【2017年4月20日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。
最終的に約80億円の興収を記録して終わった話題作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」。ハリー・ポッターの新シリーズは、初めて原作者のJ・K・ローリングが原作小説を書く前に映画化された作品となりました。
結果としては、予想外の良い出来に、大満足でした!以下、映画を見た感想やあらすじ、解説を書いてみたいと思います。
後半パートでは、ネタバレをかなりの部分で含みますので、何卒ご容赦下さい。
- 1.映画の基本情報
- 2.主要登場人物とキャスト
- 3.映画の見どころ(ネタバレ無し)
- 4.「ファンタスティックビースト」のラスト結末までの詳細なあらすじ(※ネタバレ注意)
- 5.映画の感想と評価(※ネタバレ有注意)
- 6.気になる設定や伏線の解説
- 7.まとめ
- 8.映画を楽しむためのガイドブックなど
- 9.ファンスティック・ビーストの続編について!
1.映画の基本情報
映画「ファンタスティックビースト」シリーズは、すでに全5部作での製作が発表されています。その全てでメガホンを取るのは、ハリー・ポッターの後半4部作で監督を務めたデイヴィッド・イェーツです。
また、今回は脚本段階から、ハリー・ポッターシリーズの原作者であるJ・K・ローリングががっつり参加しているため、設定や伏線、世界観が非常にクリアで行き届いていました。
<予告動画を見てみる!>
【監督】デイヴィッド・イェーツ
【原作】J・K・ローリング「ハリー・ポッター」
2.主要登場人物とキャスト
ハリー・ポッターシリーズらしく、一般人(「ノーマジ」)ジェイコブ以外の主要登場人物は全て魔法界のメンバーです。
ニュート・スキャマンダー
(エディ・レッドメイン)
イギリスから渡ってきた世界的な魔法動物学者。魔法動物の保護と調査のため世界中を飛び回る中で、ニューヨークへ渡ってきた。
ポーペンティナ・ゴールドスタイン
(キャサリン・ウォーターストン)
通称ティナ。本作のヒロイン役。物語中盤まで表情も固く、マジメ一徹で保守的な古き良きアメリカの才女というイメージ。
クイニー・ゴールドスタイン
(アリソン・スドル)
ティナの妹。読心術を心得ており、人の心を自在に読める。地味な姉と対照的にセクシーな衣装で外向的だが、非常に姉思いのよくできた妹でもある。料理も上手。
ジェイコブ・コワルスキー
(ダン・フォグラー)
アメリカン・ドリームを目指して移民として渡ってきたが、さえない缶詰工場の労働者として働いていた。銀行から資金調達してパン屋を開こうとするが、そこでニュートと出会い、数奇な運命に巻き込まれる。魔法が使えない一般人「ノーマジ」。
パージバル・グレイブス
(コリン・ファレル)
アメリカ合衆国魔法議会、魔法保安局長。裏の顔も持つ、そこはかとない悪さを醸し出すコリン・ファレルの演技が非常に良かった。
3.映画の見どころ(ネタバレ無し)
3-1.「ビースト」たちの出来がいい!かわいい魔法動物たち!
今作は、魔法動物学者である主人公のニュート・スキャマンダーが、カバンから逃げ出してしまった魔法動物たちを街中で追いかけ回し、また時には動物と協力して危機を脱出し、敵と戦い、謎をとき、問題を解決していきます。そして、その独創的なビーストたちが意外なほどに動きや形がコミカルでかわいいのです。それも、アニメみたいなデフォルメされたかわいさではなく、現実世界に普通に生息していそうなリアルな造形で、なおかつかわいいという絶妙のデザインでした。作り込みに脱帽です。
3-2.アクションシーンでのVFXの美しさ
IMAXや4DXシアターに対応し、アクションシーン全開の今作ですが、最新の3DCGやVFXを駆使して非常にリアルにハリー・ポッターの幻想的な世界観がニューヨークの町中で表現されていました。また、VFXで生み出された数々の魔法動物たちの自然なかわいらしさは要注目です!さすが、アカデミー賞視覚効果賞にノミネートされただけあります!
