あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】実写映画「鋼の錬金術師」感想・考察と10の疑問点を徹底解説!/ハガレンファンには中途半端な作品になったかも?続編にも期待!

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【2017年12月9日最終更新】

かるび(@karub_imalive)です。

2017年は、「銀魂」「ジョジョ」「東京喰種」など、人気コミックス原作の大型実写企画が相次ぎました。そのフィナーレとなる実写版「鋼の錬金術師」が冬休み前の12月1日に公開されました。

早速ですが、感想・考察等を織り交ぜた映画レビューを書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「鋼の錬金術師」の予告動画・基本情報

▶公式予告動画:映画「鋼の錬金術師」
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【監督】曽利文彦(「ピンポン」他)
【配給】ワーナー・ブラザーズ
【時間】133分
【原作】荒川弘「鋼の錬金術師」(全27巻)

本作でメガホンを取ったのは、CG/VFX技術に非常に詳しい曽利文彦監督。過去にも脚本:宮藤官九郎で実写映画化した名作「ピンポン」では原作の空気感を上手く主演:窪塚洋介から引き出しつつ、卓球シーンのほぼすべてをCGで描き出したことで話題になりました。(2017年10月上映の映画「ミックス。」でもこの時のノウハウが生かされています)

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引用:映画.com

さて、そんな曽利監督が、実に10年以上構想を温めてきた企画が、この「ハガレン実写化」でした。ただ、その複雑なシナリオ、全27巻にも及ぶ長大なストーリーをどうやって2時間程度でまとめるのか、非常に気になるところでした。案の定というか、試写会の段階では、一部原作ファンから非常に厳しい声も聞こえてきましたが、果たして本作の出来はどうだったのでしょうか?

ちなみに、本作は錬金術やその独特の世界観について、小学生でもわかるよう、丁寧に映画本編内でセリフ等で説明がありますので、原作未読でも問題はありません。ただ、ワーナー・ブラザーズが、公式サイトで「1分でわかるハガレン」という良いまとめ動画を用意してくれていますので、こちらで予習をしていくと良いかもしれません!

▶公式動画「1分でわかる「ハガレン」の歴史」
※画像をクリックすると動画がスタートします


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2.映画「鋼の錬金術師」主要登場人物・キャスト

本作は、ほぼオール海外ロケ(イタリア)で撮影されましたが、登場人物は、全て日本人で統一されています。曽利監督の苦しげな説明によると、「舞台装置は確かにヨーロッパ風だけど、ストーリーや登場人物たちの心情の動きは極めて日本人的」なので、敢えて日本人オールキャストにしたとのことです。100%納得したわけじゃないですが、まぁ確かに一理あるかも。マンガ原作も姿格好は外国人ですが、顔や台詞回し、空気感は日本人そのものですからね・・・。 

主要登場人物

エドワード・エルリック(山田涼介)f:id:hisatsugu79:20171205195025j:plain
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube
2017年は「ナミヤ雑貨店の奇蹟」に続いて2本目となる映画主演。インタビューでは、「身長を低く産んでくれた両親に感謝」とか「アイドル業と自由は等価交換」とかいちいちコメントにサービス精神が感じられて好感。演技も素の性格に合っているようでまずまずでした。東京国際映画祭に行ってきた知人の話では、舞台挨拶の時、フォトセッションで所在なさそうにしていたそうです。主役なのに。。。いや、所属タレントに罪はない!

アルフォンス・エルリック(声:水石亜飛夢)f:id:hisatsugu79:20171205195208j:plain
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube
原作者が単行本15巻の巻末で「もし実写化するとしたら、アルはオールCGかも」と予想したように、全編オールCGで描かれました。金属の質感や光の反射などは、かなりリアルな作りに仕上がっていて素晴らしい出来。兄弟の殴り合いのシーンでは本気で山田涼介の手は大丈夫かと心配してしまった・・・(笑)

ウィンリィ・ロックベル(本田翼)f:id:hisatsugu79:20171205195748j:plain
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube
映画「土竜の唄 香港狂騒曲」以来、1年ぶりの映画出演となった本作。確かにやや舌っ足らずな喋り方とか気になる時もありましたが、ちゃんと快活で明るい原作でのウィンリィらしさは表現できていたように思います。年明け2月公開の「今夜、ロマンス劇場で。」が待機中。

