あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【ネタバレ有】映画「スター・トレック BEYOND」の感想とあらすじを徹底解説!美麗なCGとアクションシーン、クルー達の成長と友情に酔いしれました!

かるび(@karub_imalive)です。

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10月21日、「スター・トレック BEYOND/スター・トレック ビヨンド」が公開されました。2009年からのJ・J・エイブラムズによるリブート作品「ケルヴィン・タイムライン」第3弾。SF映画は大好きなので、待ちきれず公開初日に行ってきました。

早速、以下感想を書いてみたいと思います。

1.映画館の様子

最寄りのシネコン、ユナイテッドシネマ豊洲の初回に行ってきました。今回は特にアクションシーンが多めだろうと予想し、4DXデジタルシアターを選んで大正解。

お客さんは、明らかに年齢を重ねた男性のディープなトレッキーたちが多かったように思います(あ、自分もか/汗)。平日朝一の上映にしてはかなりの客入り。

2.映画の基本情報

<オフィシャル予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

2007年にリニューアルされて始まった「ケルヴィン・タイムライン・シリーズ」では、過去2作、『スター・トレック』『スター・トレック イントゥー・ダークネス』に続いての3作目となります。今作は、過去2作で監督を務めたJ・J・エイブラムスは制作総指揮へと一歩退き、新たに「ワイルド・スピード」等で監督を務めたジャスティン・リン監督を迎えての新作となります。

US版の予告も面白いです。英語がわからなくても、映像だけでも合わせて見ておくとあらすじがより把握しやすいかも。

<US版予告動画>

動画がスタートしない方はこちらをクリック

【映画公開日】2016年10月21日(金)
【制作】J・J・エイブラムス
【監督】ジャスティン・リン

3.映画を楽しむための最低限の事前知識

一応、今作はまったく事前知識がなくても楽しめますが、最低限、スター・トレックの世界観を把握しておくとより楽しめると思います。簡潔にポイントを示します。

3-1.ケルヴィン・タイムラインとは

スター・トレックは、1960年代から13作の映画と、700話以上のTVシリーズが断続的に制作されてきました。そのすべてのシリーズにおいて、世界観と時間軸を共有しており、一応どの作品から見ても、矛盾なくすべての映画・TVシリーズを楽しめるようになっています。

今回、2009年からリブートされたエイブラムスの新シリーズでは、60年代のオリジナルとは違う並行宇宙で、カークの父親の名前にちなんで名付けられた「ケルヴィン・タイムライン」上でのストーリーとなります。

3-2.10秒でわかる、過去2作の超簡単なあらすじ

スター・トレック(2009)

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故郷の星を連邦に破壊され、連邦への復讐に燃えるロミュラン族の王、ネロとスポック(オリジナルタイムライン)は、ブラックホールに吸い込まれ、違う時間軸=ケルヴィン・タイムラインに飛ばされてしまいます。飛ばされた平行宇宙でもネロは復讐を企て、カークの父親であるケルヴィンを殺害します。成長したカークは、ケルヴィンの上司パイク船長の誘いで宇宙艦隊に入隊します。復讐に燃えるネロは、さらにスポックの住むヴァルカン星も消滅させてしまいます。ネロの捕虜となったパイク船長を、スポックとカークで協力して奪還し、カークはエンタープライズ号の船長となるのでした。

スター・トレック イントゥー・ダークネス(2013)

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惑星ニビルの任務でニビル星人に宇宙船を見られてしまい、エンタープライズ号の船長を解任されるカーク。悪役は、クリンゴン星人との戦争を企てる連邦のマーカス提督に冷凍保存状態を解かれ、野放しになった遺伝子改良されたスーパーヒューマンのカーン。人類への復讐のため、地球でテロを起こし、宇宙へ逃亡したカーンを追ったカーク達は、悪戦苦闘しつつ、再びカーンを冷凍状態へと封印するのに成功。任務を終えたエンタープライズ号は、新たな5年間のミッションへと旅立つのでした。

3-3.今回の主な新キャラ2名

女戦士ジェイラー
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カーク達が乗るエンタープライズ号が墜落した惑星に住む原住民の異星人。秘密基地のような家で一人暮らし中。カーク達を助け、物語に深く関わるキャラクターとなる。

