あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「ブラックパンサー」感想・考察と11の疑問点を徹底解説!/アメコミヒーロー物語の新境地!話題性抜群の傑作でした!

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かるび(@karub_imalive)です。

3月1日に封切られた話題作「ブラックパンサー」を見てきました。アフリカ中部の架空の国「ワカンダ」での王位継承を巡るエピソードを、ほぼオール黒人キャストで固めた意欲作です。

早速ですが、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「ブラックパンサー」の予告動画・基本情報

▶「ブラックパンサー」公式予告動画
※画像をクリックすると動画がスタートします


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【監督】ライアン・クーグラー(「クリード」他)
【配給】ディズニー
【時間】135分

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わずか3作で売れっ子監督になったライアン監督
引用:Marvel Studios' Black Panther - Wakanda Revealed Featurette

マーベル・シネマティック・ユニバースの第18作となった本作で監督に抜擢されたのは、本作が映画製作3作目となるライアン・クーグラー。長編デビューとなったインディーズ映画「フルートベール駅で」が、いきなりサンダンス映画祭で一躍注目を浴びました。これがきっかけで、第2作目では、ロッキー・シリーズの第7作「クリード」の監督へ大抜擢されます。そして、これも大成功。

そこで、2作連続での成功を受け、ビッグバジェットでの映画製作でもきちんとまとめきる実力が備わっていることに目をつけたマーベルのプロデューサー、ケヴィン・ファイギは、さらなる超大作となる本作での監督就任を打診したのでした。

日本での興行収入は特に突出して伸びている感じはありませんが、特に本国アメリカを中心に世界的に大ヒット中。3月10日時点で、全世界で9億ドル以上を稼ぎ出すなど、絶好調です。

ところで、本作は、4月27日に公開される「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」への重要なブリッジとなる作品だと言われています。

▼4月27日公開のアベンジャーズ最新作!
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引用:「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」予告編 - YouTube

実際、同作の予告動画では、本作のメインキャストであるティ・チャラ/ブラックパンサーや側近のオコエの登場が確認できますし、ラスボス:サノスとの戦いが行われる主戦場の一つは、ワカンダ王国であるといわれていますね。

▼ティ・チャラとオコエの登場が確認できるf:id:hisatsugu79:20180311215356j:plain
引用:「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」予告編 - YouTube

日米欧の様々な予告動画をチェックしてみましたが、意外に面白かったのが、日本オリジナルで制作された「藤岡弘の秘境探検シリーズ」のパロディ予告です。映画本編とは何ら関係がないのですが、ユーモアあふれる日本独自の企画は楽しかった。お時間があればぜひどうぞ。 

▶藤岡弘がワカンダ王国の謎に迫る?!
※画像をクリックすると動画がスタートします


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2.「ブラック・パンサー」主要登場人物・キャスト

ブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)f:id:hisatsugu79:20180311150012j:plain
引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 
今年40歳になりますが、まだまだ映画出演歴は意外に浅く、かなり遅咲きの俳優です。彼が一躍有名になったのは、偉大な黒人ミュージシャン、ジェームズ・ブラウンになりきった映画「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」(2014)でした。見事な歌唱と演技力を披露してくれています。MCU作品では、「キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー」(2016)からの出演となっています。

 エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)f:id:hisatsugu79:20180311145552j:plain
引用:Marvel Studios' Black Panther - Good to Be King Featurette
ライアン・クーグラー監督が手がけた長編の過去2作『クリード チャンプを継ぐ男』『フルートベール駅で』ではいずれも主役として抜擢されています。なお、マーベル作品では過去に「ファンタスティック・フォー」(※非MCU作品)でも出演歴があります。また、MCU作品では、過去に「ファルコン」役でオーディションを受けた実績もあり、何かとマーベルヒーロー映画に縁が深い人なのです。

ナキア(ルピタ・ニョンゴ)f:id:hisatsugu79:20180311145737j:plain
引用:Marvel Studios' Black Panther - Warriors of Wakanda
2013年、近代アメリカでの黒人差別を劇的に描いた名作映画「それでも夜は明ける」パッツィー役でアカデミー賞助演女優賞を受賞するなど、数々の賞を受賞するなど実績十分。ワカンダに非常に近いケニア人の血を引く女優。仏像の螺髪(らほつ)のような映画内での髪型が、非常に新鮮でした。

