かるび(@karub_imalive)です。
11月18日から封切りとなった映画「ガール・オン・ザ・トレイン」を朝一で見てきました。世界50カ国で翻訳され、ベストセラーとなったポーラ・ホーキンズの同名の原作をもとに映画化された心理サスペンス作品です。
※以下、作品のあらすじや感想、解説などを書いてみたいと思います。後半部分は、かなりのネタバレ部分を含みますので、何卒ご容赦下さい。
- 1.映画の基本情報
- 2.主要登場人物とキャスト
- 3.映画の見どころ(ネタバレ無し)
- 4.簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)
- 5.映画の感想や設定などの解説(※ネタバレ有注意)
- 6.原作との相違点(※ネタバレ有注意)
- 7.まとめ
- 8.映画を楽しむための小説やガイドなど
1.映画の基本情報
<オフィシャル予告動画>
【監督】テイト・テイラー
【制作】マーク・プラット
【原作】ポーラ・ホーキンズ
同名の原作「ガール・オン・ザ・トレイン」の場所と時間軸のみ映画向けにカスタマイズされ、その他コンセプトやストーリーは忠実に受け継いで制作された本作品。日本以外では2016年10月に先行して上映されていますが、世界各国で初登場No.1を記録しています。
原作も映画も反応がいいのに、今作の日本での上映規模の小ささ(たったの17館!)にはちょっと拍子抜けしました。洋画人気の衰退を肌で感じた機会となりました。
2.主要登場人物とキャスト
この6人が織りなす男女の人間関係やドラマがこの映画の見どころです。映画を楽しむために、この男女6人をしっかりと頭に入れて臨むと良いと思います。
主役のエミリー・ブラントこそ酒焼けした不健康な老け顔メイクで出演していますが、残りの5名はまぁとにかく白人のイケメンとブロンド美女が揃いすぎているような気がします(笑)
レイチェル(エミリー・ブラント)
トムの前妻。アルコール中毒で荒んだ生活をしている。ルームメイトには会社をクビになったことを言えず、毎日ロンドンへ電車で通勤。行き帰りの車窓から見える以前の自宅を眺めるのが日課となっている。
メガン(ヘイリー・ベネット)
レイチェルの以前の自宅の近所の一軒家で夫のスコットと一緒に住んでいる。レイチェルは、通勤中の車窓から見える幸せそうなメガンのことを「ジェス」などと勝手に名付けてあれこれ想像して楽しんでいた。
アナ(レベッカ・ファーガソン)
現在のトムの妻。トムとの間にイーヴィという娘が生まれている。レイチェルとトムが住んでいた、電車から見える一軒家にそのまま住んでいる。たびたびトムに些細な用事で連絡してくるレイチェルのことを敵視している。
スコット(ルーク・エヴァンス)
メガンの夫。神経質で、相手をコントロールしたがる性格である。肉体美が凄い(笑)
トム(ジャスティン・セロー)
レイチェルの元夫で、現在はアンの夫。レイチェルと結婚した時に購入した自宅を買い取り、そのまま住んでいる。
カマル(エドガー・ラミレス)
精神的に不安定なメガンの心理カウンセラー。メガンは男女の仲になりたがるが・・・?
