あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【マンガ書評】SF恋愛ファンタジー 高野苺「Orange」が完結したので感想を書くよ【少しネタバレ注意】

かるびです。

映画でもマンガでも小説でも映画でも、SFファンタジーものが大好きです。11月12日に最終巻5巻が刊行されたので、SF恋愛ファンタジー少女マンガ、高野苺「Orange」をKindleで一気読みした感想を書いてみたいと思います。申し訳ありませんが、少しネタバレ入りますのでご注意ください。

あらすじ

舞台は長野県松本市。高校2年生の新学期初日に、ヒロイン役高宮菜穂の元に、将来の自分自身から謎の手紙が届くところから物語がスタートします。その手紙を持って学校へ行き、手紙を開けると東京から転校生が来る、と予言が書かれています。

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クラスが始まると、予言通りイケメン黒髪の転校生、成瀬翔(もちろんヒーロー役)が担任から紹介されます。

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そしてわかりやすく菜穂の隣の席へ。手紙に書かれたストーリー通りに現実が進行していく流れに、菜穂は戸惑いつつも、と仲間との交流が始まるのでした。仲間は全部で菜穂以外に、男子2名(須和、萩田)、女子2名(貴子、あずさ)の6名を中心に描かれます。(中高一貫で男子校だった自分としてはリア充すぎる設定がまぶしかった/笑)

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基本的には、この後この手紙の内容に沿って現実が展開していきます。時系列で、パラレルワールドの未来の自分から、手紙上で「この日はこんなことがあった」とか「この日にはこれをやれ!」みたいな指示が書かれています。これをやったりやらなかったりして、手紙に書かれた予言と現実の展開がその通りになったり、微妙に展開が変わったりしていきます。主役2人と仲間含めた6人の高校2年生での出来事を時系列で丁寧に描きつつ、ヒロインの菜穂と翔が距離を縮めていく、そんなストーリーです。

そして、物語の前半で、すでに手紙の送り元である、10年後のパラレルワールド側の視点も明かされます。

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そこではは10年前に不慮の事故≒自殺で亡くなっており、ヒロインの菜穂は準主役の須和と結婚し子供も設けています。が死んでから、須和に乗り換えると付き合うことにしたんですね。パラレルワールド側からの菜穂から、10年前に死んでしまったと、が好きだった自分自身を何とか助けられないかという思いで、以降終盤までずっと現実側の菜穂に手紙が届けられることになります。

タイムトラベルや世界観の設定

この手のタイムトラベル系SFは、おおかた別世界から来た誰かが暴れまわって、現実世界を改変して干渉しまくることが多いのですが、この「Orange」ではそこは控えめに「手紙」による間接的な指示だけ。行動するかしないかは、現実世界の主人公たちに委ねられます。

2巻の途中で、舞台設定の説明が簡単に入ります。これによると、10年後のパラレルワールド側からの「手紙」による指示により、パラレルワールド側から見た「過去」にあたる現実が変わったとしても、10年後のパラレルワールド側には影響はないんだ、という設定です。つまり、「現実」で翔が生き延びたとしても10年後のパラレルワールド側で翔が突然生きて帰ってくるわけではないということですね。

この設定は良かったと思います。ここをややこしくし過ぎると、恋愛じゃなくてSFのタイムパラドックスに焦点あたっちゃいますからね。

が、物語進行のカギを握る「手紙」がどこからどう来るのか、一気に来たのか何通来たのか、そのあたりの説明は一切ありません。そこは恋愛ものでは捨象しても問題ないディテールなので、あまり気になりませんでした。

感想:みんないいやつすぎるでしょう(笑)

ヒーロー役のは、心優しくも、心の傷を負っているため繊細で菜穂や周りの仲間と誤解からこじれることもしばしば。ヒロイン役の菜穂をはじめその他5人がいい奴で空気を読むのに長けているのか、人間が出来すぎているため、すぐに小さな行き違いは修正され、都度6人の絆は深まっていきます。大きな葛藤らしい葛藤はなく、割とアッサリと終盤へ突入していきます。リア充ってこんな感じの青春なのかな?

特に準主役の須和にはイラッとすることが。もっと頑張れよお前と。パラレルワールドの10年後ではがいないため結婚してますが、現実世界ではアッサリ戦わずして白旗。一応翔と二人で「お前菜穂のこと好きなんだろ」的な会話はするものの、翔に菜穂をさくっと譲り、しかも割と全力で応援しちゃいます。スポ根ではないですが、もうちょっと殴り合うとか?嫉妬でいじわるしちゃうとか、そういう展開が一ひねり入っても良かったのかなとは思いました。翔が転校する前からずーっと菜穂一途だったんじゃないのかな~と思っていただけに、いい人すぎるというか大人すぎる設定に少しだけ物足りなさを感じました。

ただし、心に傷を負っているの心象風景描写が「死」を予感させ、終始重ためにならざるを得なかったので、人間関係はあっさり目のほうがストーリーがややこしくなくてそれはそれでバランスが取れていいのかな?

あとは、ストーリーの進行は王道の少女漫画的な展開が心地よかったです。プール、花火、秋の体育祭、テスト勉強、初詣、バレンタインデーと、リア充男女6名でかるびが中高生の時に経験したことない王道イベントで青春を謳歌するストーリーラインは微笑ましく感じました。(って視点がもう老人みたいだな)

そういえば映画化もされているみたいですね

2015年上半期のNHK朝の連ドラ「まれ」のそのまま主人公をキャスティングして12月に実写版映画公開のようですね。(菜穂:土屋太鳳 翔:山崎賢人)旬の俳優を投入して、マンガも完結したばかりでこれは年末年始ヒットしそうですね。暇だったら行こうかな。 

まとめ

あれこれケチケチ細かいことを感想に書きましたが、一番大事な伏線も回収され、全体としてはSFファンタジー的な設定を上手く生かし、コンパクトにまとまった良作だと思います。ジャンルとしては、いわゆる少女漫画に属する絵柄とストーリーですが、それ以外の大人でももちろん楽しめます。(現に連載は「漫画アクション」だった)もしよかったら、読んでみてください!

それではまた。

かるび