あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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静かなブーム到来中?! 2016年下半期、要注目の日本画・日本美術・工芸のおすすめ展覧会10選!

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【2016年11月17日更新】

かるび(@karub_imalive)です。

先日のエントリで、僕が注目している2016年下期の西洋美術展10選をピックアップして紹介させていただいたところ、思ったよりたくさんの方々に読んでいただきました。特にダリ展が大人気のようですね。 

僕は、去年までは、西洋美術展を中心に回っており、日本美術については受動的にしか見ていませんでした。せいぜい寺社仏閣に行ったついでに宝物展を見るとか、お参りしていたら目の前に鎮座していた仏像が重要文化財だった、という程度です。

でも、よくよく日本の美術展をチェックしてみると、日本美術をテーマにした美術館や、企画特集展のほうが圧倒的に数が多いのですよね。せっかくこれだけ企画展示があるのだから、江戸絵画や浮世絵、工芸品も面白いかな、と思い、今年から積極的に回り始めました。

ちょうど、下半期はどこに行こうか検討する中で、ちょうどいい感じの「お薦め日本美術展」的なまとめ記事がなかったので、それであれば、自分でちょっとまとめてみようかと思い、書いてみました。

ピックアップの基準は、日本画・日本美術(古代~現代、洋画含め)・工芸で、2016年7月時点で開催中かそれ以降に開催される、僕のオススメの美術展・工芸展です。それではいってみましょう。

1.大妖怪展(東京・大阪)

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開催情報
展覧会名:「大妖怪展」
※東京展は終了、現在大阪展開催中

会期:
【東京】2016年7月5日(火)~8月28日(日)
【大阪】2016年9月10日(土)~11月6日(日)
会場:江戸東京博物館、あべのハルカス美術館
公式HP:http://yo-kai2016.com/index.html
Twitter:https://twitter.com/edohakugibochan(東京)
期待度:★★★★★

この大妖怪展は、これまでの民俗・風俗史的なアプローチではなく、日本美術史の観点から妖怪画を総括し、日本中から代表的な妖怪画作品を集めた気合の入った展示会です。

すでに夏休み前から大人気。江戸博は企画展展示スペースも小さく、夏休み中は厳しい入場待ちで大混雑が予想されます。公式Twitterで入場時間待ちを細かく表示していますので、こちらも参考にしておでかけください。

歌川国芳「相馬の古内裏」f:id:hisatsugu79:20160723104031j:plain

実際に東京展に行ってきたエントリもアップしています。もしよろしければチェックしてみてくださいね。 

2.藤田嗣治展(神戸・東京)

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開催情報
展覧会名:生誕130年記念 藤田嗣治展 —東と西を結ぶ絵画—
会期:
【神戸】2016年7月16日(土)~9月22日(木)
【東京】2016年10月1日(土)~12月11日(日)
会場:兵庫県立美術館・府中市美術館
公式HP:http://www.leonard-foujita2016.com/
Twitter:なし
期待度:★★★★★

西洋画をこころざして、戦前に海外に渡った画家の中では文句なくダントツNo.1の活躍をした藤田嗣治。その独自の「乳白色」の色使いで、パリでは並みいる巨匠達と同列の扱いを受けるほど人気がありました。彼の戦前・戦後を通した画業を時系列で回顧する力の入った展示会です。これは行きたい!

猫を抱く少女
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(引用:http://www.leonard-foujita2016.com/

3.「鈴木其一 江戸琳派の旗手」展(東京、京都、姫路)

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開催情報
展覧会名:「鈴木其一 ー江戸琳派の旗手」
会期:
【東京】2016年9月10日~10月30日
【姫路】2016年11月12日~12月25日
【京都】2017年1月3日~2月19日
会場:
【東京】サントリー美術館
【姫路】姫路市立美術館
【京都】細見美術館

公式HP:http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_4/
Twitter:https://twitter.com/sun_SMA
期待度:★★★★★

江戸琳派を代表する名手鈴木其一。鈴木其一の花鳥画や植物画は本当に見ていて飽きません。今回は、過去最大規模で彼の作品を国内外から収集した大型展示で、酒井抱一の弟子として修行した時代から晩年期まで、時系列でその作風の変遷なども追っていきます。個人的には秋はこの展示会が一番興味があります。

