かるび(@karub_imalive)です。
先日、友人とお酒を飲んでいて聞かされたグチが、「何を買うにも社内で稟議書を出さなきゃいけなくて、なかなか通らなくて社内の古い体質にイライラする」ということでした。
まぁ、ありますよね。日本では、大手から中小まで様々な組織体で、「稟議書」はある種日本企業の「非効率な業務プロセス」を象徴する制度として存在しているような気がします。
僕の前職でも、この「稟議書」は強敵でした。典型的なオーナー企業で、オーナー社長は指導力はあるんだけど、とにかくケチでした。だから、5000円とか10000円の文房具一つ買うにしても、稟議書をわざわざ書いて役員決裁を仰がなければならないわけです。しかも中小企業のくせに承認印欄がやたらと多くて面倒でした。
今日は、そんな日本の古き好き(悪しき?)伝統である「稟議書」について、どうすればもっとスムーズに通るようになるのか、僕の経験も踏まえて柔軟に考えてみたいと思います。
0.稟議書って何なの?
とは言っても、会社に入ったばっかりの若い人は、稟議書(りんぎしょ)という文書の存在自体も知らない人が多いと思います。まずは簡単に定義をおさらいしたいと思います。
稟議書とは、日常業務において物品やサービスを購入したり、意思決定をしたりする際に、会社の承認を得るために起案されるドキュメントのことです。
会社によっては起案書、伺い書などと呼ばれることもありますね。
一般的に会社組織では、コンプライアンスや企業統制の観点から、特にお金のからむ意思決定をする際は、会議の議事録など、実行を担保するためのエビデンスが必要です。稟議書は、これを回覧・承認するワークフローを回すことで、会議を開催するまでもない日常的な業務の意思決定を効率よく回していく手段とされます。
・・・。
・・・あくまで定義上は。
1.しかし稟議書はめんどくさい
1-1:たくさんの承認印をもらわないといけない
そう、定義上は会議を省略して効率よく業務を回すための仕組みなんですが、これがまぁ会議以上に面倒なんですよね。日本企業の意思決定の遅さは、まさにこの「稟議システム」にあるんじゃないかって思えるほど、ダラダラとなかなか進まない。
なぜかと言うと、決裁承認が下りるまで、指揮命令系統上のほぼ全員のハンコをもらわなきゃいけないからです。僕は、ITシステム開発業にいたのでいろんなエンドユーザーと仕事をしましたが、一番ひどかったのは銀行系企業です。
彼らから実際の内部文書を見せてもらいましたが、印鑑欄が、ざっくり横一列に10人分くらい。どれだけ承認印がいるんだよ!と。
稟議書が別名「スタンプラリー」と言われてしまうゆえんであります。
1-2:仕事をすすめる際のボトルネックになることが多い
稟議書の大半は、実際のところ「モノやサービスを購入する」際に作成されます。
でも、今日や明日じゅうに購入しないと仕事が進まないのに、社内規定上稟議対象物件となってしまい、稟議書が承認されるまでは仕事に手を付けられない。お客さんとは全部打ち合わせが終わっているのに、社内の稟議手続きがボトルネックとなって資材購入や社内承認が遅れてプロジェクトが進まない・・・そんな経験ってありませんか?