3.映画の見どころ(ネタバレ無し)
3-1.心理サスペンスを盛り上げるため、散りばめられた様々な要素
この映画では、途中で主要登場人物の中から1名殺害され、そして主人公のレイチェルも危険な目に遭う、心理サスペンスものです。「結婚」「出産」「不倫」「殺人」「暴力」「記憶喪失」「異常性癖」など、人間関係に纏わるサスペンスものの定番キーワードのほぼ全ての要素がてんこもりで網羅されています。
さらに、90年代のサスペンスものハリウッド映画で大流行したように、美男美女がやたら絡むセクシーなシーンがたくさん出てきます。惚れ惚れするような男性陣の肉体美が女性にもウケが良さそう。
3-2.謎解きをする主人公がアル中で記憶喪失体質という面白い設定
今作でエミリー・ブラントが演じるレイチェルが、電車内での妄想を膨らませて勝手に現場に押しかけ、素人探偵のように動き回る結果、事件が起こり、解決に向かっていきます。
しかし、その主人公であるレイチェルの人物設定がユニークでした。裏切られて離婚したショックから、アルコール中毒で半分うつに近い状態に陥っており、かつ、おせっかいでストーカー体質だったりもするという、斬新なヒロインでした。
3-3.物語にもうひとひねりを加える主人公レイチェルの「ブラックアウト」
さらに、レイチェルは、泥酔すると酩酊時の記憶が飛んでしまう「ブラックアウト」に陥りやすい体質です。離婚のショックからアルコール依存症なので、電車内では水筒にお酒を入れて持ち歩き、行動する時は顔色も悪くいつもフラフラ。そして、物語の肝心な部分が彼女の「ブラックアウト」によって記憶喪失となっているため、それが物語の大きなスパイスになっています。
3-4.オフィシャル映像での山村紅葉の解説が面白い!
<オフィシャル予告動画>
2時間サスペンスものの第一人者(?)山村紅葉による熱い解説がメチャ面白いです!面白い作品に含まれる「2時間サスペンスあるある」を全て兼ね備えた本作はヒット間違いなし?!
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4.簡単なあらすじ(※ネタバレ有注意)
2年前、酒癖の悪さから会社をクビになってからも、相変わらず毎日決まった時間にニューヨークに通い続けるレイチェルは、車窓から見える家々の風景を眺め、空想するのが好きだった。
毎回決まって電車が徐行するエリアから見える、2軒の家。1軒は、離婚した夫トムが不倫の末、新たに結婚したアナと住む、かつての自分の家。そして、その家の近所で、見知らぬ美男美女のカップルが仲良く暮らす、もう1軒。レイチェルは、電車がさしかかるたびに彼らを観察し、彼らに、レイチェル自身が果たせなかった幸せな夫婦生活を重ね合わせ、妄想して楽しむのだった。
その家に住むブロンドの美女の名前は、メガン。レイチェルの想定とは違い、彼女もまた複雑な過去があった。過去に娼婦だったり、妻だったり、様々な立場に身を置いてきた。
メガンは、2軒隣のアナの家でベビーシッターの職についていた。(メガンはこの仕事が好きではなく、まもなくアナに「辞める」と宣言してしまう。)アナの悩みは、精神的に不安定になった元妻のレイチェルが頻繁にトムに連絡してくること。一度は、うたた寝をしている時に勝手に家の中に入り込んできて、子供を連れ去られるところであり、レイチェルに恐怖を覚えていた。
ある日、レイチェルが車窓からメガンの家を見ていると、いつもと違うパートナーと抱き合っている所を見かけた。不倫のように見えた。レイチェルの頭に、トムと別れる前、トムのPCから当時トムの不倫相手だったアナへの大量のメールを発見した日の苦い思い出がフラッシュバックする。友人と飲んで、酔っ払って怪気炎を上げるレイチェル。
飲んで帰ったその夜、レイチェルは我慢できなくなり、アーズリー駅(メガンとトムの家の最寄り駅)で下りて、メガンに一言言いに行こうと決意する。道中、トンネルのところで「あばずれ!」と叫ぶレイチェル。しかし、記憶はそこで途絶えていた。
翌朝、目が醒めたレイチェルは、泥まみれで、頭は血だらけになっている自分に愕然とする。昨日のことを思い出そうとするが、酩酊していたため、記憶が(ブラックアウトしてしまい)思い出せない。
