あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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楽しみ!ヨコハマトリエンナーレ2017の記者会見で内容を聞いてきました!

かるび(@karub_imalive)です。

 さて、今年も暖かくなってきて、すでに「市原アート×ミックス」がすでにスタートしていますが、全国で地域芸術祭がいくつも開催される予定です。そんな中、今年の注目度No.1は、今年の8月にスタートする、「ヨコハマトリエンナーレ2017」です!

ふとしたご縁から、ヨコハマトリエンナーレ2017の準備段階から、記者会見の場を取材させていただけることになりました。ブログを長くやってるといいことがあるものですね!

簡単にはなりますが、4月18日に実施された「ヨコハマトリエンナーレ2017」の記者会見の内容を、以下少し書いてみたいと思います。

1.いよいよ開催が近づいてきたヨコハマトリエンナーレ2017 

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アートの展覧会って、意外に準備に時間がかかるんですよね。各美術館/博物館で年に数回開催される通常の企画展でさえ、様々な関係者を巻き込んで2~3年かけてゆっくりと企画を詰めていくわけです。

そして、横浜トリエンナーレが通常の企画展よりさらに運営や準備が複雑で大変なことは、想像に難くありません。美術館単体の企画ではなく、地域の自治体・企業・住民達を巻き込んで組織される上、取り扱うアーティスト・作品数も通常の何倍にもなるからです。

試しに前回のヨコハマトリエンナーレ2014の記者発表を見ると、期間前も含めて合計4回も記者発表をしているんですね。準備をしながら、ネタがまとまってきたら段階的に記者会見を実施して小出しに情報をリリースしていくわけですね。

そんな中、ちょうど先週4月18日は開催3ヶ月前ということもあり、ヨコハマトリエンナーレの公式特別サイトがオープンするとともに、この日開かれた第2回目の記者会見でいよいよ固まってきた企画概要と、参加決定アーティスト第一弾の発表がありました。

ヨコハマトリエンナーレ2017 公式サイト
http://yokohamatriennale.jp/2017/index.html

2.企画概要について自分なりに解釈してみた

さて、今年のヨコハマトリエンナーレの副タイトルを見てみましょう。

 島と星座とガラパゴス

ここで示されている「島」「星座」「ガラパゴス」は今回のヨコハマトリエンナーレ2017を象徴するキーワードなんですね。記者会見では、今回のテーマは世界の「接続性」と「孤立性」を考える展覧会にしたい、という話がありました。

この「接続性」「孤立性」は世界中の様々な事象で同時に見られる概念なのですが、ためしに私達のコミュニケーションのあり方を例にとって考えてみます。

2017年現在、SNS等のコミュニケーションツールの発達で、世界はますますネットワーク化が進み、生活や仕事の効率は向上し、世界中の誰とでも一瞬でつながれるようになってきていますよね。(だから残業が終わらんわけだ・・・世界の「接続性」は、かつて無いほど高まっているというわけです。

その一方で、しばしば我々はネットワーク上で溢れかえる膨大な情報量に圧倒されるようにもなってきました。ちょっと目を話したスキに、何十件もメールが溜まってると、思わす「うわー・・・」と目を背けたくなりますよね?

僕自身も、毎日数百件のeメールに加え、LINE、Twitter、Facebookでのやり取り、テレビやネットの各種情報源などから毎日物凄い量の情報を受け取っていますが、ハッキリ言って全く処理は追いついていません。

そこで、ネットワーク上から受け取った玉石混交ある膨大な情報を取捨選択するためのフィルターを自分自身で設定して、だんだんと欲しい情報だけ取るようになっていかざるを得ません。そうすると今度は、自分の価値観に合った情報、欲しい情報だけにしかアクセスしないようになっていきます。自分にとって好ましい情報だけを選択し続けることで、今度は確実に互いにつながってるはずの情報の海のなかで「孤立」していくのですよね。

例えば、自分の場合、2016年に会社を辞めて、趣味のアートや映画に傾倒していったのですが、もう日常の中で「アート」と「映画」以外の情報は意識しないとほとんど入ってこなくなりました。今は日経平均株価も景気動向も、今国会で審議している法案の内容もよく把握してませんし。あぁ、これが「孤立性」ってことなのか、と記者会見の内容を聞いていて実感しました。