クラール
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今回の悪役。物語の後半になるにつれて、彼の意外な素性が明らかになる。顔つきも服装も、明らかに悪役っぽいところもスター・トレックらしい設定です。

4.あらすじ(ネタバレなし)

新たな5年間の宇宙探索ミッションのさなか、見知らぬ星系から遭難信号を受けたカーク達は、救助を試みて、交信不可の星雲の中へと誘い込まれてしまう。そこで、圧倒的なパワーを持つ未知の敵の前に、USSエンタープライズ号は破壊され、クルーは全員脱出し、近くの未知の惑星へと不時着する。

クルー達は、少人数のグループにバラバラになってしまい、スポックはボーンズと、カークはチェコフと、そしてウフーラは敵のアジトの中にとらわれるのだった。そんな中、スコッティはジェイラーという少女に出会い、物語は佳境へと進んでいくのであった・・・。

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5.あらすじ完全版(★ネタバレあり注意)

前作での超人ヒューマノイド、カーンとの戦いが終わり、新たな宇宙探索に出掛けて3年目となったある日。カーク船長(クリス・パイン)は、ティナクシ星人とフェノピアン星人との平和条約に立ち会っていた。

カークは、フェノピアン星人からの平和の贈り物として、ある古代の珍しいオーパーツのような人工遺物をティナクシ星人に渡そうとするが、ティーナクシのリーダーは、それを一種の武器とみなし、一斉にカークに襲いかかる。調停が不備に終わったことを悟ると、カークはスコッティ(サイモン・ペグ)にあわてて指示を出し、USSエンタープライズへ転送されて戻ってくるのだった。

連邦本部への報告が終わると、その晩、カークはチェコフ(アントン・イェルチン)が持ち込んだウィスキーを飲みながら、ボーンズ(カール・アーバン)と休憩室にてカークの誕生日の前祝いを二人だけで祝うのであった。あと2日で、カークの亡き父より1歳年を取ってしまうと感傷にひたるカーク。

そこへ、遭難信号を受信したと司令部から連絡が入る。解析してみると、仲間の船がアルタミド星系で遭難してしまい、救助して欲しいとのこと。一旦、宇宙連邦最大級のヨークタウン基地に補給のため停泊してから、救出に向かうことに。

ヨークタウン基地では、USSエンタープライズ号のクルーは、つかの間の休暇を楽しむのであった。スールー(ジョン・チョー)は、パートナーの男性と子供との家族団らんを楽しむ一方で、スポックは、前作に引き続き、ウフーラ(ゾーイ・サルダナ)との関係がまたもおかしな状態に。別れを切り出されたウフーラはスポック(ザカリー・クイント)にもらったネックレスを返そうとするが、スポックは、ヴァルカン星では、一度贈り物として渡したアイテムは返さないものだと主張し、ネックレスの返却を断るのだった。

別れに悩むスポックにさらに追い打ちをかけたのが、スポック大使(リブート1作目で違う平行宇宙から飛ばされてきた)が亡くなったという知らせだった。

また、長旅の徒労感から、カークはパリス提督に、5年間の旅が終わった後、USSエンタープライズを下りて副提督へと進みたい旨を進言するのだった。

補給が終わると、遭難信号を送ってきていたカラーラというエイリアンと合流し、エンタープライズ号に同乗させ、アルタミド星系へカラーラの仲間の救出に向かうが、アルタミド星系の近くで、見知らぬエイリアンの大群に襲われてしまう。

応戦するも、圧倒的な火力の前になすすべなくやられていくUSSエンタープライズ。やむを得ずワープして逃げようと企図したが、エイリアンにワープナセル(船についているワープ用のウィング状の装置)を破壊されてしまい、ワープも不可能に。エンジンを最大にして逃げようとするも、さらに艦橋部分とエンジンを切り離されてしまい、エイリアンが船内へと侵入してくる。エイリアンのボスは、クラール(イドリス・エルバ)といい、カークがティナクシ星人に贈り物として渡そうとした古代のオーパーツ「アブロナス」を船内で探し求めていた。クラールは、船内でアブロナスの容器を見つけるも、中には何も入っていなかった。なおもアブロナスを探し、カークを殺そうとするクラールだったが、ウフーラが自らをクラールの捕虜になるリスクを負いつつも、カークを逃がすことに成功する。