僕も、過去何度となく、プロジェクトの進行の際に「稟議書」の承認が下りなくて仕事が止まったことがありました。でも納期は決まっているので、泣く泣く自腹を切って物品を購入し、強引に仕事を進めちゃう・・・僕はそんな経験も数えきれないほどあります。(ひょっとしたら会社はそれが狙いなのではと邪推したこともあった)
ある時、これではいかん!と思って、一念発起しました。そして、自分なりに色々工夫した結果、正攻法的な方策から、セコい裏ワザみたいなものまで、素早く稟議書を通すいろんな技を習得してきました。以下、僕が「稟議書」を効率的に通すためにやってきたことを、書いてみたいと思います。
2.稟議書を通すための基本技
2-1:アカの他人に読ませる想定で丁寧に書く
実のところ、稟議書を提出しても記載事項不備で却下されて失敗する大半の理由が、まず「背景や経緯の説明不足」に起因するものが非常に多いのです。
稟議書は、「現場の事情を全く知らない人」が多数読み、承認プロセスに加わるという特徴があります。自分の上司くらいはさすがに自分が何をやっているか把握はしていますが、その上の部長や事業部長、さらには本社の決済部門(経理や総務)や、決済担当の役員などは、あなたが今取り組んでいる仕事内容のことなど、全く把握していないのですよね。
そんなまっさらな彼らに稟議書を読ませ、かつ費用計上のための正当な理由を納得させなければならないのです。起案する側は、なぜその物品やサービスを購入しなければならないのか、120%位のわかりやすさで書かないと、まず伝わらないと考えたほうがいいでしょう。
普段、その対象業務にどっぷりつかっていると、自分の中では事情が完璧にわかっていることから、つい書類上での説明が足りず、却下されてしまう傾向があるようです。
2-2:箇条書きで書く
したがって、稟議書にはできるだけ詳細に記載した方がよいのですが、ダラダラ文章をつなげて書くと、今度は長くなりすぎて、読み手の印象が悪くなってしまいます。
だから、記載事項は、ナンバリングと箇条書きを多用して、分かり易く整理したほうが良いでしょう。そして、箇条書きをするなら、理由はメインの2つか3つに絞るのが大事です!
たとえば、こんな感じでしょうか。
稟議書記入例:
ナンバリングと箇条書きを多用することにより、なぜだかそれなりにまとまっているように見えてくるという一種の「ハロー効果」もあるのですよね。
2-3:費用対効果を明示する
これは上層部の社員への対策です。経営陣は、その仕事柄、投資や経費使用については必ず費用対効果をチェックする癖があります。だから、無理やり、予測値なんかでもいいので、これを投資すれば、これだけの利益が上がります!と、「もうかるぜ!」「お得だぜ!」という数字での分析を書くことが何よりも大事!
稟議書記入例:
2-4:予算範囲内であることを強調する
最近、基本的にコンプライアンスや企業統制の観点から、社内の経費予算や営業予算との整合性を確認されるケースが多くなっています。あとで社内監査等で、重点的にチェックされちゃうからですね。
よって、提出した稟議書が予算内に収まっているなら、「予算範囲内」である旨をアピールしましょう。予算がない場合は、無理矢理でもいいので「雑費」とか、他の項目から予算根拠を引っ張ってくるといいと思います。
稟議書記入例:
2-5:提出する前に、誤字脱字や文字切れをもう一度確認!
稟議書が出来上がったら、提出する前に「印刷して」読み返し、「てにおは」の間違いや、誤字脱字、また印刷切れ全部つぶしておきましょう。また、Excelフォーマットなどでは、画面上では入力できていても、印刷したら切れて見えなくなるケースも多々有りますからね。
日本企業のイケてないところですが、Webでワークフローを回しているのに上層部はなぜか紙媒体で決裁したりします。その際に、「印刷が切れているから却下!」となったり、あるいは、誤字脱字があるからって、平気で「やる気が足りない!却下!」と承認してくれないタイプの上司がいます。
一瞬殺意が芽生えますが、だからといって「それぐらいいいじゃないですか!」といっても通用しない場合が残念ながらほとんどですよね。
提出前の見直し、すごく大事です。
3.稟議を通すためのフォローアップや裏ワザ
とはいえ、稟議書の基本事項を丁寧に詰めたところで、なぜかそれでも稟議書というものは理不尽な理由で却下されて戻って来ることが多いのです。それがザ・日本企業というもの!たまたま役員の機嫌が悪くて・・・とか、役員のデスクの上に3週間寝ていて・・・とかザラにあります。
そこで、上記の基本技に加え、稟議書を提出する前後にもうひと手間を加えることで、稟議書の承認プロセスをスムーズに回すことができます。ある意味、稟議書は書いて提出したら終わり!というのではなくて、書いた後、あるいは書く前が本当の勝負なのですよね。
