【2017年4月18日更新】
かるび(@karub_imalive)です。
4月8日に封切られた新作「T2 トレインスポッティング」(トレインスポッティング2)を見てきました。
早速ですが、映画を見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。
- 1.映画「T2 トレイン・スポッティング」の基本情報
- 2.映画「T2 トレインスポッティング」の 主要登場人物とキャスト
- 3.「トレインスポッティング2」結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)
- 4.ストーリーの感想・評価(※ネタバレ注)
- 5.伏線や設定などの考察・解説(※ネタバレ注)
- 6.原作版との相違点まとめ
- 7.見逃すな!パンフレットの出来が秀逸!
- 8.まとめ
- 9.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
1.映画「T2 トレイン・スポッティング」の基本情報
<映画「T2 トレインスポッティング」予告動画>
【監督】ダニー・ボイル(「トレイン・スポッティング」「スラムドッグ・ミリオネア」他)
【配給】ソニー・ピクチャーズ
【時間】117分
【原作】アービン・ウェルシュ「T2トレイン・スポッティング」
音楽、映像が刺激的で、スピード感ある展開や画面カットなどで軽快にストーリーが進んでいくため、あっという間の117分でした。原作者、アービン・ウェルシュも製作総指揮+キャスト出演(ドラッグの売人役)等で積極的に作品製作にかかわったこともあり、本作は前作「トレイン・スポッティング」とストーリーを共有しつつ、小説版原作が全く違和感なく映像化されています。(後述しますが、原作から設定・ストーリーを大幅改変しており、ストーリー自体は限りなくオリジナルに近い)
2.映画「T2 トレインスポッティング」の 主要登場人物とキャスト
トレイン・スポッティングの世界では、幼少時からの腐れ縁で切っても切れない仲となっている主役のスコットランド人4人が主役です。今回は、20年ぶりにレントンがアムステルダムからエディンバラに帰国したことから、再び4人が集結して一騒動起こすまでを描きます。
レントン(ユアン・マクレガー)
前作「トレイン・スポッティング」をきっかけに最も飛躍した俳優となったユアン・マクレガー。本作のレントン役をはじめ、スター・ウォーズでのオビ=ワン役で世界的に知名度を高め、現在はアート系映画から大作ブロックバスター映画まで幅広く出演中です。待機作としては「美女と野獣」で野獣の城のウェイター、ルミエール役で出演予定ですね。
スパッド(ユエン・ブレムナー)
前作では汚物まみれ、ドラッグまみれで目も当てられないジャンキーでしたが、奇跡的に20年間ジャンキーのまま生き延びていました。そしてやっぱり今作でもキツい汚物まみれで登場・・・。ユエン・ブレムナーもユアン・マクレガー同様、20年前の前作が出世作となり、今では100以上の映画作品に名バイプレイヤーとして出演中。待機作としては2017年夏公開予定の「ワンダーウーマン」があります。
サイモン”シックボーイ"(ジョニー・リー・ミラー)
前作同様、悪巧みを思いついて、人を集めて実行に移すところまではいいのですが、いつも何かしらツメが甘く失敗してしまうキャラクターのサイモン。
『サイバ―ネット』共演後に思いつきで(?)アンジェリーナ・ジョリーと電撃結婚した際に、彼女への愛を示すために左腕に入れたとされる一連のタトゥーが本作ではいい感じのチンピラ風に見えて役に立っています。
ベグビー(ロバート・カーライル)
本作随一の狂犬キャラ。前作ではドラッグをやらないにもかかわらず、キレやすくサイコパス的な危険人物でしたが、20年後も危険度は変わりませんでした(笑)精神的に異常なアンチヒーローキャラですが、その抜群の個性に、ベグビーの熱狂的なファンも多いようです。ロバート・カーライルは、その他の映画では優男風のジェントルマンを演じることも多いだけに、本作でのキャラが際立ちますね。