やむを得ずエンタープライズ号を捨て、生存中のクルー全員がアルタミド星系の惑星へ脱出ポッドで不時着することに。しかし、不時着したクルーたちは、バラバラになってしまう。

スポックはボーンズと、カークはチェコフ、カラーラと、そしてウフーラとスールーは敵のアジトの中にとらわれるのだった。そして、スコッティは1人でうろついていたところ、エイリアンに襲撃されてしまう。その時、ジェイラーという原住民の異星人の少女に助けられ、ジェイラーに頼まれ、エンジニアとして機械を直すことに。行ってみると、ジェイラーの家は、100年程前に建造され、この星に不時着していたUSSフランクリン号のコックピット部分だった。ジェイラーは、100年程前にこの星に不時着したUSSフランクリン号を見つけて、星を脱出するために船体をにホログラムシールドをかけて隠した上で、密かにメンテナンスを続けていたのだった。

墜落時、艦橋(円盤部)に乗っていたカークは、チェコフ、カラーラと不時着したが、カラーラがエイリアンの襲撃について何か知っていることを隠していたのではないかと疑い、カラーラを本当の意図は何なのか、何者なのかを尋問する。すると、カラーラは、エイリアンに捕まり、仲間を救うため仕方なくそうせざるを得なかったと言い訳をした。

カーク達は、残った武器を探しに墜落したエンタープライズの艦橋部へ行ってみるが、そこでチェコフが、カラーラがエイリアンのボスであるクラールと通信を行っていたことを傍受し、カラーラはエイリアンのグルであることが判明する。艦橋部で、エイリアン達と戦闘を行うも、艦橋のエンジンを点火し、カーク達は混乱に乗じて逃げ出すことに成功。一方、カラーラは艦橋部分の墜落に巻き込まれて死亡する。

スポックは、脱出ポッドでボーンズと不時着した際、腹部に重症を負って動けない。ボーンズの介護もあり、何とか回復したスポックだったが、近くの空き家でボーンズに手当を受けている際に、ボーンズに、ヴァルカン星の血を残し、再興するためにウフーラと別れ、この宇宙探索が終わったら宇宙艦隊をやめてネオ・ヴァルカンへ行く予定だと告げた。応急手当を終えたスポックとボーンズは、新たなエイリアンに襲われてしまう。もはやこれまでとなった時に、スポックとボーンズはスコッティのいるUSSフランクリン号へと転送されて助かるのだった。

一方、カークとチェコフは、偶然にジェイラーが仕掛けた侵入者捕縛用のワナにかかっていたところを、ジェイラーとスコッティに発見され、合流することに。スポックがウフーラに贈り物として手渡していた(そして基地で返却を断った)ネックレスから出る微弱な放射性物質を手がかりとして、残りのクルーたちが軟禁されているクラールのアジトが判明。カークは、残りのクルー救出を企図する。ジェイラーは、アジトで家族全員が惨殺された昔の出来事を思い出し反対するも、スコッティに説得されて、救出作戦を手伝うことに。

同じ頃、クラールは捕虜にしたクルーの精気を吸い取り、自らの生命力とする装置で、捕虜としたクルー2名を、他の捕虜となっていたスールー達の前で殺してしまう。さらに、隠したアブロナスを出すように残りのクルーを脅す。すると、シル少尉は頭部に隠していたアブロナスをクラールに手渡すのだった。

クラールは、パーツが揃ったアブロナスを留置場へと据え付け、シルを閉じ込めてアブロナスをテスト起動する。アブロナスは古代に作られた生物兵器であり、クラールは、生涯をかけて2つのパーツを合わせて起動するアブロナスのもう一つの片割れをずっと探していたのであった。アブロナスによって解体されたシルを確認すると、連邦への復讐に燃えるクラールは腹心の部下、マナスを置いてヨークタウン基地へ向かおうとする。

そこへ、カークたちが囚われているクルーたちの救出に現れる。銃撃戦の末、カーク達はマナスを倒し、捕虜となっていた残りのクルーをUSSフランクリンへと全員転送し、最後に残ったカークとジェイラーもフランクリンへと無事に戻る。