ロイ・マスタング大佐(ディーン藤岡)f:id:hisatsugu79:20171205195656j:plain
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube
台湾からの逆輸入俳優としてブレイクした2016年から1年経過し、遅れて2017年~2018年は映画出演ラッシュとなりました。早くも2018年上半期までに、「坂道のアポロン」「海は駆ける」「空飛ぶタイヤ」など3作品が公開待機中。ただちょっと原作のマスタングとは違ってたような気もしますが・・・

マース・ヒューズ中佐(佐藤隆太)f:id:hisatsugu79:20171205195734j:plain
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube
一時期に比べて映画出演ペースは鈍くなりました。今年は「ひるなかの流星」に続いて2本目の出演。未だに「ROOKIES-卒業」のイメージを重ね合せて見てしまうのですが、本作ではうまく力も抜けて、原作に近いヒューズ像が表現できていました。

ショウ・タッカー(大泉洋)f:id:hisatsugu79:20171205195337j:plain
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube
同時公開された「探偵はBARにいる3」と合わせて、まさに「大泉映画祭」状態となった12月1週目。相変わらずの安定した演技力で、探偵とは全く違うキャラクターを熱演。原作では扱いの小さかったタッカーですが、大泉洋の抜群の演技によって、実写映画では存在感が物凄く増しています。個人的には本作No.1の演技だったと思います。

ラスト(松雪泰子)
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引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube
テーマが「色欲」(Lust)ということで、露出度の高いセクシーな衣装での出演。ただし子供向けに配慮したのか、原作と違い男をたぶらかすシーンはありません(笑)

その他、小日向文世(ハクロ将軍)、國村隼(ドクター・マルコー)、石丸謙二郎(コーネロ教主)らベテラン俳優から、本郷奏多(エンヴィー)、蓮佛美沙子(リザ・ホークアイ中尉)、夏菜(マリア・ロス少尉)など若手まで、多数出演しています。

3.実写版「ハガレン」途中までの簡単なあらすじ

死んだ最愛の母親を生き返らそうと、禁断の錬金術「人体錬成」に挑んだ幼いエドとアル。父の書斎から書物を読み漁り、錬成術に挑むも、出来上がったのは母とは似つかない醜悪な怪物だった。人体錬成術は失敗に終わり、エドは左腕と右足を、アルは魂以外の全ての肉体を失った。

それから数年後、エドは弟の体を取り戻すため、アメストリス国の国家錬金術師として、弟アル、幼馴染のウィンリィと「賢者の石」を探して全国を旅していた。リオールという街に立ち寄った際、追い詰めた新興宗教の悪徳司祭、コーネロからそれらしきものを奪ったが、それは出来の悪い偽物だった。

イーストシティで友人のヒューズ中佐、ムスタング大佐ら軍の中枢部と合流したエドたちは、ハクロ将軍の紹介で、合成動物(キメラ)の権威タッカー博士の元を訪れる。だが、タッカー博士は、国家錬金術師という自らの地位を維持するため、妻子を犠牲にしてまで自らの研究を続ける狂人だった。賢者の石について事情を知るマルコー博士や、国全体を巻き込んだ軍中枢部で進行する陰謀に気づいたヒューズは、相次いで「ホムンクルス」と言われる人造人間に襲撃され、変死してしまう。

やがて、エドやムスタングたちは、人体錬成のカギを握る「賢者の石」が秘密裏につくられている第5研究所の存在を突き止めた。陰謀の渦中、たどり着いた第5研究所でエドが見たものは、賢者の石と人体錬成を巡る、ショッキングな現実だったーーー。

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4.映画「鋼の錬金術師」の感想・評価

オールイタリアロケとCGへのこだわりは良かった!

