供は、女の子だった。真里は、見たことのない生みの母から一文字を取って、子供の名前を「涼」と決めた。事件が終わると、啓太は予定通り「ゆきわりそう」の解体に自ら着手した。

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篤は改めて事件現場で悟の娘とともに悟を弔い、「あんどの里」で涼子と対面した。夕日の見える海岸沿いに連れ出し、涼子にあらためて挨拶すると、涼子は篤をそっと包み込むように抱きしめるのだった。

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4.ストーリーの感想や評価(※ネタバレ注)

ストーリーとマッチした厳しく、寂しく、そして美しい北陸の情景

今作で撮影を担当した業界のレジェンド「キャメラマン」木村大作は、これまで手がけてきた数々の作品で、一環して大自然の「雄大さ」「美しさ」に着目して画面を作ってきました。

木村が富山を撮るのは「劔の記」「春を背負って」以来3回目になりますが、今作でフォーカスされているのは「日本海の夕日」です。「北陸の地の厳しさ、寂しさ、美しさを詩情豊かに表現していきたい」と語っていた木村監督の言葉通り、ストーリーにぴったりな美しい風景に彩られた映像美が素晴らしかったです!

特に、冒頭の厳しく荒れ狂った冬の海景からクライマックスの穏やかな夕陽の映える海岸線まで、主人公たち(特に篤)の心情や状況に合わせ、様々な異なる表情を見せる「夕陽」を的確に捉えた画面が非常に印象的でした。さすが60年の経歴はダテではありません!

主演俳優陣のしっかりした演技力はさすが!

降旗康男×木村大作が組んだ作品では、現場での撮り直しがほとんどないことで有名ですね。基本はどのシーンもテスト撮影1回、本番1回で撮り終えるそうです。そして、場合によっては、セリフ回しも現場で俳優陣に任せてしまうなど、彼らの作品の出来不出来は俳優の力量に負うところが大きいのです。

しかし、今回映画を見ていくと、とても1回で撮影OKが出たとは思えないほど、各役者の演技に緊迫感があり、確かな力量を感じることができたのは驚きでした。

特に、主演の岡田准一の迫力や存在感が素晴らしく、降旗、木村両名から「ポスト高倉健」と太鼓判を押されるだけのものがありました。木村監督も「佇まいが素晴らしい」と絶賛でしたが、確かに今作で岡田准一からは特別なオーラみたいなものが感じられるのですよね。前作「海賊とよばれた男」でも伝説の経営者になりきった演技で日本アカデミー賞にノミネートされましたが、確実に今作で一皮むけた感じがあります。

その他、出来不出来がはっきり作品で分かれる小栗旬も今回は良かったと思いますし、相変わらずどんな役でもこなせる安藤サクラの怪演ぶりや、長澤まさみの成長も感じられました。今作は、出ている俳優陣がみな特別に意気込みを持って撮影に臨んだのだな、というのが非常に良く分かる映画でした。

家族を形作り、命を繋いでいくものは「愛情」

今作では様々な家族のカタチ・あり方が描かれましたが、血の繋がった親子や正式な婚姻関係にある家族よりも、血縁関係がなくや正式な手続きを経ていない家族の方がむしろ温かく、本物の家庭らしく描かれました。

特に、軽食喫茶「ゆきわりそう」で共同生活を送った涼子と子供たちの絆や、里親に出され、そこで愛情を一杯に受けて幸せにまっすぐ育った真理。また、真理のいる田所興業は、従業員を含めてまるで大きな家族のような温かい雰囲気でした。

それに対して、愛情表現がうまくできず、母や妻との関係が冷え切った篤や、仕事で結果を出せず、妻と従業員に見放され殺されてしまった悟はまさに対照的。

結局、家族を形作る最大の要素は血縁や出自や婚姻関係ではなく、そこで一緒に暮らした人間同士の愛情が通い合っているかどうかなのだな、と強く思わされます。

聖母マリアを強く想起させるラストシーンが圧巻!