オコエ(ダナイ・グリラ)f:id:hisatsugu79:20180311145302j:plain
引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 
ほぼDVDスルーされたマイナー映画作品への出演が多く、日本で現在知られる出演実績は「ウォーキング・デッド」のミショーン役です。両親がジンバブエからの移民であり、こちらもナキア同様、アフリカン・アメリカンの俳優として映画内の世界観にマッチしていました。

エヴェレット・ロス(マーティン・フリーマン)f:id:hisatsugu79:20180311145501j:plain
引用:Black Panther Teaser Trailer [HD] - YouTube
主戦場はTVドラマで、ベネディクト・カンバーバッチ扮するシャーロック・ホームズ「シャーロック」シリーズでの相棒:ワトソン役で有名。他「FARGO」1stシーズンなど出演履歴は多数。映画では、2016年「シビル・ウォー」から2作連続出演中。いい年をしたオジサンなのに、どこかしら「かわいさ」が感じられる童顔な俳優です。このあと、アベンジャーズ・シリーズでの出演はあるのでしょうか?

シュリ(レティーシャ・ライト)f:id:hisatsugu79:20180311145837j:plain
引用:Marvel Studios' Black Panther - Warriors of Wakanda
MCU内の設定では、「トニー・スタークよりも賢い」とされる天才科学者シュリを演じたのは、南アフリカ出身の新進女優、レティーシャ・ライト。この後、春先にかけて映画「トレイン・ミッション」「レディ・プレイヤー1」「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」とメジャー配給作品での出演が続き、ブレイク間近です。アベンジャーズでは、トニー・スタークと天才同士の対決シーンがあるのか楽しみですね。

ユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)f:id:hisatsugu79:20180311145238j:plain
引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 
MCU作品では、「アベンジャーズ/エイジオブウルトロン」についで2作目の出演となりました。リブート版「猿の惑星」シリーズ「GODZILLA」「ホビット」シリーズなどモーションキャプチャー俳優の第一人者として有名ですが、この冬はなんと言っても「スター・ウォーズ8最後のジェダイ」のスノーク将軍役として圧倒的な存在感を残すなど、普通の映画俳優としても大活躍でした。

3.途中までの簡単なあらすじ

アフリカ中央部に位置する小さな農業国・ワカンダ。この国は、もう何百年以上も外部と連絡を絶ち、国を閉ざしてきた。しかし、それには重大な秘密があった。それは、はるか昔の神話時代、地球に飛来した巨大隕石がワカンダの地に落下したことと関係があった。この隕石は、地球上にはない万能レアメタル「ヴィブラニウム」で出来ており、歴代の王たちは、この巨大な力を秘めた鉱石が悪の手に渡らないよう、厳重に管理してきたのだった。

ワカンダは鉱石を活用した最先端のテクノロジーを開発する一方、世界中にスパイを放ち、国境をカモフラージュするなど、ワカンダは戦略的に独立性を保つ仕組みを作り上げてきた。

しかし、先代国王ティ・チャカは、長年の沈黙を破り、国際会議にて世界各国との平和共存を目指した「開国」を目指そうとしていた。その矢先、彼はアベンジャーズの分裂を企図したジモによって、爆弾テロで暗殺されてしまった。

亡き父の跡を継ぎ、即位を目指したティ・チャカの息子、ティ・チャラは、ワカンダの4つの部族長の承認と、山奥に住む「ジャバリ族」の族長エムバクを決闘で下すことで、王位継承を認められ、国を守護する「ブラックパンサー」としての儀式を執り行った。

しかし、王位を継承した直後から、ワカンダには不穏な動きが伝わり始める。20年来、ワカンダに侵入し、ヴィブラニウムを強奪して逃走を続けている闇の武器商人、ユリシーズ・クロウと、ワカンダに恨みを抱く元アメリカ軍の黒人兵士エリック・キルモンガーが、イギリスの博物館から盗み出したヴィブラニウムを韓国・釜山で第三者へ売りさばく動きがあるという。