朝顔図屏風f:id:hisatsugu79:20160723092123j:plain(引用:http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_4/display.html

みてくださいこの朝顔。屏風一面、こっちを向いて咲いています。実物を生で見たら、迫力あるだろうな~。

【2016年9月12日追記】
鈴木其一展、実際に行ってきました。下記が感想レポートです。もしよかったら覗いてみてくださいね。

blog.imalive7799.com

4.速水御舟展(東京)

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開催情報
展覧会名:「速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造―」
会期:2016年10月8日(土)~12月4日(日)
会場:山種美術館
公式HP:http://www.yamatane-museum.jp/
Twitter:https://twitter.com/yamatanemuseum
期待度:★★★★★

山種美術館のコレクションの中でも、特に充実しているのが、大正・昭和初期に活躍した速水御舟作品。美術史の参考書にもよく掲載される代表作「炎舞」を中心に、多数の作品が集中展示される特別展です。山種美術館は喫茶店の和菓子も美味しいし、ブロガー内覧会も毎回開催されており、広報活動に積極的で好感が持てます。

「名樹散椿図」f:id:hisatsugu79:20160723092939j:plain

これは1929年に描かれた屏風絵で、重要文化財に指定されている速水御舟の代表作。山種美術館のいろいろなグッズのデザインにもなっていますね。

【2016年11月18日更新】
実際に行ってきましたので、レポートを書きました!これは良かった!!速水御舟の40年の画業での代表作品が全部集まっています。初めてまとまってみることが出来た良い展覧会でした。

5.大仙厓展(東京)

https://pbs.twimg.com/media/CnjQh6WVYAA66Jp.jpg
(引用:https://pbs.twimg.com/media/CnjQh6WVYAA66Jp.jpg

開催情報
展覧会名:「開館50周年記念大仙厓展 ―禅の心、ここに集う」
会期:2016年10月1日(土)~11月13日(日)
会場:出光美術館
公式HP:http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/index.html
Twitter:なし
期待度:★★★

江戸中期において、禅の教えを広めるため、40歳過ぎから禅画を書き始めた仙厓の回顧展です。出光佐三のコレクションを中心に、仙厓の出身地である九州からも作品を集めました。同時期に、永春文庫(目白)でも仙厓の特集展示を行うそうです。東京国立博物館の白隠展と合わせて3本立てで見ておくと、一気に禅画に詳しくなれそう。

仙厓「◯△□図」f:id:hisatsugu79:20160723111121j:plain
出光美術館所蔵の「◯△□図」。全く謎な禅画ですが、きっと仙厓はこういった絵を即興でその場で描いて、お弟子さんや教え子たちに分かり易く仏教の教えを解説したのかなと思います。展示会でその意味が明かされるかな?!

【2016年10月6日追記】
行ってきましたので、感想レポート書きました。もしよければ御覧ください。

6.宮川香山展(大阪・瀬戸)

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開催情報
展覧会名:「没後100年 宮川香山」
会期:
【大阪】2016年4月29日(金) ~ 7月31日(日) 
【瀬戸】2016年10月1日(土) ~11月27日(日)
会場:大阪市立東洋陶磁美術館、瀬戸市美術館
公式HP:https://www.nhk-p.co.jp/event/detail.php?id=556
Twitter:なし
期待度:★★★★

東京展、岡山展は見逃し、大阪展はまもなく終了ですが、僕は最後の瀬戸展に必ず行ってこようと思います。

やっぱりまずはこの「カニ」。テレビの特集などでも、まずこれが特集されるので、映像では死ぬほど見ているのですが、やはり実物をこの目で見ておきたいです。初期と晩年で2壺制作しており、2壺とも出品されているので、見比べるのも楽しそう。

褐釉高浮彫蟹花瓶
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7.驚きの明治工芸展(東京・京都)

f:id:hisatsugu79:20160723105344j:plain(引用:http://www.asahi.com/event/odorokimeiji/

