【2017年4月4日更新】
かるび(@karub_imalive)です。
大英自然史博物館展に行ってきました。初日から予想外の大混雑にびっくりでしたが、でも中身はものすごく気合の入った良い展覧会でした。
以下、展覧会の感想や、みどころ、おすすめポイントを簡単に紹介してみたいと思います。
※なお、本稿で使用している写真は、あらかじめ主催者側の許可を得て撮影したものとなります。
- 1.混雑予想と所要時間の目安
- 2.音声ガイドは山田孝之!
- 3.大英自然史博物館展とは?
- 4.展覧会の見どころは?
- 5.その他、面白かった展示物を一部紹介!
- 6.図録がものすごく良い出来!!
- 7.まとめ
- 展覧会をより楽しむための書籍や資料について
- 展覧会開催情報
1.混雑予想と所要時間の目安
展覧会がスタートした4日目、3月22日より、入場許容人数をオーバーした際は「整理券」方式で入場制限を行う、と発表がありました。入口で整理券を受け取って、指定された時間に入場する方式です。
現在のところ、「整理券」を受け取ってから順番が回ってくるまでの時間は30分程度となりますが、会期後半になるにつれ、整理券での指定入場時間までの待ち時間が増えていくと思われます。念のため、土日祝日などで出かける際は、半日以上余裕を持って行ったほうが良いでしょう。
狙い目は、平日15時以降か、午後20時まで夜間延長がある金曜日・土曜日の夕方以降です。この時間帯なら整理券なしで入れる確率が高いです。
また、かなりのコンテンツ量があるため、所要時間は90分以上見ておくほうが無難だと思われます。混雑する時間帯なら、入場制限での待ち時間も含めて3時間~4時間以上は欲しいところですね。
2.音声ガイドは山田孝之!
(引用:http://treasures2017.jp/goods/)
今回の音声ガイドは俳優の山田孝之が担当。通常、音声ガイドにタレントが起用される場合は、ポイントで少ししゃべるくらいで大半の音声トラックはプロのアナウンサーやナレーターが務めることが多いのですが、今回は山田孝之が頑張って全トラックしゃべっていました!偉い!
内容は、クイズ等や、科学博物館の学芸員さんのさらに詳しい解説トラックなどもあって盛り上げてくれてはいますが、結構博物学や生物学の専門的な話が続くので、小学生低学年以下の子供にはちょっと難解かもしれません。子供連れで入場する場合は、親御さんが聞いてから、それを噛み砕いて説明してあげるのがベストでしょう。
3.大英自然史博物館展とは?
(引用:Wikipediaより)
今回、国立科学博物館で実施される「大英自然史博物館展」は、文字通り、世界で最も優れた博物学標本のコレクションを収蔵した著名な博物館として知られる「大英自然史博物館」をフィーチャーした特別企画展です。
大英自然史博物館(The Natural History Museum)は、ロンドン郊外のサウスケンジントンにあります。和名がきちんと固定されておらず、結構別名がたくさんあります。「ロンドン自然史博物館」とか「英国自然史博物館」などでGoogle検索を掛けてみても、ちゃんとHPにたどりつきますよ。
同館が保有する膨大な所蔵品は、およそ8000万点。今回の展覧会では、その中から選りすぐったアイテム約180点を借り受けて一挙に展示しています。
創立の貢献者 ハンス・スローン
(引用:Wikipediaより)
さて、その収蔵品の大元となったのは、イギリスの高名な医師、ハンス・スローン(バッハじゃないよ)の7万点を超えるコレクションでした。1753年にハンスがなくなると、彼のコレクションは大英博物館に一括して買い上げられ、これが大英自然史博物館のコレクションの核となりました。