ちなみに、2017年時点では未邦訳ですが、彫刻家となってアメリカに渡ったベグビーを描いたスピンオフ小説「The Blade Artist」が出版されています。
ベロニカ(アンジェラ・ネディヤコバ)
ブルガリア人の新人俳優。ブルガリア以外でのメジャー作品では今回が初めての登場となる。前作「トレイン・スポッティング」公開時は、わずか5歳だったとのこと。オッサンだらけの出演者の中、紅一点で不思議な魅力を放つ女優でした。この作品で今後注目されていきそう。
3.「トレインスポッティング2」結末までのあらすじ紹介(※ネタバレ注)
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3-1.20年たっても変わらない4人の日常
マーク・レントン46歳。現在はアムステルダムに移住し、現地で会計の仕事についている。健康にも気遣い、定期的にスポーツクラブで汗を流す毎日だったが、ある日、レントンがトレッドミルで走っていると、ペースを乱した瞬間に、心臓発作で倒れてしまった。
レントンをはじめ、シックボーイことサイモン、ベグビー、スパッド達4人は、子供の頃から近所で、サッカーで遊ぶ古い付き合いだった。あれから数十年。彼らの現在はお世辞にも順調なキャリアとは言えるものではなかった。
ベグビーは、殺人罪で懲役20年にて刑務所で服役中。刑期の途中で釈放を狙って弁護士に相談していたが、それも不発だった。
スパッドは、若い頃からのドラッグ中毒が治らない。相変わらず、今も昔もドラッグ中毒者のカウンセリングに通う毎日だ。彼は、ゲイルと結婚し、ファーガスという一人息子がいるのだが、彼の薬物中毒のせいで、妻子と別居状態だった。たまの面会にも、サマータイムを勘違いして、遅刻して会えない始末だった。
サイモンは、ブルガリア人の彼女、ヴェロニカと組んで、地元の有力者の痴態を盗撮し、恐喝するブラックなアングラビジネスに手を染めていた。そして、彼もまたドラッグ中毒だった。
そんな中、何とか心臓疾患から回復したレントンが、20年ぶりにアムステルダムからエディンバラに帰ってきた。レントンは、20年前に友人たちとドラッグを売りさばいた儲け16000ドルを持ち逃げしたきり、エディンバラをずっと離れていたのだった。レントンは空港に降り立つと、この20年ですっかり小奇麗に変わった街並みに驚き、まるで自分が外国人のように思えていた。
3-2.レントンの帰国をきっかけに、再び集まっていく4人
レントンが実家に帰宅すると、母はすでに亡くなっていた。レントンの母は、息子をいつも気にかけ、彼の部屋をいつ帰宅してきても良いように、20年前からそのままの状態にしてくれていた。
スパッドは、ドラッグ断ちに何度も失敗し、妻ゲイルと息子ファーガスに対する罪悪感から、遺書を書いて自殺しようとしていた。ちょうどスパッドが自殺を図っていたその最中に、レントンがスパッドの部屋に訪ねてきて、間一髪でスパッドは死に損なったのだった。
一方、ベグビーは一計を案じて、自傷行為で自らの腹を刺して、施設外部の病院へ入院中に、まんまと看守や医師たちを騙して逃走に成功した。ベグビーが自宅に帰ると、彼の一人息子は大学生になっていた。彼と違い、真っ当に成長していたのだった。
スパッドと再会を果たしたレントンは、次にサイモンに会いに、彼の経営するバーへ足を運んだ。久々に再会した旧友たちは、最初は冷静に近況を報告しあっていたが、すぐに殴り合いの喧嘩になった。レントンは、4000ドルをサイモンに返したが、彼の怒りはすぐにはおさまらなかった。しかし、彼の別の計画に、レントンを使ってやろうと考えていた。
レントンは、スパッドを元気づけ、ドラッグ断ちをさせようと、地元の山(アーサーの玉座)にハイキングに出かけた。ハイキングから戻ると、レントンはサイモンと再び会い、本当は離婚して失業中であること、子供もいないことなどを打ち明け、サイモンが計画中のマッサージ店オープンに向けて手伝うことになった。しかし、資金がなかったため、彼らは20年前よくやっていたように、非合法な方法で金を作ろうとしていた。
