あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】「モアナと伝説の海」感想とあらすじ・主題歌の徹底解説!/自分探しの旅を描いた傑作アニメ長編映画!

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【2017年4月4日更新】

かるび(@karub_imalive)です。

3月10日に封切られたディズニー56作目となる新作アニメ映画「モアナと伝説の海」を見てきました。物凄いきれいな映像にびっくりしました!

早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。

※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。

1.映画「モアナと伝説の海」の基本情報

<映画「モアナと伝説の海」予告動画>

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【監督】ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ
【配給】ディズニー
【時間】107分

ジョン・ラセターが製作総指揮に入ってからすっかり複数監督、複数脚本のオールスター体制で製作されるようになった最近のディズニー映画。今作も、「リトル・マーメイド」や「アラジン」の時代からディズニーでアニメ映画を作り続けている巨匠監督二人を起用して、万全の布陣で製作されました。

2.モアナと伝説の海「主要登場人物とキャスト」

ここ最近は「ズートピア」「アナ雪」といい、女性主人公のほうが大ヒット作が出やすいディズニー映画。今作でも16歳となった若き南太平洋の島、モトゥヌイ島の村長の娘、モアナが主人公です。綿密な取材と検証を繰り返して設定された各登場人物の顔立ちや肌の色は、南太平洋の島々の人々の特徴がよく出ていました。これまでのどのディズニー長編アニメより、違和感が少なく、作画技術の着実な進歩を感じました。

モアナ(日本語:屋比久知奈)f:id:hisatsugu79:20170309164138j:plain

日本語吹き替え版で、メインの劇中歌と声優を担当した屋比久知奈は、ディズニー史上最大規模のオーディションで選ばれたシンデレラガール。現在琉球大学の現役の4年生です。英語字幕版で劇中歌&モアナ役を担当しているAuli'i Cravalhoとは、非常に声質も似ています。声優としての演技は、実写俳優にありがちな妙な素人臭もなくスムーズです。

マウイ(日本語:尾上松也)f:id:hisatsugu79:20170309164022j:plain

マウイの豪快な外見から見ると、吹替版の声優は対照的で意外な人選(笑)ソロで歌うパートも問題なくこなしていました。あとでエンドクレジットを見て、気づきましたが、言われるまで全くわかりませんでした・・・。歌舞伎役者の中には歌って踊れる人材が多いんですね、、

タラ(日本語:夏木マリ)f:id:hisatsugu79:20170309164313j:plain

一瞬、声から「ゆばあば」の面影がちらっと見えたような気がしましたが、ディズニーの幹部も夏木マリを起用する際、「千と千尋の神隠し」での声優の実績を考慮に入れて選んだようです。安定感抜群でした。

トゥイ(日本語:安崎求)
シーナ(日本語:中村千絵)
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モアナの父親、母親役は芸能人枠ではなく、普通の声優さんが起用されました。しかし夫婦で並ぶとこの体格差。ポリネシア系の男子達は、屈強なラグビー選手たちのように、昔も今もマッチョでデカいんですね・・・。

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3.「モアナと伝説の海」結末までのあらすじ(※ネタバレ)

3-1.島に伝わる伝説と、モアナの旅立ち

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太平洋に浮かぶ島、モトゥヌイ。人々は、緑と花、ヤシの木など豊かな自然に囲まれた平和な暮らしを送っていた。

物語は、モトゥヌイの村長トゥイの娘、モアナがタラおばあちゃんが語る島の伝説を熱心に聞き入るところから始まる。その日、タラおばあちゃんがモアナに語った内容は、このような話だった。

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昔、地球には海しかなかった。やがて、テ・フィティという女神が作り出した母なる島が出来上がり、テ・フィティは自らの「心」の渦巻きから命を生み出し、周りに木々や花で埋め尽くされた沢山の島を作り出していった。しかし、島々の平和は、テ・フィティの「心」を独り占めを目論む者たちによって、乱されていくことになった。