この情報をキャッチしたティ・チャラは、天才科学者の妹シュリの遠隔サポートを得た上で、側近のオコエ、ナキアと共に密売現場である地下カジノへと向かった。取引相手は、同じく潜入捜査中だったCIA捜査官エヴェレット・ロスだった。

しかし、この潜入捜査はクロウたちに直前で露見してしまい、クロウは逃亡する。市街地でカーチェイスの上、クロウを拘束することに成功したが、クロウを奪還しようと戻ってきたエリック・キルモンガーから襲撃されてしまい、ティ・チャラはロスも含めて母国へと帰還する。

その後、クロウと仲違いしたエリック・キルモンガーは、クロウを殺害し、ワカンダへと向かった。彼は、20年前、クロウのワカンダ侵入を手引きした元国王ティ・チャカの実弟ウンジョブの一人息子だったのだ。

クロウの死体を見せ、ボーダー族の族長、ウカビを手なずけたエリックは、その足でワカンダ王宮へ向かい、ティ・チャラに王位継承の挑戦を申し出る。ティ・チャラを決闘で滝の下へ突き落とし、決闘に勝利したエリックは新たなワカンダの王となったのだった。

玉座についたエリックは、世界中のレジスタンス達にヴィブラニウムを送り届けることで、世界中に混乱を発生させ、その中でワカンダが世界の覇権を握ろうとする野心を抱いていた。その危険な動きを察知した先代女王ラモンダ、ナキアは、山奥に籠もるジャバリ族の王・エムバクを擁立しようと画策するが、エムバクの宮殿には、昏睡状態となったティ・チャラが密かに運び込まれていたのだった・・・。

果たして、ティ・チャラは復活してワカンダの国難を救うことができるのか?クライマックスに向け激動の展開が幕を開けるのだったーーーー。

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4.映画本編のレビュー(感想・評価)

ヒットした最大の要因はコンセプトの新しさ。でも本作の魅力は別のところにあるのでは?

本作がヒットした最大の原因は、ハリウッド初のブロックバスター大作娯楽映画において、徹底的に黒人・女性で固めた斬新なキャスティングと、その内容に込められた政治的メッセージだと思われます。

LGBTをテーマにした「ムーンライト」(2016)「ナチュラル・ウーマン」(2017)が相次いでアカデミー賞を受賞し、女性を主役に据えたアメコミヒーロー「ワンダーウーマン」が大ヒットを飛ばす中、アフリカにゆかりが深い黒人俳優・黒人監督で制作された本作は、確かに世の中の流れ的には完全に「追い風」に乗っているとは思います。

個人的には、ハリウッド作品以外に【有色人種】オンリーで構成された外国映画をそこそこ見慣れている(韓国映画、インド映画、中国映画など)ため、アメリカ人ほどの驚きはありませんが、僕も確かにこれは画期的だとは感じましたし、こうしたコンセプトの新しい作品は確実に後世に残りやすいだろうなとは思います。

でも、本作の魅力は、こうしたキャスティングや制作体制の真新しさよりも、徹底的に練り込まれた映画のストーリーや、アフリカ文化を最大限リスペクトして世界観を作り込んだた点にあったと思います。

スキのないストーリー構成や世界観

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アベンジャーズのメンバーは一人も出演しない
引用:Marvel Studios' Black Panther - Warriors of Wakanda

僕が本作を見ていて本当に素晴らしいなと思ったのは、最初から最後までほぼムダのないすっきりとしたストーリー構成や、しっかりした世界観です。前日譚「シビル・ウォー」と次作「アベンジャーズインフィニティ・ウォー」をつなぐブリッジ的作品的な位置づけの作品でありながら、アベンジャーズのメンバーは一人も出てこず、説明的で変な展開・セリフもなく、独立した世界観がきっちり守られているのです。

その語り口も、説明的なセリフや字幕を多用すること無く、ビジュアルや音楽を最大限活用して鑑賞者に直感的に理解させる洗練された演出が光りました。

例えば、ティ・チャラが正式にワカンダ王になろうとする一連の冒頭シーン約30分での手際の良いストーリーテリングは本当にムダがありません。

ティ・チャラの王位継承を巡る手続きや儀式が進む中、

・伝統的な祭政一致の中央集権的軍事国家でありながら、王の人徳で平和裏に国を維持してきたワカンダ独特の政治体制
・ヴィブラニウムの力で世界最先端の軍事力・技術力で鎖国体制を維持してきた経緯