3-3.「狂騒の20年代」1920年代のアメリカを描いた時代背景にも要注目
今回の舞台は1926年のニューヨーク。豊かな時代ではあったが、貧困や差別なども豊かさのすぐ側に同居していた「狂騒の20年代」と呼ばれた時代でした。その世相を反映した街並みや人々の服装、考え方など、非常に詳細に時代考証がなされていました。当時まだ飛行機がないため、船着き場に入国審査・税関があったり、走っている車がクラシックだったり、禁酒法下のアングラな居酒屋が独特の妖しさを放っていたりと、見どころは尽きません。
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4.「ファンタスティックビースト」のラスト結末までの詳細なあらすじ(※ネタバレ注意)
1926年、闇の魔法使いグリンデルバルドがヨーロッパで猛威を振るっていた。魔法世界は、次にグリンデルバルドがどう出るか戦々恐々とする毎日だった。
そんな中、魔法動物学者、ニュート・スキャマンダーが船でニューヨークへと渡ってくるところからストーリーが始まる。ニュートのスーツケースの中には彼が世界中で保護した魔法動物たちで一杯。税関の手荷物検査で見つかりそうになるが、間一髪通り抜けてニューヨークの町中へ。
一方、ニューヨークで起きている一連の不思議な事件の調査で、グレイプスは現場検証をしていた。見知らぬ得体の知らない何かが、街を破壊した痕跡や被害状況を調査していたのだ。
ニュートが通りを歩いていると、新セーレム慈善協会の指導者、メアリー・ルー・ベアボーンが魔法使いの脅威と撲滅について熱心にスピーチをしていた。彼女は、運動をするかたわら、孤児たちを施設で庇護・養育していた。彼女の子供であるモデスティ・ベアボーンや、クリーデンス・ベアボーンらは、ビラ配りなどメアリー・ルーの教えを広める手助けをしていた。
メアリー・ルーはニュートを見かけると、壇上から何かを話しかけたが、その時ニュートの開きかけのスーツケースから、ニフラーという魔法動物が逃げ出した事に気づいた。
ニフラーは光るものや、金目の物を集めるのが大好き。銀行の中へ逃げたニフラーを追うニュート。銀行内では、パン屋を開くために融資の申込みに来たジェイコブ・コワルスキーがいた。ジェイコブの隣に座り、ニフラーの様子を伺うニュート。ニュートはニフラーを追うのに夢中になるあまり、魔法動物オカミーの卵を椅子に置き忘れてしまう。
ジェイコブは、スーツの中から持参した手作りのパンを取り出して必死にアピールするが、結局融資を受けられず銀行を後にしようとする。引き続きニフラーを探していたニュートにオカミーの卵を返そうとしたジェイコブ。
「ノーマジ」に魔法動物を見られてしまったニュートは、焦ってジェイコブを魔法で転送して、銀行の金庫内に逃げ込んだニフラーを一緒に追うことになる。
まもなく銀行の警備員がやってきたので、さらに魔法で彼らを固めて、ジェイコブに「オブリビエイト」の魔法をかけて一連の魔法や魔法動物を見ていたジェイコブの記憶を消そうとする。しかし、ジェイコブはニュートのスキを突いて、カバンでニュートを殴って逃げてしまった。
それを見ていたのが、元闇祓いで、アメリカ合衆国魔法議会で、魔法の杖認可局の職員を務めていたティナ・ゴールドスタイン。ティナは、一般人「ノーマジ」に魔法を見せた魔法機密保持法「3条A」に違反したニュートを捕まえて、アメリカ合衆国魔法議会(以下マクーザ)へ連れて行く。しかし、マクーザ議長のセラフィーナ・ピッカリーはすでに魔法の杖認可局を解任されたティナが余計なことをすることに気分がよくない。グレイブスが、ニュートのスーツケースを開けてみると、それはパンが一杯入ったジェイコブのスーツケースだった。最後にジェイコブに間違えてニュートのスーツケースを持って行かれてしまったのだ。
代わりにニュートのスーツケースを持って帰ったジェイコブは、中に何が入っているかも知らず、自宅でスーツケースを開け、中に入っていた幻獣を外に逃がしてしまう。