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ハリウッドレベルまでもう一歩!迫力のCG
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube

本作の一番の見どころは、曽利監督もインタビュー等で自負する通り、日本の実写映画史上で最高レベルのクオリティに仕上がったVFX/CG技術でしょう。オープニング直後でのコーネロ司教との対決シーンや、各種錬金術の発動シーンなど、非常に手間隙のかかった迫力ある画面を作ってくれたと思います。

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アルのリアルなCGは素晴らしい!
引用:映画『鋼の錬金術師』IMAX®アクション予告 - YouTube

また、100%CGで再現された鉄仮面姿のアルは、鉄の質感描写や、自然な動き、光の反射、影の映り込みの細かさなど、非常に良く出来ていました。不気味の谷はしっかり越えてきてくれたかなという印象です。

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イタリア・トスカーナ州がロケ地に選ばれた
引用:映画『鋼の錬金術師』本予告【HD】 - YouTube

また、ロケ地へのこだわりも良かったです。無理にCGで全部置き換えようとせず、海外まで行って、きちんと20世紀初頭のヨーロッパの雰囲気を再現しようとした意気込みは素晴らしかったです。どこまでもなだらかな丘が続く草原に立つ実家のシーンや、汽車に乗るシーン、リオールののどかな田舎街の風情など、きちんと海外(イタリア)でロケを重ねる努力は素直に評価したいと思います。また、メインキャストだけではなく、街を歩くモブキャラまできちんと日本人で揃えたのは、一貫性があって良かったとは思います。

ハリウッド大作に比べて、制作費も1/10以下でしょうし、エンドロールを見る限り、作品の規模感の割には限られた制作陣で作られているなと感じました。「ハリウッドにも負けない作品を作りたい」という気合いは、素晴らしいことだと思います。

俳優の演技は、ディーンフジオカ以外はそんなに悪くなかった

また、演技力についても各俳優は与えられた脚本の範囲内で、堅実に演技出来ていたと思います。江戸っ子な日本人気質のエドは、山田涼介にぴったりあってるし、ウィンリィ役の本田翼も、原作のキャラクターに寄り添った演技ができていました。(ただ女性ファンから見ると、若干ぶりっ子に見えるかも)また、脇役陣も、ほんのちょい役から重要キャラへと格上げとなったショウ・タッカー役の大泉洋や、どこか寂しげな憂いの表情が良かった松雪泰子など、演技は安定していました。

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引用:映画『鋼の錬金術師』本予告【HD】 - YouTube

残念なのは、ディーンフジオカのマスタング役です。原作では、野心と才気あふれるエリート士官である一方、女好きでお茶目な面もある魅力あるキャラなのですが、ずーっと堅物すぎる一本調子な感じの演技だったのは、ちょっといただけません。

マスタングがボケないと、その部下であるホークアイの冷静なツッコミも活きてこないよなーと思って見ていたら、案の定。蓮佛美沙子演じるホークアイは、画面にはよく映っているものの、ほぼモブキャラに近い存在感の薄さとなってしまい、非常にもったいなかったです。

一番の問題は、演出面での粗さ

一番問題かなと思ったのは、演出上のアラがかなり目立ったことでしょうか。VFX、CGに力を入れすぎたため、その他の要素に目が行き届かなかった感じはあります。演出・脚本・美術・セットなど、様々な点で色々と「そうじゃないだろう?!」とツッコミたくなるシーンがかなりありました。

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洗剤のCMに出てくるような没個性な洗濯物も気になる
引用:映画『鋼の錬金術師』本予告【HD】 - YouTube

まず、冒頭の子役シーンです。エドとアルの5~6歳の頃のシーンなんですが、ちょっと演技が棒すぎないですかね?いちばん大事な場面なのに、最初から学芸会状態です。慣れない海外ロケだから仕方ないんでしょうけど、重要なシーンなので、ここはシナリオを改変してでも、小学校高学年くらいの、きちんと演技ができるレベルの子役にやらせたほうが良かったかと思います。

次に、戦闘シーンなんですが、ちょっと動きが緩慢すぎないでしょうか?どこかの掲示板の感想で、「まるでターン制戦闘RPGを見ているようだw」と書かれていたのですが、言い得て妙でした。一方が攻撃をしたら、もう一方は完全に受けに回る展開で、妙に締まりがないのですよね。

また、錬金術での攻撃方法にも大いに疑問が残りました。まず、本作のラスボスでもあるラストやエンヴィーとの戦いに決着をつけたのは、主役のエドではなく、ほぼ全てマスタングの火炎攻撃だったという・・・。しかも、1度や2度ではなく、3回連続火炎攻撃の力押しで倒しているのです。もうちょっと他の技を繰り出しましょうよ・・・。

恐らく、子供にも配慮した「G」指定に収めるためか、流血描写を相当抑えなければいけなかったのでしょう。本来、機械鎧を使った近接での物理攻撃も得意とするエドですが、手足を使ったのは兄弟喧嘩の時だけでしたね・・・(ひょっとしてジャニーズの意向?!)

