あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「ザ・コンサルタント」を見た感想とあらすじ・伏線の徹底解説!/ベン・アフレック演じる個性的なニューヒーロー誕生!

【2017年12月9日最終更新】

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かるび(@karub_imalive)です。

裏の顔をもつ、凄腕「会計士」が活躍する映画「ザ コンサルタント」を見てきました。ベン・アフレック扮する個性的なニューヒーローの活躍するサスペンス・アクションの傑作でした。以下、感想とレビュー、あらすじ・伏線等の解説を書いてみたいと思います。

※後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご了承下さい。

1.映画の基本情報

<「ザ コンサルタント」予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【監督】ギャビン・オコナー(「ジェーン」「ウォーリアー」)
【配給】ワーナー・ブラザーズ
【時間】131分

2.主要登場人物とキャスト

クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)
黙って座っていると、いかにもマッチョで手慣れた感じのスマートなコンサルタント風だが、しゃべりだすとそのユニークな個性があらわになる、「高感度自閉症」の会計士。そして、裏の顔は超一流の殺し屋。
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デイナ・カミングス(アナ・ケンドリック)
どこにでもいるような、経理担当のキュートなお姉さん。実直な経理職らしく、非常に地味な服装も印象的でした。机に突っ伏している最初の登場シーンは、コミカルで良かった。アメリカ人にしては小柄だからなのか、30代には見えません。
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レイモンド・キング(J・K・シモンズ)
商務省の長官。キャリアの終着点近くのベテランらしく、少し疲れた雰囲気も上手く演技で表現できていた。登場時、悪役なのか?とミスリードを誘う演出は良かった。
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メリーベス・メディナ(シンシア・アダイ=ロビンソン)
音声ファイルと数枚の写真を手がかりに、クリスチャンの存在と居場所を割り出すやり手の分析官。エリート然としているが、人に言えない経歴上の秘密を抱えている。
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ラマー・ブラックバーン(ジョン・リスゴー)
ハイテクベンチャー、「リヴィング・ロボティクス」社の社長。物語序盤で、クリスチャンに不正会計の調査を依頼するも、突然態度が豹変。その言動から、とてもハイテクベンチャーを立ち上げたような鋭さは残念ながら見られなかったが、専制君主のようなワンマン社長っぽさは良く出ていました。
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3.結末・ラストまでの詳しいあらすじ(※ネタバレ注意)

3-1.表と裏、2つの顔を持つ自閉症の会計士、クリスチャン・ウルフ

表の顔は会計士、裏では非合法組織等の不正会計を支援し、体術や射撃の腕前も一流であるクリスチャン・ウルフ。30年前、彼はニューハンプシャー州の、ハーバー神経科学研究所という、精神障害児を専門にケアを行う森の中の静かな施設で、両親、弟とともに診断を受けていた。

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いすに静かに座っていた弟とは対照的に、落ち着かない様子で呪文のように歌を歌いながら、難解なパズルに取り組んでいるクリスチャン。パズルが完成間近となった時、足りないピースがみつからず、クリスチャンは完全に落ち着きを失い、発作を起こしそうになった。ちょうどその時、同部屋にいた、施設に入院中の女の子が、床に落ちていた最後のピースを見つけて、クリスチャンにそのピースを渡した。クリスチャンはようやく落ち着きを取り戻し、パズルを完成させた。驚いたことに、彼は裏向きでパズルを完成させていたのだった。

医師は、クリスチャンを自閉症と診断した。明るい光と大きなノイズ音に過敏に反応したり、「不安」な感情表現として、ある反復行動を異様に繰り返す傾向、アイコンタクトやコミュニケーションが苦手であると分析した。

クリスチャンの母親は、夫が軍隊所属であることから、転勤が頻繁にあることも関係するのでは?と医師に相談したが、夫は入院してのセラピーに無関心だった。医師は、治療のためクリスチャンを施設に預けることを推奨したが、夫は断った。たとえ、外界の光や音に過敏であったとしても、世界はそんなクリスチャンを特別扱いしてくれないだろうから。

