【2016年12月22日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。
パルコミュージアムで開催中の、「大ラジカセ展」に行ってきました。2016年春に好評だった大阪・梅田ロフトでの開催を受けて、東京にも12月上旬から巡回してきている展覧会です。
ヴィンテージ・ラジカセが100台集結し、入場客が(自分を含め)ほとんど40代以上のオッサンだったという、まさに中年マニアを直撃する、サブカル臭漂う面白い展覧会でした!今日は、この「大ラジカセ展」について、簡単に紹介したいと思います。
- 1.混雑状況と所要時間目安
- 2.個性的な展覧会、「大ラジカセ展」とは
- 3.どんなラジカセが置いてあるの?
- 4.ラジカセの体験コーナー
- 5.カセットコーナー
- 6.物販コーナー
- 7.まとめ
- 「大ラジカセ展」展覧会開催情報
1.混雑状況と所要時間目安
はい、あまり混んでません(笑)でも、来場客は濃いマニアが多数集結していますので、熱いオーラは漂っていました(笑)ひょっとしたら、23日以降は仕事納めを済ませてきた人たちで混む・・・かも?!
2.個性的な展覧会、「大ラジカセ展」とは
今季、たくさんの展覧会を回ることができましたが、マニア度やテーマの意外性では、この展覧会がNo.1でした。そんな「大ラジカセ展」の概要を少し説明してみたいと思います。
大ラジカセ展とは?
<ラジカセ展の公式動画>
70年代~80年代にかけて世界中を席巻したカセットとラジオが合体した日本発の「アナログ家電」であるラジカセ。本展は、とにかくラジカセを特集展示した、会場中ラジカセだらけの変わり種の展覧会です。
展覧会を企画・監修したのは、ラジカセ収集家の松崎順一氏。
(引用:「大ラジカセ展」HPより)
幼少期から、ラジオの製作・電子工作・アマチュア無線などを趣味として、日本有数の家電マニアとなった方で、日本中から廃棄された家電(特にラジカセ)を収集するコレクターです。2003年に「デザインアンダーグラウンド」設立し、来年には自らのラジカセブランド「MY WAY」も立ち上げるそうです。
ラジカセとは何なのか?その定義や特徴をまとめると・・・
日本で初めて発売された世界初のラジカセ、「AIWA TPR-101」をきっかけに、90年代初頭まで、用途やユーザーの好みに応じて、様々なヴァリエーションが生まれたラジカセは、70年代~80年代の音楽・ファッションやサブカルチャーと深く結びついて、独自の発展を遂げました。
展覧会を監修する、松崎順一氏による「ラジカセの定義」を引用してみます。
ラジカセの定義は1.ラジオとカセットが付いている。2.把手が必ずある。3.電池で使える。この3点がラジカセの定義と思っている。あえてもう一つ付け加えるならばワンピースこそ最高なのである。
(引用:ラジカセ考 - デザインアンダーグラウンド ラジカセ・カセットテープ・オーディオの販売)
さらに、同氏は、ラジカセに共通する特徴として、3点にまとめています。
時代が生んだ多種多彩多用なデザインは合体家電ラジカセの魅力のN0,1。
「アナログな音」
カセットテープのアナログ感。ラジオサーフィンが出来るアナログチューナー。
「直感的なインターフェース」
ひとつひとつのスイッチの音と実感を感じる操作感
本展覧会では、そんな松崎氏が日本全国から収集してきた世界的なラジカセコレクションの分類展示を中心に、ラジカセの魅力やカセットテープ、ラジオ、ラジカセが生み出した文化などを見ていきます。
【2016年12月22日追記】
松崎順一氏の挙げる「ラジカセの定義」について、”把手がある"という限定条件をつけるのはおかしいのではないか?「ラジオ」と「カセット」があればそれでいいのでは?という熱いエントリを読ませていただきました。
ラジカセ黎明期~全盛期の愛好家の鋭い意見、非常に勉強になります。是非合わせてご覧ください!パラボラアンテナ付きラジカセとか、マニアックを極めた一品も紹介されています。
「大ラジカセ展」の展示内容は?
ハイライトとなるのは、「スタンダード系」「かわいい系」「やりすぎ多機能系」「バブル時代系」など、タイプ別に展示された約100台のヴィンテージ・ラジカセです。よくこんなに集めたなぁと。
そして、最後に物販。なんと、展示されているヴィンテージ・ラジカセのうち、いくつかは購入することもできました。松崎氏のなりわいは、古いラジカセの修理請負や中古品販売でもあるため、「大ラジカセ展」は、マニア向けの即売会という性格も持っているのでした!僕が見に行った日も、実際にその場で購入している強者(やはりオジサンでした/笑)がいましたから。
下記の写真のように、黄色い「◯」印がついているブツは、購入できちゃいます!見た感じ、それほど高くなく、良心的な価格設定でした。
展示スペースの様子
フロアは、こんな感じでした。「大ラジカセ展」といいつつも、どちらかと言うと狭めの展示スペースの辺り一面にぎっしりとラジカセが積まれています!!