ある日、マウイという、風と海を司る屈強な半神半人が、自身の持つ「神の釣り針」でテ・フィティの「心」を釣り上げた。このため、「心」を失ったテ・フィティの島々は崩れ、この世に初めて「闇」が訪れた。

マウイは逃げようとしたが、その時現れた大地と炎の悪魔「テ・カァ」との戦いに負け、マウイは「神の釣り針」とテ・フィティの「心」の両方を失ってしまい、どこからかへと姿を消してしまった。

タラが語る伝説によると、いつの日か、マウイを探し出し、海を渡りテ・フィティの元に行って「心」を返しにいく使者が現れる日が来るのだという。

父、トゥイが村人に対して、サンゴ礁を越えて遠洋に出るのを厳しく禁じたにもかかわらず、モアナは、幼少の時から不思議と海に魅せられていた。いつも呼ばれているような気がするのだ。

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モアナは、幼少時、不思議な経験をした。鳥につつかれていた子ガメを守った時、海が形を変えて、心を通じ合ったことがあった。その時、渦巻き色の形をした緑色のきれいな石をもらったのだが、父親に呼ばれた時になくしてしまったのだった。

モアナが16歳になった時、父、トゥイは村人たちの前で正式にモアナを次代の村長候補に指名し、代々の村長だけが立ち入ることのできる山の頂上へ連れて行った。モアナは、海へ惹かれる気持ちはそっと胸にしまいつつ、モトゥヌイで村人たちの平和な暮らしを守るろうと誓うのだった。

モアナが村長になるための修行を始めた時、村に異変が発生した。ココナツの実が腐り、近海で魚が急に採れなくなったのだ。モアナは父の前で、サンゴ礁を越えて漁に出ることを提案したが、父は猛反対した。気持ちを押さえきれないモアナは、父に黙って一人で遠洋に漕ぎ出したが、高波にさらわれて命からがら岸辺に戻りついた。

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それを見ていたタラは、モアナを島の秘密の洞窟へ連れて行った。その洞窟には、1000年前の先祖がモトゥヌイへとたどり着いた時に使った帆船が置かれていた。帆船の太鼓を叩いた時、海を渡り歩く旅人だった祖先のイメージが心に湧き、彼らと心で通じ合ったような気がしたモアナだった。

タラは、ペンダントの中から渦巻きの模様がある緑色の石を取り出し、モアナに手渡した。それこそが、テ・フィティの「心」であり、タラは、モアナこそが伝説の予言にある通り、海に選ばれてマウイとともにテ・フィティの心を返しにいく使者なのだと告げた。

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その夜、タラは危篤状態に陥り、モアナは、タラから形見としてペンダントを受け取り、黙って先祖の残してくれた帆船で単身海に漕ぎ出していった。出航した時、亡くなったタラが「エイ」となって、モアナを送り出してくれた。

3-2.マウイとの出会いとテ・フィティへの旅

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海に漕ぎ出したモアナだったが、間もなく嵐に遭遇し、気を失ってしまった。モアナが目を覚ました時、見ず知らずの無人島に流れ着いていた。しかし、そこがまさに伝説のマウイが幽閉されていた場所だった。

しかし、マウイを説得するのは一筋縄では行かなかった。マウイは、カニ型の魔物、タマトアに奪われてしまった「神の釣り針」を取り返しに行くため、モアナの隙をついて船を奪って島を出ていこうとした。モアナの懸命の説得で、マウイは「神の釣り針」を先に取り返すことを前提に、モアナとテ・フィティの島へ「心」を返しに行くことに応じた。

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順調に旅を続ける二人だったが、そこへテ・フィティの「心」を狙う海賊、カカモラが現れて、二人を襲撃してきた。奮戦したが多勢に無勢、一度はテ・フィティの「心」を奪われ、劣勢になったマウイは逃げ出そうとするが、モアナは機転を効かせて戦い抜き、テ・フィティの「心」を取り戻して、自滅したカカモラから逃げることに成功した。