ベグビーもまた、脱獄したもののやることと言えば20年前と変わらず、窃盗稼業だった。息子を伴い、親子で裕福そうな家に押し入り、家具や換金できそうな貴重品を奪って逃げ、それを業者に横流しするという荒っぽい方法だった。
一方、レントンとサイモン、そしてヴェロニカは、ユニオニスト達のバーに入り、彼らが歌って踊っている隙に、次々と財布から銀行カードを盗み出していった。彼らがバーを出ようとすると、バーのマスターに呼び止められ、1曲歌わされることになった。しぶしぶ、レントンはサイモンにピアノを弾かせ、彼らが喜ぶようなカトリック教徒を貶める即興歌を歌って、怪しまれることなく上手く逃げ出すことに成功した。その後、彼らは銀行に行って、パスワード「1690」で次々とキャッシュを引き出していった。
盗みを終えて、ベグビーの息子は、父親にもう窃盗稼業は辞めて、大学で経営学を学びたいと父親に直訴した。ベグビーと息子は睨み合ったが、息子は父親を睨むだけで手を出そうとはしなかった。ベグビーは、息子を置いて一人で窃盗稼業を続けることにした。
別の日、サイモンは恐喝罪で被害者から訴えられて警察に逮捕された。レントンが、昔一夜限りの関係を持ったダイアンを尋ねると、ダイアンはやり手の弁護士になっていた。今回は、ダイアンのアドバイスによって事なきを得たが、二回目からは高額の弁護料が発生するとのことだった。
サイモンがパブへと戻ると、そこにベグビーが現れた。ベグビーは、レントンの居場所を知らないかサイモンに訪ね、レントンが戻ったら半殺しにしてやると息巻いた。一方、そのころレントンはヴェロニカとふたりきりで食事を楽しんでいた。ヴェロニカがレントンのシャツを見て、意味を尋ねると、レントンは「人生を選べ」と熱っぽくヴェロニカに話しかけた。そして、ヴェロニカとレントンは意気投合し、その日結ばれたのだった。
スパッドは、レントンと山へランニングに出かけて以来、本格的にドラッグ断ちに向けてボクシングを習い、部屋を片付け、そして過去の自分の思い出を振り返って、小説を書き始めていた。
レントン、スパッド、サイモンは、3人で20年前にエイズで亡くなったトミーを追悼するため、昔トミーと行った田舎の草原地帯へと足を運んだ。サイモンはレントンがトミーにドラッグを勧めなければトミーは死ななかったはずだ、とレントンを非難すると、レントンも、彼と彼のガールフレンドが、ドラッグ中毒に浸っているうちに、彼らの子供が餓死させたサイモンに言われたくない、と反論した。
レントンとサイモンは、その後開業資金として、EUの投資組合に開業資金融資許可のためのプレゼンを行った。レントンのこなれたプレゼンテーションのおかげで、彼らはEUから10万ユーロの資金融資を受けられることになった。彼らは、融資が決まったその日、20年ぶりに二人一緒にヘロインを楽しんだ。
3-3.物語の結末~大失敗した計画と裏切り
しかし、喜んだのもつかの間だった。彼らの開業計画を聞きつけた地元のサウナオーナーを務めるマフィアが、彼らを山奥の人目につかないところに連れ出し、計画を中止するように迫った。彼らは、命だけは助かったが、マフィアに身ぐるみ剥がれて裸にされてしまった。情けない姿でほうほうの体で何とかヴェロニカの家に逃げ帰った二人であった。
一方、ベグビーはレントンの居場所を突き止めようとスパッドを締め上げていた。スパッドはごまかしていたが、うっかり20年前に彼だけがレントンから分前の4000ドルを後日受け取っていたことを口走ってしまった。その修羅場に、ヴェロニカがやってきた。ヴェロニカはベグビーに脅され、彼女の携帯電話をベグビーに奪われてしまった。
ベグビーは、ヴェロニカの携帯を使って、レントンとサイモンにサイモンのパブに12時に来るようにメッセージを送った。そうとは知らずパブへ出かけていったレントンとサイモンは、ベグビーと鉢合わせしてしまう。そこへ、スパッドが駆けつけたが、時既に遅し。ベグビーは、サイモンとレントンを追い詰めようとしていた。