このあたりが極めてスマートに描かれました。

世襲制を基本とするものの、公式なルートで決闘に勝つことで(=実力で)王位にチャレンジできるという、王の堕落を監視するセーフティネットもちゃんと用意された、よくできた仕組みや、決闘に勝った者が、王家伝来の秘伝のハーブを飲んで、あの世へトリップして歴代の王たちの承認を得る、という、神話の時代から綿々と受け継がれたシャーマニックな慣習も大切にする神秘性。

それでいて、他のMCU作品との相性が良さそうな、ヴィブラニウムを活用した数々の近未来的なテクノロジーもきちんと折々に紹介されていくという要領の良さ。

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ハンパない科学技術と伝統的王政が同居する不思議な世界
引用:Marvel Studios' Black Panther - Warriors of Wakanda

超近代的な科学技術力を誇る一方で、正当な儀式によって選ばれた王が古来伝統の徳治主義で国を治めるという不思議な国のあり方は、ありそうだけど現実的には存在しないんですよね。このあたりの虚構と現実が絶妙にブレンドされた、映画独自のユニークな世界観、本当に素晴らしかったです。

はっきりとしたわかりやすいテーマ性

また、映画冒頭部分で描かれた1992年当時のエピソードにおいて、早々に本作の重要なテーマが提示されたのもスマートでした。

すなわち、「他者を気にせず、自らの幸せを優先すべきなのか、自らのリスクを犯しても、他者へと手を差し伸べるべきなのか?」という点ですね。

それを国王となったティ・チャラ=ブラックパンサーがどう整理統合し、乗り越えていくか?という点がティ・チャラの心情の揺れとともに、大きな見どころとなりました。

ワカンダはこれまで隣の国が混乱と窮乏に陥ったとしても、見て見ぬふりをして国を閉ざしてきました。この、他者の不幸には見て見ぬふりをして、「自国ファースト」で鎖国を続けてきたことで密かに蓄積されてきた「負の側面」の象徴が、前国王ティ・チャカが路線対立の末、見殺しにした実弟・ウンジョブでした。

ウンジョブは、ワカンダ国外に住む、肌の色が同じ黒人たちが、苦しんでいる状況を放っておけず、彼らにヴィブラニウムという「武器」を提供することで、圧政者・簒奪者たちへ対抗できる力をつけさせようとします。しかし、若き日のティ・チャカは、ワカンダの伝統的な鎖国政策を優先するため、自ら血を分けた兄弟すら殺害してしまいます。国を守るため、自らの肉親すら殺害するという「矛盾」は、後日、エリック・キルモンガーという「怪物」を生みだしてしまい、ワカンダでの王位継承を巡った内乱へとつながっていくのです。

そんな窮地に陥った国王を精神的にも肉体的にも救ったのが、かつて決闘まで行った仇敵、ジャバリ族の王、エムバクでした。エムバクは、本作において象徴的に「もうひとり」のティ・チャラでもあるのです。なぜなら、ワカンダ国内において、山奥でこもり、他部族と隔絶してきたジャバリ族の王という立場は、そのまま世界の中で鎖国を続けるワカンダの王であるティ・チャラと相似形の関係だからです。だから、自らと立場を同じくするエムバクが、自らが困窮した時、手を差し伸べてくれたという経験は、ティ・チャラに強い勇気を与えたはずです。

そして、実弟・ウンジョブとその息子を見捨てたことを心から悔い、事件後30年を経て、開国して、ワカンダを新しい国へと生まれ変わろうとさせていた矢先にテロにより非業の死を遂げた先代王、ティ・チャカの思い。

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引用:Marvel Studios' Black Panther - Wakanda Revealed Featurette

この2つのエピソードを経て、亡き父の遺志を継いで、ヴィブラニウムの対外的な開放と技術提供を軸に平和開国を行うと宣言したラストのティ・チャラの国際会議での力強いメッセージは、非常に感動的でした。