また、マリー・ルーは子供二人を伴い、ヘンリー・ショーが社長を務める新聞社へ、自らの魔法撲滅運動をアピールしにいった。社長やその息子(上院議員)相手にされない。新聞社からの帰宅途中、クリーデンスはグレイブスと密かに接触し、グレイブスから「力」を持つ子供を探し出せ、そうすれば魔法使いにしてやるとささやかれた。
一方、魔法動物に逃げられたジェイコブの家はマートラップ(魔法動物)に半壊状態に。ニュートとティナはジェイコブの家を修復し、マートラップを回収するが、より安全な妹クイニー・ゴールドスタインと共同生活している家に。ジェイコブも連れて退避する。
その晩、クイニーの手料理を楽しんだジェイコブとニュートだったが、その晩、二人は部屋を抜け出し、残りの逃げ出した魔法動物を連れ戻しに行った。ニュートとジェイコブはスーツケースの中にあるニュートの小屋に行き、ジェイコブに、ニュートが保護している様々な魔法動物を紹介した。中でも、フランクと名付けた魔法動物サンダーバードを、今回アリゾナの大自然に返すため、アメリカに渡ってきたと話すニュート。街に出て、ニフラーと魔法動物エランペントを苦心の末回収した二人だった。
ニュートの小屋で、不穏な泡状の膜に覆われた黒いもやのような浮遊体をみつけるジェイコブ。取り憑かれないよう、ジェイコブに下がっているように注意するニュート。これは、3ヶ月前にニュートがスーダンで捕まえた、オブスキュラスという、小さな子供にとりつき、子供が内側へ抑えつけた魔法の力を捕食して生きる生命体/霊体であり、魔女狩りを恐れ、魔法使いが魔法の力を抑えなければならない何百年前では珍しいことではなかった。取り憑かれた子供はオブスキュリアルと呼び、10歳まで生きられないことが多いという。
その晩、新聞社のショー上院議員の大統領選の大会が開かれていたが、そこで見知らぬ巨大な力により、会場がめちゃくちゃに壊され、ショー上院議員はそこで死んでしまう。
これを重く見たメクーザのメンバーは、事件の原因をニュートが魔法動物と一緒にトランクの中から逃した、暴走したオブスキュラスが仕業であると断定。ニュートとティナを逮捕してしまう。グレイブスによる別室での取り調べで、自分が捕まえて持っていたオブスキュラスは人間に取り付いたことがない無害な個体で、事件とは無関係であると主張するも、クレイブスは、ニュートの言い分を却下し、ニュートとティナに死刑判決を出す。
死刑執行寸前、ニュートは隠し持っていた魔法動物ボウトラックルのピケットなど魔法動物を使い、手錠の鍵を解除し、ティナと逃げ出す。その途中でクイニーとジェイコブと合流した。
一方、繰り返し来る日も来る日も母親のマリー・ルーから虐待をされていたクリーデンス。その日、クリーデンスが杖で叩かれそうになった時、オブスキュラスが現れて、あっという間にマリー・ルーは殺されてしまう。マリーの子供、クリーデンスとモデスティは家から逃げ出した。
ニュート達は、彼らの無実を証明するためにも、逃げた残りの魔法動物の手がかりを得ようと、ブラインド・ピッグというかくれ酒場へゴブリンの事情通、ナーラックを訪ねます。ナーラックは情報提供の見返りに、ニュートの所有する魔法動物、ボウトラックルを要求する。しぶしボウトラックルを渡し、ナーラックは「メーシー」百貨店に残りの1匹がいると教えるも、メクーザにも通報していたのだった。
急いで酒場を離れ、メーシー百貨店へ向かう4人。そこで魔法動物オッカミーのドゥーガルを見つけて、その場でゴキブリを餌に、ティーポットにオカミーをなんとか閉じ込めることに成功したのだった。
一方、グレイブスはクリーデンスと合流し、オブスキュラスに取り憑かれているであろうモデスティを見つけ出す。グレイブスは、クリーデンスが魔法一族の息子だが、魔法を使えない体質であることを伝え、モデスティを確保できそうになったため、用無しになったクリデンスを見捨ててしまう。
見捨てられたクリーデンスは裏切られた悲しみと怒りのあまり、オブスキュラスになってとうとう暴走しまう。モデスティではなく、クリーデンスこそが宿主=オブスキュリアルなのだった。青年まで体内でオブスキュラスを抑えつけていたクリーデンスが開放したオブスキュラスは、非常に強力な個体となって、ニューヨークの街中を荒れ狂うように破壊していく。