ヨークタウン基地でアブロナスを再び起動し、大量虐殺を実行しようとするクラール。この意図を察知したカークたちも、USSフランクリンに乗り込み、クラールを追って、ヨークタウン基地へ向かう。

大量のドローンたちを超短波による妨害電波で連携を妨害し、ヨークタウン基地の手前で撃破したカークだったが、クラールはヨークタウン基地へ単身侵入に成功する。それを追って、USSフランクリンと、ボーンズとスポックの乗る小型ドローンのふた手にわかれ、カーク達とクラールは、市街地で壮絶なチェイスを繰り広げる。結局、中央広場の水場にて、USSフランクリンを盾にして、クラールの乗ったドローンを撃墜することに成功。

USSフランクリン内を探索し、クラールを捕まえようとするカークとウフーラ。と、そこで、ウフーラは、USSフランクリンの100年前の航海記録から、クラールの正体を元USSフランクリン号の船長、バルタザール・エディソンであったことが判明した。さらに、エディソンが残した映像資料から、USSフランクリンは、100年前にアルタミド星で座礁し、救援要請を出すも、電波が届かない星系であったため、連邦からは死亡扱いされており、救援が来なかった。それを恨みに思ったエディソンは、最後まで生き残ったマナス、カラーラとアルタミラ星で生き延びた。先住民が遺した生命力を吸い取る機械で、先住民を次々殺し、人間の限界を超えて寿命を伸ばし、生き延びてきたが、先住民のDNAと融合したり、装置の副作用で顔の形が変わってしまったエディソンは、復讐に燃えるクラールとなったのだった。

復讐のため、アブロナスをなんとしても手に入れたいクラールは連邦政府のコンピュータをハッキングし、そこでカークがアブロナスを手にしたという情報を知り、部下のカラーラを使ってエンタープライズ号をアルタミラ星系へ引き込んだのだった。

しぶとくUSSフランクリンの船内で生き延びたクラールは、クルー2名の精気を吸い取った結果、より人間らしい容貌へと変わり、宇宙艦隊の制服を来て、ヨークタウンの市街地へと紛れ込む。

クラールは給気塔へ向かい、そこでアブロナスを起動させ、ヨークタウン基地全域を滅ぼそうとするが、単身追いついてきたカークと血みどろの戦いになる。クラールはアブロナスを起動させ、給気ダクトへと流そうとするが、その寸前に、カークが吸気ダクトを開放し、アブロナスとクラールは宇宙空間へと放り出されてしまう。カークも放り出されてしまいそうになったが、その寸前、ボーンズとスポックに救出される。

翌日、エンタープライズ号のクルーたちによるカークのサプライズ誕生パーティが行われる。仲間との絆と冒険に見せられたカークは、再び乗船することを決意し、また、スポックも船に残ることを決意する。再建中のエンタープライズ号をみながら、カークはジェイラーを新たなクルーへと勧誘するのだった。

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6.映画の感想(★ネタバレ有/随時更新)

6-1.やはり圧倒的なアクションシーンがメイン

USSエンタープライズ号が圧倒的な火力で破壊し尽くされるシーンや、ヨークタウン基地の未来的な造形は、間違いなく映画の見どころでした。敵艦の大きさやそのファンタジックで未来的な都市の形状。あぁ~これぞSFだ!と素直に圧倒されました。CGの綺麗さは、前作・前前作を遥かに上回る素晴らしい出来。

4DXデジタルシアターが普及した近年、派手なアクションシーンが入りやすいですし、アクションシーンの得意な監督ということで、予想通り、過去2作と比較しても派手なアクションシーンが多めでした。

特に、カークがバイクに乗ってクラールのアジトへ救出に向かうシーンは、これまでのスター・トレックシリーズにはない構図だったと思います。

6-2.ストーリーの伏線や設定も秀逸だった

1作目では、かなり強引なストーリー展開に、個人的には若干ついていけないこともありました。アクションシーンに何の重みもなく、過去作との整合性を取るためだけの仕掛けやストーリーは、リブート1作目だから仕方ないかなと思いましたが、少し辟易しました。

今作は、ストーリーの骨格こそ、「連邦への復讐」に燃えた反逆者との戦い、というテンプレート的な構造でしたが、細かい設定や各キャラクターの描かれ方、伏線の回収は丁寧でした。尺の問題から、やや説明不足なところはありましたが、無駄なシーンはとりあえずなかったと思います。

6-3.スター・トレックシリーズで定番の船の中のシーンが凄く少ない!