以降、しばらく19世紀中盤までの約100年間は、大英博物館にて世界各地で収拾された博物学の化石や標本、資料類が管理されてきました。しかし、19世紀後半から、古美術品で満杯になった大英博物館では収蔵・展示が難しくなってきたこともあり、当時の大英博物館自然史部門の責任者、リチャード・オーエンは、各方面への粘り強い交渉により、1881年に大英博物館の自然史部門分館の開設にこぎつけました。それが発展して、今日大英博物館から完全分離したのが、大英自然史博物館となったのです。
大英自然史博物館の分離・発展に貢献したオーエン
(引用:Wikipediaより)
今回の展覧会では、大英自然史博物館の発展や活動の歴史を、研究者たちの活動に着目して追っていく展示内容になっています。創始者であるハンス・スローンから順番にオーウェン、ダーウィン、カール・リンネら、博物学や生物学の歴史に名を残した大御所たちの業績が凄い標本や資料と一緒に展示されています。
また、同博物館には、世界中の冒険家達が海を渡り、各地で収集した調査結果資料が山のように収蔵されています。今回の展覧会でも、18世紀のエンデバー号の航海に始まり、19世紀のチャレンジャー号の海洋探索や、スコット探検隊の南極探索、ダーウィンも乗り込んだビーグル号の航海などを特集し、それら探検で得られた知見や収集物を展示しています。
特に凄いと感じたのは、こうやって大英自然史博物館が積み重ねてきた歴史や経緯をざーっとトレースして辿っていくだけで、近代での自然科学の発展の歴史も一緒に学べてしまうということです。18世紀~19世紀にかけてパリが世界のアートの中心地であったように、近代においてはロンドンの自然史博物館こそが世界の博物学や生物学といった学問の中心地だったということですね。
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4.展覧会の見どころは?
展覧会で展示されている各種標本や資料類はどれも貴重で見逃せないものばかりなのですが、ここでは特に僕が感じた展覧会の「見どころ」を3点に絞ってお伝えしたいと思います。
みどころ1:迫力の標本展示
大英自然史博物館が200年かかって世界各地から収集してきた莫大なコレクションはダテではありません。パッと見て、思わず目を引く肉食動物の化石・標本から、その後の学説に大きなインパクトを与えた、歴史的に意義深い動植物・鉱物のサンプルまで、バラエティに富んだ展示が素晴らしいです!
特に、自然史博物館の収蔵品がまとめて国外で紹介されるのは今回が世界初ということで、同博物館側も普段は国内でも常設展では見せないような貴重な標本まで、多少無理してたくさん貸し出してくれているとのこと。どれも見どころ満載の標本ばかりです。いくつか、紹介してみますね。
タマカイ
体長3メートル以上になる、現生種で世界最大の硬骨魚(つまり普通の魚)の標本。現在、乱獲により絶滅の危機に瀕しているそうです。
飛べない巨鳥「ヒクイドリ」
動物の研究に魅せられたスーパー大富豪ロスチャイルド家の御曹司の一人、ウォルター・ロスチャイルドが膨大なコレクションの収集と並行して、自宅で特にかわいがって飼育していたという、カラフルな飛べない巨鳥ヒクイドリ。死後、剥製にして自身のコレクションにしたそうですが、さすがは桁違いの大富豪、やることが豪快です・・・。
トラ(左)、フクロオオカミ(右)
現在はすでに絶滅したか、絶滅の危機に瀕している動物たちの標本も多数所蔵している大英自然史博物館。この2頭の標本は迫力がありました。
オオツノジカ頭骨
約8000年前、氷河期末期の気候変動の影響で絶滅してしまった、かつて地球に生息した最大のシカ「オオツノジカ」の頭骨標本。大迫力でした!
