あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【展覧会感想】2017年NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」特別展 戦国!井伊直虎から直政へ

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かるび(@karub_imalive)です。 
江戸東京博物館では、毎年春から夏にかけて、その年の大河ドラマにちなんだテーマの展覧会が行われるのが通例となっています。毎年、大河ドラマ展を楽しみにしている常連さんも多いのではないでしょうか?

2017年は例年になく遅く、7月4日スタートとなりましたが、やはり「おんな城主 直虎」にちなんだ 特別展 戦国!井伊直虎から直政へ がいよいよ始まりました。

でも、待ちに待っただけのことはありました!今回は「戦国時代」がテーマなので、ドラマファンだけでなく、アートファン、戦国時代ファン、刀剣・甲冑マニアまで幅広く楽しめる展覧会になっています。
ラッキーなことに、柴咲コウさんもかけつけたプレス内覧会の様子を取材することができました。今回は、写真入りで感想レビューを書いてみたいと思います。

※なお、本件で使用した写真は、あらかじめ主催者の許可を得て撮影したものとなります。何卒ご了承下さい。

1.特別展 戦国!井伊直虎から直政へ とは?

展覧会の概要について

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今年の大河ドラマの主役は、柴咲コウさん演じる井伊直虎ですね。歴史上、井伊家で特に有名なのは直虎に養育された「井伊直政」、それから、ずーっと時代が飛んで、江戸末期の激動の時代に幕政にあたった大老「井伊直弼」の二人。

本展は、その中でも戦国時代の直虎ー直政が生きた1550年頃~1600年頃に焦点を絞り、井伊家ゆかりの美術品・古文書などを通じて、当時の歴史・文化を紹介する展覧会です。

なお、大河ドラマでは直虎は「女」設定ですが、歴史上の史料では、性別をハッキリ特定できるエビデンスが見つかっていないため、展覧会では直虎の性別を断定していません。このあたりは、博物館らしい配慮がなされていますね。

初日は柴咲コウさんも応援に駆けつけてくれました!

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当日の内覧会は、柴咲コウさんも駆けつけてくれました。

実質20分程度の滞在でしたが、内覧会では、いくつか学芸員に付き添われて展示を見た後、直虎直筆の古文書を特に念入りに見ていました。

▼井伊直虎の花押が入った唯一の古文書を見つめる柴咲コウさんf:id:hisatsugu79:20170710234250j:plain

そして、浜松のゆるキャラ達も?

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当日は、浜松市からもPRのために何人か来ていたのですが、わざわざ浜松市の2大ゆるキャラ「出世大名家康くん」「出世法師直虎ちゃん」も入口前で盛大にアピールしていました。わざわざこのためにクソ暑い中、浜松から300km駆けつけてくれてご苦労様であります・・・

音声ガイドは小林薫さんが担当!

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今回、音声ガイドで声を担当したのは俳優の小林薫さん。「おんな城主 直虎」で、主人公、直虎のメンター的な南渓和尚役を務めていますので、ぴったりですね!

小林薫さんと言えば、2017年2月に封切られた映画「キセキ」では主人公の兄弟に対して、日本刀で切りかかるシーンもあるなど、超厳格な父親を演じた配役がすごく意外で非常に印象に残っていたのですが、今回のガイドでは、南渓和尚に近いいつもの柔和な感じでやってくれています(笑)

それにしても、小林薫さんは音声ガイドの常連ですね。2012年「フェルメール光の王国展」、2016年「レンブラント リ・クリエイト展」など、実績十分。もう手慣れたものです。安心して聞くことができますよ!

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2.展覧会の4つのみどころ

みどころ1:井伊家に纏わるレアアイテム達!

戦国大名を取り扱った展覧会は、江戸東京博物館の「特別展」「企画展」のメインコンテンツといっても過言ではありません。例えば、2016年11月~2017年1月には「戦国時代展」というタイトルで特別展が開催されました。前後期に分けて、北は伊達氏から南は大内氏、島津氏に至るまであらゆる戦国大名のレアアイテムを紹介して、戦国マニアを唸らせたばかりです。

また、実はこのあと2017年8月からは、5Fの企画展で「徳川将軍家へようこそ」という展覧会も行われ、戦国時代~江戸初期の徳川家ゆかりの品々が出展されそうです。

しかし!!