開催情報
展覧会名:「驚きの明治工藝」展
会期:
【東京】2016年9月7日(水)~10月30日(日)
【京都】2016年11月12日(土)~12月25日(日)
会場:東京芸術大学美術館、細見美術館
公式HP:http://www.asahi.com/event/odorokimeiji/
Twitter:https://twitter.com/odorokimeiji
期待度:★★★★

明治期の超絶技巧な工芸品にスポットライトを当てた展示会です。出展元は、なんとたった一人のコレクター、台湾の宋倍安氏のコレクションからです。彼のコレクション、3,000点あまりの中から、江戸時代末期~明治時代を中心に昭和初期頃までの、漆工、金工、陶磁、七宝、染織とすべてのジャンルから厳選しての出展です。宮川香山展と合わせて見ておけば、工芸品についての造詣が一気に深まりそう。しかし、台湾にそんな熱心なコレクターがいるとは・・・。

【2016年9月12日追記】

こちらも開催初日に行ってきました。明治の細密工芸の凄さと、可愛い意外な一面も感じられた、良い展示会でした。こちらはゆったりと見れると思います。 

8.はじめての古美術鑑賞展(東京)

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開催情報
展覧会名:「はじめての古美術鑑賞」展
会期:2016年7月23日(土)~2016年9月4日(日)
会場:根津美術館
公式HP:http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
Twitter:なし
期待度:★★★★

水墨画や屏風絵など、日本美術で使用される技法、用語などを、根津美術館が所蔵する実際の古美術作品を使ってわかり易く解説する展示会。僕も、この機会に学んでこようと思っています。初心者向けで、勉強になりそうな展示会としてピックアップしてみました。

【たらしこみ】四季草花図屏風
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水墨画で幅広く江戸時代に使われた「たらしこみ」技法。確かにテレビや音声ガイドなどでよく聴く単語です。解説で聞いている限りでは「フーン」という感じですが、やってみればめちゃくちゃ難しいんだろうなぁ。 

9.メナード美術館コレクション展(小牧)

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開催情報
展覧会名:メナード美術館コレクション名作展
会期:2016年10月1日(土)~17年1月29日(日)
会場:メナード美術館
公式HP:http://museum.menard.co.jp
Twitter:なし
期待度:★★★★

箱根のポーラ美術館に対抗したのか、非常に名古屋都心からアクセスの悪い所に建てられたメナード美術館。しかし所蔵品は粒ぞろいです。メナード美術館で所蔵する1400点余りの作品から、西洋絵画、日本画、日本洋画を中心に代表作およそ90点の作品を展示します。新印象派から、アンリ=エドモン・クロス《木陰のある浜辺》と、ジョルジュ・スーラ《働く農夫》が今回のコレクション展で初公開となります。

ただし僕のお目当ては、葛飾応為の代表作「夜桜美人図」です。応為は、巨匠葛飾北斎の娘であり、北斎の助手を勤めていたといいます。北斎に「美人画については、応為には敵わない」と言わしめた実力。非常に寡作で、また人物おぞうとしても謎の多い人物ですが、浮世絵の中でも夜の「光」と「影」にこだわって美人画を描き出した異色なスタイルは非常に個性的です。

f:id:hisatsugu79:20160723102446p:plain葛飾応為「夜桜美人図」
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10.伊藤若冲の特集展5つ!

今年の4月~5月に開催された東京都美術館での「若冲展」では、事前予想を遥かに超えた大盛況となりました。この大フィーバーに続くべく(?)、下半期も京都を中心にいくつも特集展示が行われます。全部行けば相当の若冲通になれることは間違いなさそうですね!

10-1.伊藤若冲展(京都・相国寺)

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開催情報
展覧会名:「生誕300年記念 伊藤若冲展」
会期:2016年7月1日(金)~12月4日(日)
会場:相国寺 承天閣美術館
公式HP:http://www.shokoku-ji.jp/j_now.html
Twitter:なし
期待度:★★★★★

若冲の代表作「動植綵絵」の全幅の複製画展示と、鹿苑寺障壁画がみどころ。動植綵絵はデジタルコピーながら、その出来は非常に精巧で、かつて相国寺にて動植綵絵30幅を一覧展示した際と同じ構図で展示されています。もちろんガラスケースもありません。落ち着いた雰囲気の中で、あの興奮を再び味わえる展示会です。早く行きたい。

