あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」 感想・レビューと8つの疑問点を徹底解説!/幻想的な映像表現に酔いしれた!傑作!

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【2017年12月9日最終更新】

かるび(@karub_imalive)です。

8月19日に公開された東宝の夏アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を見てきました。昨年度「君の名は。」と比較されたのか、現在のところ各種レビューでの点数はかなり辛めではあります。

でも、個人的には非常に満足度の高い映画でした。確かに社会的なテーマ性やメッセージ性は薄いです。しかし、思春期の入り口に立った少年・少女の繊細さや一瞬の輝きを多彩な映像表現で描ききった傑作だと思います。後半にかけて、現実と心象風景の境目が溶けて、渾然一体となる怒涛の映像世界は大好物なのです!ハリウッド流の3Dアニメ・VFX/CG満載の実写映画が全盛となる中、2Dアニメ表現の最先端を満喫できました!

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリの後半では、ストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「打ち上げ花火 下から見るか 横から見るか」の予告動画・基本情報

映画基本情報

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【監督】新房昭之(「まどか☆マギカ」シリーズ他)
【脚本】大根仁(映画/ドラマ「モテキ」、「SCOOP!」他)
【原作】岩井俊二(「ラブレター」「リップ・ヴァン・ウィンクルの花嫁」他)
【配給】東宝
【時間】90分

1991年、元々はフジテレビのTV企画「もしもif」で製作された1時間モノ企画ドラマだった本作は、その斬新な映像表現や主演・奥菜恵のフレッシュな魅力が評価され、カルト的な人気を博しました。1995年に約50分の短編映画にまとめ直されて、映画館で公開されるに至ります。

そこから約20年が経過し、東宝のプロデューサー、川村元気氏からアニメ映画化の企画が原作者、岩井俊二氏に持ち込まれました。岩井氏は、この時演出家・監督として独特のセンスを持つヒットメイカー、大根仁氏が脚本担当を務めることを条件に了承。さらに、アニメ製作&監督はアニメ「まどか☆マギカ」シリーズや西尾維新「物語」シリーズ等を手がけ、業界で唯一無二の個性を放つシャフト&新房昭之に決まりました。

岩井俊二×大根仁×新房昭之という、独特の作家性を持つ三者に、ヒット作を連発するプロデューサー、川村元気氏という最強の組み合わせで製作された本作。同様のスキームで製作され、興収250億円を叩き出した2016年の東宝の夏アニメ映画「君の名は。」同様、オリジナルアニメ映画となった本作。東宝サイドの目標興収は最低でも20億円と強気ですが、酷評の嵐の中、さてどうなるでしょうか・・・。

絶対行く前に見ておきたい予告編!

いくつか予告編が発表されていますが、ちょっと見ただけでも「シャフト」の持ち味・特性が120%活かされた映像美術が素晴らしいです。是非、映画館に行く前にチェックしてみて下さい!映画本編はさらに息を飲むような美しいシーンで魅せてくれますよ!

▶映画「打ち上げ花火~」公式予告動画
※画像をクリックすると動画がスタートします


動画がスタートしない方はこちらをクリック

また、エンディングテーマのDAOKO×米津玄師のデュエット「打上花火」は、音楽もいいですが、このMVでしか見られない映画内のシーンが満載。こちらも予告編と合わせて見ておくと、より世界観が理解できます。

▶DAOKO × 米津玄師『打上花火』MV
※画像をクリックすると動画がスタートします


動画がスタートしない方はこちらをクリック

2.主要登場人物・キャスト

最近のアニメ大作映画は、話題作りや一般性を持たせるために声優より普通の映画・ドラマ俳優が声を担当することが増えてきましたが、本作は主演の2名(となずなの母/松たか子)以外は、ほぼ声優陣が脇を固める布陣となっています。

島田典道(CV:菅田将暉)f:id:hisatsugu79:20170819100735j:plain
引用:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3
いつもより少し高めの声色で、頼りなさや青々しい感じを出そうと頑張っていましたが、ちょっと力不足だったかもしれません。神木隆之介あたりと比べると、明らかに不慣れで経験不足な感じが出ちゃっていました。本作で最大の弱点になってしまった感があります。実に惜しい・・・。実写では文句なしなので、次は頑張って欲しい!