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そして、現在。クリスチャン・ウルフはシカゴ近郊で小さな自営の会計事務所を構えていた。ちょうど、その日は税金の支払いに困窮した農夫夫妻の相談に応じていた。無愛想で朴訥とした喋り方であったが、クリスチャンは的確なアドバイスで農夫の信頼を勝ち取った。喜んだ夫妻の計らいで、クリスチャンは彼らの広い農場内を趣味の射撃の練習場として使わせてもらえることになった。

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後日、クリスチャンは農夫の家で射撃練習を行ったが、その腕前は、300メートルほど離れたところから的を正確に射抜くなど、神業級だった。

3-2.徐々に明らかになるクリスチャンの裏の顔

その頃、商務省局長を務めるレイ・キングは、自室にマリーベス・メディナ分析官を呼んで、いくつかのテロリスト達の中に写り込んだ男(クリスチャン)の調査を依頼した。裏の世界でコンサルタントとして活動する彼が、なぜ闇の組織に殺されず、活動を続けられているのか知りたいのだという。

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メディナは専門外なので一旦は断ったが、彼女の過去の犯罪履歴を隠し、経歴を偽って勤務している弱みを握られていることがわかり、渋々レイに従うよりなかった。

場面は変わり、スイスのチューリヒでは、ある男が車に乗り込むところだった。彼は、株のブローカー会社の社長だ。その瞬間、暗殺者がその男の車に乗り込んで、銃で男を脅した。男が手がけている株の空売りを1週間以内にやめないと、殺すと言い残して去っていった。

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クリスチャンの日常は非常にシンプルで、ミニマリストのような質素な毎日を送っている。部屋には物は極端に少なく、食器も1本ずつ。シンプルな食事を摂ると、寝る前に、大音量の音楽と目がくらむほど点滅を続ける光源にさらされながら、時間が来るまで足の筋肉を鍛える日課をこなしていた。そして、精神薬を飲んでから眠りにつくのだった。

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クリスチャンは、昔のことを思い出していた。父母が離婚し、母が家を出ていった思い出。母が出ていく時、クリスチャンは発狂寸前になるほど動揺した。母が大好きだったからだ。

翌朝、クリスチャンは電話にてアシスタントと次の仕事について話し合い、久々に表家業として、依頼のあった最先端のハイテク企業、リヴィング・ロボティクス社の会計調査業務を受けることにした。また、アシスタントからは保有するジャクソン・ポロックの絵画を売るように促されたが、代わりにルノワールを値下げして売りに出してくれ、返事をした。彼は、ポロックの絵画が大好きなのだ。

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クリスチャンが保有するトレーラーハウスには、あらゆる武器と、ルノワール、ポロックの絵画、パスポート、金の延べ棒、キャッシュなどが整理されて格納されていた。そこで音楽を聞きながら天井に飾ったポロックを見て過ごすのも彼の楽しみだった。

クリスチャンは、寝転がると、インドネシア滞在中に拳法を教わったことを思い出していた。師匠にこてんぱんにやられ、たとえ負傷していても、練習を続けるように父から言われ、厳しい修行に取り組んだのだった。

一方、メディナは、長官から命じられた調査に着手していた。手始めに、写真に写っていたガンビーノ一家事件の盗聴音声をFBIを取りよせ、事件概要をチェックした。7人の男がすべて一撃で殺され、ボスのリトル・ニッキーが命を懇願するも、頭部へのキック1発で殺害されていたという、凶悪事件だ。

音声ファイルから、メディナはごく小さな声で子守唄のような声が一定のリズムで繰り返されているところを発見した。専門家に聞くと、声紋から、ある種の精神障害か自閉症患者の特徴があるという。

3-3.新たな顧問先「リヴィング・ロボティクス社」

クリスチャンは、リヴィング・ロボティクス社を訪問し、CFOとCEOの妹の二人と面会した。CFOは、明らかに外部会計士へ調査を依頼することに消極的で、15年にも及ぶ複雑な取引記録を読み解くのは不可能だ、とクリスチャンに不快感を隠そうともしなかった。クリスチャンは、次にCEOのラマーと面会した。ラマーは、クリスチャンを工場内に案内しながら、会計調査を依頼したい、とクリスチャンに告げた。