前置きが長くなりましたが、2017年の今現在、世界ではこの「接続性」と「孤立性」という一種相反する概念の現象が同時に進行しているのであって、この奇妙な現象を「アート」によって表現し、読み解いてみよう、というのが今年の「ヨコハマトリエンナーレ2017」のコンセプトというわけなんですね。

我々は気づいたら個人個人でも、コミュニティレベルでも、国家レベルでも、あらゆる階層において密接につながりつつも、妙に「ガラパゴス」化した離れ小「島」にいるような感覚になっていて、だけど、それをもう一度「星座」のようにつなぎ直すには一体どうしたらいいのか?どんな妙案があるんだろう?ということを考えていくのは、ものすごく意味があることだと思います。

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3.これまでに決定したアーティストたち

記者会見では、前回、前々回よりも出展者数を40組程度に絞り込み、その分1組あたりの出展作品を複数に増やすなどして、「小規模な個展の集合体」のような展示内容にしたい、と話がありました。

確かに、紅白歌合戦でもMAX50組くらいが限界なので、絞り込んでくれたほうが分かりやすいかもしれません。僕も地域芸術祭に参加した時、参加アーティストが多すぎて内容が散逸するよりは、まとまっていたほうがうれしいなぁと思っていたので、これは良い措置だなと思います。

現在プレスリリースを見ると、決定したアーティストはとりあえず全部で計26組。べ、勉強不足なので知らない人いっぱい(汗)これから勉強しなきゃ。。。

アイ・ウェイウェイ/ブルームバーグ&チャナリン/マウリツィオ・カテラン/ドン・ユアン/サム・デュラント/オラファー・エリアソン/アレックス・ハートリー/畠山直哉/カールステン・ヘラー、トビアス・レーベルガー、アンリ・サラ&リクリット・ティラヴァーニャ/ジェニー・ホルツァー/クリスチャン・ヤンコフスキー/川久保ジョイ/風間サチコ/ラグナル・キャルタンソン/マップオフィス/ブラバヴァティ・メパイル/小沢剛/ケィティ・パターソン/パオラ・ピヴィ/キャシー・ブレンダーガスト/ロブ・プルイット/ワエル・シャウキー/シュシ・スライマン/ザ・プロペラ・グループ/宇治野宗輝/柳幸典/プロジェクト:Don't Follow the Wind

このうち、会場で直接解説があった何人かを取り上げてみますね。

3-1.アイ・ウェイウェイ

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アイ・ウェイウェイ(艾未未) ≪安全な通行≫ 2016
© Ai Weiwei Studio

さすがに現代アート初心者な自分でもわかる超大物。2016年から始めた、大量の救命胴衣を建物や敷地内に敷き詰めたり巻きつけたりする、難民問題に注目した新作が、横浜にもやってきます。柱を覆い尽くす救命胴衣は、遠くから見ると人体が巻き付いているようにも見えます。さてこの作品をどの会場に巻きつけられるのか、楽しみです。

3-2.クリスチャン・ヤンコフスキー

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クリスチャン・ヤンコフスキー ≪重量級の歴史≫ 2013
Photographer: Szymon Rogynski
Courtesy: the artist, Lisson Gallery

重量級の選手が重たそうな半身像を持ち上げようとしていますが、まだポーランドがソ連の衛星国だった共産党時代の公共の銅像を利用した作品ですね。独裁政権ってほんと半身像とか銅像系のアイコン好きだなー。

3-3.アレックス・ハートリー

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《Nowhereisland(どこにもない島/ここが国土 )
メヴァギジー村へ行く》 2012
Photo by Max McClure

ノルウェーの陸地から切り出した岩の塊を「独立国家」と宣言し、その岩の塊を乗せた車を「EMBASSY」と名付け、世界中を巡回して展示したことがある現代アート作家。現在は、その岩の塊は世界各地の希望者に配布され、残りは成層圏に送られ、永遠に宇宙空間を漂っているそうです。そんな彼の新作が展示されますが、やはり政治性を帯びた作品になるのでしょうか。