サイモンがあっけなくベグビーに殴られ気絶すると、レントンは屋上の部屋へと逃げ込んだが、そこにもベグビーが侵入してきた。ベグビーにより、ロープで窒息死させられようとしていたところ、レントンは息を吹き返したサイモンに間一髪助けられた。なおも追いすがろうとするベグビーを、後ろから便器でスパッドが頭を殴って気絶させ、ようやくベグビーを取り押さえることができた。その後、かれらはベグビーを車の後部トランクに乗せて、ベグビーをもう一度収監させるために警察署の前に車ごと放置して置いてきた。
ヴェロニカは、スパッドに金を持ち逃げしよう、と持ちかけた。スパッドは、自分自身は不要だけど、妻のゲイルと子供のファーガスに金を残したい、とヴェロニカに伝えると、ヴェロニカは後日送金する、と約束した。そして、スパッドは、自らの特殊能力である他人の筆跡を完璧にトレースする能力を使い、レントンとサイモンのサインを真似してヴェロニカに送金手配をかけた。
ヴェロニカは、サイモンとレントンに会うことなく、ブルガリアで待つ母と息子の元へと帰っていった。
スパッドは、彼の思い出を本格的に小説にすることを決意し、最初に書き上げた原稿を別居中の妻、ゲイルに持っていって読ませるのだった。サイモンとレントンは、彼らの計画自体は破綻してしまったが、また旧友同士として今度は本当に仲直りを果たした。
また、レントンは自宅に帰り、父親と抱擁した。そして、自室に入ると、まるで20年前と同じように、お気に入りのイギーポップの「Lust for Life」をかけるのだった。
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4.ストーリーの感想・評価(※ネタバレ注)
4-1.堅実に生きる女性たちと対比して、20年前から変われない4人の男たち
前作から20年が経過して、それなりに生きる知恵をつけてまともな大人になったのかと思いきや、見事に主役4人が4人とも20年前と全く変わらない日常を生きているというシーンが、冒頭からスピーディな展開で紹介されていきます。
4人中3人がまともな仕事に就いておらず、4人の中で一番まとも(になったはず)なレントンでさえ、離婚して失業したら、アッサリ昔のノリで犯罪に手を染めてしまうヘタレっぷり。
弁護士になっていたダイアン
対照的に、女性陣はみな普通に社会で堅実に生きていました。
前作で出てきた女性陣のうち、ゲイルは家計を支えながら1児の母を務め、ダイアンは敏腕弁護士として活躍するなど、現実に適応して社会生活を全うする一方で、不器用でいつまで経っても成長できない中年男たちの厳しい現実が浮き彫りにされていました。ラストで金を持ち逃げするのも女性であるヴェロニカですしね。
エディンバラの路面電車「トラム」。街も清潔になっている
さらに、彼らの出身地であるスコットランドのエディンバラも、不況にあえぎ麻薬や犯罪が横行していた20年前に比較して、明らかに街が清潔で現代的になっているのですよね。市内を走るトラムトレインや、サービスの行き届いた空港、中心地に林立する近代的なビル群(山の上から見えてましたね)など、確実に街も社会も進歩している様子が伺える中、彼ら4人だけが取り残される厳しい現実が浮き彫りとなっていました。
4-2.彼らが直面する中年の危機は他人事ではなかった・・・。
未来などどうとでも開けているように思えた20代の頃、彼らにはドラッグや軽犯罪などで現実を否定して夢の世界に逃避する余裕がまだありました。前作では、そんな退廃的で厭世的、刹那的な彼らの生き様がポップに描かれ、映画内でのファッションや音楽との相乗効果でその世界観が熱烈に支持されたのですが、今作では少し様子が違っていました。
出所して早速強盗稼業に手を染めるベグビー
前作から20年経過して中年になった彼らは、確実に年相応の体力・気力の衰えとともに、人生における選択肢はかなり狭まってきているわけです。ベグビーなどは、刑務所から脱走してまず取り掛かったのが強盗稼業でした。まともな教育も機会も与えられず、出所しても酒を呑むか軽犯罪で稼ぐかくらいしかやることがないベグビーが痛々しい!