オブスキュラスになったクリーデンスを追うニュート達とグレイブス。やがて、クリーデンスは地下鉄のホームへ入り込み、そこでニュートはクリーデンスと対話を試みる。地上では、メクーザの魔法使いたちが現場近くに結界を張っていた。
ニュートとティナがクリーデンスと対話している時、再びグレイブスがやってきて、クリデンスの心を乱す。再びオブスキュラスになって荒れ狂うクリーデンス。
そこへ、メクーザの魔法使い達がやってきて、クリーデンスを殺してしまう。オブスキュラスを開放し、人間界を破壊したいと願っていたグレイブスは、失望と怒りのあまり、メクーザから離反する。その場でグレイブスと魔法使いたちの間で戦いになるも、グレイブスの正体を見破ったニュートがグレイブスを拘束し、本来の姿を暴きだした。
捕まったグレイブスは、姿を徐々に変え、正体を現していく。なんとグレイブスは、グリンデルバルドだったのだ。グレイブスは拘束され、ただちにメクーザに収監された。
多数の「ノーマジ」ニューヨーク市民に魔法を見られてしまったため、街全体に「オブリビエイト」の魔法をかける必要があったが、それは魔法使いたちの力だけでは到底無理だった。そこで、代わりにニュートが連れてきたサンダーバードのフランクに、ニュートが開発した記憶を失わさせる青いポーションを街全体へ雨と一緒に降らせることで解決した。
そして、ノーマジは全員記憶を消さなければならないが、その例外はない。ピッカリーに念を押され、ジェイコブも涙ながらにニュート達と別れを告げたのだった。
それから少したち、ジェイコブは、前職の缶詰工場への勤務に向かう灰色の日々を送っていた。不機嫌そうに通勤するジェイコブに、唐突にぶつかってくるニュート。ジェイコブが態勢を立て直し、スーツケースが妙に重いのでその場で開けてみると、中にはたくさんのオカミーの銀のたまごが入っていた。中の手紙には、これを銀行からの融資の担保にして下さいと書かれていた。
いよいよニュートがニューヨークから旅立つ時が来た。見送りに来たティナに対して、本を書き終えたらまた戻ると言い残して旅立っていった。
ジェイコブが開いたパン屋は大繁盛。かすかに残る記憶で作った、魔法動物を思わせるような変わったパンが今日も好評だ。そこへ、クイニーが店へ入ってきた。微笑むクイニーを見て、何かを思い出したかにみえたジェイコブであった。
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5.映画の感想と評価(※ネタバレ有注意)
5-1.原作の縛りがないのびのびした脚本が良かった
ハリー・ポッターシリーズは、多数の原作ファンを満足させるため、どれも原作に忠実に制作する必要がありました。「小説」と「映画」という媒体の違いから、ストーリーや場面転換に理解しづらい不自然な点がどうしても残ります。個人的には、ハリーポッターシリーズの映画は、モヤモヤしたもどかしい感覚で見終わる事が多かったです。
ところが、今作は、世界観や設定はハリー・ポッターシリーズを受け継ぐものの、原作にしばられず、純粋に「映画」としての面白さに最適化されて制作されたので、非常に展開がスムーズで感情移入もしやすかったです。
5-2.物語はやっぱり王道の異世界ファンタジーだった
ハリー・ポッターシリーズは、(クライマックスとなる後半は除き)、基本は現実世界で冴えないハリーが、年に1回異世界である魔法世界へ旅立ち、そこで「選ばれし勇者」が主人公だけの特殊能力を使って悪者を倒し、そしてまた現実へと戻っていく冒険活劇でした。いわば「異世界転生」「学園モノ」でチート的な無双をするライトノベル的な異世界ファンタジーの王道パターンです。
本作も、イギリスから単身ニューヨークへ来たニュートが、地元のエース魔法使い達をさしおいて、彼だけが使える幻獣たちを駆使して謎を解き、敵を追い詰め、問題を解決します。そして、問題が解決したら女を置いてニューヨークを去って物語が完結する展開は、ハリー・ポッターシリーズ同様、「勇者がどこからか来て、活躍して、またどこかへ去る」という使い古された安定のパターン。