次の日から、クリスチャンは早速調査を開始した。同社側担当は、デイナ・カミングスという若手社員だった。彼女の気さくな人柄もあり、初対面の相手が苦手なクリスチャンも馴染むことができた。

クリスチャンはホワイトボードに数字をびっしりと書き出し、徹夜で監査を終え、不正な数字とその根拠をすぐにつきとめた。6100万ドルの不正な現金引き出しがあり、彼は後日CFOにレポートを提出することとなった。

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その晩、家族全員が寝静まった跡、同社のCFOの自宅に暗殺者が押し入った。暗殺者により、インシュリンの大量摂取による自殺という形で死ぬように強要され、CFOはその日の内に自殺をした。(自殺しないと家族全員を殺す、と脅されたため)

翌日、クリスチャンが同社のオフィスに到着すると、彼の作業は片付けられていた。ラマーが現れて、「CFOは金を着服した罪悪感から自殺した。親友をこんな形で亡くしてしまうなら、調査しなければよかった」と調査の打ち切りを宣告された。

3-4.ヒットマンに狙われるクリスチャン

自閉症であるクリスチャンにとって、やりかけの仕事を完遂できないのは何よりもストレスになる。クリスチャンは、その晩非常に動揺し、いらついており、いつもの寝る前のエクササイズを完遂できなかった。そして、クリスチャンは昔の思い出が蘇ってきた。刑務所内で、同室だった男から、コミュニケーションの際の感情の読み方や、闇組織との付き合いなどについて教わっていた過去を。

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翌日、クリスチャンは気晴らしのため、農場へ射撃の練習に訪れた。しかし、彼は暗殺者につけられていた。暗殺者は農夫の夫婦ふたりを人質に取ってクリスチャンを殺そうとした。しかし、クリスチャンは逆に暗殺者を撃退して、農夫達を救った。暗殺者を締め上げると、デイナの社員証が出てきたため、クリスチャンはデイナを守るため、急いでデイナの自宅へと急行した。

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デイナの自宅では、まさに暗殺者が迫ってきていた。デイナはなんとかして一番奥の風呂場に隠れていた。風呂場のカギが壊され、デイナが殺される寸前になった時、クリスチャンが間一髪で救出に成功した。クリスチャンは、一旦デイナをトレーラーハウスで保護し、その後別の場所へ移動した。

一方、メディナの捜査も大詰めを迎えていた。そして、とうとうクリスチャンへとたどり着いた。彼の会社、「ZZZコンサルティング」をはじめ、資金洗浄のフロント会社も含めて、自宅も突き止めた。奇妙だったのは、ZZZコンサルティングの多大な寄付先、ハーバー神経科学研究所はまともな施設だったことだ。彼の事務所へ行くために、レイとともにシカゴへ向かうのだった。

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クリスチャンは、一旦デイナを豪勢なホテルへ避難させることにした。チェックイン後、クリスチャンは彼自身が高感度自閉症であり、コミュニケーションが苦手であることをデイナに打ち明けた。クリスチャンは、失われた6100万ドルの行方について、一旦金を引き出し、引き出した金で再度自社株購入などにより投資することで、会社の資産価値を大幅に上昇させることが目的だったと結論づけた。

その晩、クリスチャンはラマーの妹がこの計画に噛んでいると見て、ラマーの妹の自宅に向かった。クリスチャンが自宅に入ろうとすると、中から暗殺者らしき男が出てきた。暗殺者と銃撃戦になったが、これをなんとかしのいで中に入っていくと、ラマーの妹もまた頭部を撃たれて死んでいた。

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一方、レイとメディナはクリスチャンの自宅を突き止め、家宅捜索を行った。自宅内から、高機能なマシンガンや、テレビカメラ監視装置が見つかった。戸棚から、胴の部分が凹み、壊れた水筒が出てきた。レイは、それを見て昔を思い出して微笑んだ。