もはや部屋でゆっくりドラッグ漬けになっている余裕はなく、彼らにはどうにか行き詰った現実を変えなくては、という切実な思いが生まれていました。まさに中年の危機です。ストリートでドラッグ三昧だったスパッドでさえ、レントンと山でジョギングをして、ボクシングジムで運動を始める始末ですから。
そして、これを見ている僕にとっても、彼らの迎えている「中年の危機」は他人事ではないのですよね^_^;僕も今年で41となり、若い時より明らかに体力は低下していますし、代謝が落ちて太りやすくなりましたし、映画の中の男たちの実情は、他人事ではありません(笑)映画館で回りを見渡すと、周りの観客も40代以上が中心でした。きっと多かれ少なかれ、自分自身と重ね合わせて今回の「T2」を味わった人が多かったのでは?と推測します。
4-3.前作よりコメディ要素が強くなった絶妙のバランス感
むき出しの資本主義格差社会の中で、いわば「負け組」に陥ってしまった彼ら4人が抱える状況は非常に厳しくて、普通に描写すると非常に暗い話になってしまうところですよね。しかし、本作はそれほど暗くならず、むしろコメディ要素が強くなっているのが実に味わい深いところ。
レントンとサイモンが地元のマフィアの親玉に身ぐるみ剥がれて、恥ずかしい思いをしながら帰ってくるシーンや、性的に不能になったベグビーが何とかして”強さ”を取り戻そうとバイアグラを飲んだ結果引き起こされる顛末など、ほとんどコントのようなノリでした。暗くなりすぎず、あくまでポップで軽快に描かれたこのバランス感は凄いなと素直に感服しました。
4-4.懐古だけでなく、明日への希望もきちんと描かれてホッとした
本作は、中年となってしまった4人の今を描きつつ、要所要所で前作の類似シーンやそれ以前の幼少時のエピソードへ立ち返り、20年後である現状との対比を描く懐古的な場面が多かったのですが、それでもラストは4人にとっての「希望」の種もきちんと少しずつ描かれていてよかったです。
小説を書くスパッド
ベグビーは、自身は再度収監されましたが、自分と違う生き方を選択した息子をきちんと認めていましたし、スパッドは小説家として初めてドラッグ以外のまともなキャリアをつかみかけています。
また、レントンとサイモンはラストシーンで再び幼少時以来の屈託のない無二の親友に戻れたのではないでしょうか?お金は持ち逃げされたけど、父親やサイモン達としっかりつながれたレントンはお金以上の貴重な何かを手に入れたのだと思います。
5.伏線や設定などの考察・解説(※ネタバレ注)
5-1.ベグビーはなぜ刑務所に20年入っていたのか?
顧問弁護士と面会中に暴れるベグビー
映画版T2では、単純に「殺人を犯した」とされていましたが、小説版「T2」では、レントンが金を持ち逃げされた際、癇癪を起こしてドラッグのディーラーを殺してしまったと描写がありました。原作だと10年弱で普通に出所してくるのですが、映画版では罪が20年に重くなった上、脱獄するという展開になっていましたね。
5-2.レントンとサイモンがランニングで登った山は?