以下、フォローアップのために効果のある応用技・裏ワザを紹介しますね。
3-1:提出後、決済権者全員に社内電話で念押しと進捗確認
例えば、稟議書の印鑑決済欄に、「部長」「事業部長」「総務部」「役員」と4つ印鑑があったとします。急ぎの場合は、印鑑を押印するこの4名全員に、電話か口頭で早期決裁の重要性を下手に、丁寧に伝えましょう。
すごくダサいことを書いていることはわかります。でも、これは本当に効果があります。なぜなら、電話を受けてお願いをされた側は、悪い気がしないからです。「おぉ、まぁ仕方ないな。そこまで言うなら検討してやろう」的な感じで、自己重要感が増して前向きに考えてくれるようになるからです。
「だったら稟議の必要なんかないじゃん!」と思うかもしれませんが、それがザ・日本企業の現実です。使える技は割り切って使う、ということでやってみましょう。
3-2:最終決済権者にメールや口頭で事前承認をもらう
部下「社長、今日の会議での決定事項ですが」
社長「おぉ、稟議上げといてくれ。承認するから」
部下「では、稟議書に”社長事前承認済”って書いていいですか」
社長「いいよ」
理想はこんな感じ。こうなるともう稟議書の意味ってなんなの?って思うかもしれませんが、それはそれ。割り切って、最終決裁権じゃに口頭承認をもらっておき、それを稟議書に「◯◯社長事前承認済み」などとガッツリ書いてしまうのです。
稟議書記入例:
すると、間に入った部長やら総務の人たちも、面白くはないのであれこれいいますが、社内の力関係から決裁を進めざるを得なくなるので、結果としてスムーズに稟議が下りる、という算段です。
もちろんできる範囲で構いません。僕の現役時代は中小企業だったので社長と直接話ができましたが、大企業なら事業部長クラスまでが一杯一杯かもしれません。できる範囲で、アタマを押さえて、稟議書に事前承認を頂いている旨を記載するのは効果があります。また、「社長にOKもらってるので、通しておいてもらえませんか」とスタンプラリー中間の人たちにも電話やメールでフォローアップするのも効果がありますよ。
3-3:あいみつは効率よく!
稟議書を通す際に、社内規定で、「物品を購入する際は、必ず2つ以上の業者に相見積もりや値下げ交渉をすること」となっている会社も多いかもしれません。
こういった交渉プロセスも、じわじわと時間を食うばかり。ダルくてやってられないことも多いですよね。あるいは、値下げ交渉相手を真面目に絞りすぎても、結局相手は値段相応のサービスしか返してくれず、安かろう悪かろうになってしまうことも多いです。
そういう時は、予め購入先の業者さんに「御社に決めますから、見積書は、日付を変えて2枚出してください」と、値引き交渉をした体を演出してもらうように依頼しておくと良いです。「あぁ、そういうことなら協力しますよ」と、喜んで2枚出してくれることがほとんどです。
3-4:添付資料は大盛り、山盛りで!
稟議書を提出する際、記載事項の根拠となるような参考資料や、見積書など、添付資料を提出する事が多いと思います。
これは、決裁担当の役員の性格にもよりますが、参考資料は多めにドサドサつけたほうが「一生懸命やってる感」がアップして、スムーズに通る確率が上がることが多いと思います。
また、本命となる根拠資料の記述内容が弱い場合は、目くらましにもなるんですよね。資料が多いと、見る側も必ず一つ一つの資料に対するチェックが甘くなります。結果として、根拠に穴があっても決裁者が気づかず通してくれる、ということもよくあります。また、甘い決裁権者なら「ちゃんとやってるんだろ?大丈夫だよな?」とか言われて、中身も見ずにめくら判を押してくれる確率も高まります。
したがって、これは本当に必要悪であるのですが、少しでも根拠資料としてつけられる資料があれば、たっぷりつけた方が良い場合があるのです。
まとめ
ここまで書いてきて、ほんと稟議書って不毛だよなって思いますが、だけど大半の読者の皆様は、会社の経費予算を自由に使える立場ではないはず。稟議書みたいな社内処理は早々に最小限の工数で切り上げて、実質的な仕事に打ち込めたほうが絶対いいと思うんです。
そのためには、多少の裏ワザなども使って、稟議書作成作業は効率化しておくべきです。やりたいことがあるのに、社内の事務処理で足をすくわれて、、、っていうのが一番ストレスもたまるし、よくないのです。
一番は「稟議書」そのものが効率化・簡略化されて、企業体質の改革やプロセスの効率化がなされるなど本質的な改善が必要なわけですが、しばらくは日本企業ではそれは望めないでしょうから、ちょっと現場で使える小技や裏ワザについて書いてみました。
少しでもお役に立てれば幸いです。
それではまた。
かるび