嬉しいことに、展示会場内の展示物は、体験コーナーの展示物を除き、手にとることはできませんが、 自由に写真撮影ができます。フラッシュはだめですが、接写、1点撮り、なんでもいけますので、是非カメラを忘れずにお持ち下さい!
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3.どんなラジカセが置いてあるの?
ラジカセの元祖、「AIWA TPR-101」
まず、展覧会場に入ると最初に目に入ってくるのがこちら。
1968年、アイワからラジオ(短波/AM/FM)付きのカセットレコーダーとして世界初/日本初となるラジカセ「TPR-101」が発売されました。メーカーの設定定価は27,500円。今から約50年前の製品ですが、どうでしょうか?見た目よりも古さをそれほど感じさせないデザインだなと思いました。
このあと、70年代~80年代前半にかけて各社から発売されたラジカセは、基本的にはこのアイワ製のラジカセ第一号のデザインやコンセプトを参考に開発が進んでいきました。上述した、松崎氏の挙げる「ラジカセの3つの定義」(カセットとラジオが聴ける、把手がついている、電池で動く)をぴったり満たしています。
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スタンダードタイプ
僕が小学校の頃、学校で体育や音楽の時間や、ラジオ体操などでよく使われていたようなデザインです。
基本的には、AIWAのTPR-101を拡大発展させたようなデザイン・コンセプトのラジカセが80年代になるまでは好まれました。今は亡きシャープ、三洋、ナショナル(旧パナソニック)、AIWAや、東芝、日立製のラジカセもあり、各家電メーカーが競合し、ひしめき合うレッドオーシャンな市場でもあったのですね。
ラジカセ黎明期には、電話機やFAXに似た形のラジカセも多く見られました。今見ると、プロの使う機材みたいです。
女性向けタイプ
80年代を迎え、ラジカセも成熟期を迎えると、家電はインテリアやファッションと融合し、よりカジュアルな存在になっていきます。その中で、女性をメインターゲットにして開発された一連のカジュアルな製品群がありました。
これまでの無骨で実用本位だったり、マニアックな雰囲気も漂いがちだった黒ずくめの筐体を見直し、日常使いに必要な機能に絞り込み、ライトユーザーや女性に訴求した製品群は、女性以外にもよく売れたそうです。
チープ&キュートタイプ
また、80年代は、工業製品にもDCブランド(死語/笑)やポストモダンの影響が色濃く出た結果、ラジカセにもデザイン重視の個性派製品が登場しました。そして、徹底したコストダウンにより廉価製品も多数出回った時代でもありました。「大ラジカセ展」では、こうした変わり種のラジカセも多数展示してありました。
今は亡きサンヨーのヒット商品「ROBO」子供の時、本当によく店頭でこの商品を目にした覚えがあります。
そして、まるで炊飯器のようなデザインの正体不明なラジカセ。インテリアとしても調和しづらいような気もしますが・・・
巨大化していったラジカセ
小型化やファッション化とは別の系統で、ラジカセの爛熟期には、より大型化、高級化していった一連の製品群もありました。把手は一応ついていますが、あまりに大きくなって、もはや持ち運びが不可能なほど重たそうです。
面白かったのは、こうした巨大化したラジカセを身体が大きくなりすぎて絶滅してしまった「恐竜」になぞらえた展示説明があったことです。事実、この後すぐに「ラジカセ」は衰退期を迎え、ミニコンポやウォークマンに取って代わられてしまいましたから。
昔のコンポや大きいラジカセって、録音/再生用にこういうメーターがかならずついていましたよね。子供の時、これらメーターが何のために使われるのかさっぱりわからなかったですが、何となく高級感がありました。懐かしい。
4スピーカータイプ。とにかく巨大です。ドルビーサウンドやサラウンド機能などもなかった時代に、なぜ内蔵スピーカーが4つも必要だったのかわかりませんが、とにかく壮観です(笑)
やりすぎ多機能系
そして、同じく爛熟期の進化の特徴として、ガラパゴス的になんでもオールインワンに詰め込む日本人的発想で独自進化した、やりすぎな多機能系ラジカセ。とりあえずアイデアを果敢に形にしてみたけれど、一部のマニアの心をくすぐっただけだったという珍品も大集合しています。
こちらは、なぜかラジカセの上に鍵盤が!流石にこれだけしかなければ、弾ける曲もすくないんじゃないかな?なんて思うのですが・・・
ブラウン管のテレビ一体型ラジカセもありました。旅行先などで、意外に重宝したのかもしれません。
こちらは、LPレコードが聴けるバージョン。カセットテープにダビングする手間がかからないので良いのでしょうか?!