でも、それがわかっていても、決してしらけるわけじゃないのがこの映画の底力です。王道的なストーリー構成が決して嫌味ではなく「良い意味で」老若男女に幅広くアピールできたのは、原作に縛られずスピード感あふれるムダのない脚本と華やかな映像美、それらを支える詳細な設定や伏線がしっかりしていたからなのかなと思いました。
6.気になる設定や伏線の解説
6-1.グリンデルバルド演じる俳優はジョニー・デップだった
物語終盤、グレイブスが捕縛され、ニュートに魔法をかけられると、グレイブスの本当の顔がグリンデルバルドであることがわかります。事前にトレイラーでは明かされていなかった、真の悪役、グリンデルバルドの俳優は、ジョニー・デップでした。
本家アメリカでは、「私生活で妻を殴打したDV疑惑」もあって、子供まで幅広く大将とする映画へのジョニー・デップの起用は賛否両論のようです。とはいえ、大物ベテラン俳優の起用は、今後、続編でのグリンデルバルドの主役級の活躍が見込まれたと言えそうです。
6-2.禁酒法とファンタスティック・ビーストの世界の関係
禁酒法下、押収した酒を廃棄する当局
本作のスタートする1926年は、アメリカ全土で「禁酒法」が施行され、飲用目的でのアルコール飲料の製造が憲法で禁止されていました。1920年~1933年まで実に14年間も続いた天下の悪法と言われています。なぜなら、人々のお酒への欲望を断ち切ることはできず、却ってアル・カポネに代表されるマフィア等の非合法組織により、密造酒が作られ続けたからです。
今作終盤でニュート達がゴブリンの情報屋を頼って立ち寄るアンダーグラウンドな雰囲気漂う地下のバーも、「スピークイージー」と呼ばれた、禁酒法時代に流行した「隠れ酒屋」で、この時代ならではの文化・風俗をきちんと反映していました。
6-3.アメリカのメクーザ(MECUSA)はなぜこれほど厳しいのか?
本家イギリスと違い、魔法使いが自分たちに自信を持てず、一般人「ノーマジ」に魔法を見せ、婚姻や友人関係を持つことにまで厳しく制限をかけていたアメリカ合衆国魔法議会(MECUSA/メクーザ)。映画中で直接言及はされていませんが、これは、多数派である一般人「ノーマジ」からの根強い偏見により、魔法使いが抑圧されている当時の社会状況が関係していると思われます。実際、メリー・ルーが結成していた秘密結社的な「新セーレム慈善協会」では激しく魔法使い排斥運動を行っていましたね。
元々西欧世界では、中世からキリスト教の異端弾圧の一貫として「魔女狩り」が盛んに行われてきました。アメリカでも、1694年にマサチューセッツ州で起きたキリスト教の異端信者を対象に起こされた、妖術を使うとされた女性が有罪判決を受けた「セーレム魔女裁判」という有名な事件があります。「新セーレム慈善協会」のマリー・ルーは新聞の力を使って、魔法使いを弾圧し、現代に「魔女狩り」を蘇らせようとしました。
このように、一般人と魔法使いが一触即発の雰囲気にありました。力を持つとは言え、「ノーマジ」と比較すると圧倒的少数派である魔法使いには相当生きづらい世の中だったから、自衛のための厳しい罰則を設けざるをえなかったのでしょうね。
6-4.MECUSA(メクーザ)の本部のモデルは?
(引用:Wikipediaより)
1913年に竣工され、1926年当時、世界で一番高いビルだった60階建てのウールワースビル。ここの内部がアメリカ合衆国魔法議会として使われていました。ティナがふくろうの石像に杖を振ると、秘密の入り口が現れ、メクーザへとつながっていましたね。しかし、約90年も前にこんな高層建築があったとは驚きです。
他にも、ファンタスティックビーストの映画内で使われたロケーションは、2016年のニューヨークにも結構残っています。ニューヨーク現地では、ファンタビの聖地巡礼ツアーが結構企画されていますね。
6-5.オブスキュラスとは何なのか?