それと共に、「国民を守るため鎖国をするか、困っている隣人を助けるため開国をするか」という二者択一を乗り越え、「他者へ手を差し伸べ、他者と連帯して共に生きていくこと自体が自らの危険を減らすことにもつながるのだ」という止揚的な発想の転換は、「自国ファースト」の殻の中に閉じこもろうとする現代の国際政治のあり方への強烈なカウンターメッセージになっていたと思います。

ムダのないすっきりしたストーリー構成の中で、政治的・社会的なメッセージをわかりやすい形で入れてくる力強いスタンス。本当にしびれました。

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5.映画「ブラックパンサー」に関する10の疑問点~伏線・設定を徹底考察!(※強くネタバレが入ります)~

ストーリーや設定について、本作をより深く理解するために要点となりそうなポイントについて、考察や情報をまとめています。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。

疑問点1:ヴィブラニウムとはどんな物質なの?

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引用:映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(C) Marvel 2015

ヴィブラニウムとは、太古の昔、巨大な隕石としてワカンダの地に落下してきた、地球には存在しないレアメタルです。強度が高く軽量なため、戦闘機や武器・防具といった軍事用から、精密機器・通信機器まで幅広く応用できる他、人体に使うと体力回復・肉体増強・知力向上にも効果があります。

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体内に取り込むこともできるヴィブラニウム
引用:映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(C) Marvel 2015

ワカンダは、このヴィブラニウムから得られた様々な知見・効能を応用して、世界の先進国の約20~25年進んだ科学技術力を手に入れました。

なお、ワカンダ以外でヴィブラニウムの潜在力にいち早く気づき、実用化に先鞭をつけたのがトニー・スターク(アイアンマン)の父、ハワード・スタークです。ハワードは、キャプテン・アメリカにヴィブラニウムで製作した「盾」を与えましたが、まさにこれから更に開発を進めようとした中、惜しくもウィンター・ソルジャーに殺害されてしまったのでした。

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ハワード・スタークが開発!ヴィブラニウム製の盾
引用:映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(C) Marvel 2015

その他、アベンジャーズの一員である人造人間、ヴィジョンも、ユリシーズ・クロウから闇取引で手に入れたヴィブラニウムから生成した皮膚で全身を覆っています。

疑問点2:謎の秘境国「ワカンダ」とは?その歴史は?

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引用:映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(C) Marvel 2016

ワカンダは、中央アフリカで、やや東寄りのケニアとウガンダの国境付近に位置する小さな内陸国です。約1000年前に、初代王が女神バーストから神託を受けて「ブラックパンサー」となって国内の5部族を従えて建国して以来、歴代国王達は、自国で産出する鉱物資源「ヴィブラニウム」を巡る国際紛争が起きないよう、固く国を閉ざしてきました。その国土は、ホログラムでジャングルに偽装されているため、上空からの写真などではまず見つからないとされています。

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立体ホログラムで守られたワカンダ国境付近
引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 

ちなみに、ワカンダという名前は、ケニアの「ワカンバ族」にちなんでつけられたそうです。ウガンダ・ルワンダ・コンゴ・ブルンジ・エチオピアといった中央アフリカ各国の文化や風習を映画内の美術・セットなどの各種デザインに取り込んで制作されました。

疑問点3:映画冒頭、ナイジェリアの密林でナキアは何をしていたのか?

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引用:Marvel Studios' Black Panther - Good to Be King Featurette

映画冒頭で、ティ・チャラは、元恋人のナキアに自らの即位式へ出席を促すため、ナイジェリアのサンビサ森林へ向かいました。国外でスパイ活動に従事していたナキアは、多数の若い女性達を誘拐拉致し、移送中だったアフリカの奴隷商人達の動向を探るため、内偵中だったのですね。

現地に到着したティ・チャラは、奴隷商人達と交戦し、期せずして女性たちを救出するお手柄となりました。でも、誘拐拉致された女性達の集団の中に紛れ込んでいたナキアは、途中で諜報活動を中断されてどこか不満げでしたね。

これは、明らかに2017年ごろから国際問題になっていたイスラム系過激派組織「ボコ・ハラム」による女性集団拉致監禁事件を念頭に描かれたと思われます。

疑問点4:先代国王ティ・チャカはなぜ亡くなったのか?