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画面を覆い尽くす、CGで表現された業火。何気に怖い!
引用:映画『鋼の錬金術師』キャラクター予告(ホムンクルスチーム編)

その代わり、火炎攻撃の苛烈さは、R15指定の戦争映画並みのエグさなんですよね。このバランスの悪さはどうなんでしょう?生きたまま黒焦げになるまで焼き尽くすシーンを何度も何度もスローモーションで大写しにするのは、これどうみても小学生にトラウマを残すんじゃないでしょうか^_^;

なんか戦闘シーンでは、いろいろスッキリしない展開が続きました。

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原作からの合成キャラ「ハクロ将軍」
引用:映画『鋼の錬金術師』キャラクター予告(ホムンクルスチーム編)

もう1点気になったのは、誰が悪役なのかよくわからない後半部分です。原作通りラスト・エンヴィー・グラトニーのホムンクルストリオと戦うのは良いとして、わざわざシナリオを改変して、サブキャラであるタッカーとかハクロ将軍を、クライマックスで前座的な悪役に仕立てるのはどうなんでしょうか?

しかも、編集段階で切りすぎたのか、タッカーとハクロ将軍、あるいはホムンクルスたちとハクロ将軍のつながりが非常にわかりづらいんですよね。ぼーっと見ていると、一体エドたちは何と戦っているのかわかりづらかったです。

本作でも、人間に憎しみを抱くホムンクルス達の複雑な心情や、闇落ちした軍の将校たちが表す人間の弱さ、肉体を持たないアルの悩み、兄弟の絆など、極力原作のエッセンスを凝縮して伝えようとしていることはわかるんです。ただ、それがVFX、CGに傾倒しすぎた結果、ストーリー構成、演出面での詰めが甘くなってしまい、どうにも最後まで感情移入しづらいまま終わってしまったのが、非常に残念でした。

続編を製作するのであれば、CGの作り込みや海外ロケ敢行など意欲的な点はそのままに、もっと綿密に脚本・演出を練り込んでから挑んでほしいと思います。

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5.映画「鋼の錬金術師」に関する10の疑問点~伏線・設定を徹底考察!~

本作をより深く理解するため、ストーリーや設定について、その要点となりそうなポイントを考察してみました。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。

疑問点1:ホムンクルスの正体とは?一体どういう存在なの?

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心臓部分には「賢者の石」が埋め込まれている
引用:映画『鋼の錬金術師』本予告【HD】 - YouTube

ホムンクルスとは、体内の心臓部分に埋め込まれた「賢者の石」のエネルギーによって人工的に作られた人造人間です。基本的には、人間同様の外見を持ち、心も持っています。「賢者の石」のパワーが続く限り、彼らは不老不死の存在であり、人間を遥かに上回る高い身体能力に加え、個体別に特殊能力も持っています。本作では、、、

・ラスト=伸縮自在な鉄の鉤爪
・エンヴィー=変身能力
・グラトニー=体内への驚異の捕食能力

となっています。なお、彼らはキリスト教の「7つの大罪」にちなんで、創造主(=”お父様”/実写未登場)の持つ負の感情の一部を分離して実体化させた存在で、それぞれ「色欲」(ラスト)、「嫉妬」(エンヴィー)、「暴食」(グラトニー)という個性を持ちます。

ちなみに、本作で登場しなかったその他4体のホムンクルスは、

・「憤怒」(ラース)
・「怠惰」(スロウス)
・「傲慢」(プライド)
・「強欲」(グリード)

です。どのキャラクターも本編では重要なヴィランとしてエドたちの前に立ちはだかるので、続編が制作されたときはきっと登場するのでしょうね。

疑問点2:錬金術では、なぜ人体を錬成してはいけないのか?