及川なずな(CV:広瀬すず)f:id:hisatsugu79:20170819101931j:plain
引用:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3
一方、広瀬すずについては、声優2回目ということもあり、子供のような声から大人びた表情の声まで、思春期の複雑な女子を見事に演じきっていました。やっぱりまだ10代なので声も若くて良いですね。

安曇祐介(CV:宮野真守)f:id:hisatsugu79:20170819101950j:plain
引用:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3
実写系の俳優が主役を務めると、脇役1番手として入ることが多くなった宮野真守。本作でも、随分と菅田将暉にアドバイスしてあげたようですね。宮野真守以下、脇役の男子たちは皆上手だったので、余計に菅田将暉が浮いちゃっていたかも。

その他、典道の中学校の同じクラスの悪ガキ軍団、純一、和弘、稔たちもそれぞれ出番は少ないながらも、きちんと個性がわかるくらい上手く描き分けられていました。他には、なずなの母の声を松たか子が務めています。

3.映画の簡単なあらすじ

「打ち上げ花火は横から見たら丸いのか、平べったいのか?」

夏の花火大会の日、港町で暮らす典道は幼なじみと灯台に登って花火を横から見る約束をする。その日の夕方、密かに想いを寄せる同級生のなずなから突然「かけおち」に誘われる。なずなが母親に連れ戻されて「かけおち」は失敗し、二人は離れ離れに。彼女を取り戻すため、典道はもう一度同じ日をやり直すことを願うがー。繰り返す1日の果てに起こる、恋の奇跡の物語。
引用:角川文庫「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」背表紙あらすじより  

※以降、ネタバレ記述あり!ご注意下さい!

※以降、ネタバレ記述あり!ご注意下さい!

※以降、ネタバレ記述あり!ご注意下さい!

※以降、ネタバレ記述あり!ご注意下さい!

※以降、ネタバレ記述あり!ご注意下さい!

※以降、ネタバレ記述あり!ご注意下さい!

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4.映画「打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか」感想・評価

最初は正直「またタイムループ系SF恋愛映画・・・?」と懐疑的だった

「君の名は。」(2016)の大ヒットの前後あたりから、実写・アニメを問わず若者向け恋愛映画は、「平行世界」「異世界」「タイムループ」といったSF要素が特に多用されるようになりました。2017年だけでも、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」「君と100回目の恋」「サクラダリセット」「ReLife」等々、かなりお腹いっぱいな状況です。

本作も、「君の名は。」同様、主人公たちは偶然海で見つけた「もしも玉」を使って、次々と「もしも」の世界=平行世界へと冒険を進めていきます。6月頃に本屋店頭に並んだ大根仁の原作本をパラパラっと読んで、1991年のドラマをHuluで見た感じでは、「確かに奥菜恵はこの時期にしか出せないオーラ出してて凄いけど、まぁでも一応は見ておくか?」くらいのものでした。

見に行ってびっくり!圧倒的な映像表現に酔いしれた!

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引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

しかし!見に行ってみてびっくり!!

