あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

MENU

【書評】堀江貴文「99%の会社はいらない」

かるび(@karub_imalive)です。

先日の美術館帰りにふらっと本屋に立ち寄った際、ついタイトルだけで衝動買いしてしまった堀江貴文の最新作「99%の会社はいらない」について、今日はちょっと感想を書いてみたい。

タイトルは、釣りであり、もちろんこれは極論である。
読み手のターゲットを「現状に不満を抱くサラリーマン層」として、本屋などで「おっ?」と手に取らせるために敢えて付けられた煽り気味のタイトル。よく考えられていると思う。見事に釣られ、衝動買いしてしまった。

結論から言うと、”良い意味で"真新しいことは全く書いていなかった。

書いてあることは、全て市井のビジネス本、自己啓発本に書かれているありふれたことばかりである。要約すると、

  • 好きなことにフォーカスせよ。
  • サラリーマンとして、自分を犠牲にして他人に自分の時間を捧げるな。
  • 大切なのはお金よりも「時間」。
  • いらないものは全部捨てて、好きなことだけにフォーカスせよ。
  • 思いついたアイデアはどんどん実行に移せ。
  • 忙しいを言い訳にするな。
  • とにかく行動あるのみだ。

ざっとこんな感じ。

彼が以前に他社から出版した既刊にも、おおむね同じことが書かれている。本書を読了してから、先日Kindleセールで買って積ん読状態になっていたSB新書「本音で生きる~一秒も後悔しない強い生き方~」もパラパラ見てみたが、ほぼ同じ内容だった。切り口やタイトル、表面上のテーマは違うが、言っていることはいつも同じである。ぶれていない。

正直な所、ホリエモンも自分で書いていてわかっているだろう。同じことを言っているに過ぎないと。ヘビー読者やアンチにとっては、ああまたかという感じだろう。

でも、実際に彼の本は出すたびにかなり売れる。

なぜなんだろうか。

タイトルの過激さや緻密なマーケティング戦略などもあると思う。実際に、ホリエモン自身本書内で本を売るための仕掛け・地道な営業活動を実施していると明言している。

だが、その一番の理由としては、現状のサラリーマンとしての働き方に不安や不満を感じている人が非常に多く、ホリエモンのストレートな物言いが、そういった彼らの心をつかむからである。

僕も現在はあてもなく退職してフリーの身とはいえ、率直に言って、これまでの17年間のサラリーマン生活では、面白いことよりも我慢することの方がはるかに多かった。だから会社を辞めたのである。

17年の間、大企業にも中小企業にも所属し、また、営業やエンジニアとして他社にも出入りして見てきたが、その規模や業態にかかわらず、僕が見てきた日本の会社組織は自分の思う通り、やりたいことを100%できるところではなかった。

根回し。不毛な社内規則。意にそぐわない転勤・異動。嫌な上司、etc…。

会社の中で、心から納得していきいきと働いているメンバーは全体の10%もいなかったのではなかろうか。

みんな、心の何処かで不満はかなりためつつも、生活のため、お金のために我慢して現状と何とか折り合いをつけて今の仕事を続けているわけだ。副業や転職のチャンスなども伺いながら。僕も、迷い始めてから会社を辞めるまで、8年間もグズグズした。

それを、この本は、いつものようにバッサリと切りに来る。
好きなこと、やりたいんならなんでやらないの?
つまらない仕事なら、さっさとやめて、好きなコトやろうよ。俺みたいに。

語り口は、痛快である。読者の中には、こういった歯切れのよいコトバを読んで、溜飲を下げることに快感を覚え、何度もホリエモンの本を購入してしまう人もいるだろう。少し前の僕がそうだったからよくわかる。一時的にでも、気分が高揚して、やる気が取り戻せた気がするからだ。それこそが、いわゆるビジネス書の持つ一種の麻薬効果のようなものかもしれない。

そして、意外にもホリエモンの本から、ストレートに学びを抽出して、自分自身の日常や仕事生活へ応用するのは難しい。

なぜなら、彼の主張は、そもそも極論だからである。基本的に彼自身の日常の勝手気ままなライフスタイルでの経験をベースに組み立てられているので、一介のサラリーマンである我々にぴったり合う処方箋は書かれていない。明日からすぐに活かせるTipsなどではないのである。

結婚もしていない。子どももいない。家事もない。でもカネはある。人脈もある。テレビにも出てる。・・・etc。故に、読者とは住んでいる世界・階層が完全に違うため、提示されるアドバイスは、厳密にはあなたの今の状況に今すぐ当てはめることはできない。もちろん僕にとってもそうだ。

だから、本の内容を咀嚼して、極論の中から本質をつかみ、それを自分自身にどう落とし込めばいいかしっかり考えなければならない。それは意外に骨が折れる作業なのではないだろうか。

だから、大抵の場合は、読んで一時的にでも気分が高揚して「よーし、明日から頑張らなくちゃな!」で、終わってしまい、3日後くらいにはまたテンションがリセットされて終わりなき日常へ逆戻りしてしまうのである。

ホリエモンが常人ではないのは、常識にとらわれず、自分の決めた原理原則を、合理的に徹底して実行できること。文章にして書いてみると当たり前のことに思えるのだが、こういったアタリマエのことがみんなできないからこそ、ホリエモンの存在価値がある。

でも、100%真似するのは難しいけど、彼の行動の本質を見極め、そこからほんの少しでも、自分自身の現状の生き方にそのエッセンスを取り入れていくことなら、できるかもしれない。

例えば、できる範囲でもう少しだけ好きなことをやってみるとか、残業を減らしたり付き合いの飲み会を断ったりして自分の時間を作るとか。あるいは、小さく副業するもよし、転職準備をするもよし、また会社の中で少しでも自分自身が納得できる形で仕事ができるように、会社に働きかけるもよし。

ただ単に愚痴って終わり、泣き寝入りして不毛な日常を送っているのなら、本書をテコに徹底的に考え抜いて、新しい行動につなげていこう。

本書には、2016年時点でのホリエモンが活用しているITサービス、ガジェット類、事業構想、新たに取り組んだ趣味など、彼の考えたこと・行動したことがたくさん網羅されている。その中の一つでも参考にして、自分自身の行動に繋げられたら、800円前後の本代のモトは簡単に取れるだろう。

あとがきに、こう書かれている。

この本を買って、あとがきまで読んでいる人は「積ん読」ではなくしっかり内容を読んだ人だと思う。だとしたら、繰り返し僕が訴えていた「行動すること」を実践に移さなければならない。だって、この本を読んだ時間が無駄になってしまう。行動するのは実は簡単である。バカになればいいのだ。

僕はバカが悪いことだとは思わない。どんどんバカになって突拍子もない行動を起こす人が増えれば増えるほど、社会全体のイノベーションは活発化する。この本を出した目的はそこである。
すぐに行動することを求む。

 

僕も、自分に今できる「行動」は何なのか、本当にフォーカスしなければならない大事なことは何なのか、走りながら考えてみたい。

それではまた。
かるび