あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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琳派400年の歴史がわかる!特別展「琳派-俵屋宗達から田中一光へ-」@山種美術館【展覧会感想・レポート】

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かるび(@karub_imalive)です。

5月12日から、山種美術館で特別展「琳派ー俵屋宗達から田中一光へー」が始まりました。「特別展」と銘打たれ、今年一番力が入っている展覧会です。副タイトルの作家名が示す通り、江戸時代から現代まで引き継がれた琳派約400年の歴史を、各時代の作品を見ていくことで紐解いていこう、という意欲的な展覧会です。

※なお、本エントリで使用した写真・画像は、予め主催者の許可を得て撮影・使用させていただいたものとなります。何卒ご了承下さい。

1.特別展「琳派 俵屋宗達から田中一光まで」の展示内容とは?

本阿弥光悦・俵屋宗達のコラボによって江戸初期に始まったとされる「琳派」の歴史も、すでに400年。特に江戸時代には、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一など、日本美術史に名を残すビッグネームを沢山輩出しています。

明治維新後も、酒井抱一や鈴木其一の直接の弟子筋である「江戸琳派」の流れの画家は昭和初期まで活動していました。また、先人たちへのオマージュとして、琳派的なエッセンスが色濃く出た作品を残した近現代の作家たちは多くいます。昭和に入っても、加山又造や田中一光など、琳派に私淑するアーティストが優れた作品を残しています。

▼参考:加山又造《華扇屏風》(陶板作品/「Re又造展」より)
※今回展覧会では「原画」が展示されています
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今回の特別展「琳派 俵屋宗達から田中一光まで」では、各時代を彩った様々な作家の傑作を見比べることによって、琳派400年の歴史を振り返ってみよう、という非常にスケール感の大きい展覧会となりました。

実は、意外なことに「琳派」の歴史を総括した手頃な入門書って、近年は全く出ていないんですよね。(※図録系雑誌や高額な専門書籍を除く)「俵屋宗達」「尾形光琳」といった個人にフォーカスした書籍や、「江戸琳派」「かわいい琳派」といった、テーマを絞り込んだ本はいくつかあるのですが、真っ向から「琳派400年をわかりやすく振り返る!」という書籍ってないんですよね。

だからこそ、今回の展覧会は、江戸初期から伝わる琳派400年の歴史をガッツリ学べるチャンスでもあるのです!

正直なところ、僕も「田中一光って誰」「神坂雪佳・・・名前しか知らんな」という状態でした。光琳や抱一といったビッグネームだけでなく、色々な時代の琳派作家の代表作に触れることができたので、非常に勉強になりました。是非楽しんでみて下さい!

2.展覧会のみどころ

琳派の歴史は、世襲制ではなく「私淑」の歴史

江戸時代には、琳派以外にも、江戸幕府御用絵師の狩野派や土佐派、住吉派といった絵師集団がいました。彼らは、基本的には血縁・地縁で紐付いた一子相伝の徒弟制度で、代々の技を受け継いでいきます。

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しかし琳派の場合は違いました。尾形光琳も、酒井抱一も自分たちで勝手に先人の作品を評価し、自らの作風に取り込む形でリスペクトを表す、いわゆる「私淑」という形で、琳派の作風や精神性を受け継いでいきました。その流れは、昭和世代の加山又造や田中一光に至るまで綿々と続いていったのです。

今回の展覧会では、そうした「私淑」の連鎖によって、どのように「琳派」の歴史が形作られていったのか俯瞰するには絶好の機会なのです。

江戸時代のビッグネーム達の傑作が多数出展!

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今回は「特別展」と銘打っているだけあって、特に江戸時代の作品群が非常に充実!山種美術館で所蔵している琳派の江戸時代の代表作品がキッチリ出展されています。これから「琳派」の代表的な絵師について、その作品に触れてみたい!という方にも、入門編としてばっちり楽しめる展覧会となりました。

鈴木其一《四季花鳥図》f:id:hisatsugu79:20180516235915j:plain

日本史の教科書にも出てくる、俵屋宗達、尾形光琳といったビッグネームはもちろん、根強いファンのいる酒井抱一、2016年末のサントリー美術館での展覧会で一気にメジャー化した鈴木其一など、琳派絵師で「抑えておかなければならない作家」は全て出展されています!

明治期以降の作家も、積極的にモチーフや技法を取り入れた

明治以降に入ると、「琳派」の作品は海をわたり、西洋画壇において高い評価を得ていきます。この動きに合わせ、日本でも日本画・洋画を問わず、尾形光琳や、俵屋宗達の芸術性・デザインセンスなどを制作上のアイデアの源泉とする作家が沢山出てきます。

奥村土牛《南瓜》
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近代日本画の中からも、速水御舟・菱田春草・加山又造・安田靫彦などが、「琳派」の巨匠たちから学び、自らの作品に技法や作風を取り込んでいきました。本展では、こういった近代日本画の有名画家たちが、どのように「琳派」を自らの作品で表現したのか、元ネタと合わせてチェックできるようになっています。

3.特に気に入った展示作品をご紹介!