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引用:「鋼の錬金術師」第23巻より

アメストリス国では、国家錬金術師は、三大制限のうちの一つとして「人体錬成を行ってはならない」とされました。これは、劇中でエドが暗黙的に解釈していたように「倫理的に問題があるから」ではなく、国家錬金術師が「個人として強力な軍隊を持ち、政権を脅かすことがないように」禁忌とされているのです。

ちなみに、国家錬金術師の他の2つの「三大制限」とは、

・いかなる時も軍に背いてはならない
・金を作ってはならない

でした。原作では、混乱した政情を反映してか、敵も味方もみんなお構いなくこの3大禁忌を破りまくってましたが・・・

疑問点3:エドとアルの父親、ホーエンハイムはどこにいるの?

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引用:「鋼の錬金術師」第11巻より

エドとアルの父親、ヴァン・ホーエンハイムは、彼らが幼少時に黙って「家を出ていった」という事実や、残していった書斎の描写のみにとどまり、本作の劇中では一切描かれませんでした。原作でも、初登場は中盤頃からとなります。第10巻の終わりから、物語のカギを握る重要人物として終盤にかけて存在感を増していきます。

ヴァン・ホーエンハイムは、若い頃は辺境地方で錬金術師の奴隷として働いていましたた。自らの血から生まれた「フラスコの中の小人」に気に入られ、クセルクセス国約50万人分の魂を凝縮した賢者の石と自らの魂が結合した、不老不死の大錬金術師となりました。一時期は隠遁して平凡な生活を志す中、母・トリシャと出会い、エドとアルを設けますが、やがて「お父様」となった「フラスコの中の小人」による、国民全体の魂を犠牲にする国土錬成陣を使った陰謀に対抗するため、家族を捨てて流浪の旅に出て、陰謀に対抗する準備を進めるのです。

エドとアルは当然これらの事情を知るはずもなく、原作では父親不在に対する葛藤や反発、心の痛みなどが伏線として描かれていましたが、映画内では潔く一切省略されました。

疑問点4:真理の扉って何なの?あの番人みたいなのは誰?

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引用:映画『鋼の錬金術師』本予告【HD】 - YouTube

真理の扉とは、高度なスキルを持つ錬金術師だけ見ることのできる、宇宙に内在される膨大な知識と情報がその中にあるとされる「扉」です。劇中では、エドは死んだ母親の人体錬成時に、アルは(恐らく)タッカーの催眠実験時に垣間見た(=思い出した)のだと思われます。その扉の横に座っていた人形の影のような物体は、「真理」と呼ばれる存在です。宇宙全体のあらゆる英知を象徴する存在であり、かつ扉に向かう自分自身の鏡でもあります。

「質量保存の法則」「等価交換の法則」が支配する「ハガレン」の世界では、真理の扉を開けるには、「通行料」と呼ばれる代価が必要となります。エドは左足を持って行かれ、アルは肉体全てを失いました。また、エドが2回目にアクセスした時、さらに右腕も失っています。

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引用:映画『鋼の錬金術師』本予告【HD】 - YouTube

なお、真理の扉に一度でもアクセスしたことのある錬金術師は、それ以後個別に錬成陣を使用することなく、手を合わせるだけで錬金術を発動できるようになります。(マスタングが炎を出す時に錬成陣を描かず出せるのは、予め錬成陣を描いた手袋をしているため)

疑問点5:ヒューズの気づいた国全体を巻き込んだ陰謀とは?なぜ暗殺されたの?

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引用:映画『鋼の錬金術師』キャラクター予告(軍部チーム編)- YouTube

セントラルシティから調査のためにイーストシティへと赴任してきていたヒューズは、公式には存在しないとされる「賢者の石」を秘密裏に作っている「第五研究所」の存在について独自調査を行っていました。

第五研究所で、秘密裏に悪事を働いていたハクロ将軍からは、情報撹乱のため「元缶詰工場」がそうではないか?とミスリードされるものの、最終的にはイーストシティにそれぞれ設置された第一研究所~第四研究所までの位置関係を錬金術の巨大な錬成陣に見立てて地図を解読することで、「賢者の石」を秘密裏に作っている「第五研究所」の存在に気づいてしまいました。

そこでは、ハクロ将軍ら軍上層部とホムンクルス達が、マルコー博士らを使い、受刑者の魂からエネルギーを抽出し、液体状の「賢者の石」を大量に生成するとともに、密かに錬成した人形兵を私兵集団として隠し持っていました。ヒューズを監視していたホムンクルスたちは、これら一連の秘密を知ってしまった彼を口封じのために殺害したのでしょう。