これまで、色々な戦国系の展覧会でも、「井伊家」のアイテムが特集された展覧会はあまり見たことがありません。(浜松や彦根、京都といったご当地は別として)しかも、ドラマと連動したアイテムも多数出ていますので、「おんな城主 直虎」ファンには見逃せない展示です!!

▼南渓瑞聞頂相
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井伊谷・龍潭寺所蔵 絹本着色 一幅
(展示は~7/17まで)

ドラマでは小林薫さん演じる「南渓和尚」の人物画です。井伊家の家督相続者が相次いで亡くなった際、直虎の家督相続を強力に後押ししました。いわば、江戸末期まで連綿と続いた井伊家興隆の大本はこの南渓和尚のおかげだったのかもしれませんね。

▼井伊直虎・関口氏経連署状
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浜松市指定文化財 浜松・蜂前神社(浜松市博物館保管) 紙本墨書

本展で唯一出展されている、井伊直虎直筆と花押が確認できる古文書です。今川氏や井伊氏の中で政争の具となり、扱い方によっては井伊氏を滅ぼしかねない微妙なイベントとなった、今川家から押し付けられた「徳政令」でしたが、最終的にこれを実施する旨を通達した文書です。1568年、今川氏が滅亡する直前のことでした。

▼朱地井桁紋金箔押旗印
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彦根城博物館(井伊家伝来資料)絹製

1582年、徳川家康は宿敵武田氏を滅ぼします。家康は、その際に組み入れた武田旧臣を、井伊直政の直下に配属させました。これと同時に、武田兵法を採り入れ、直政部隊の甲冑・武具を朱色で統一することにしました。これが、「井伊の赤備え」の始まりです。

今回出展されたこの旗印は、関が原の戦いに使われたとされるものです。400年前に使われたにもかかわらず、非常に状態も良く見ごたえがありました。旗に金箔も押してあるので、まだ新しかった当時は、ものすごく目立ったでしょうね。

みどころ2:戦国大名の甲冑・刀剣・合戦道具

さて、戦国大名を特集する展示で一番花形なのは、レアな甲冑や刀剣類の展示です。最近特に外国人が多くなった東京国立博物館でも、甲冑・刀剣の周りはいつも外国人(・・・と刀剣女子)で賑わってますからね。

今回の展覧会も、やっぱり武具や合戦道具は非常に迫力があって、見応えがありました。戦国期の甲冑や武具は、実戦で発展していっただけあって、個性も見栄えも素晴らしいのが多いですよね。幾つか紹介してみたいと思います。

▼鉄板札紅糸威五枚胴具足
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静岡県指定文化財 静岡・富士山本宮浅間大社 一領

武田勝頼が駿河国一宮、富士山本宮浅間大社に奉納したという胴丸です。すっかり色あせてしまっていますが、さすがは武田氏、「赤」を基調とした仕立てが印象的でした。

▼徳川四天王の甲冑・具足がずらり!
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徳川氏を支えた忠臣達のうち、特に武勲を立て、家康の下で一気に頭角をあらわした武将は、いつしか後世になって「徳川四天王」と呼ばれるようになりました。その4人とは、酒井忠次・本多忠勝・榊原康政・井伊直政の4名ですが、ここで直政以外の四天王の胴丸・具足をまとめて展示しています。(左:酒井/中:本多/右:榊原)

それにしてもすごい兜ですよね・・・めちゃ重そう。

▼徳川家康の脇差
(脇差 銘 備前国住長船勝光宗光備中 於草壁作)

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重要文化財 日光東照宮宝物館所蔵 一口

室町時代中期の刀工、勝光・宗光兄弟が作刀した古代刀。こうした戦国大名が所蔵した名刀類もかなりの数が出展されています。刀剣ファンにもたまらないだろうなぁと思えるラインナップでした。

▼銅鑼(左)
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▼箙(えびら/左)、采配(右)
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武将の使う陣中道具なども、非常に良い保存状態のものが展示されていました。特に、徳川四天王の一角、榊原康政が愛用していたとされる、矢を入れて腰に身に着ける箱型の収納具「箙(えびら)」は初めて見ました。固めて展示されていますので、お見逃しなく!!