俵屋宗達(絵)・本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今和歌巻断簡》

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俵屋宗達・本阿弥光悦のゴールデンコンビによる絵巻物の断簡。山種美術館が保有する最古の琳派作品のうちの一つで、作品内に描かれた「鹿」をモチーフにしたグッズも販売されています。

個人的に非常に好きな作品で、山種美術館で本作を見てから、本阿弥光悦の個性的で特徴のある、優雅な字体に惚れ込んでしまいました。(何と書いてあるのかは読めないのですが・・・^_^;)山種美術館の開催する琳派の展覧会には、いつも高確率で出展される作品です。

尾形光琳《白楽天図》

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謡曲「白楽天」から着想を得て製作された作品。白楽天の乗る船のとんでもない角度や、山のようにうねる大海原、極端にデフォルメされた、山と一体化された陸地など、尾形光琳のデザインセンスが大爆発した一作。これぞ「琳派」といった趣の作品ですね。

つい先日まで開催されていた根津美術館「光琳と乾山」展でも、同タイトルで同じ構図の作品が展示されていました。こちらのほうが波や山の稜線などがよりくっきりと描かれ、各モチーフのデザイン化が進んでいます。根津美術館に行かれた人は、是非2つの作品の違いを味わってみてくださいね。

鈴木其一《牡丹図》

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近年、山種美術館に収蔵されましたが、非常にファンからも人気の高い一作。この展示と、ちょうど反対側に展示されている鈴木其一《四季花鳥図》とを比較して頂ければわかりますが、あんまり琳派っぽくない作品です。どちらかというと、古い中国絵画に近いような。

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山下裕二教授の解説によると、本作には元ネタがあるとのこと。14世紀の趙昌が描いたとされる《牡丹図》と構図、絵柄がかなり似ているのです。琳派の伝統に縛られず、あくまで自らのオリジナリティ、新境地を貪欲に探った鈴木其一らしい作品だなと思いました。

速水御舟《翠苔緑芝》

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山種美術館の所蔵する速水御舟の代表作《翠苔緑芝》が、今回満を持して展示されています!速水御舟が琳派的なエッセンスを大胆に取り込んで制作した、ゴージャスな金地の屏風絵です。

本作は山種美術館の人気作品として頻繁に展示されているので、今回僕が見るのも2回目。でも、いつ見てもいいですよね~。極端に図像化され、ゴルフのグリーンのような芝生の上で、のんびりしているうさぎやネコを見ていると癒やされます・・・。

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でも、よくよく見ると右隻のうさぎたちは、琳派の巨匠・俵屋宗達の《白象図》《唐獅子図》からそれぞれインスパイアされて描いているとされるのです。

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これ、あとでブロガーの友人たちと話していたのですが、研究者や学芸員さんって、よくこういう共通点をさらっと見つけ出せるものだなと・・・。その熱意に頭が下がります・・・。

また、この屏風の一番の見どころは右隻中央部に描かれたあじさいの表現!色彩のグラデーションも美しいですし、あまり他の日本画ではちょっと見ないような質感の表現方法で描かれており、要チェックですよ!

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《絵御本茶碗「風神」・「雷神」》

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左:今村紫紅(絵付)・清水六兵衛[4代](作陶)《絵御本茶碗「風神」》
右:安田靫彦(絵付)・清水六兵衛[4代](作陶)《絵御本茶碗「雷神」》

今回の展覧会で展示されているのは、絵画だけではありません。工芸品やポスターなど、バラエティに富んだ幅広い作品ジャンルで、琳派の流れを体感できるように展示されています。

その中でも、特に印象的だったのは、俵屋宗達以下、琳派のランドマーク的作品「風神雷神図屏風」から着想を得て製作された一揃いの茶碗。今村紫紅と安田靫彦の琳派へのリスペクトを形にしたコラボ作品です。

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酒井抱一《宇津の山図》

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酒井抱一の作品。歴史や文学からテーマを取り、当時の一流文化人だった酒井抱一らしい、優雅な作品。「宇津の山」は伊勢物語の一場面ですね。

僕がこの作品で目に止まったのは、メインテーマではなく、背景部分に控えめに描かれた「みどり」のモミジでした。

ここ数年、京都観光の広告やチラシで目立つのが、春~初夏にかけての「青もみじ」特集。お寺の境内や庭園で青々と茂った若いもみじを見て回るのも風流でいいですよね。先日、京都観光に行った際、初めてこの「青もみじ」の下でお茶を頂いたのですが、心が洗われるようでした。

日本画でもそういうのないのかな?と思ったら、本展でとうとうみつけました(笑)あくまで後景の一部分として控えめに描かれているだけなのですが、新緑の季節に青々と茂る琳派のモミジが非常に印象に残ったので、最後に取り上げてみました。

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4.新作グッズや期間限定和菓子も要注目!