今作は、序盤であっさりとエンタープライズ号が圧倒的な敵の火力の前に轟沈してしまい、野外での行動やアクションシーンがメインとなり、「宇宙艦隊」ものに必須のブリッジでのオペレーションシーンが全くないという点は斬新でした。

特に、スター・トレックシリーズでは、この中央司令室でのキャラクターたちの葛藤や、ちょっとしたやりとりまで、定番のお楽しみシーンでもあったので、この司令室でのシーンはもう少し欲しかったかな?

6-4.別れた3組がどう協力し、状況を打開していくかそのやりとり

艦橋司令部でのやり取りがない分、今回の見どころは、エンタープライズが墜落して、ポッドで脱出した各クルーたちのそれぞれの行動が描かれるシーン。野外にて、2人~3人ずつに別れた3組のストーリーが目まぐるしく同時進行で描かれ、シーンの早い切り替わりもスムーズでよかった。

最大の見どころは、互いに性格が正反対のボーンズとスポックの友情です。熱く正義感で感情をむき出しにするボーンズに対して、ヴァルカン人の気質として、生まれながら冷静で、論理至上主義なスポック。この二人が、共通の目的のために不格好ながら激しくぶつかりあいながらも、ガッチリ結ばれた信頼関係の下、協力しあうシーンは良かったと思います。  

7.映画の伏線・設定について(★ネタバレ/随時更新)

7-1.カラーラとマナスって誰だったのか?

二人とも、100年前にアルタミド星へ座礁したUSSフランクリンの最後の生き残り3人のうち、船長だったクラール=バルタザール・エディソン以外の2名です。生き残った3名は、先住民の遺した生命力を吸引する装置を使って、原住民からパワーを補給していましたが、装置の乱用による副作用と、原住民とのDNAの混合により、容貌が人間のものではなくなってしまったのです。

7-2.クラールは、なぜエンタープライズ号にアブロナスがあることがわかったのか

映画冒頭で、カークがディナクシ星人とフェノピアン星人の平和条約締結の仲介を試みた際、フェノピアン星人からの「平和の象徴」として、アブロナスをディナクシ星人に贈ろうとして、誤解されて大失敗しました。その時の記録は、連邦本部にログとして提出されましたが、その一部始終をアルタミド星にてクラールは傍受していたのです。

7-3.クラールは、ヨークタウンに上陸した時、なぜ人間の容貌に戻っていたのか

クロールは、上陸前にUSSフランクリン内で、人間のクルー2名から生命力を吸い出しています。吸い出した人間のDNAがクラールに再び注入された結果、アルタミラ原住民より人間寄りの顔になったと考えられます。また、ヨークタウンの街に紛れ込んだ際、宇宙艦隊の館内服を来ていましたが、これは殺したクルーから奪ったと解釈すれば辻褄があうでしょう。

7-4.クラールが憎んでいたもの、望んだものとは何だったのか

クラールは、連邦への単純な復讐鬼というわけではなく、複雑な思いを抱えていました。彼は、まだ宇宙が戦いにあふれていた時代に軍人として地球を代表して戦いました。そして、通信も届かないアルタミド星系で、連邦に救助されず見捨てられたため、自力だけで生き延び、厳しい逆境を乗り越えて強さを身につけ、強くなることを生きる目的としてきました。

そんなクラールから見て、平和が実現して戦争のないカークの生きる現代は、軟弱で頼りない世界。しかも、自分も変わり果てた姿となり、軍隊も解散してしまった今、彼の戻るべき場所もありません。

「力こそ正義」とする理想の世界を実現するには、より厳しい弱肉強食の世界に逆戻りするしか無いと考えました。そのために、ヨークタウンで生物兵器を使い、殺伐とした世界を作るには、テロによる全員虐殺しかないと考えたのでしょう。

平和に慣れた現代の市民から見ると彼の考え方は狂気そのものではありましたが、彼の中ではロジックは通っていたのかもしれませんね。

7-5.スポックとウフーラはなぜまた破綻しかけていたのか?