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引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 

数年前、先代王ティ・チャカは、史上初めて国際会議にて平和を訴える演説を実施しました。彼は、その演説にて将来の開国と、自国が保有するヴィブラニウムの平和利用を軸とした世界平和へ向けて一歩踏み込もうとしました。しかし、先代王の願いは虚しく、ちょうどティ・チャカが会議場で演説中、アベンジャーズの仲間割れを図ろうとしたテロリストの爆弾テロ事件が発生し、暗殺されてしまったのでした。 

疑問点4:王だけが飲めるという謎のハート型のハーブは何なのか?どんな効果があるのか?

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王のハーブ園に火をつけるキルモンガー
引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 

映画では、ワカンダの国王となる者だけが飲む紫色のハート型のハーブが頻繁に登場しました。ワカンダに伝わる伝説では、女神バーストから、ワカンダの国王へもたらされたとされます。国王として認められた時、このハーブの絞り汁を飲んだ国王は、地面へと埋め込まれたあと入眠すると、先祖たちと夢の中で再会できます。そして、目が覚めた後は、超人的な力を得ることができるのです。

疑問点5:CIAのエージェント、エヴェレット・ロスとは何者なのか?

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クロウを尋問するロス
引用:Marvel Studios' Black Panther - Wakanda Revealed Featurette

韓国でユリシーズ・クロウを巡るエリック・キルモンガーとの戦いにおいて、ナキアを守ろうとして背中に致命傷を受けたことで、ティ・チャラはエヴェレット・ロスをワカンダに連れ帰ります。シュリの看病によって回復した後は、ワカンダでのキルモンガー達との戦いにおいて、元パイロットの経験を戦闘機の操縦を任されるなど、一連の騒動を通じてすっかりティ・チャラの仲間になった感のあるロス捜査官でした。

振り返ると、もともとは「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で初登場した時は、対テロ合同対策本部にて、ウインター・ソルジャー事件を担当していました。この時、ティ・チャラと知り合い、シビル・ウォーの一件が落ち着いてからは、新たにヴィブラニウムの闇取引についての捜査担当となり、再びワカンダの人々と深く関わるようになっていったのでした。

疑問点6:オコエの所属する女戦士の部隊とは?

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引用:Marvel Studios' Black Panther - Warriors of Wakanda

オコエは、女戦士だけで構成された、ティ・チャラの身辺を護衛するワカンダ最強の親衛隊「ドーラ・ミラージュ」の隊長でした。この「ドーラ・ミラージュ」は国王の将来の妻候補でもあり、最強の護衛戦士でもあるのです。現在は国外で活動するティ・チャラの幼馴染で元恋人であったナキアも、かつてはドーラ・ミラージュに所属していました。長槍を基本に、あらゆる戦闘技能をマスターした最強の女戦士、かっこよかったですね。

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にてる?!SWのエリート・プレトリアン・ガード
引用:Star Wars: The Last Jedi | Red Carpet World Premiere

「スター・ウォーズ」シリーズで、ファースト・オーダーの指導者、スノークの周りを固める「エリート・プレトリアン・ガード」そっくりだなぁと思いました・・・。

疑問点7:密輸商人「ユリシーズ・クロウ」の正体とは?

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引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 

ユリシーズ・クロウはブラックマーケットで密輸品を売りさばく、闇の武器密輸商人です。トニー・スタークとも実は、知り合いなのです。トニー・スタークの父、ハワード・スタークがヴィブラニウムの実用化に成功したことを受け、1992年、彼はティ・チャラの叔父、ウンジョブの手引きにより、ワカンダへと侵入、数百キロのヴィブラニウムを盗み出すことに成功します。(その時にボーダー族のリーダー、ウカビの父を殺害)

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激昂したウルトロンに左腕を切り落とされるクロウ
引用:映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(C) Marvel 2015

本作の前日譚の一つでもある映画「アベンジャーズ/エイジオブウルトロン」で、彼は盗み出したヴィブラニウムをウルトロンに売りさばき、その取引現場でうっかりウルトロンを怒らせてしまったことから、左手を失ったのでした。

疑問点8:エリック・キルモンガーは王位についた後、何をしようとしていたのか

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引用:Marvel Studios' Black Panther - Official Trailer 