特に作家性の強いアート表現が大好きな自分の好みもあるかもしれませんが、その圧倒的な映像表現・映像美術に酔いしれました!ハリウッドをはじめ、世界のアニメーションは完全に3Dアニメが主流となる中、2017年現在、2Dでも頑張ればまだまだこんな斬新で美しい映像表現が可能なんだな・・・と嘆息しきりでした。

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引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

映像表現には引き出しが多い新房昭之監督×シャフトの技術力を核として、岩井俊二原作の、叙情的だけど変わった構図のカメラワークが加わります。さらに、なずなが松田聖子「瑠璃色の地球」を歌いだしたシーンなど、大根仁ワールドもきちんとのっかっているんですよね。じゃあ、何が凄いと思ったのか、少し書いてみますね。

幻想的で美しい風景美に、どこか不穏な雰囲気が醸し出されたストーリー前半

これだけの大作映画なので、画面は美しく精緻に構成されているのは予告編を見るだけですぐにわかりました。全体的に明るめだけど乳白色のもやがかかったような画面は、美しいのですが、どこか現実感を欠いた感じがして、「これから虚構の世界にジャンプするのかな」という予感を抱かせます。

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引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

これに加え、本作のキーアイテム「もしも玉」を通して覗いたような歪んだ画面(広角レンズやGoogle Earthで見たときのような歪み)や、不安定な構図でのカットが、そこはかとない不穏な雰囲気を醸し出すんですよね。

主人公たちの内面世界と現実が混然一体となっていくアート的な後半

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引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

そして、なずなと典道の衝動的な家出(かけおち)の過程で、典道は「もしも玉」を3度投げ、現実世界から「もしも」の平行世界へと少しずつズレて行きます。

玉を投げるたびに加速度的に深まっていく二人だけの虚構の世界。「君の名は。」のカタワレ時のように、夕暮れから夜に変わる一瞬の「マジックアワー」の中で、どんどん二人だけの世界へ入り込んでいきます。ついには、二人の心象風景なのか現実なのかその境目すらわからなくなっていく中で、その独創的な美術表現が大爆発します!安易に説明的なセリフに頼らず、主人公達の心情を映像・サウンドの演出で全て表現し尽くそうとした姿勢が素晴らしかったです。

メタファーに溢れた奥深い映像表現

本作は、主人公たちの状況や心情を説明するセリフが非常に少なく、「映像で語る」極めて映画的な作品でした。だから、画面一つ一つに非常にメタファーがかけられており、一瞬のスキも見逃せません。

回転するもの、円形のモチーフが象徴的に使われたf:id:hisatsugu79:20170819172708j:plain
引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

例えば、主人公が時間を逆回転させ、もしもの世界へ飛び込んでいく本作では、「回転するもの」「円形のもの」がモチーフとして多用されました。例えば・・・

・典道たちの通う中学校の校舎が円形である
・学校の階段が螺旋階段になっている
絶えず回っている風力発電用の風車
・光が回り続ける灯台
・丸い「もしも玉」

主人公たちが現実世界にいる時は、これら回転するものは「時計回り」に回っているんですよね。そして、「もしも」の世界に入った時、一斉に反時計回りに回るようになるんです。風車や灯台、そして3回目の「もしも玉」を投げた時、空間にうずまきが回る世界は、全て反時計回りに回っていました。

面白いのは、エンディング前に、酔っ払った花火職人が海辺に落ちていた「もしも玉」を花火と間違えて打ち上げて破壊してしまう直前から、空間に回るうずまきが「時計回り」に戻っていたこと。これから二人が現実世界に戻っていくんだ、ということをいち早く暗示しているんですよね。そして、粉々になった「もしも玉」のかけらは、「時計回り」に回転しながらヒラヒラ落ちてくるんですよね。

あと、担任の先生の胸が、花火の形と呼応しているのも見逃せません。巨乳で豊満な「丸い形」から、もしもの世界に行くとまな板状態な「平べったい形」に変わっていたのは笑いました^_^

まだ初見なので、他にも色々メタファーが隠されているのかもしれませんが、徹底的に「映像で語る」という映画らしい表現にこだわった傑作だったと思います。

みずみずしく描かれた思春期の少年少女の繊細な初恋や人間関係

僕は、12歳から18歳まで男子校で純粋培養されたため、この時期の女子とほとんど話したことがないのですが、それでも小学校5年生~6年生の頃は、心も体も一時期女子の方が発育が早かった覚えがあります。