家宅捜索が終わるとレイとメディナはリビングで話をした。かつて、フランシス・シルバーバーグというマフィアのガンビーノ一家他、様々な闇組織の会計を担当していた男がいた。フランシスが老齢となるにつれ、彼が逃亡するのではないかと恐れたガンビーノ一家がフランシスに危害を与える前に、フランシスは囚人となって身の安全を確保したのだった。

フランシスは、同居したクリスチャンと意気投合し、彼ら2人はいつも一緒にいた。フランシスは、彼のこれまでのビジネスの全てやそのノウハウを伝授した。フランシスは何かの拍子に釈放されてしまい、そこをガンビーノ一家に狙い撃ちされたのだった。フランシスは、厳しい拷問の挙句、焼死体として見つかった。

フランシスの死を知ったクリスチャンは、怒り狂って、看守の持っていた水筒のビンを片手に、刑務所を脱獄して去ったのだった。

また、レイはなぜクリスチャンが刑務所にいたのか、その理由を説明した。クリスチャンの母が亡くなった時、彼と彼の父は軍服を来て、母の葬儀に出席したのだった。すでに再婚後、再婚先の子供も2人いたことから、再婚した夫が二人を追い出そうとしたが、クリスチャンが突然暴れだしたため、驚いた警官が取り押さえるために発砲した。すると、その間に入ったクリスチャンの父が代わりに凶弾に倒れたのだった。そんなわけで、クリスチャンは刑務所にいたのだ。

また、レイはガンビーノ事件の際に、クリスチャンがガンビーノ一家に復讐を果たしているその真っ最中に現場に向かい、クリスチャンに命乞いをして一命を取り留めたことをメディナに告白した。

ガンビーノ事件以来、すっかりやる気を失って早期退職を決めたレイだったが、退職するまさにその日、レイに匿名電話がかかってきた。まぎれもなく、クリスチャンの声だった。その声は、人間売買の秘密組織について告発する内容だった。

以来、クリスチャンはその声のお陰で別事件などでも次々と警察内で実績を挙げ、昇進を続けることができたのだという。しかし、レイは今度こそ引退の日々が近づいていたので、そのホットラインの後継者を探していたところだったのだ。そして、白羽の矢を立てたのが前科もあり、ある意味逃げられないであろうメディナだったのだ。

メディナは困惑していたが、その時ちょうどメディナに電話がかかってきた。テーブルに足をのせるのを止めるようレイに言うように、という指示だった・・・。

3-5.ラマーとの最終対決、兄弟の再会

その後、暗殺者とその部下たちは、クリスチャンの襲撃に備え、CEOのラマーの家の守りを固めていた。そこへ間もなくやってきたクリスチャン。あっという間に邸宅の外を守る部下を倒すと、邸宅の中へ。ラマーと暗殺者は状況を見守っていたが、部下が全員倒された後、クリスチャンは暗殺者と対面した。それは、クリスチャンと10年以上生き別れとなっていた最愛の弟、ブラクストンだった。

思わぬ所での兄弟の再会となったが、ブラクストンは、クリスチャンが数年前の実母の葬式に誘ってくれなかったことを責めた。クリスチャンは、謝罪するとともに、ブラクストンのことを考えればこそ、会わないようにしていたと釈明した。

それをモニターで見ていたラマーが二人の前に現れた。クリスチャンは、ためらうことなくラマーを殺した。クリスチャンは、ブラクストンと近日中の再会を約束してその場を去った。

その後、CEOのラマーも死去したことで、事件は一旦解決し、レイの捜査を正式に引き継いだメディナが記者会見を行った。

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デイナは壊された自宅の修復を行っていた。差出人不明の宅急便が来て、中を開けると「ポーカーをする犬」の絵が入っていた。しかし、よく見てみると、それは包み紙だった。包み紙を破ると、中からジャクソン・ポロックの絵画が現れた。感激したデイナは、それを自宅のリビングに飾った。

また、ハーバー神経科学研究所では、研究所の所長が新たな来客に対応していた。来客の質問に答え、ある篤志家の莫大な寄付により、施設を運営しており、彼の娘、ジャスティンもまた施設で過ごしていると説明した。彼の娘は、幼少の時より精神障害により言葉が話せないのだが、パソコンの天才であり、ペンタゴンさえハッキングが可能な最新鋭のマシンを使って会話をするのだ。

そして、ジャスティンこそクリスチャンの数少ない友人であり、頼れる相棒だったのだ。

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4.感想や評価(※ネタバレ注意)

4-1.理想の英雄像とはかけ離れた、新たなアンチヒーローが誕生!