エンデバー号の航海で持ち帰られた植物標本
イギリス人海軍士官、ジェームズ・クックが率いた1768年~1771年での探検航海で、多くの植物学者たちを乗せて、オーストラリアやニュージーランド、アフリカ大陸での固有植物が採取されました。ちなみに、イギリス人はこの航海でオーストラリア大陸を「発見」したそうです。
ベスビオ火山から収集された岩石群
ローマ時代の遺跡「ポンペイ」で有名なイタリアのベスビオ火山。遺跡の発掘だけでなく、ちゃんと火山石の採取・研究も抜かりなくやっています。
始祖鳥のタイプ標本
特に絶対見逃せない標本としては、「始祖鳥」のタイプ標本の実物展示です。(※タイプ標本というのは、基準となる標本のこと。新発見等があれば、かならずタイプ標本と比較検討して、新種認定等が行われる)
19世紀にダーウィンが予言したとおり、どうやら鳥類は恐竜から進化していったというのが最近の学説の主流となってきていますが、この始祖鳥のタイプ標本は、まさに鳥類とも恐竜とも言えない、中間的な形態を持った貴重な化石なのです。
世界にわずか12点しかない「始祖鳥」の標本化石。日本に始祖鳥の標本化石が来日したのは、1986年のベルリン標本、 2011年のサーモポリス標本についで、今回がまだ3度目なのだそうです。超貴重な機会、見逃さずにじっくり見ていってくださいね。
みどころ2:圧倒的な歴史の重みと面白さ
上記で書いたように、大英自然史博物館には、250年以上の歴史があります。博物館の発展の歴史が、すなわちそのまま世界の博物学・生物学の発展の歴史のようなものなので、博物館開館以来、順番に博物館と関わりがあった重要な人物たちの業績をストーリー仕立てで見ていくことで、自然と教養が身についていきます。
博物館と関わりの深い研究者たちの説明パネル
展示では、上記のように、時系列の順番で大英自然史博物館と関わりが深かった、あるいは大きく貢献した著名な研究者たちを、関連した研究実績の展示と合わせて特集していきます。
スコットの南極探検についての展示
特に、18世紀~19世紀にかけて命をかけて海洋探検に出かけた研究者(兼冒険家?)の飽くなき探究心と勇気には頭が下がる思いにさせられました。彼らの冒険は、いつも生命の危険と隣り合わせでした。
例えば、1912年、南極へ行ったスコット探検隊が帰路に就いた時、猛吹雪で遭難して亡くなってしまったという有名なエピソードも紹介されています。(そして、生還者が持ち帰った成果物は、進化論を裏付ける非常に重要なエビデンスとなった)
みどころ3:要所要所でのVTR展示も非常に作り込まれています
そして、今回の展覧会では標本類や説明パネルだけでなく、各展示物のセクションごとに必ず、大英自然史博物館から提供された貴重な映像資料も多数用意されていました。どれもクオリティが高く、展示内容をより多角的に理解するために役立ってくれます。
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5.その他、面白かった展示物を一部紹介!
5-1.日本からの収集された標本も!
タカアシガニ
大英自然史博物館の長い歴史の中では、日本から採取され、博物館に収蔵された動植物・鉱物の標本も沢山あったそうです。今回は、そのうちの幾つかがいわば「里帰り」展示されているわけですね。今回、その中でも一番目を引いたのが、世界最大のカニである「タカアシガニ」の標本です。
いつもわりと水族館なんかで実物は見慣れているはずですが、こうして「標本」として展示されると、その大きさに改めて気付かされました。
5-2.三葉虫
三葉虫
約5億年前の大型の三葉虫の標本です。集団で交尾中だったところ、何らかの原因で窒息死したまま化石になった珍しい標本。折り重なって卵を産む行動様式は、現生する近縁種であるカブトガニの生態にも共通しているそうです。「異様」な標本に、ちょっとドキッとしました。
5-3.世界で初めて製作された「地質図」
ウィリアム・スミス
「イングランドとウェールズ及びスコットランドの一部の地層の描写図」(右)
「ウィルトシャーの地質図」(左)
当時一流の測量技師で、後にイギリス地質学の父として知られるようになったウィリアム・スミスは、イギリス中を旅するうちに、特徴的な化石を含む「地層」が地域ごとに特徴ある分布をしていることに気づき、「地層」が分布する「地質図」を世界で初めて作成しました。今では土地の利用、災害防止、資源の探索、学術資料、環境対策など、当たり前のように応用されるようになった「地質図」の画期的な第一号が展示されていました。地味だけど凄い!