3-4.カールステン・ヘラー、トビアス・レーベルガー、アンリ・サラ&リクリット・ティラヴァーニャ

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《ジルバ タンゴフライ タグプラント》2016
Produced at STPI ‒ Creative Workshop & Gallery, Singapore
©The Artists/STPI
Photo: Katariina Träskelin

別々の作品をつないで作ったマッシュアップ作品。個性の強い現代アート作家が、リレー形式でバトンタッチしながら作品を少しずつ発展させていく企画。全体的なコントロールを失った作品が、手探りでの作家同士の連携を経てどう仕上がったのかが見どころだそうです。最近少女マンガ等では、大胆な作品の連携企画読み切りが増えましたが、現代アートでもそういうのやってるんですね・・・。

3-5.ワエル・シャウキー

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ワエル・シャウキー
≪十字軍芝居 Ⅲ:聖地カルバラーの秘密≫より 2015
© Wael Shawky: Courtesy Lisson Gallery

アラブ諸国の歴史や文化を再解釈して、人形劇や人形のインスタレーションで独自の表現をしてきた作家で、日本では初登場。今回は、十字軍の時代に起きた重要な歴史イベントやドラマをコーランに用いられた古代アラビア後を用いた人形劇で表現します。この人の作品を向き合うときは、アラブ世界の歴史や文化の知識も必至となりそうですね。当日までに調べから会場へ行こう・・・。

3-6.シュシ・スライマン

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《マレーの薔薇》展示風景 2016 
カディスト美術財団(パリ) Courtesy of the Artist
Photo: Aurélien Mole.

小山登美夫ギャラリー所属作家なので、日本では比較的個展開催や、美術館収蔵作品もちらほらあるイメージですが、原産地が東南アジアやインドのモクレン科のチャンパカという植物を使ったインスタレーション。部屋の中が良い香りにつつまれていそうです。

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4.ゲスト小沢剛氏のトークと宇治野宗輝氏のパフォーマンス

そして、一通り作品説明が終わった後、ゲストの小沢剛氏のトークセッションと宇治野宗輝氏のアート・パフォーマンスがありました。

宇治野宗輝氏のパフォーマンスf:id:hisatsugu79:20170422130523j:plain

小沢氏の作品は、ペインティングとビデオを組み合わせたインスタレーションを予定しているとのこと。そして、宇治野氏は、バナナと牛乳を入れたジューサーを使ったパフォーマンスを披露してくれました。終わった後は、作ったバナナ牛乳を登壇者全員で乾杯してました。なお、宇治野氏の当日の展示はライブパフォーマンスではないので、会場に来てもバナナと牛乳はありませんとのことです(笑)

5.まとめ/感想

こうやって記事にしてみると、現代アートの作品群を見るときは、コンセプトをしっかりと理解することって本当に大事だなって感じます。僕は専門の記者ではなく、一介のブロガーですが、こういった記者会見で関係者の思いや考えを直接聞く重要さが良くわかりました。

現代アートの作家や批評家の書く文章は非常に難解なものも多いですが、彼らが話し言葉で講演などをする時、分かりやすい言葉で置き換えて話をしてくれるのも初心者には嬉しいです。

ヨコハマトリエンナーレ2017では、こういった講演会や作家本人が開催するワークショップ・トークイベントなども沢山開催される予定ですが、作品本体を見るだけでなく、今年はイベントにも積極的に参加してみようかなと思っています。

それではまた。
かるび

ヨコハマトリエンナーレ2017の開催情報

◯開催会場
・横浜美術館/横浜市開校記念会館/横浜赤レンガ倉庫1号館を予定

期間中、チケット購入者向けに無料シャトルバスが定期運行します。
◯会期・開館時間・休館日
2017年8月4日~11月5日(第二・第四木曜日休場)
10時00分~18時00分(入場は30分前まで)
※10/27-10/29、11/2-4の6日間は、20:30まで延長

◯公式HP
http://www.yokohamatriennale.jp/2017/
◯Twitter
https://twitter.com/thisiskyosai