本作でも、現実的で恋愛に積極的なのはなずなの方で、男子は総じてだらしないですよね・・・。男子だけで燈台を目指す道中、大声で「観月ありさー!」はないでしょう(笑)痛すぎる(笑)ライバルで親友の祐介に至っては、大好きななずなから誘われたのに、周りの目を気にして逃げてしまうし、主人公の典道も、ストーリー中盤までずっと受け身のままですし。

でも、思春期の頃って、男子って多分どうしていいのか自分でもわからないんでしょうね。自分の内側にあるモヤモヤしたエネルギーを、方向感なく放射しているような感じでしょうか。なずなを自転車に乗せて、「どこ行くの?」と聞かれても典道はいつも「わかんねぇ!」ですから(笑)

劇中、大人の女へと一気に成長するなずなf:id:hisatsugu79:20170819173057j:plain
引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

一方、もともと大人に近づいていたなずなは、夕暮れになると、駅のホームで一足先に大人に変身してしまいます。「君の名は。」のカタワレ時のように、夕暮れのマジックアワーは、魔法がかかって一気に大人へと変身させる力があるのでしょうか。

そして、稔や純一たちが「花火が平べったいか丸いか」どうでもいいことで最後まで争っているのに、なずなは「典道くんとずっといられるのだったら、そんなのどっちでもいい」ですからね・・・。一人生きている次元が違っています。

そして、クライマックスでようやくなずなへの気持ちに素直になり、主体的になずなのために行動を始めた典道。一瞬、精神的になずなと対等なところまで追いついたかに見えました。しかし「もしも玉」が割れて、もしもの世界が終わった時、なずなはさらに大人になっていました。自分の運命を受け入れ、典道に対して「別れ」のキスをしたら、未だ心がフワフワして状況整理に手一杯な典道を残し、いちはやく現実世界へと戻っていきました。

このように、思春期に一足先に大人になってしまうなずなに対して、まだまだ子供のままエネルギーを持て余す男子達の描写の対比が見どころたっぷりでした。

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5.映画「打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか」をもっと楽しむための8つのポイント~伏線・設定を徹底考察!(ネタバレ注意!!)

ポイント1:「打ち上げ花火、下から見るか 横から見るか 」タイトルの意味とは?

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元々、本作は岩井俊二氏が、岐路に立った主人公が異なる行動選択をした結果、Aとなった顛末、Bとなった顛末を描くというフジテレビの企画ドラマ「ifもしも」シリーズでのタイトルをそのままもってきたものです。スタッフと「打ち上げ花火は丸いのか、平べったいのか」と雑談していた時に着想されました。

だから、元々のドラマも本作も、タイトル自体の直接の意味はあまりないと思われます。結局どちらでもいいわけです(笑)直接原作者からネタ明かしはされていませんが、「打ち上げ花火」とは、美しいけど、一瞬で儚く消えてしまう性質上、思春期特有の恋愛だったり、夏休みで町を去っていくなずなを表すメタファーだと考えるのが自然なのではないでしょうか。

まだまだ子供である13歳の男子(典道)にとって、精神的にも肉体的にも大人びた女子(なずな)は、いかにも「きまぐれでつかみどころのない」存在に見えるわけです。極端に大人びて見えたり、子供っぽい一面もあったり。くるくるカメレオンのように表情を変えるなずなは、まさに男子達が「丸い」「平べったい」と勝手に想像する「打ち上げ花火」の捕らえ難い形のようなものなんでしょうね。

ポイント2:主人公「なずな」の由来は?

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引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

春の七草でもある「なずな」。映画中でも数カ所で実際に一面に広がるなずなの花が映し出されますね。その名前の由来は、

・「撫菜」・・・撫でたいほど可愛い花
・「夏無」・・・夏になると枯れてなくなる花

両方の由来があると言われます。クラス一の美人で、2学期を待たずして転校していなくなってしまったなずなを暗示する、ぴったりの由来です。

ポイント3:なずなと典道の出会いは?