疑問点6:第五研究所で見た大量の人形兵の正体は?ショウ・タッカー博士とハクロ将軍はどういう関係だったのか

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引用:映画『鋼の錬金術師』キャラクター予告(軍部チーム編)- YouTube

エド達が第五研究所で見た、天井にぶら下がる大量の一つ目の人造人間は、「人形兵」といい、ヒト形の有機物体に対して賢者の石を使って魂を定着させた、軍が秘密裏に開発していた新兵器でした。

ハクロ将軍は、マスタングによって逮捕監禁されたタッカー博士を密かに脱獄させ、マルコー博士亡き後の後任として、人形兵の研究開発をやらせたのでしょう。セントラルシティの大総統に対抗する、自分の私兵集団を持ちたかったのかもしれません。

タッカー博士は、ちょうど催眠状態にしてあったアルの体を使って実験を重ねました。そして、アルを操って、真実の扉を垣間見ることにより、「物体に魂を定着させる方法」のヒントを掴み、人形兵を何とか動かせるところまで実用化にこぎつけたのでしょう。(この副産物として、アルは手合わせ錬成ができるようになっていた)

ただし、人形兵たちは、高度な知性と運動能力、再生能力を持つホムンクルスとは似ても似つかない存在でした。とても知性を持っているとは言い難く、制御不可能で不完全なモンスターにすぎなかったようですね。CGも「良い意味で」不気味の谷を越えていない感じで、ホラー映画を見ているようでした(笑)

疑問点7:結局、賢者の石とはどんなものだったのか?

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引用:映画『鋼の錬金術師』本予告【HD】 - YouTube

賢者の石とは、映画内で描かれた通り、生きた人間を錬成陣の各所へ配置し、魂から抽出したエネルギーを高凝縮した物質です。固体や液体など、様々な形態で保存することが可能で、その活用法は、武器としてだけでなく生体回復素材や、人体錬成にまで幅広く応用が可能でした。また、ホムンクルス達は、賢者の石を体内に埋め込むことで、活動のエネルギーと不老不死を得ていました。

ここからは原作の設定ですが、アメストリス国では、国土全体に超巨大な錬成陣が描かれ、各地へ賢者の石を埋設することで、錬金術を可能とする「国土錬成陣」が完成しています。いわばインフラ的な使われ方もしているのですね。

アメストリス国の錬金術師であるエドやマスタングたちは、大地からエネルギーを直接得て錬金術の効果を得るのではなく、国土各地に埋められた賢者の石を「触媒」として用いることで、錬金術を発動しています。(このあたりの設定は、次作以降に少しずつ明らかになるのではないでしょうか?)

疑問点8:結末・ラストを考察~エンドロールの意味するものとは?

本作のラストで、第五研究所でのラスト達との戦いの後、「賢者の石」を遂に手に入れたエドは、手を合わせて一旦「真理の扉」に行きましたが、結局「賢者の石」と引き換えに弟・アルの肉体を取り戻す取引は行いませんでした。なぜなら、生者の魂を吸い出した「賢者の石」を使ってアルの肉体を取り戻すことは、人々の命を犠牲にして自分たちが助かることだったからです。それは、闇落ちしてしまったハクロ将軍やショウ・タッカーらと何ら変わるものではなく、兄弟の本意ではありませんでした。

結果として、彼らは別の方法でアルの体を取り戻す方法を探して、新たな旅に出るわけですが、エンドロール後のオマケ映像は、強く「続編製作」に含みをもたせるものでした。ラスト同様、マスタングに激しく焼かれ、焼死体となって朽ちたかに見えたエンヴィーですが、辛うじて首の皮一枚命を残しており、本来姿である小さなトカゲになって、どこかへと走り去っていくシーンで終わりました。恐らくグラトニーやまだ未登場の他のホムンクルスの仲間達と合流し、再起をかけるのでしょうね。

ちなみに、原作では、エンヴィーはエドの仲間たちとの戦いで、2度トカゲへと戻りますが、1度目はその後、地下工場に解き放たれた人形兵のエネルギーを吸収し、元の姿を取り戻しています。

疑問点9:続編はあるの?オマケの「0巻」内容から読み解く・・・

本作では、アルは結局肉体を取り戻すことができませんでしたし、エンヴィー、グラトニーは逃げ、軍上層部の黒幕すら姿を表していません。結論から言うと、本作の興行収入さえ一定以上クリアすれば、2作目以降の続編が製作される可能性が高いのではないでしょうか?