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次に、二人はタマトアの住む島へとたどり着いた。単独行動で釣り針を取り戻そうとするマウイに無理やりついて行ったモアナ。二人は見事な連携プレイでタマトアを引っくり返し身動きが取れないようにして、タマトアの背中から「神の釣り針」を取り返すことに成功した。マウイは、次第に勘を取り戻し、「神の釣り針」を使って自在に変身できる力を取り戻した。

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相次いで困難を乗り切り、信頼関係が強くなった二人は、その後協力し合ってテ・フィティのところへと向かった。マウイは自分の過去をモアナに打ち明け、モアナはマウイから航海術を教わり、一人前の相棒として認められた。

3-3.テ・カァとの対決

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そして、いよいよテ・フィティの島が近づいた時、二人の前に溶岩の悪魔「テ・カァ」が立ちはだかるのだった。勇敢に戦おうとするも、全く刃が立たず、大切な「神の釣り針」を壊されそうになったマウイは完全に心が折れてしまい、モアナの元を去ってしまった。

土壇場で相棒に立ち去られたショックから、モアナも海にテ・フィティの「心」を返し、使者の役目を一旦降りて島へ帰ろうと決意する。しかし、その時どこからともなくエイが現れた。そのエイはタラに姿を変えて、モアナを優しく諭した。どんな時も必ず無条件に暖かくモアナを見守ってくれる「海」のような祖母に心を打たれた時、モアナは自分が何者であり、何をすべきなのかハッキリと心の中に悟った。

迷いがなくなったモアナは、一人でもテ・カァの居場所をすり抜け、テ・フィティの島へと向かうことを決意した。そして、テ・カァと向き合った時、一旦は去って行ったマウイが戻ってきてくれた。

マウイの力強いサポートもあり、モアナはテ・カァをやり過ごして、テ・フィティの島へとたどり着いたが、肝心のテ・フィティの「心」を返す場所がなくなっていた。その時、モアナに追いついてきたテ・カァの胸の当たりを見てみると、渦巻状になっている部分を見つけた。

モアナは、テ・カァに近づいていき、テ・カァこそが「心」を失ったテ・フィティであることを見破った。そして、テ・カァにその緑色の石をはめ込むと、テ・カァの呪いが解けて、テ・フィティは「心」とともに原初の「神」の姿を取り戻した。

3-4.冒険の終わりと、モアナの新たな旅の始まり

これにより、南の島々にはふたたび平和が戻り、モアナはモトゥヌイに戻り、父・母、村人たちとの再会を果たした。モアナはマウイを島へと誘いましたが、マウイはひとりでいる自由を選んだ。二人は、ハグをしてお別れをした。

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島に戻ったモアナは、村長になるのではなく、昔の先祖たちがそうであったように、自分の心に従って、海の旅人として村の人々たちと生きていくことを決意したのだった。

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4.「モアナと伝説の海」感想や評価(※ネタバレ含)

4-1.芸術的なレベルに到達したCG。美麗すぎる海の表現が最高でした

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新海誠やSAOなど、日本のアニメの作画レベルも相当に向上していますが、ディズニー長編アニメも物凄いレベルに到達しています。3年前の「アナ雪」でも雪や氷の質感、なめらかな登場人物たちの動きに驚嘆しましたが、「モアナ」はそれを遥かに上回る印象です。

特に、波打ち際の自然な海の質感や、粘性のある溶岩のどろどろした粘り気、赤道直下の明るい空や海、緑の島々は見ているだけで惚れ惚れするレベルでした。 

4-2.敵を倒さない冒険もの映画!