エディンバラ市街に近い、「アーサーの玉座」という小高い丘です。名前通り、アーサー王伝説にゆかりのある場所だそうです。映画内でもこの丘からエディンバラ市内が一望できる見事な風景が広がっていましたが、エディンバラ周辺ではここが一番標高の高いスポットです。現在では市民の憩いの場や、観光名所として知られているようです。
5-3.ユニオニストのバーでのレントンの即興歌の意味と、なぜ暗証番号「1690」でお金を引き出せたのか?
ユニオニストのバーにレントンとサイモンが盗みに入り、歌を歌わされた時、その場で作った即興歌の中でレントンは「ノーモアカトリック!」と連呼し、バーの観衆はノリノリになっていました。
これは、スコットランド独立に反対するユニオニスト(=イギリス統一論者)の大部分が、カトリックと対立するプロテスタントであるからです。歌の中であったように、1690年の「ボインの戦い」で、プロテスタントのイングランド王、ウイリアム3世はアイルランドに渡って、フランス軍を率いたカトリックのジェームズ2世を破りました。
肖像画も残っているウイリアム3世
熱狂的なユニオニストにとって、1690年のカトリック勢力への勝利は特別記念すべき大切な年なので、ユニオニスト達は大切な銀行カードの暗証番号も「1690」に設定することが多かったということですね。これを逆手に取ったレントン達の軽妙な犯罪劇でした。ご都合主義的な展開ではありましたが、コメディ的な面白い見どころでした。
5-4.なぜ2作目の製作に20年もかかってしまったのか?
原作者のアーヴィン・ウェルシュは、彼らの約10年後を描いた「Porno」(後に「T2 Trainspotting」に改題される)を2002年の段階で完成させていました。そして、一旦はこの「Porno」に沿って脚本も完成していたようなのですが、続編はさらにそこから15年後になってしまいます。
その大きな理由の一つとして、ダニー・ボイル監督とユアン・マクレガーの間の感情的対立が大きかったようです。
2000年にダニー・ボイル監督が製作した「ザ・ビーチ」で、一旦は主演がユアン・マクレガーに内定しかけていたのですが、「タイタニック」の成功を受け、土壇場でレオナルド・ディカプリオに主演が差し替わってしまうという事件がありました。これにショックを受けたユアン・マクレガーが怒り、以来2013年に監督が謝罪するまで、主演と監督両者の間にわだかまりが残ったそうです。
6.原作版との相違点まとめ
今作「T2 トレイン・スポッティング」は、アーヴィン・ウェルシュの同名原作をベースとして制作されていますが、かなりの点で原作とは相違点があります。原作版T2と映画版T2はストーリーがつながっておらず、一種のパラレルワールドとして位置づけられるのでしょう。以下、簡単にまとめてみたいと思います。
相違点1:主役の違い
トレイン・スポッティングは、腐れ縁でつながった主役級4~5名の群像劇ですが、映画版ではレントンが1作目、2作目ともに主役です。一方、原作版T2では、主役は”シックボーイ”サイモンに変わっています。ヒロイン役も違っていて、原作版では彼と恋愛関係になるニッキーという大学生がヒロイン役を務め、ヴェロニカというブルガリア人は出てきません。
相違点2:描かれる年代の違い
原作版T2の年代は、(正確には記されていませんが)、彼らが30代半ば頃のストーリーとなっています。20代の頃に比べると主人公たちはかなり落ち着いてきてはいますが、どのキャラクターも映画版に比べるとまだ元気一杯です。
相違点3:ストーリーの違い
レントンがアムステルダムから戻ってきて、サイモン、スパッドと合流し、怒り狂ったベグビーがレントンを探し回り、彼らの悪巧みが破綻して最後に誰かの裏切りで終わる基本的なストーリーの構造は共通しています。
原作では、サイモンを中心に悪巧みをしてかき集めた資金でポルノビデオを製作し、カンヌのポルノビデオ映画祭に出展するのですが、大成功を収める直前で、警察の取締りや仲間の裏切りで全てが瓦解していきます。
相違点4:裏切るのはやはりレントン
そして、最後に金を持ち逃げするのはまたもレントン(笑)そして映画版T2でも弁護士として出てきたダイアンがここではまだ学生で、アムステルダムから戻ってきたレントンの恋人になり、二人でアメリカへと高飛びしてしまいます。さらに、後からサイモンの恋人、ニッキーも合流してアメリカへ行ってしまいます。
7.見逃すな!パンフレットの出来が秀逸!