バブル時代タイプ
最後に、CDが普及し始めた、ラジカセ衰退期に出回ったCDラジカセです。バブル期になると、伝統的なラジカセの直線的なインターフェースは崩れ、流線型や丸っこいデザインのものが増えました。
ちなみに、下記のサンヨーのCDラジカセは、僕が12歳の時に父親がCDを聴けるようにと購入したものです。僕が使っていたころは、結局5年で壊れたのですが、懐かしいのでカメラに収めてみました。
当時は、「重低音」を如何にリアルに響かせられるか?という指標が非常に重要だった時代で、このマシンもつまみを回すと近所迷惑なくらいものすごい重低音が出せた思い出があります。
4.ラジカセの体験コーナー
一通りタイプ別にラジカセを見て堪能した後は、実際にラジカセを聴ける体験コーナーも設置されています。2台置いてありましたが、僕が行った日には1台壊れてカセットが再生できなくなっており、何とも言えない奥ゆかしさを感じたのでした。
ちなみに、この日体験コーナーのラジカセに入っていたカセットは、河合奈保子「あるばむ」でした。僕が物心ついた時は、松田聖子と中森明菜に挟まれて、なんとなくトップになりきれない感じの歌手でしたが、今聞くとメチャ歌上手いじゃないですか・・・。AKBとかのメンバーに是非聴かせたいものです。
5.カセットコーナー
そして、ラジカセコーナーのあとには、カセットコーナーとラジオコーナーがありました。ここでは、カセットコーナーを紹介したいと思います。現在、40代後半以上になっった各界の著名人・クリエイター系の人たちが、若い時から大切にとっておいた彼らの思い出のカセット達が展示されています。
カセットコーナーは、独立した小部屋になっていて、こんな感じのカセットケースで装飾したのゲートをくぐって入っていきます。
僕も、自宅に昔作ったカセットテープがありましたが、先日の大掃除で全部捨ててしまいました・・・。みんな結構捨てずにとっておくものなのですね。小学校~中学校の時によく聴いていた工藤静香とかBOOWYとかなので、別にいつでもCDで買い戻せるのですが(笑)
そして、カラフルなカセットケースの展示コーナーもありました。こうして並べてみると、何となくポップアート的な香りもしてきますね。
6.物販コーナー
そして、展示最後が物販コーナーです。松崎さんの著作を中心に、マニアックなDVDや書籍がいっぱい置いてあります。
中でも、最高にマニアックそうだったアイテムがこちらです。DVD『ラジカセのデザイン!』。世界初のラジカセビジュアルDVDということで、松崎氏が完全監修の下、プロの声優ナレーターがラジカセについて語り尽くした一枚だそうです。
ググってみたところ、ちゃんとプロモーションビデオも製作されていました。売る気まんまんですね?!ラジカセファンにはたまらない、いかにもマニアックそうな内容です!プロモビデオは、下記からどうぞ!
<ラジカセのデザイン>
また、インディーズ・レーベルのアルバムカセット(洋楽)も多数展示されていました。ここ数年、静かにカセットテープが復権しつつあるのを感じられました。
そして、松崎氏監修のオリジナルラジカセも発売になるようです。
松崎氏が「未来のラジカセ」として独自開発したラジカセ「MY WAY」ですが、調べてみたら、クラウドファンディングによって製作費をまかなったとのこと。
目標金額の200万円を大きく上回る500万円超が集まったことがわかります。マニアの熱いサポートによって、いよいよカセットテープだけでなく、それを再生するための媒体、ラジカセも復権しようとしているのでしょうか?!
7.まとめ
今の40代以上の年代には、非常に懐かしい家電となったラジカセですが、ここ数年、洋楽やクラブシーンを中心に盛り上がりつつあるカセットブームの追い風に乗って、ラジカセも静かに再ブレイクする日が来つつあるのかもしれません。
僕にとっては、学生時代を思い出す、非常に懐かしい気持ちにさせてくれた展覧会として、非常に印象に残りましたし、なによりもマニアックで面白かった展覧会でした。
年末、27日が最終日となります。もし興味がある方は、面白いのでおすすめです!
それではまた。
かるび
「大ラジカセ展」展覧会開催情報
◯所在地
パルコミュージアム 池袋パルコ本館7F
〒171-8557東京都豊島区南池袋1-28-2
◯最寄り駅
JR・私鉄池袋駅/JR東口駅ビル内
◯開館期間・時間
2016年12月9日(金)〜12月27日(火)
10:00~21:00(最終日は18:00閉場)
◯休館日
なし
◯入館料
一般500円・学生400円(税込)・小学生以下無料
◯公式HP
http://dairadicasseten.haction.co.jp/