テ・フィティの島にたどり着くまで、モアナは海賊のカカモラ、巨大なカニのタマトア、そして最後に溶岩の悪魔テ・カァと、合計3度の戦いを経験します。

面白いのは、どの戦いでも敵に対して多少はマウイが攻撃しますが、一度も敵を倒さずに切り抜けているのですよね。カカモラには船をぶつけあって自滅するように仕向け、タマトアはひっくり返して終わり、テ・カァに至っては戦わずにすり抜けようとします。

通常の冒険ファンタジーストーリーでは、ボスクラスの敵をきっちり「倒す」ことが主人公たちの成長、成功の象徴として描かれ、RPGゲームのように戦って勝つシーンが明確に描かれる作品がほとんどです。

本作「モアナと伝説の海」や、「ベイマックス」など、最近のディズニー映画では戦闘シーンでは敵を倒さないのが主流になってきたなと感じます。そして、この映画では戦闘に勝利して成功する、あるいは成功体験を積み重ねて主人公が成長する、というメインテーマではない、ということがハッキリ読み取れるのですよね。

4-3.恋愛要素はまたしても二の次に!

そして、今作では主人公たちは敵を倒さなければ、恋愛もしないという異例づくしなのです(笑)

もっとも、最近のディズニーの大作長編アニメは、恋愛要素が本当に薄いですよね。「アナ雪」では、サイドストーリーとして妹アナと雪山で出会ったクリストフが最後に恋仲になりますが、メインテーマはアナとエルサの「姉妹愛」でした。「ズートピア」では21世紀のアメリカ社会を強く暗示させる「差別と偏見」が描かれ、主人公のジュディとニックの恋愛シーンは一切なし。そして「ベイマックス」では、「友情と家族愛」が主題でした。

今作でも、ラストシーン直前でモアナが「島に残ってくれてもいいのよ」と軽く誘いますが、マウイはあっさり断り、二人の関係は友情以上には発展しません。二人はハグし合っただけで、男女関係的なシーンは全くありません。

まぁディスニー映画としては、エマ・ワトソン主演でド直球の恋愛系の実写大作「美女と野獣」が4月に上映されるから、そっちを見てください!ということですね(笑) 

4-4.今作のテーマは「自分探し」。

それでは、今作でのメインテーマは何なのでしょうか?それは、「自分探し」です。本当の自分は何なのか。自分は一体誰なのか?そして、それは非常にわかりやすい形で繰り返し劇中歌やセリフから明確に提示され続けます。

モアナとマウイの島々への冒険の旅は、いわば自分探しの壮大なメタファーです。海の厳しさを身にしみて味わった父から何度諭されても、モアナは、どうしても「海」に出てみたいという自分の内なる直感に導かれ、島を旅立ちます。もちろん、表面上は伝説の教えに従い、島の危機を救うために出かけるわけですが、それはモアナ自身にとっては島を出て冒険の旅に出るための一つの材料に過ぎません。

そして、モアナは、いくつかの成功体験と挫折の果てに、「自分とは何なのか」「自分の行くべき道」を知るのです。

映画の最初から「モトゥヌイのモアナ!」と自分のことを呼んでいたモアナも、物語後半で自分自身を知り得た時、単に「私はモアナ!」と歌の中で力強く宣言していたのが非常に印象的でした。

また、モアナの相棒、半神半人のマウイは、「神の釣り針」で人間の役に立つことを自分自身のアイデンティティとして強く認識することで(それ自体は無私の心で非常に尊いのですが)、無意識に幼少時に母に捨てられた寂しさを埋め合わせていました。しかし、そんなマウイもモアナを信じ、「神の釣り針」が壊れても自分自身であろうとしました。

冒険を通して、モアナとマウイはともに、自分を規定していた過去の何かを捨て、シンプルに「いまここの自分自身」に立ち戻ります。本当にやりたいこと、本当の自分とは、自分の外側にある概念や属性によりかかっていては見えてこないのですよね。(例えば、モトゥヌイの村長である私、とか、神の釣り針を持つ強い俺といったもの)

そうではなく、自分自身の内側から湧き上がる強い気持ちに素直であろうとした時、二人は「自分は誰なのか」「進むべき道はどこにあるのか」という自分自身の根源的なアイデンティティを手にしたのでした。

結果として、モアナは「海の旅人」として生きていくことに迷いがなくなり、マウイは過去のトラウマから開放されて、「神の釣り針」なしでも強い心を取り戻すことができました。

今作は、自分のやるべきことは何なのか、自分とはどんな存在なのかを探求しようとした時、シンプルに「今の自分自身の気持ち」に従うことの大切さを、南太平洋の寓話をミックスさせた長編アニメで表現した傑作だったと思います。

5.伏線や設定の解説(※ネタバレ有)

5-1.「モアナ」「マウイ」の意味とは?