みどころ3:古文書や美術品も充実!

そして、歴史マニアが楽しみにしているのは、武将同士の密書や書状などの古文書。大名によって個性がそれぞれ違っている文末の「花押」を見ると、結構わくわくする歴史ファンも多いのではないかと思います。

本展では、徳川家康、今川氏真、徳川秀忠など、歴史に名を残すメジャーな大名が直接書いたとされる書状類が沢山展示されています。読めなくても、現代語訳がちゃんとついていますので、ご安心を!

▼現代語訳も完備!大名たちの書状f:id:hisatsugu79:20170711095945j:plain

そして、各種合戦図屏風もかなりの数が出展されており、見どころたっぷりです。特に今回の展示は、「赤い甲冑」を着た井伊直政の軍勢を探すのが楽しいですよ!

▼関ヶ原合戦図屏風
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個人的には一番印象深かった「関ケ原合戦図屏風」。井伊直政の軍は、赤いし、旗印が「井」と書かれていて非常に分かり易いです。この屏風では、井伊直政の軍が作品の真ん中に東軍の主力として描かれていて、その奮闘ぶりが伝わってきます。

みどころ4:撮影OKコーナーもあります!!!

最近は、SNSの発展に伴って、いろいろな展覧会で写真撮影ができるようになってきています。今回の展覧会でも、「井伊氏」ゆかりの人々の彫像・肖像画を中心に、数点のアイテムが撮影可能になっており、「写真OK!」エリアが区切られて設けられています。これは良い措置ですね!

▼撮影可能エリアが明示されているf:id:hisatsugu79:20170711095742j:plain

▼撮影可能エリア
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3.グッズ類が充実!

江戸東京博物館は、特別展でのグッズ販売が非常に充実しているんですよね。今回の特別展でも、井伊直虎の地元、浜松のお土産会社のご当地ものから、定番の図録・絵葉書類まで幅広く準備されていました!

▼図録(会場限定販売!)
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今回の図録は、僕も入手したのですが、非常にクオリティが高いです!カラー写真で網羅されているのはもちろん、説明文もカラーで上手く整理されていますし、巻末には彦根・浜松の井伊氏ゆかりのご当地訪問マップまでついていました。表紙のデザインもかっこいいし、久々に「いい図録だな」と思いました。

 ▼クリアファイル・絵葉書など定番グッズ!f:id:hisatsugu79:20170710234625j:plain

クリアファイルや絵葉書、メモ帳、マスキングテープといった定番グッズは全部完備していました。

▼お米キューブ(2合炊き)f:id:hisatsugu79:20170710234728j:plain

珍しかったのは、最近たまに土産屋で見かける「無洗米のお米キューブ」パッケージを解いたらそのまま炊飯器に放り込めば良いので、お手軽なおみやげとして女性に人気が高い商品ですが、今回は井伊氏にちなんだ「井伊谷」周辺のブランド米のキューブが置いてあります。これはいい!

▼ご当地、浜松のお土産!f:id:hisatsugu79:20170710234820j:plain

また、浜松の地元お土産業者のお菓子も充実!瓦せんべいのパッケージはかわいくて良い感じですね。

 ▼ダンボールのよろい
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今回、一番おもしろかったのは、ダンボールで自作できる「かみの鎧」!子供の夏休みの自由研究の工作なんかにもいいかも!

4.混雑状況と所要時間目安・その他注意点

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現在のところ、土日も含めて割りとスムーズに入れる状況です。作品件数は120件と、それなりの点数がありますし、ビデオ映像コーナーも2箇所ありますので、所要時間は90分~120分くらいでしょうか?