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そして、安藤サクラ扮する涼子に水色のセーターを着せ、確信犯的に聖母マリアを強く想起させるラストシーンは圧巻でした。(西洋絵画の中で聖母マリアは「青い」マントを必ず着用している)

聖母マリア像(必ず青いマントを着ている)
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(引用:Wikipediaより)

それまで、一貫して厳しく固い表情を崩さなかった岡田准一扮する篤が、穏やかな夕陽の映える海辺で初めて見せる安堵の表情!今思うと、映画ポスターとして公開前から大胆にネタバレされていたわけですが(笑)、見ているこちらも心から安らかになれそうな穏やかな岡田准一の表情は、聖母マリアに癒され、救済される子供そのものでしたね。

旧友の衝撃的な死をきっかけに、篤の心の中の矛盾はピークを迎え、彼は荒んだ自分の心に強制的に向き合わざるを得なくなっていきます。そして、徐々に刑事捜査の範疇を越え、一個人として一旦関係を絶った大切な人たちと出会いを重ねていくようになりました。大切な記憶や25年分のミッシングリンクを取り戻していく中、自分の母親代わりでもあった、一番大切な人=涼子と正面から向きあった時、篤は心から切望していた「母親からの愛」を彼女から受け取り、満たされたのですよね。この瞬間、篤の中で25年前の記憶は、「後悔」「悔悟」から「追憶」へと変わったのだと思います。

人が何人か死に、決して手放しでのハッピーエンドではありませんでしたが、見ている観客一人ひとりが「救われた」ような気持ちのよい余韻と静かな感動が残る素晴らしいエンドロールでした。

 

5.伏線や設定などの考察・解説(※ネタバレ注)

ここでは、映画本編で少し分かりづらかったポイントや、ストーリーを補完する設定・伏線などについてまとめています。

「ゆきわりそう」に込められた意味

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(引用:http://echigo-park.jp/guide/flower/hepatica/

涼子と3人が出会い、共同生活を送ったスナック「ゆきわりそう」は、涼子が好きだった花、雪割草にちなんでつけられました。雪割草は、北陸地方の高地に自生し、5月~6月に開花する野生花ですが、特に奥能登の輪島市、珠洲市近辺でよく見られます。特に、輪島市の猿山岬での大群落は、日本有数の規模で咲いており、毎年野生花マニア・愛好家が遠征して見に来る秘境として知られています。

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特に輪島市では、雪割草を「市の花」として制定し、毎年3月下旬に「能登雪割草祭り」という祭りも開かれるなど、地元で非常に愛されている花ですね。

また、雪割草の花言葉は、「信頼」「忍耐」「内緒」「悲痛」「和解」「少年時代の希望」など多岐にわたります。どれも、まさに本作のテーマを象徴するような意味が込められていたのですね。

真犯人はどうやって判明したのか?その動機は?

今作での真犯人は、殺害された悟の妻、小夜子と彼の経営する会社の従業員、小川の2名でした。小夜子と小川は不倫関係にあった上、苦境にあった会社経営も絡んだ経済的な事情も加わり、小夜子は小川と共謀して、保険金殺人を企てたのでした。判明したのは、悟の娘、梓の証言と、取り調べによる本人たちの自白によるもの。

降旗康男監督作品では、なぜかアクションシーンや追跡シーンはあっさりとカットされることがよくありますが、今回もそういった取り調べでの修羅場や、チェイスシーンは一切なし。クライマックスで、同僚の山崎が篤に電話をかけてきたことで、シンプルにストーリーが流れていきました。

具体的なトリックも、動機をめぐるバックストーリーの描写も派手な騙し合いも一切なし。つまり、サスペンス刑事ものという体裁を取りつつも、今作の本質はあくまで主人公、篤の心の内面での葛藤と救済を描いたヒューマン・サスペンスだったということですね。

啓太が守ろうとしたものとは?また、真里と結婚に至った経緯とは?

啓太が刑事である篤や警察から守ろうとしたものは、25年前の事件の真相ではなく、彼と結婚した真理の出自の秘密でした。

それは、3年前、啓太が交通事故で半身不随・記憶喪失となってしまった涼子を訪ねた時、そばで看病していた山形から「娘がいるということを忘れないでいて欲しい」と頼まれたことがきっかけでした。涼子が獄中で殺害してしまったヤクザの子を出産した後、中岡家に養子に出された真理の存在を山形から伝えられた啓太は、最初は真理を遠くから見守っているだけでした。

しかし、真理が働く美容院に通い詰めるうち、啓太は真理に本気で惚れてしまうようになります。啓太の気持ちが通じて、真理と啓太はやがて結婚し、子供を身ごもることになりました。本気で真理に惚れ、幸せな家庭を築きたかった啓太にとって、今回の事件で警察から洗いざらい過去を探られると、やがて真理が25年前の事件のことや、彼女自身の不幸な出自について、知り得てしまう恐れが出てきます。それだけはなんとしても避けたかったことだったでしょう。

美那子と篤のその後の関係はどうなるのか?