マウイという言葉は、ハワイ、トンガ、サモア、タヒチ、ニュージーランドやポリネシア諸島の人々の間で、共通して「神」という意味合いを持つ言葉です。これに対して、モアナという言葉は、「太平洋」や「海」という意味を持ちます。

彼らの伝説の中では、原初には「海」(Moana)だけがあり、そこから「神」(Maui)が島々や人々を創造した、とされていますから、映画での主人公たちの名前は、まさに彼らの根源的なアイデンティティ、ルーツを象徴していたのですね。ちなみに、映画中では、マウイが「神の釣り針」で島々を釣り上げたのだ、と発言していました。

モアナ、マウイは、島の他の人々と対照的に、全く海のことを怖がっていません。モトゥヌイの先祖達同様、海=母なる神でもあり、自分のルーツである、ということを直感的に理解しているのですよね。

余談ですが、イタリア、フランスなどヨーロッパの多くの国では、「Moana」という名称が80年代活躍した有名なポルノスター(Moana Pozzi)と混同するのを避けるため、「Vaiana」や「Oceania」というタイトルに変更されました。ヴァイアナ?ピンとこないかも・・・

5-2.ペットのブタ、プアの存在について

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ディズニーの長編アニメ映画に欠かせないのは、主人公にお供するコミカルな動物たちですよね。今作では、にわとりのヘイヘイとブタのプアが務めましたが、ブタのプアは、モアナとともに冒険に出ることもなく、島に残るなどして、存在感が中途半端なのですよね。

変だなと思って調べてみたら、どうやら映画製作開始当初はプアとの出会いをしっかり描き、モアナとともに冒険に出かける設定だったそうです。でも海上の冒険でブタが活躍するシーンは描きづらく、大幅に出演シーンがカットされたのだとか。

ちなみに、削られたモアナとプアの出会いのシーンですが、もともと家畜だったプアは食が細く、弱っていたところをモアナがみつけ、大切にペットとして飼育することになったというエピソードだったようです。

5-3.回想シーンで登場した先祖の名前は「マタイ」

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先祖の船が隠された洞窟で太鼓を叩いたモアナが、回想シーンで出会った先祖の名前は「マタイ」と言います。マタイは、1000年前に海を渡り歩いてモトゥヌイにたどり着き、最初に定住した偉大な村長でした。モトゥヌイが息子にネックレスを譲り渡す世代交代のシーンも描かれていましたが、このネックレスこそが、村長の家系に脈々と受け継がれ、タラが死ぬ時にモアナに渡した形見のネックレスだったのですね。

ちなみに、マタイはクライマックス前に落ち込んだモアナがゴースト姿のタラに再会した時にもちらっと登場して、モアナを勇気づけていました。

5-4.モアナはなぜ「海に選ばれた」存在になったのか

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今回のモアナの冒険では、最初からラストシーンまで様々な局面で「海」がモアナのピンチを支えてくれます。祖母、タラからも「お前は選ばれた存在だ(The Chosen One)」だとモアナは繰り返し聞かされます。

なぜモアナが選ばれた存在になったのか、その根拠としては、単に族長の娘だったからではありません。その根拠は、映画冒頭で描かれています。海へ帰っていく子ガメを攻撃しようとした海鳥から守り、子ガメを無事に海へ送り届けたシーンを「海」はちゃんと見ていたのですよね。その直後に海が割れて、海から緑色の石、テ・フィティの「心」がモアナに託されたのでした。今年度アカデミー賞にノミネートされたジブリの「レッドタートル」や、浦島太郎などの寓話に見る通り、古今東西、カメは「神の使い」の象徴なのですよね。