最初、クリスチャンが農家の夫婦とたんたんと話すシーンでは、ゴルゴみたいな寡黙なヒーローなのかな?と思っていたら、そうではなく、人の感情を読み取ったり、極度にコミュニケーションが苦手な「自閉症」の殺し屋だということがわかり、非常にびっくり。さらに、そこに「表」=会計士/「裏」=殺し屋という2つの顔を持つ設定が加わります。

丁寧に作りこまれたキャラ設定やエピソードと、「死んだ目」に定評のあるベン・アフレックの巧みな演技力が加わり、非常に魅力的なキャラクターに仕上がっていました。

常人とは思考回路が大きく異なる天才肌であり、しかし他人と目を合わせて話すのが苦手である、というクリスチャンが、周りと噛み合わない会話を続けるおかしさも見どころです。

4-2.丁寧に作り込まれた伏線、脚本も良かった

本作は、表と裏の顔を持つクリスチャンが、「表」側の仕事で巻き込まれたトラブルを追いかけつつ、一方で、彼の「裏」側の仕事を追いかける商務省の担当捜査官が、クリスチャンの過去の核心部分に迫っていく、という2つのストーリーが同時進行していきます。その独立した2つのストーリーと、時おり挟まれるクリスチャンの回想シーンがクライマックスで一気に絡み合い、エンドロールまで劇的に伏線を回収していく流れは、見ていて非常に良かったです。

その反面、ストーリーラインを丁寧に描き込みすぎて、後半はやや退屈な瞬間もありました。もう少し、「裏の顔」としてのダークなガンファイトやアクションを見たかったかも。割合あっけない静かな幕切れとなったのは、アクション好きな人には若干食い足りなかったかもしれません。

4-3.クリスチャンの父親の不器用な愛情がじわじわ心にしみた

クリスチャンの抱える「高機能自閉症」に対して、父親は、障害を「肉体的な強さ」で克服させようと、武術、射撃などを徹底的に教え込みました。クラスメイトに馬鹿にされたら、わざわざ待ち伏せして、もう一度立ち向かわせるなど、時にやり過ぎとも思えるスパルタぶりは、正直見ていて少ししんどい面もあります。

「息子が独り立ちして生きていけるように」と、カウンセリングや各種セラピーに頼らず、体で教え込んでいく教育は、いかにも実直な軍人ならではの不器用なやり方だな、とは思いましたが、最後は文字通り体を張って息子を守ったように、根底には息子への深い愛がずっとあったのだなと感じられました。

5.伏線や設定などの解説(※ネタバレ注意)

5-1.主人公クリスチャンの持病、「高機能自閉症」とは?

主人公クリスチャンは、「高機能自閉症」という持病を抱えていましたが、僕も初めて聞きましたので、ちょっと調べてみました。ちょうど、文部科学省に【主な発達障害の定義について】というエントリがありましたので、そこから引用してみます。

高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、

  1. 他人との社会的関係の形成の困難さ
  2. 言葉の発達の遅れ
  3. 興味や関心が狭く特定のものにこだわる

上記を特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。

主な発達障害の定義について:文部科学省

映画中でのクリスチャンは、上記の定義1~3全てに当てはまりますし、知的発達は遅れているどころか天才級の頭脳を持っていましたね。綿密なリサーチに基づいた脚本と「高機能自閉性」の人物を的確に演じたベン・アフレックの演技力は、説得力抜群でした。

5-2.クリスチャンが就寝前に行っていた風変わりな習慣はなんだったのか?