前作に引き続き、またもスポックとウフーラとの関係が悪化しています。前作は性格の不一致から来るものでしたが、今回の破綻原因はなんだったのでしょうか?

その理由は、スポックがヴァルカン族を再興するため、その血脈を下に伝えていかなければならないと考えていたからです。地球人とハーフであるスポックが、ウフーラと結婚した設けた子供は、クオーターになってしまうから、これではヴァルカン族とは言えないですよね。愛情よりも民族復興を願った結果、一旦はスポックからウフーラへと別れを切り出していたのでした。

8.その他、映画に関連する考察など

8-1.TVシリーズから続くダイバーシティへのこだわり

スター・トレックは、TVシリーズから含めて、多種多様の人種が、同じ連邦の理念のもと、平和的に協力し合いながら宇宙探索を進めていきます。

特に、今作はスールーが「ゲイ」設定となっていました。ヨークタウン基地で別れる際に、スールーのパートナーは男性でしたよね。養子に子供をもらっていたのでしょう。スター・トレックらしい、良い設定だったと思います。

また、今回の敵役であるクロールは、仮想「ドナルド・トランプ」であるという説がありますね。復讐に燃え、弱い人間を否定し、切り捨てる発言を繰り返したクラールを、人種差別的なトランプ氏に重ねて見たアメリカ人は多かったようです。

実際、映画が公開されてから、公式に制作スタッフ100人がトランプへの反対声明を出すなど、なかなかアクティブな活動をしていますね。(日本では考えられない・・)

8-2.スポック大使はなぜ今作で亡くなったのか

ケルヴィン・タイムラインでも、過去2作で、TVオリジナルのスポックが出演していましたね。1作目は大事なところで、2作目はほんの短い時間でしたが、元気な姿を見せてくれていました。

どころが、今作、スポック大使は亡くなってしまいます。なぜなら、スポック大使役のレナード・ニモイが2015年に亡くなってしまったからなのですね。TVシリーズの大功労者、ニモイに敬意を表して、代役を立てずに、映画でも亡くなる設定にしたのでしょうね。最後のエンディングロールでも、やはり不慮の自動車事故で撮影後に亡くなってしまったチェコフ役のアントン・エリツィンと併せて、手厚い追悼のメッセージが配されていました。

8-3.Amazon社CEOのジェフ・ベゾスが出演している?!

事前にニュースとして報じられていましたが、ジェフ・ベゾスが「エイリアン」役で短時間だけゲストとしてカメオ出演しています。エンディングにも名前が出ていましたし、面白いですね。僕は、とりあえず1回目の上映では見つけられませんでした・・・

ベゾスは熱心なトレッキーで、スター・トレックシリーズに出演するのが夢だったそうです。どうせなら、出演を記念して関連DVDとかグッズとか割引セールとかしてくれないかな・・・。

9.まとめ

今作も、過去2作に引き続いて世界観を共有し、かつ新監督の得意とするチェースアクションもよかった。よく練られたストーリーと、最新鋭のCG技術も楽しめたし、個人的には過去2作よりも出来が良かったと思います。上映中、あと何回か見に行こうかと思っています。良い映画なのでぜひ!

それではまた。
かるび

★スター・トレックBEYONDをより楽しむための資料など!

10月中旬に、スター・トレックBEYONDの封切りに合わせて発売されたスター・トレックの最新読本。全『スター・トレック』シリーズ解説&登場人物+登場した宇宙人を一挙紹介するカタログ代わりにもなる本でした。スター・トレックの世界を体系的に知るための決定版です。おすすめ。

ジャスティン・リン監督へのインタビュー記事、SFマニアの座談会、スター・トレックの役者たちや、ベストエピソードなど、30P以上に渡る総力特集が読めます。さすがSFマガジンだけあり、マニアックすぎる濃い特集でした。

過去作がTVシリーズを含めるとスター・トレックには見きれないくらいありますが、本作を楽しむためには、リブート後の「ケルヴィン・タイムライン」でのシリーズ過去2作を押さえておけばまずはOKです。過去作を見ると、今作「BEYOND」では、明らかにクルーたちの絆が深まり、精神的にも成長した描かれ方をしていることが、一目瞭然です。まだ見ていない人は是非!

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