5-5.ラストシーンでモアナはどこへ行ったのか

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エンディングで、モアナが両親たちと遠洋に旅立つシーンがありましたが、モアナはどこへ行ったのでしょうか?直接説明はありませんでしたが、以下の状況から、モアナはモトゥヌイを出て、別の島を見つけ出す長旅に出たか、その準備をしていたのでしょう。そして、両親を両脇の船に従えていたことから、モアナは彼女自身が選んだ生き方と合うかたちで、実質上村長を父、トゥイから継承したようにも見えます。

<モアナが長旅に出たのだとわかる根拠>

・モアナが内なる声に従い「海を旅して生きていく」ことを選んだこと
→テ・カァとの2度目の遭遇前、タラと再会した時、本当の自分の気持ちに気づくシーンが描かれている
・モトゥヌイの島の山頂に海で拾った巻き貝を置いたこと
→村長になる者は、そこに必ず自分の石を置かなければならない。島の象徴である重たい「石板」ではなく、海を連想させる「巻き貝」を置いていた。
・サンゴ礁の手前で手を振って見送るモトゥヌイの人々が一定数いたこと
もっとも、ここは「村人たちを訓練しているのだ」「お祭りとして出かけたのだ」という解釈もネット上でちらほらありましたので、どれが「正解」というのはなく、映画を見た人に解釈が任されているのだと思います。

6.主題歌「How Far I'll Go」を聴き比べてみる!

ディズニーアニメ映画で主人公が劇中で繰り返し歌う主題歌は、プロモーションの段階から徹底して積極的に公開されます。(通称「I Want Song」「I Wish Song」とアメリカでは言われます)先例に従って劇中歌とエンディングでそれぞれ異なる歌手が担当しています。これが、日本語吹替版/英語字幕版と2つずつあるからややこしいのですが、公式サイトに4人とも歌声がアップされていますので、少し聴き比べてみるのも面白いと思います。

ということで、順番に見ていきましょう・・・

6-1.日本語版の劇中歌(屋比久知奈)

<映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版劇中歌>

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「まるで演歌のようにコブシが利いてる」と、リリース前からネットで話題騒然だった屋比久知奈の歌声。無名ですが、何千人ものオーディションから選ばれただけあって、人前でライブで歌った時も安定感抜群ですね。映画ではこの劇中歌を合計2度歌うシーンがあり、ちょっとずつ歌詞が変わります。2パターンとも日本語版サントラに収録されています。

6-2.日本語版のエンディング(加藤ミリヤ)

<映画「モアナと伝説の海」日本語吹替版エンディング>

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日本語吹替版は、加藤ミリヤが担当しています。MVでは、自らモアナになりきり、南の島でロケをする力の入れようです。しかし、アナ雪のMayJ、神田沙也加といい、ディズニーは一度埋もれかけた才能をふたたび発掘して表舞台に立たせる絶妙の嗅覚がありますね。野球で例えると、まるで野村再生工場のようであります。

原曲に従ってストレートにメロディを載せて歌われた劇中歌と違い、嫌味にならない程度の自分の個性を乗せて、この「How far I'll go」を上手く再解釈していました。こちらも、日本語版サントラに収録されています。

6-3.英語版の劇中歌(アウリィ・クラヴァーリョ)

<映画「モアナと伝説の海」字幕版劇中歌>

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英語版の劇中歌に起用されたのは、ハワイ原住民出身で若干14歳のアウリィ・クラヴァーリョ(Auli'i Cravalho)。モアナの声優担当でもあります。ディズニー映画でヒロイン役を務めた声優の中ではダントツ最年少での起用となりました。

映画が終わってからも、英語圏の国々の歌番組で次々ゲスト出演していますが、その堂々たる歌唱や立ち振舞は、とても14歳には見えません。こちらは、英語版サウンドトラックに収録されています。