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引用:DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO - YouTube

映画中盤、プールの勝負が終わり自宅に戻った典道が、自分の部屋でなずなと一緒に写っていた昔の写真を見るシーンがあります。原作小説の記述によると、これはそれぞれ小学生の修学旅行での日光東照宮でなずなと撮影したもの、中学の入学式のものです。

なずなは、小学校5年生の夏、茂下町に転校してきました。趣味がサーフィンだったなずなの父が東京の会社を退職して、茂下海岸でサーフショップを開いたことによるものです。ちなみに、典道の父となずなの父は、高校時代はサーフィン仲間だったようですね。

ポイント4:なずなの父はいつ、なぜ亡くなったの?

これも、原作小説に記述があります。なずなの父が亡くなったのは、ちょうど1年前の夏でした。東京からサーフショップに来ていた初心者の客が沖で流されたところを助けようとして、巻き添えのような形で溺死したのです。プロのサーファーであっても、茂下の海の沖合の速い潮の流れにはどうしようもなかったようです。

ポイント5:もしも玉とは?どこで拾ったの?

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引用:「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」予告3

映画冒頭で、なずなが海岸で「もしも玉」を拾うシーンがありました。ここは、まさになずなの父の死体が打ち上げられた浜辺でした。もしも玉は、亡き父からなずなへのプレゼントだったのかもしれません。ちなみに、原作小説では典道はもしも玉となずなの父の縁を感じて、3度目にもしも玉を投げる時、「もしも1年前になずなの父が死ななかったら・・・」と願おうとしますが、なずなからやんわり拒否されています。 

ポイント6:映画から省略された前日譚とは?

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引用:Amazon.co.jp

もう一つの原作小説、岩井俊二「少年たちは花火を横から見たかった」では、なずなと典道が、夏休みに入る前、お互い淡い恋愛感情を確かめ合うような前日譚があります。(岩井版では離婚調停中の)なずなの母と知り合いだった典道の母が、一晩なずなを預かることになり、典道の部屋になずなを泊めるのです。お互い戸惑いながらも、同じ2段ベッドの上下で一夜を過ごし、翌日あてもなく海岸線を二人乗りの自転車で走る、という思春期っぽいエピソードが良かったです。

ポイント7:ラストシーンの解釈は?

ラストシーン、2学期が始まって朝のホームルームで出欠を取られている時、なずなの名前は呼ばれず、典道は呼ばれましたがクラスにいませんでした。ここでエンドロールへと突入する、いわゆる「オープンエンド」型のエンディングとなりました。「エンディングで典道がどうなったか?」解釈が分かれる所ですよね。家でサボっていた、とか、一緒に駆け落ちした、とか、色々考えました。

僕の解釈としては、9月1日の朝、典道は自分の気持に整理をつけるため、なずなと典道が最後にキスをした、なずなの父が打ち上げられた海岸へ行っていたのだと思います。海岸から学校へと帰ってきた時、きっと典道もまた少しだけ大人になっているのでしょうね。

ポイント8:原作ドラマとの主な違いをまとめてみる

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引用:Amazon.co.jp

本作は、オリジナルドラマ版から設定・ストーリーに結構手が加えられています。違いを見比べながら楽しむと、面白いですよ。主な相違点を以下の通りまとめてみました。

ドラマ版では小学校6年生だったが、映画では中学1年生になっている。
ドラマ版では、もしも玉は出現しない。また、ドラマ版では「もしも」の世界に飛ぶのは最初の1度だけ。(ただし、ドラマ版では電車に乗ろうとして、不自然になずなが急に心変わりする描写があり、電車に乗った世界を選ばなかった、という解釈ができる演出になっている)
ドラマ版では、プールで競争するのは二人。なずなはプールサイドで見ているだけ。映画版では3人で泳ぐ。
・ドラマ版では、なずなの首元にアリが這っている。映画ではトンボが顔に止まる。
・ドラマ版では、祐介は「負けたら罰ゲームとして」なずなに告白する設定。映画版では、「なずなが勝ったら何でも言うことを聞く」と変わっている。
ドラマ版では、なずなは母親の離婚に伴い、茂下町を離れる。映画版では、逆に再婚に伴い、離れることになる。