ただ、常設展と合わせてチケットを買うと、物凄いコンテンツ量がありますので、1日がかりになります(笑)全フロア見て回りたい!という方は、是非1日あけてゆっくり回ってみて下さい。館内のレストラン・喫茶店も複数ありますし、両国駅前の「江戸NOREN」に足を伸ばしてもいいかもしれませんね。

1点、来館する前に注意したい点としては、館内は作品保護のため、かなり冷房が利いているため、体温調節には気をつけたほうが良さそうです。寒いです!真夏の炎天下での35度から、企画展示室内は一気に20度くらいまで下がります。僕は、内覧会中に急にお腹が冷えて、しばらくトイレへ緊急避難しましたから^_^;

5.関連書籍・資料などの紹介

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展覧会会場の最後の物販コーナーでも、山のように解説本が置かれているのですが、却ってありすぎてわからないくらい(笑)そこで、井伊直虎や、彼女(彼)の生きた戦国時代についてわかりやすく解説されていて、かつ展覧会と相性の良い書籍を3点に絞って紹介したいと思います!

おすすめ1:ムック「女城主・井伊直虎と徳川四天王」

「おんな城主直虎」だけでなく、養子の直政を含め、徳川家康に仕えた「徳川四天王」まで細かく特集したムック本。「徳川四天王」のレアアイテムを扱っていた本展と親和性の高いコンテンツに仕上がっています。

おすすめ2:ムック「おんな城主 井伊直虎と井伊直政の真実」

こちらも、「直虎」の生涯だけでなく、その養子「直政」にもしっかりと焦点を当てて、割りと幅広い年代に渡って特集が組まれているムック本です。情報量も非常に多く、読み応えがあります。

おすすめ3:小説「高殿円/剣と紅」

「おんな城主 直虎」の直接の原作本ではありませんが、2015年の時点ですでに文庫化され、井伊直虎を女性として扱ったフィクション作品の中では一番評判が高い本です。(Amazon評価集計による)時代考証もしっかりした良作です。大河ドラマとはまた少し雰囲気が違う「直虎」をぜひ味わってみてください!

その他の関連資料はこちらから!

その他、Amazon、楽天でそれぞれ、大量に「直虎」関連の書籍やグッズ類が発売されています。こちらのリンクから関連資料が買えます!もしよかったら使ってみて下さい!

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6.まとめ

夏になり、撮影も佳境を迎えている大河ドラマ「おんな城主 直虎」ですが、本展の展示内容を見ると、井伊直虎や直政は、激動の厳しい時代を懸命に生き抜き、後世に自分たちの血脈をつないでいったんだな、ということがよくわかります。

子供の夏休みの自由研究にもぴったりのテーマです。是非、数々の貴重なアイテムをチェックしてみて下さい!
それではまた。
かるび

展覧会開催情報

「おんな城主 直虎」特別展 戦国!井伊直虎から直政へ は、東京展のあと、静岡県立美術館、彦根城博物館と、井伊家にゆかりのある”ご当地”2箇所を巡回予定です。会期がそれぞれ短めなので、タイミングを見逃さずに見に行ってくださいね!

◯美術館・所在地
江戸東京博物館 1階特別展示室
東京都墨田区横網1-4-1
◯最寄り駅
・JR 総武線「両国」駅西口、徒歩3分
・都営地下鉄大江戸線「両国(江戸東京博物館前)」駅A3・A4出口、徒歩1分
・都バス:錦27 ・両28 ・門33系統「都営両国駅前(江戸東京博物館前)」下車、徒歩3分
・墨田区内循環バス「すみだ百景すみまるくん・すみりんちゃん (南部ルート) 」
 「都営両国駅前(江戸東京博物館前)」下車、徒歩3分
◯会期・開館時間・休館日
2017年7月4日~8月6日
午前9時30分~午後5時30分
(土曜日は午後7時30分まで、7月21日(金)、28日(金)、8月4日(金)
は午後9時まで開館)※入館は閉館の30分前まで
休館日は7月18日(火)、24日(月)、31日(月)

◯公式HP
戦国!井伊直虎から 直政へ - 江戸東京博物館
◯Twitter
https://twitter.com/edohakugibochan
◯展覧会の巡回先

■静岡県立美術館
2017年8月14日~10月12日
■彦根城博物館
2017年10月21日~11月28日