さて、映画といえばパンフレット。原則として、毎回どんな作品を見た後でも、出来不出来にかかわらず必ずパンフレットを買うようにしているのですが、今作のパンフレットはマニアックで良いです!
やっぱりトレインスポッティングは語りたくなるような点が本当に多いんですよね。原作者、監督、俳優へのインタビューから、怒涛の解説コラム9本、映画内での全使用曲リスト、用語集等々、あらゆる角度から作品に対する熱い分析が書かれています。売り切れる前にお早めに!
8.まとめ
前作に思い入れがある人は、今作は見ておいて損なしです。僕も前作を見たのは20代で大学生の時だったので、懐かしい気持ちにさせられました。20年経ち、彼ら4人の「中年の危機」をコミカルにテンポ良く描いた佳作だと思います。是非チェックしてみてくださいね。
それではまた。
かるび
9.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
映画「トレインスポッティング」
T2の原点とも言える、1990年代を代表する金字塔的青春映画。ドラッグ、犯罪なんでもありの、刹那的な勢いだけで突っ走る若者たちの日常を描いた群像劇。日本でも、当時ファッションやサブカル好きな若者たちにカルト的人気を誇りました。映画「T2」の世界観を120%楽しむためにも、未見の人は是非チェックしておきたい作品。T2を見てからもう一度見ると、みんな若いです!
原作小説「T2トレインスポッティング」
上述したように、本映画の一応原作ですが、4人の設定は30代中盤。本作での主役はレントンではなくシックボーイことサイモン。ドラッグ漬けになる中、仲間たちと再会して窃盗や軽犯罪を交えつつ、ポルノ映画を制作する破天荒なストーリーです。4人の仲間が約10年ぶりに再会し、意気投合し、そして裏切りで終わるのはトレインスポッティング1や映画T2と同じストーリー構造ですし、ハイテンションでポップな文体でぐいぐい物語に引き込まれます。前後編で800ページの大作ですが、面白くて一気に読んでしまいました!
映画オリジナルサウンドトラック
今作では今作では、2時間2時間あまりのあいだに全30曲が使用されています。前作同様イギー・ポップやアンダーワールドはもちろん、クラッシュやヤング・ファーザーズ、さらにユアン・マクレガーが曲作りに参加した曲も入っています。今作も様々に凝らされた映画内での視覚効果と合わせて、様々なジャンルのUKロックが使用されました。僕も買いましたが、これは中毒性があります。。。
ダニー・ボイル監督作品や、ユアン・マクレガー主演映画は、まとめてU-NEXTで!
上記でオススメした関連作品以外にも、ダニー・ボイル監督作品や、ユアン・マクレガー主演作品を一気に楽しむには、ビデオ・オンデマンドが一番時間をお金を節約できるベストなサービスだと思います。僕も、今回過去作「トレイン・スポッティング」などの関連作品は、加入中のU-NEXTで視聴しました。最近、手放せない頼もしいVODサービスになりつつあります。
現在、僕はU-NEXT、Hulu、AmazonPrime、TSUTAYAとオンデマンドサービスに4社加入しているのですが、本作関連作品はU-NEXTが一番品ぞろえが良く、オトクでした。
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2017年4月15日現在、ダニー・ボイル監督作品やユアン・マクレガー出演作品は、全部で28作品がラインナップされており、VODサービスの中ではダントツの品揃え。
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