物語の核心でニューヨークの街をめちゃくちゃに破壊したオブスキュラス。オブスキュラスは、魔法動物界の寄生虫のような生命体です。何らかの理由で魔法の力を外部に開放せず、内側に抑圧する子供を宿主=オブスキュリアルとして、宿主の溜め込んだ生命力をエネルギー源として成長します。
成長したオブスキュラスはやがて宿主の精神力を食いつくし、最後は暴走してしまいます。だから宿主は10歳まで生きられないことが多いといいます。ただし、まれに精神力の強いクリーデンスのような宿主は青年まで生きられました。その分、負の感情が高まり、クリーデンスがオブスキュラスとなり暴走した時は、その力はニューヨーク中を破壊し尽くす大変なものとなりました。
ちなみに、ニュートがスーダンで捕まえたオブスキュラスは人に取り付いたことがないため、無害な存在でした。
6-6.なぜグレイブスはオブスキュラスを見つけ出したかったのか
グレイブスの表の顔は、アメリカ合衆国魔法議会の保安局長で、上級幹部として魔法世界を取り締まっていましたが、彼には内心忸怩たる想いがありました。「ノーマジ」と魔法世界を区別するため厳しく設けられた法律が、結果として魔法世界を抑圧するだけで、「ノーマジ」達をつけあがらせているだけなのではないかと。
映画では名言されていませんが、グレイブス=グリンデルバルドは魔法世界を復権させ、人間世界を破壊するための切り札として、密かにオブスキュラスを宿した子供を探し出そうとしていたとみなしていいでしょう。
6-7.クリーデンスは生き延びて、次作以降も活躍する?
ラストのクライマックスシーンで、暴走してオブスキュラスとなったクリーデンスは、魔法使い達に一斉攻撃されて粉々にされていました。その際、よく画面を見ていると、粉々になったその一部分が、フワフワと浮いていましたね。つまり、クリーデンスは弱くはなったけれど、死んではいなかったと解釈することができます。
現に、その一部が明らかにされている第2作のキャストで、早々とクリーデンス役を演じたエルザ・ミラーがクレジットされていることからも、回想シーンではなく、物語の核心部分に深く絡んでくることを示唆しているように思えますね。
6-8.ジェイコブはささやかなアメリカンドリームの象徴なのか?
ポーランド移民としてアメリカへ渡り、第一次世界大戦で兵役を務めた後、アメリカへ戻ったばかりのジェイコブは、ニュートたちと出会ったことで劇的に人生が変わりました。ラストでは、缶工場でのしがない労働者を卒業し、大繁盛する独創的なパン屋を開店して成功へのきっかけをつかみます。さらに、魔法使いの美女、クイニーとも再会するなど、物心両面で幸福な人生を掴んだように見えます。禁酒法下、人種差別や貧困をリアルに魔法世界と絡めて描く一方で、「狂騒の20年代」での古き良きアメリカン・ドリームもきっちり描かれていたのが印象的でした。
6-9.次作以降へ期待感を持たせるためのいくつかの伏線
今作で明らかにされず、本作内で回収されずに終わった主な伏線や謎は以下の通り。
▶ダンブルドアとグリンデルバルドがどう物語に絡んでくるのか
▶次作以降でニュートとティナの関係はどうなるのか
▶クイニーとジェイコブの新たな出会いの行く末は?
▶かろうじて生き延びたであろうクリーデンスがどうなるのか
先日、プレス発表にて、第2作では「リタ・レストレンジ」が物語の核心部分にからみ、若き日のダンブルドアが登場するとの公式アナウンスがありました。(ダンブルドア役は現在調整中)。
特に、リタ・レストレンジは、ハリー・ポッターシリーズで闇の魔法使いの一族、ベラトリクス・レストレンジというキャラクターと恐らく親族のはず。ハリー・ポッターシリーズでは、ニュートはティナと結婚し、ふたりの間に子供が一人生まれることが確定しているので、恐らくリタとの絡みは難しいものになりそうな予感がします。
7.まとめ
原作から解放されて、映画向けの脚本をゼロから書き起こされた本作は、アクション、バトル、謎解き、恋愛、コメディ、ファンタジーなど、様々な要素が上手くミックスされた優れたエンターテインメント作品でした。おデブキャラの活躍やアメリカの世相を反映した舞台設定などのひねりもあり、中身の濃さとエンタメ要素が上手くミックすされた良作でした。
大人から子供まで安心して楽しめる高品質な作品でした。ロングランで上映されるはずなので、この年末年始に機会があったら行ってみて下さい!