10-2.伊藤若冲 ─京に生きた画家─(京都)

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開催情報
展覧会名:「生誕300年記念 伊藤若冲 ─京に生きた画家─」
会期:2016年6月25日(土)~9月4日(日)
会場:細見美術館
公式HP:http://www.okada-museum.com/exhibition/next
Twitter:なし
期待度:★★★★ 

雪中雄鶏図
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(引用:http://www.kyoto-artculture.com/works/detail/10/

個人的には、2016年春の東京都美術館の若冲展の後に開催される若冲関連の展示会の中では、一番みごたえがある展示会なのではないかと思っています。全盛期の作品から、弟子たちやや同時代の絵師たちの展示も充実しています。 

10-3.若冲と蕪村 江戸時代の画家たち(箱根)

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開催情報
展覧会名:「―生誕300年記念―若冲と蕪村 江戸時代の画家たち」
会期:2016年9月5日(月)~12月18日(日)
会場:岡田美術館
公式HP:http://www.okada-museum.com/exhibition/next
Twitter:なし
期待度:★★★★

伊藤若冲「孔雀鳳凰図」(孔雀)
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岡田美術館は、箱根の小涌谷にあるお洒落な美術館。2016年に新規収蔵された孔雀鳳凰図が今回展示の目玉です。春の若冲展にも出品されていましたが、混雑してよく見れなかった人は多かったと思います。この展示会で改めてゆっくりと見れそうですね。

10-4.特集陳列 生誕300年 伊藤若冲(京都)

開催情報
展覧会名:「特集陳列 生誕300年 伊藤若冲」
会期:2016年12月13日(火)~17年1月15日
会場:京都国立博物館
公式HP:http://www.kyohaku.go.jp/jp/project/2016_jakuchu.html
Twitter:https://twitter.com/kyohaku_gallery
期待度:★★★  

果蔬涅槃図
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4月の東京都美術館「若冲展」でも展示されていましたが、豪華絢爛な動植綵絵以外にも、こうした水墨画などでも優れた作品を沢山残しているのが伊藤若冲の凄いところ。

10-5.若冲の京都 KYOTOの若冲(京都)

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(引用:https://pbs.twimg.com/media/CnCadJfUkAAu873.jpg:large

開催情報
展覧会名:若冲の京都 KYOTOの若冲
会期:2016年10月4日(火)~12月4日(日)
会場:京都市美術館
公式HP:http://www.mbs.jp/jakuchu-kyoto/
Twitter:なし
期待度:★★★

10月からスタートする割には、公式サイトや京都市美術館で内容の告知がないため、現時点では内容不明。もう3ヶ月前だけど、集客とか大丈夫なのかな?!展示会の内容が判明次第、また追記したいと思います。

まとめ

本当はまだまだこれ以外にも行きたい日本美術展はあるのですが、ピックアップしているとキリがないため、泣く泣く10選としました。ひょっとしたら、今年4月の伊藤若冲展で、日本美術の奥深さに目覚めた人も多かったかとは思います。

2016年下半期も、東京・大阪・名古屋を中心に色々な美術展がありますので、是非気軽に出かけてみてくださいね。僕も、ここでピックアップした展示会は、極力全部行って、順次感想をアップしていきたいと思います。

それではまた。
かるび

おすすめの情報源

「男の隠れ家」2016年9月号で、日本画、西洋画を網羅した、2016年下半期~2017年上半期までのおすすめ美術展「注目の美術展80」特集記事が非常に役に立ちました。本屋でみかけて、即買いしました。北海道~九州まで、全国の美術展からまんべんなくピックアップされています。「男の隠れ家」とありますが、女性の方でも勿論参考になりますので是非!

 た、同じく美術展をまとめたムック本ならこちらが文句なくオススメ。山田五郎は何だかんだで非常に分かり易く、頭に入ってくる印象的な解説をしてくれます。毎年僕も買うようにしています!

冒頭でもリンクを貼りましたが、同じく2016年下半期のオススメ西洋美術展について、こちらにまとめました。もし良かったら、読んでみてくださいね。