毎回、展覧会に合わせて細かくグッズのラインアップも少しずつリニューアルされている山種美術館。特に、今回いくつか目を引いたグッズがありましたので、そちらを紹介していきますね。

▼Tシャツ
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山種美術館に、福田平八郎《芥子花》をモチーフとしたTシャツが登場!最初これを見た時、新鮮な違和感を感じました。なぜかというと、山種美術館で企画展に即したTシャツが制作されるのは、約10年ぶりであり、激レアグッズだからなんです。美術館が広尾に移転してからだと、初めての試みとなるそうです。

サイズは男女共通のフリーサイズで、いくつか用意されています。ちょうどグッズ制作会社の方が着ていたので、写真を撮らせて頂きました。

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夏らしいデザイン、いいですよね。これから山種美術館さん、これを機に毎回シャツ作ってくれないかな~(笑) 

▼携帯ルーペ
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気軽に日常使いできる、持ち運びできる携帯ルーペ。あしらわれているのは、本阿弥光悦・俵屋宗達《鹿下絵新古今和歌巻断簡》の鹿ですね。おしゃれな新作グッズでした。

▼マルチホルダー
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続いて、速水御舟《翠苔緑芝》をあしらったチケットホルダー。表裏で、左隻・右隻両方のデザインを楽しむことができます。こちらも今回の展覧会用に製作された新作!

▼売り切れ必死!人気の「図録」
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そして、最後に展覧会図録!サイズもA5サイズ(A4の半分)に抑えられ、持ち運びや保管もラクラクです。山種美術館の図録は、人気になると会期後半には売り切れるリスクがあります。少しでも気になったら、サクッと抑えてしまいましょう!!

そして、山種美術館と言えば、展覧会の作品にちなんだ限定「和菓子」ですよね!今回も、色とりどりの上品な和菓子が用意されています。僕も展覧会が終わって時間があれば、かならず1Fロビーの休憩スペースで和菓子を頂いてから帰途につくことにしてます!

▼限定「和菓子」
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5.混雑状況と所要時間目安

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春休みからゴールデンウィークあたりの春の行楽シーズンが一段落して、観光や娯楽は夏休み前の閑散期に入っていきますが、今回は年に1回の「特別展」です。しかも、特集ジャンルも人気が高い「琳派」です。すし詰めになるくらい混雑することはありませんが、ゆっくり観たい人は、ピークの時間帯(13時30分頃~15時頃)を避けて、朝イチか16時ごろに入るのがいいかも。

また、今回は、展示替え作品もかなりあります。前後期合わせて楽しんでみてくださいね。

6.関連書籍・資料などの紹介

冒頭でも書きましたが、これだけメジャーな存在なのに、意外と「琳派」のことを総合的に学べる手頃な価格帯の本が出ていないのです。よって、ここでは東京美術から出版されている、初心者定番のムック本「もっと知りたい~」シリーズから、いくつか良書を紹介しておきますね。彼らの代表作品が高品質画像とともに網羅されています。

もっと知りたい俵屋宗達

もっと知りたい尾形光琳

もっと知りたい酒井抱一

7.まとめ

今回の琳派展は、江戸初期から近現代まで、約400年間にわたる琳派の歴史の中で幅広く「琳派」の作品を取り上げた意欲的な展覧会でした。

「琳派」については、先日も根津美術館の「光琳と乾山」展でしっかり見てますし、年に1回はそれっぽい展覧会に行っているので、割りと理解できた気でいました。しかし改めて今回の特別展を見て、知らなかったこと、わかってなかったことが多数あったことに愕然・・・。いざブログを書こうと思ったら、全然筆が進みませんでした(笑)

初めて琳派作品を見る、という人にもオススメですし、琳派の作品に馴染んでいる人でも、必ず新しい発見や学びが得られる展覧会です。是非楽しんでみてくださいね。

それではまた。
かるび 

展覧会開催情報

◯美術館・所在地
山種美術館
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
◯最寄り駅
JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
JR渋谷駅15番/16番出口から徒歩約15分
恵比寿駅前より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分(降車停留所③、乗車停留所④)
渋谷駅東口ターミナルより日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分(降車停留所①、乗車停留所②)
◯会期・開館時間
2018年5月12日(土)~7月8日(日)
*会期中、一部展示替えあり
(前期: 5/12~6/3、後期: 6/5~7/8)
10時00分~17時00分(入場は30分前まで)
◯休館日
毎週月曜日

◯公式HP
http://www.yamatane-museum.jp/index.html
◯Twitter
https://twitter.com/yamatanemuseum