5-4.ピルトダウン人の頭骨復元展示
ピルトダウン人の頭骨類
大英自然史博物館も、長い歴史の中では恥ずかしい黒歴史的な事件もありました。しかし、それを逆手に取って、自分自身への戒めや反省材料として、展示物にまでしちゃうのが大英自然史博物館の凄いところ。
1912年、アマチュア考古学者だったチャールズ・ドーソンがイングランドのピルトダウンという町の周辺で見つけたと称した、類人猿と人類の進化の「ミッシング・リンク」を埋めるとされた捏造された人骨の標本。1953年にフッ素年代測定により、オランウータンの骨と現代人の人骨を加工したまっかな偽物であると判明しました。
その偽装の手口は非常に巧妙だったため、当時から検証に関わった研究者たちも全く気づかず、おおよそ40年間の間、世界中の科学者達がこの「ピルトダウン人」を、ネアンデルタール人やクロマニヨン人たちと同じく重要な資料と位置づけ、研究を続けてきたのだそうです。
これを教訓として、大英自然史博物館では「贋作」とわかったピルトダウン人の資料一式を保存し、100年後にさらに進んだ分析法を使って再鑑定するのだそうです。
6.図録がものすごく良い出来!!
今回の展覧会では、展示内容も良いのですが、公式図録の出来がものすごく良いのです。しかもこれだけの装丁と中身で、価格は2,000円とかなり抑えた良心的価格。
外見もイケている公式図録!
展示内容がわかりやすく番号とカラー写真、図解できっちり整理され、それぞれの解説文が平易で非常にわかりやすいのです。(アート系の図録では、何を言っているのかわからない意味不明な解説文が延々と続き、頭が痛くなるのも結構ありますから・・・)
あくまで写真が主役!とにかく見てて楽しい!
さらに、図録のところどころで挟まれた博物館の学芸員さんが執筆したコラムも良かったです。ちゃんと展示内容と連動したコンテンツになっており、もう1歩踏み込んだプラスアルファの教養を届けてくれる良質な内容揃いでした。
展示内容と連動したわかりやすいコラム
僕は、大型の展覧会に行ったら2回に1回は図録を購入しますが、今回の図録は価格面・内容面からずば抜けてクオリティが高いと思います。Amazon等の通販では買えず、展覧会に足を運んで直接購入するルートしかないようですが、是非、展覧会に行ったらお土産や復習用として図録の購入を検討してみてくださいね!
7.まとめ
去年の「恐竜展2016」「ラスコー展」に続き、今回の大英自然史博物館展も、過去の発見の歴史と、最新の科学的知見をミックスした素晴らしい展示でした。単純に見て楽しいし、驚きもあるし、そして勉強にもなる、凄い展覧会だと思います。
春休みやGWはそれなりに混雑しそうではありますが、少しでも興味がある人は、素晴らしいコンテンツが待っていますので、是非時間をみつけて見に行っていただけたらと思います。
それではまた。
かるび
展覧会をより楽しむための書籍や資料について
大英自然史博物館の《至宝》250
今回は、展覧会の公式図録が素晴らしいのですが、展覧会と連動して発売された本書もハイクオリティ!今回の展覧会で出展された標本群を含め、大英自然史博物館の膨大な所蔵品の中から、学術的・歴史的に見て非常に価値が高く、教養にも役立つ250点の資料を厳選して写真・図解付きで紹介してくれる書籍です。
公式図録同様、平易な文章でわかりやすく説明してくれているので、図鑑として毎日眺めるだけでも楽しいです。これもお勧め!
展覧会開催情報
★予想以上の混雑中につき、早くもゴールデンウィーク期間中の開館延長が発表されました。混雑を避けてゆったり見るためにも、是非夜間来館を検討してみてください。
◯美術館・所在地
国立科学博物館
〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20
◯最寄り駅
JR・東急・地下鉄渋谷駅3A出口(109口)から徒歩7~8分
◯会期・開館時間
2017年3月18日(土)~6月11日(日)
午前9時~午後5時(金・土曜日は午後8時まで)
10時30分~19時00分(入場は30分前まで)
【GW特別開館時間延長あり!】
4月28日(金)〜30日(日)および
5月3日(水・祝)〜7日(日)は午後9時まで。
5月1日(月)・2日(火)は午後6時まで。
◯休館日
3月21日(火)、 4月10日(月)、 4月17日(月)、 4月24日(月)、 5月8日(月)、
5月15日(月)、 5月22日(月)、 5月29日(月)
◯公式HP
http://www.treasures2017.jp/
◯Twitter
https://twitter.com/treasures2017
◯展覧会巡回先
現在国内への巡回先は予定されていません。