ワカンダ国外でスパイ活動に従事していたエリックの父・ウンジョブは、世界中で多数の人々が絶望的な中苦しんでいる様を見て、自国の資源、ヴィブラニウムの力で圧政者を倒し、世界に平和をもたらそうと考えていました。

その遺志を曲げて継いでしまったのが、エリックでした。彼は、幼少時代に最愛の父・ウンジョブを先代王ティ・チャカに殺害されて以来、アメリカ軍の特殊部隊にて戦闘能力を身に付けつつ、ワカンダへ帰り着き、王座を簒奪する機会を伺っていました。

ワカンダでティ・チャラの側近の一人、ウカビを味方に付けたエリックは、決闘でティ・チャラを倒して王座に就くと、ヴィブラニウムを国外のテロリスト・レジスタンスに送りつけて世界を大混乱に陥れ、その混乱に乗じて世界を征服しようと企んでいたのでした。父・ウンジョブの目指した目標から逸脱し、気づいたら自分自身が、父の最も忌み嫌った簒奪者・独裁者になってしまっていたという皮肉が哀れで悲しかったですね。

疑問点9:ラストシーン・結末の考察~エンドロールの2つのシーンの解釈は?

エムバクの看病と、ナキアが密かに摘んできたハーブの絞り汁のおかげで回復したティ・チャラは、自らが不在の間にエリック・キルモンガーが引き起こした大混乱を治めるべく、ヴィブラニウム鉱山の中で1対1の対決に挑みます。

長い戦いの末勝利を収め、エリックの最後を看取ったティ・チャラは再び王の座に返り咲き、先代王が引き起こした不始末の精算を果たしたのでした。また、先代王が志半ばで果たせなかった「開国・世界との平和共存」という第一歩に踏み出すべく、国際会議でヴィブラニウムの平和利用を軸とした、開国をも宣言します。

国を守らなければならないという責任感と、平和への願いをより高い位置で昇華させたティ・チャラの行動が、しっかりとエンディングで描かれたことは、自国の利害を最優先し、エゴをむき出しにする現代の国際政治情勢への強烈なカウンターメッセージであり、痛快かつ感動的なラストとなりました。

また、エンドロール後のポストクレジット映像では、傷が癒え、テントから出てきたバッキー・バーンズ(元ウィンター・ソルジャー)に対してシュリが「もう大丈夫なの?」と気遣うシーンが描かれました。

前作「シビル・ウォー」で、負傷したバッキーはティ・チャラがワカンダへと連れ帰り、密かにシュリに治療させていたのでしょう。それがわかる手がかりとして、劇中で、負傷して運ばれてきたロス捜査官の治療にあたる時、シュリが「また白人の男を診れるの?」というシーンがあります。つまり、シュリが最初に治療した白人男性が、バッキーだったわけですね。

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引用:「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」予告編 - YouTube

そして、すでにアベンジャーズ・インフィニティー・ウォーの予告動画の中で、バッキーはアベンジャーズ側の一員として戦うシーンが公開されています。「ブラックパンサー」のコミック版では、ワカンダで育てられた「ホワイトウルフ」という白人の戦士が登場するのですが、おそらくこのあと、バッキーは「ホワイトウルフ」となって、アベンジャーズに再び参戦するのではないでしょうか?(2ヶ月後の答え合わせが楽しみ!)

疑問点10:続編「ブラック・パンサー2」はあるの?

制作費200億ドルに対して、最終的には10億ドル以上の世界興収が予測され、超特大ヒットとなった本作。マーベル側からは今のところ何の公式アナウンスメントは出されていませんが、プロデューサーのケヴィン・ファイギは、欧米メディアでの複数のインタビューで、「条件が整えば、ぜひ2作目を製作してみたい」とかなり前向きな様子です。(時期としては2020~2021年くらい?)

シナリオとしては、本格的に開国したことで、国内にテロリストなど悪者が入ってきて、王宮の権力争いと絡めて一騒動・・・といったところでしょうか?