6.まとめ

タイムループ系SF恋愛ジュブナイル映画という使い古された王道ジャンルでモチーフの普遍性を確保しつつ、そこに監督・脚本家・原作者の三者三様の作家性がブレンドされた本作。絶妙のバランス感が素晴らしかったです。壮大な社会性やテーマはありませんが、純粋に映像世界に浸れる良作でした!

それではまた。
かるび

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7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

本作は、岩井俊二による原作ドラマ、原作小説、そして本作の脚本を担当した大根仁によるノベライズと、様々な形態で作品世界を楽しめるようになっています。通常、映画の後追いとして出版されるノベライズは、逐語録みたいで蛋白で味気なくなりがちです。しかし本作は、原作者自身による書き起こしなので、やっぱりクオリティが高いです!

脚本家、大根仁によるノベライズ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」

脚本家、大根仁によるノベライズ。ライトノベルのような軽妙なタッチで、少年・少女たちの心情描写がしっかり描かれています。非常に読みやすいです。映画では省略されたエピソード(スイカバーの話とか)や説明描写もしっかり入っていますし、クライマックスやエンディングはノベライズオリジナルです。映画の後に合わせて読むとより楽しめました!

原作者、岩井俊二によるノベライズ「少年たちは花火を横から見たかった」

2017年にドラマ原作者、岩井俊二によって書き下ろされたもう一つの原作小説。設定はドラマ版ですが、8月1日以前のなずなと典道の交流を描いた前日譚や、もしも玉を拾うシーンなどが追加されています。そして、最大の違いは、「もしもの世界に移行しない」こと。表紙で、奥菜恵らしき女の子がもしも玉を持っていますが、結局最後まで使わないのです。大根仁とはまた少し違うタッチで描かれた、もう一つのストーリー。こちらもおすすめです!

雑誌での大特集も!「SWITCH Vol.35 No.8」

広瀬すずや菅田将暉、宮野真守、そして新房監督、大根監督など、映画のキーマンへのロングインタビュー、作品世界の徹底解説、シャフトの過去作特集など、本作を総力取材した力の入った特集号。こちらも読み応え抜群でした。

アニメ映画化に合わせて原作ドラマも豪華ブルーレイで復活!

本編Blu-rayに加え、メイキング映像・サントラCD・24年前の『打ち上げ花火…』撮影時に岩井監督が実際に使用していた台本の縮刷版も封入されています。 台本は岩井監督直筆の演出メモや落書きも忠実に再現。 ファン必読の1冊が同包された豪華版Blu-ray BOXです。Amazonで売れてます!

現在Huluで原作ドラマを配信中!

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引用:Amazon.co.jp 

岩井俊二監督による原作ドラマは、DVD化され、現在Amazonや楽天でもベストセラーとなっています。現在、Huluにて本作が配信中。また、脚本家を務めた大根仁監督がオマージュとして徹底的にパクった、TVドラマ「モテキ」第2話「深夜高速 上に乗るか、下に寝るか」もHuluで無料でチェックできます。これは笑えます!

その他、岩井俊二作品、大根仁作品、シャフト製作アニメ作品も多数アップされていますので、合わせて作家の世界を楽しむこともできますね。是非検討してみて下さい!

★最初の14日間は無料!

上記のように、Amazonや楽天でDVD/ブルーレイが入手できるのですが、お金を節約するのであれば、Huluでの配信を見たほうが大きく安上がりです!僕は、今回Huluで映画公開前に2回ドラマ版を予習してから映画に臨みました!登録後最初の2週間は無料で視聴できるので、無料期間中に見てしまえば、実質タダで見れますね!

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