映画では省略されていましたが、ノベライズにそのヒントとなる描写があります。事件が解決し、悟の殺害現場で祈りを捧げた篤は、悟が生前最後に娘に電話をかけた事件現場近くの公衆電話で、妻、美那子に電話をかけて改めて「話したいことがある」と和解に向けた提案をしています。ちょっと引用してみると・・・

四方は美那子を抱きしめたいと思った。子供の頃から、自分は誰かに抱きしめてほしいと願っていたのだ。誰かに抱きしめてもらうには、自分が誰かを抱きしめなければならない。そんな当たり前のことにようやく気づいた。 

ということで、美那子とも、よりが戻っていくことが、強く示唆されていました。 

2003年アカデミー賞受賞作「ミスティック・リバー」と類似する脚本

本作は、2003年にボストンを舞台にしたクリント・イーストウッドが監督を務めた傑作「ミスティック・リバー」とかなりの点で物語に共通点があります。幼馴染3人があるトラウマ級の事件をきっかけに疎遠になり、何十年後かに被害者・容疑者・刑事の立場でそれぞれ再会するというストーリー構造がまずそっくり!

主人公たちはそれぞれ幼少時の過去の記憶にとらわれていますが、事件をきっかけに過去と向き合い、心の傷を清算するプロセスを描いているという点でテーマも類似していますし、「追憶」では海を、「ミスティック・リバー」では川をそれぞれ心情描写の暗喩として似たようなモチーフを象徴的に使ったという点でも共通点があります。

両作品とも本格派俳優達の緊張感あふれる演技のぶつかりあいが素晴らしい傑作ですね。是非、こちらもDVDや映像配信でチェックしてみてくださいね。

6.まとめ

「映画というのは、不幸な人を描くものである」「幸せや幸福を捨てていく人の人間らしさ、悲しさ、美しさを描くのが映画である」と主張する降旗康男監督。そんな監督の思いと、日本海の厳しく美しい大自然の中、詩情たっぷりに撮り切った木村大作撮影監督の衰えない技術が、ガッチリとあわさった傑作に仕上がりました。

岡田准一の役者としての凄み・貫禄も確かに感じられる1本でもあります。非常に気に入った1本となりました。おすすめです!

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年5月現在上映中映画の感想記事一覧

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

ノベライズ版「追憶」

脚本を担当した青島武によって書き下ろされた映画原作。大筋では同じストーリーですが、脚色を小説向けに洗練させ、映画版とは違う「別作品」として楽しめる趣向がかなり施されています。舞台の違い(富山→北海道)をはじめ、殺人事件で使われたトリック、映画では描ききれなかった各キャラクターのバックストーリー、より複雑かつ洗練された物語の構造など、見どころ満載。

現場での裁量や台詞回しを俳優に大胆に委ねる映画本編に比べ、情報量が増えた上、よりプロットとして計算しつくされた緻密さが味わえる素晴らしいノベライズ。これはおすすめです!

映画「ミスティック・リバー」

2004年の第76回アカデミー賞で主演男優賞、助演男優賞と主要2部門を制した名作。本作「追憶」と脚本に共通点が多く、合わせて見てみると面白いと思います。2017年5月現在、Amazon Prime加入者は、Amazonビデオが無料で視聴できますよ。

降旗康男監督作品は、まとめてU-NEXTで!

上記でオススメした関連作品以外にも、降旗康男監督作品を一気に楽しむには、ビデオ・オンデマンドが一番時間をお金を節約できるベストなサービスだと思います。

現在、僕はU-NEXT、Hulu、AmazonPrimeとオンデマンドサービスに3社加入しているのですが、降旗康男監督作品はU-NEXT貴重な初期作品を中心に16作品、全て「見放題」でチェックすることが出来ます。

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