劇場来場者特典として配布された、映画の前日譚として2つのエピソードを描いた「鋼の錬金術師 0巻」の原作者・荒川弘との対談の中で、曽利監督はこんなふうに言っています。

[・・・]ましてや先生の作品を・・・ご本人を前にしてあれですけど、撮れるとは思ってなかったので。ハガレンをやらせてもらって本当に大満足です。[・・・]ぜひ続きも撮りたいですね。じゃあ『鋼』を完成させたら、死んでもいい!なんて、それくらい満足しています。[以下続く]

どうでしょうか。続編に向けての強い決意が伝わってきますよね・・・。プロローグ~ラストとの対決までを描いた本作は、原作でいうと1巻~10巻くらいの内容だったので、まだ20巻分弱のコンテンツ量が残っています。もし製作されるなら、全3部作として無理なくエピソードを消化してほしいものですね。

疑問点10:エンディング・テーマを歌っているのは?

本作のエンディングテーマは、MISIA「君のそばにいるよ」です。2015年度紅白歌合戦でも、TBS系アニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」ED「オルフェンズの涙」を歌っていたように、最近はアニメでのタイアップが増えてきている印象ですね。

新たな旅立ちへと、また列車に乗りこんだエド達をさわやかに見送る場面で、最高のかかり方でしたね。Youtubeで公開された映像でも、映画をイメージしたようなシーンを背景に熱唱してくれています。お時間のある時にぜひ!

▶EDテーマ/MISIA「君のそばにいるよ」
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6.まとめ

いろいろとツッコミどころや、注文も多い本作ですが、当初はもっと大崩れしていると想定していただけに、やや安堵しました。そのハイレベルなCGでの描写をしっかりチェックできただけでも、個人的には良しとしたいと思います。原作やアニメも面白いので、いろいろな媒体で楽しんでみてくださいね。
それではまた。
かるび

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7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

マンガ原作「鋼の錬金術師」

「鋼の錬金術師」は、マンガ原作、TVアニメ、アニメ映画、実写と様々な媒体で展開されてきましたが、やっぱり原点はマンガ原作です。今回久々に復習を兼ねて一気読みしたのですが、最初に連載がスタートしてから15年以上経つのに、全く内容が色あせていなことに驚きました。続編製作もありそうですし、原作未読なら、ぜひ時間のあるときに原作に触れてみてはどうでしょうか?Kindleで全27巻まとめ買いもできます!

実写映画のノベライズ版も出ています!

本作は後半部分で原作版、アニメ版とは違うオリジナル展開へと進んでいきましたが、映画公開後、ノベライズ作品が出版されました。小説ならではの臨場感で、映画のキャラクターたちの心情描写が楽しめました。映画でやや説明不足に終わっている後半部分のシナリオも、ノベライズを読めばきっちり理解できます。映画と合わせて読むと、世界観が深く理解できるのでおすすめです! 

アニメ版「鋼の錬金術師」がAmazonプライムで全て見放題!

「鋼の錬金術師」については、途中から大きくオリジナルストーリーへと分岐していく「鋼の錬金術師」(2003年版)と、基本的には原作に忠実に展開した「鋼の錬金術師FULL METAL ALCHEMIST」(2009年版)と2つあります。

また、映画も、前者から派生した「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」、後者のスピンオフエピソードとして描かれた「鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星」と、2作品あります。

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「プライムビデオ」に指定された作品は、いつでも見放題となる本サービス。年会費は3980円と、月間ベースで見ると、月額約320円と、他社と比べても最安レベル!しかも、ドラマやドキュメンタリー、お笑いまで、Amazonオリジナルコンテンツも非常に増えてきました。入っておいて間違いのないサービスです!

★その他、音楽聴き放題サービスも!
その他、100万曲以上が聞けるプライムミュージック、月に数百冊読み放題となるプライム・リーディング他、月に1冊注文したアイテムのお急ぎ便やお届け期日指定ができるサービスなど、多彩な内容がついてきます!

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