6-4.英語版のエンディング(アレッシア・カーラ)

<映画「モアナと伝説の海」字幕版エンディング>

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字幕版エンディングには、イタリア系移民でカナダ出身の20歳のシンガー・ソングライター、アレッシア・カーラが起用されました。10歳で作曲を始め、13歳でYoutubeに自らの歌声をアップしはじめたという、宇多田ヒカルみたいなエリート早熟タイプの若い歌手ですね。

2015年にリリースしたデビュー・アルバムが全米9位になるスマッシュヒットを飛ばした後、モアナで抜擢されて世界的に注目を浴びました。こちらは、日本語版サウンドトラック英語版サウンドトラックに収録されています。

6-5.おまけ「24ヶ国語版」

<映画「モアナと伝説の海」24ヶ国語版>

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映画公開日に新たに追加された24カ国語版。こうして並べてみると、やはりディズニーの方針なのか、どのバージョンも原曲を歌ったアウリィ・クラヴァーリョと声質や歌唱法が良く似ていますね。

7.まとめ

テーマソング「どこまでも~How far I'lll go」とある通り、モアナは自らの心に従って遠い海へと冒険の度に出ますが、結局どこまで行っても答えがあるわけではなく、一番大切なものは、自分の心の内側に最初からあった、ということなんですよね。

だけど、矛盾しているようですが、それは、自らがかつて経験したことがないほど遠い果ての遠洋まで出かけていったからこそ見つけられたものなのかもしれません。

「本当の自分とは何か?」映画を見終わって、単純だけど深遠なテーマと向き合う絶好の機会をくれる、そんな映画だったと思います。何度もリピートしたい良い映画でした。

それではまた。
かるび

 

他にもレビュー書いてます!
【映画レビュー】2017年3月現在上映中映画の感想記事一覧

8.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

オリジナルサウンドトラック(日本語版)

日本語吹替版のサウンドトラック。屋比久知奈の劇中歌、加藤ミリヤのエンディングも含まれています。歌曲部分と、純粋なサウンドトラック合わせて40曲以上が収録されていますが、歌曲部分は物語でのモアナ達の心情がわかりやすく日本語で表現されていますので、じっくり歌詞カードを読んでみると、新たな発見がありますよ。ちなみに、オリジナルサウンドトラック(英語版)は、こちらから。

加藤ミリヤ「どこまでも ~How Far I'll Go~」

加藤ミリヤのエンディングをシングルカットした商品。映画に合わせた特別限定生産盤で、かなり売れているようですね。久々に加藤ミリヤの歌声を聞きましたが、昔よりかなり上手になってますよね?!

小説版「モアナと伝説の海」

ノベライズは、幼児向けの絵本、小学生低学年向けのジュブナイル小説、そして小学校高学年以上向けの本作品と、3種類も用意されていますが、大人が読むのであればこれがいいでしょう。劇中のセリフや情景描写などは忠実に小説で再現されています。細部まであとで思い出して文章で楽しみたい人にお勧め!

モアナと伝説の海 ビジュアルガイド

ラストまで網羅したストーリーガイド、個性豊かなキャラクターの紹介や、美しい大自然のアートワークを多数掲載。主題歌の歌詞も収録し、様々な角度から映画を分析した本です。もっと映画のことを知りたいファン向けの決定版です!

Amazon・楽天「モアナ」特設コーナー

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モアナは、やはり大作長編アニメ映画らしく、通常の映画とはケタ違いに発売されているグッズ数が多いです。上記で紹介したノベライズやガイドブック、サントラ以外にも、例えばモアナのフィギュアだったり、先祖代々受け継いだペンダントなど多岐に渡る人気グッズがあります。

Amazon、楽天でもそれぞれ専門の物販コーナーがありましたので、以下にリンクを貼っておきますね。もし必要であれば、お役立てください。

Amazon・楽天「モアナ」特設コーナー
Amazon「モアナ」特設ページを見る!
楽天「モアナ」特設ページを見る!