それではまた。
かるび
8.映画を楽しむためのガイドブックなど
8-1.「ファンタスティック・ビースト」初回版DVD/ブルーレイを見てみる!
満を持して4月19日にDVD・ブルーレイディスクが発売になりました。発売と共にさっそくDVD部門でAmazon売上No.1と、さすがに人気のビッグタイトルですね。特に、ブルーレイディスクでの特典映像が素晴らしく、映画内で登場した魔法動物達のメイキングや詳細秘話、たっぷりの未公開シーン集などが含まれていました!これはファンなら買いですね!なお、配信も同時に始まりました。Amazonビデオ単体での配信は、こちらから!
8-2.2017年5月8日まで期間限定で、Huluにて2週間無料で楽しめる!
(引用:Hulu)
実は、ファンタビの公開前、見たことがあるハリー・ポッターの作品は、妻に無理やり学生時代連れて行かれた第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」だけでした。今回、新シリーズの発表を機に、どうせなら全作品抑えてから映画に出掛けたい!と思っていたのですが、今から全作品のブルーレイやDVDを揃えるのは、意外とお金がかかるんですよね・・・。そこで、なんか安く上げる方法はないかと思って探してみたところ、ありました!動画配信サービスHuluで、DVDの発売を記念して、ちょうど2017年5月8日まで期間限定でハリー・ポッターシリーズの過去作全8作品が見れるようになっています。
見てみると、最初の14日間は「無料期間中」とのこと。ということは、無料期間中に見てしまえばタダ!ということで、時間の取れるGW中などで、Huluでまとめて見てしまえば非常にお得です!
ファンタビシリーズも、2作目からはダンブルドアの過去やニュートの過去の彼女なども深くストーリーにからんできて、過去作のチェックが必須になってくると思いますこの機会に、お金を節約してHuluで見逃したハリー・ポッターシリーズを全部見てみるのもいいと思います。
<30秒のかんたん申込でHuluトライアル視聴するにはこちら>
2週間無料トライアル期間中に一気に「ハリー・ポッター・シリーズ」をチェック!
8-3.幻の動物とその生息地
「ファンタスティック・ビースト」シリーズの冒険譚が終わり、魔法動物学者として大成したニュートがホグワーツ魔法魔術学校の1年生のために書き下ろした教科書が、2年前に邦訳され、現在Amazonでベストセラーになっています。映画中に出てくるニフラーなどの様々なかわいい魔法動物は、この中に全部網羅されています!ファンタビ・シリーズを今後追いかける上でも、ファン必携のバイブルになりそうですね。
8-4.「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」魔法映画への旅
「ファンタビ」シリーズは、静山社を始め、いくつもの公式ガイドブックが出ていますが、この本がAmazonで一番売れています。製作秘話、フィルムスチールやアートワーク、そしてキャストやスタッフが語る舞台裏情報など、ファンが見たいメイキングでの全てがわかる決定版的書籍。
8-5.ファンタビ映画関連グッズ
先日、小学生の子供をファンタビに連れて行ったら、クリスマスシーズンということもあり、グッズをねだられました・・・。初日に見に行った時、映画館でたくさんグッズが置いてあったのですが、上映後少ししたら別の映画特集に変わってしまっていて、自宅でAmazonと楽天から選びました。
結局、ニフラーのぬいぐるみに落ち着いたのですが、すでに家の中が人形だらけで置く場所が・・・(笑)とはいえ、やっぱりグッズは通販ですね・・・。便利すぎ。
ということで、以下にAmazonと楽天の特集コーナーのリンクを張っておきますね。
9.ファンスティック・ビーストの続編について!
上記で、未回収の伏線や設定について簡単にまとめましたが、2018年に公開される続編について、現時点でわかっている情報を別エントリにまとめてみました。もしよろしければ、こちらもご覧ください。(※かなりのネタバレを含みます)