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クリスチャンは、毎晩就寝前にベッドルームでフラッシュライトを明滅させて、大音量のハードロックがかかる中、足を鍛えていました。直接説明はありませんでしたが、これは寝る前の儀式、というより、自閉症を克服するためのエクササイズの一貫と見るべきかと思います。

映画冒頭で、医師がクリスチャンの診断結果を話している時、自閉症患者はしばしば「強い光、大きな音」に敏感で、苦手とするケースが多いと言っていましたね。アラームを設定して取り組んでいたことから、これは彼自身が日常生活や裏稼業を行う中で、突発的に発作が起きないように普段から人工的に刺激を与えて慣らしている、一種のトレーニングであったと見るのが妥当であると思われます。

5-3.リヴィング・ロボティクス社で起きていた不正会計はどんな内容だったのか?

クリスチャンが突き止めた6100万ドルの現金残高差異は、CFOの手によって、ある関連会社に振り込まれたことが原因でした。

映画内でクリスチャンが突き止めたスキームは、一旦資金を外部に移し、諸外国や投資組合などで資金洗浄した上で、再度その金をリヴィング・ロボティクス社に投資し直す(株を購入するなど)というやり方。その結果、同社の株価は上昇し、企業価値が上がる、という仕組みです。

ラマーは、別の事件でも暗殺者=ブラクストンを使って、金融業者に空売りをやめさせるように脅していました。彼の目的は、手段を選ばず自社の株価を最大化することにあったのでしょう。 

5-4.なぜクリスチャンは刑務所に入所していたのか

これは後半のレイの回想シーンで描かれています。クリスチャンは、離婚して出て行った母が亡くなった時、軍服姿で父親と葬儀に出席しました。母は、すでに別の男性と結婚し、子供も2人いたことから、母の現在の夫がクリスチャンを葬儀会場から追い出そうとしました。

クリスチャンは、これに腹を立て、発作が起きたように葬儀会場で大暴れしてしまいました。騒ぎをききつけて駆けつけた警察官が、クリスチャンに思わず発砲したのですが、クリスチャンの父が彼をかばって銃弾を体に受け、倒れたのでした。

この一連の事件を受けて、懲役刑となって刑務所に入所することになったのです。

5-5.クリスチャンのアシスタント役は誰だったのか?

クリスチャンのアシスタントは、彼が毎年巨額の寄付を続けている、ハーバー神経科学研究所の所長の娘、ジャスティーンでした。映画冒頭で、パズルの最後の1ピースが見つからず半狂乱状態になったクリスチャンに、床に落ちていたピースを拾って渡してあげた女の子です。この時から、彼らの間に友情が芽生えていたと解釈できます。

先天的な言語障害を抱えているジャスティーンは、コンピュータにスクリプトを入力して音声出力していました。そのため、サンプリングされていない、溜息などの擬音を表現する時は、「Deep Sigh(深い溜息)」と表現していましたよね。

5-6.クリスチャンのトレーラーハウスにあった絵画とは?

ザ・コンサルタントで武器庫兼アジトとしてクリスチャンが管理しているトレーラーハウスの中に、非常に有名な画家の2枚の絵画が登場します。まず、壁にかかっていたのは、ルノワールの「Woman with a Parasol and Small Child on a Sunlit Hillside」というタイトル。1874年に描かれた、ボストン美術館所蔵のルノワール初期作品です。

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(ボストン美術館HPより)

そして、クリスチャンがトレーラーハウスの天井に飾り、最も大切にしていたのが、現代美術の巨匠、ジャクソン・ポロックの「Free Form」(1946)。実際はニューヨーク近代美術館(MOMA)に所蔵されています。

彼が発明したアクション・ペインティングという手法を使って描かれたジャクソン・ポロックの絵は、一見何の整合性もない、ありがちな現代アートの抽象絵画に見えますが、科学的な分析によると、彼の絵には深いフラクタル構造が見られ、鑑賞者を落ち着かせる癒やしの効果があるそうです。

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(ニューヨーク近代美術館HPより)

両作品とも著名な美術館に入っているので、まず売りに出ることはありませんが、仮に売りに出たら億単位の値段が確実につくと思われます。

5-7.クリスチャンの武闘術は、インドネシアの格闘技「シラット」だった!