実際、映画では王妃(となりそうな)ナキアは、原作コミックではその後「マリス」と名乗りブラックパンサーを苦しめる悪役に転じますし、王宮内の潜在的抵抗勢力と、外からの悪意ある外敵が結びついてブラックパンサーと対立・抗争するシナリオは、案外有力なのではないかと思います。

6.まとめ

ほぼオール黒人キャストで制作された先進的な制作体制に加え、スキのない王道的なストーリーの節々に強烈な政治性を持たせた本作。普通に娯楽作品として見ても面白いですし、深読みしようとすれば、作品内に重層的に隠されたメッセージにも気づかされます。アフリカの土着的な美意識へのリスペクトもしっかりこめられ、細部まで丁寧に制作された美術や音楽、セットや小物のデザインなども素晴らしかったです。

すべてが高いレベルでしっかりまとまった本作、ぜひ、味わい尽くすまで何度も見ておきたい作品だと思います。

それではまた。
かるび

7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

秀逸!ブラックパンサーのパンフレット

やっぱりマーベル作品のパンフレットは読み応えが違います!人物紹介・設定資料はしっかりしているし、制作陣・キャストへのインタビュー、映画ライターによるコラムも3本と、読み物としても充実。

これに加え、なんと言っても光沢のある上質なカラー印刷が美麗で良いです!映画の名シーンをたっぷりとあとから楽しめるよう、徹底的に作り込んでくれているのです。特に、本作に付属して特別な関連図書が発売されるわけではないので、事実上この映画パンフレットが、大事な副読本になると思います。

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▼ブラックパンサーの秘密を図解!
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▼マニア心をくすぐられる、設定資料集のページも!f:id:hisatsugu79:20180311141529j:plain

▼そして、映画の名シーンのキャプチャ画像も充実!f:id:hisatsugu79:20180311141618j:plain

▼どのページも美しいビジュアルで埋め尽くされていますf:id:hisatsugu79:20180311142037j:plain

調べてみたら、Amazonなど、ネットでも買えるようになっているようです。念の為購入用のリンクを置いておきますね。

映画「キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー」

ブラックパンサーが初めてお披露目となり、亡き先代国王ティチャカの暗殺事件、バッキー・バーンズとの対決、アベンジャーズ主要メンバーとの顔合わせ、ヴィブラニウムの行方を追うCIAエージェント、エヴェレット・ロスの登場など、盛りだくさんの内容で、本作や、次作「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」への伏線を多数含む重要な前日譚的な位置づけを持つ作品。今もう一度見直してみると、単なる顔見せ以上の意味合いがあるので、できればセットで見ておきたい作品です。

映画「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」

万能のレアメタル「ヴィブラニウム」が作品内で大きくクローズアップされた注目の関連作品。ワカンダへ不正に出入りし、ヴィブラニウムを密輸する闇の武器商人、ユリシーズ・クロウが物語中盤で初登場。また、ヴィブラニウムで作った人工皮膚で覆われた最強の人造人間・ヴィジョンも誕生します。「シビル・ウォー」の他にMCU関連作品をもう1作見ておくならこちら。

サウンドトラックが本気でオススメ!「ブラックパンサー・ザ・アルバム」

映画内で使用された美術やデザインなどでは、複数のアフリカ民族の美意識・美的センスがミックスされ、デザインのユニークさや美しさがたっぷり感じられましたが、音楽面でもその徹底したこだわりは一貫しています。

本作のサウンドトラックは、ライアン・クーグラー監督監修の下、アメリカのHIPHOPシーンで活躍するケンドリック・ラマーが全面的に参加して制作されました。例えば、メインテーマ「ワカンダ」や、主題歌の「Pray For Me」など、非常に印象的な楽曲が満載です。3月11日現在、アマゾンでベストセラーとなっています。

▶メインテーマ「ワカンダ」
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▶ケンドリック・ラマー「Pray For Me」
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アメコミ版ブラックパンサー

1960年代から50年以上にわたって、マーベル・コミックで繰り返しその活躍が描かれてきた人気アメコミヒーロー・ブラックパンサーですが、昨年発売されたこの「ブラックパンサー」は、映画作品とと連動したアメコミ版「ブラックパンサー」の入門編として最適!ワカンダの地下深くに眠るヴィブラニウムを巡る、スリリングなアクション活劇がシリアスに描かれています。クオリティ高し!