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クリスチャンの回想で、幼少時代に拳法を教わっていたシーンがありましたが、あれはインドネシアを中心とした東アジアに伝わる伝統的な「シラット」という武術です。1500年以上前から、口伝で今日まで伝わってきました。近接戦闘でクリスチャンが繰り出していた独特の投技や打撃技が日本では馴染みのない型だったので、「珍しいなー」と思って見ていました。ハリウッド映画でも、これまでほとんど採用された実績がないようです。ベン・アフレックは今回の撮影の為、みっちりシラットを学んだのだとか。

5-8.次回作について。シリーズ化の予定はあるのか?

Could We See An Accountant 2? Here’s What The Director Says - CINEMABLEND

映画サイトでの感想でも、多くの人が「シリーズ化して欲しい!」と書いていましたが、本作の監督を務めたゲヴィン・オコナーにはハッキリと続編への展望があるようです。アメリカでの興収成績が良く、ベン・アフレック主演映画でも過去最高の興収となったこともあり、順調に行けば数年後に「ザ・コンサルタント2」が見れるかもしれません。

なお、監督はスピンオフとしてクリスチャンの過去を描くのではなく、本作のその後を描きたいとのこと。テーマも、人身売買や奴隷労働をさせられている子供を救う、かなりダークなテーマを構想しているそうです。今から楽しみですね。

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年2月現在上映中映画の感想記事一覧

6.まとめ

ベン・アフレックの新境地を開く、一風変わった個性的なヒーロー像が非常に惹きつけられる佳作でした。130分超と長めの映画ながら、少しずつ意外性のあるストーリーが明かされていく展開は、時間を感じさせず最後まで楽しんで見ることができました。

良い作品だと思います。ぜひチェックしてみてください。

それではまた。
かるび

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7.映画をより楽しむためのおすすめ関連作品

クリスチャンのように、表の職業とは別に一流の殺し屋だったり、オールマイティな正統派のヒーローから外れた個性的なヒーローが活躍する映画は、他にもいくつかあります。ここでは、「裏の顔」を持つ個性的なヒーローの活躍する僕のお気に入り映画を紹介したいと思います。

「イコライザー」(2014)

昼間はホームセンターの店員で、夜は正義に燃える殺し屋という、「裏の顔」を持つ設定や、身の回りのあらゆるものを凶器に変えて、一撃でためらわず殺す仕事ぶりは「ザ・コンサルタント」と似ています。チート級の強さで巨悪に一人立ち向かい、ガンガン倒していく、いわゆる映画的なカタルシスもしっかり味わえる作品。

「アウトロー」(2013)

トム・クルーズ扮する流れ者(要するに無職)のジャック・リーチャーは、元陸軍憲兵捜査官。普段は物静かで冷静なリーチャーが、事件に巻き込まれて、真犯人を追い詰め、最後は無敵の強さで敵を葬ります。最新作「ジャック・リーチャーNEVER GO BACK」では、派手なアクションものでやや没個性になってしまいましたが、1作目の「アウトロー」ではトム・クルーズの枯れた無頼漢ぶりが個性的で新しくて良かったです。Amazon Primeでは、2017年1月現在、無料で見ることができますね。

ベン・アフレックの過去作は、U-NEXTがおすすめ!

上記でオススメした関連作品以外にも、ベン・アフレック出演作品を一気に楽しむには、ビデオ・オンデマンドが一番時間をお金を節約できるベストなサービスだと思います。僕も、これを機にベン・アフレックの過去作品を楽しんでみたいと思っています。そこで、手軽に楽しむには、動画配信サービスU-NEXTが良さそうです。

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現在、僕はU-NEXT、Hulu、AmazonPrimeとオンデマンドサービスに3社加入しているのですが、ベン・アフレック出演作品はU-NEXTが一番品ぞろえが良く、オトクでした。

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