次にレイチェルが禁酒の会合へ向かうため、電車に乗った時、横に座った男性のタブレットのトップニュースで、メガンが失踪したことを知る。
その晩、家に戻ったレイチェルは、警察の聴取を受けることになった。メガン失踪について、現場近くにいたことをアナに目撃されていたためだ。いつもは18時に帰宅するレイチェルが、メガンが失踪した日に限って23時まで帰宅しなかったのはなぜなのか聴かれるも、上手く回答できないレイチェル。
レイチェルは、メガンの夫、スコットに会いに行く。スコットには「友人である」と嘘をつき、スコットに、メガンが失踪した日、メガンが別の男と抱き合っていたことを目的したことを伝えた。スコットから写真を見せられたレイチェルは、彼がメガンのセラピスト、カマルであることを知る。
早速アブディックに会いに行くレイチェル。レイチェルは、アルコール依存症から、記憶を亡くしている間にトムにやらかした様々な粗相が原因で離婚したことを相談する。そして、人工授精でも子供を授からなかった罪悪感があると伝える。レイチェルはアルコール依存症で記憶をなくしている間、パーティで元夫のトムの上司に粗相をしたり、酔ってトムをゴルフクラブで叩こうとしたことを思い出す。
そして、メガンの死体が森の中から発見され、スコットが疑われて警察に連行されたが、証拠不十分で釈放される。スコットは、レイチェルがカマルと共謀してスコットをはめようとしているとレイチェルを責めた。
また、警察から、メガンが殺された時に妊娠していた事実が公表される。アナは、レイチェルが殺したと疑い、ライリー刑事に面会するが、ライリー刑事から「エビデンス」を集めるようアドバイスを受ける。
アナは、トムのPCメールを確認してレイチェルの罪状に関わる証拠を収集しようとするも、PCが開かない。代わりにカバンから出てきたのは、見知らぬ携帯電話だった。着信を再生すると、メガンの携帯電話へとつながった。
一方、レイチェルは、ある晩電車に乗っていると、トムの元上司(ホームパーティ会場でレイチェルが暴れたため、トムがクビになったとトムから聞かされていた)を見かけたので、以前、酔っ払って起こした粗相についての謝罪をする。元上司は、気持ち悪くて部屋で寝ていただけなので謝罪するには及ばない、トムがクビになったのは社内の女性に手を出しすぎたからだと聞かされ、愕然とする。
トムは、レイチェルの記憶が飛んでいたことを利用して、間違った情報を与えていたのだ。実際、ゴルフクラブで暴れたのは酔ったレイチェルではなく、トムだったことも同時に思い出す。
そして、レイチェルは、メガンが殺された日、トンネル付近で何が起こったか完全に思い出していた。メガンとトムの不倫現場を見たレイチェルに、トムが石のような鈍器でレイチェルを殴り、レイチェルは気を失っていたのだった。
メガンはその日に失踪し、死体が見つかったことから、トムがメガンを殺したことに気づき、アナの身を案じたレイチェルは、トムの家に急行する。アナ、トムと対面するレイチェル。レイチェルがトムに、メガンが殺された日のことを伝えると、レイチェルは激しくトムに殴打される。意識がとびかけるレイチェル。
トムは、レイチェルを殴打し、その日メガンと森で二人きりになる。そこで、メガンから妊娠の事実を聞き、堕胎を命じるトム。メガンは拒否し、トムは行きがかり上、メガンを殺してしまったのだった。
意識が戻ったレイチェルに再び襲いかかるトム。トムのすきをついて、家の外へ出るも、トムにおいつかれて組み敷かれるレイチェル。クビを締めて殺そうとしたトムを、レイチェルがコルク栓抜きでトムの首を刺して反撃する。動けなくなり、虫の息となったトム。そこへ、アナがやってきて、トムの首に刺さったコルク栓をさらにねじり、トムにトドメを差すのだった。
警察に連行された二人は、正当防衛で釈放され、事件はこれで解決となった。
エンディング。時が流れ、レイチェルは反対側のハドソン川が見える側の席に座り、他人の家を盗み見ることもなくなった。
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5.映画の感想や設定などの解説(※ネタバレ有注意)
出て来る男性が全員ダメすぎる・・・
映画なので、出てくる男性は全員イケメンです。しかし、そんなリア充そうな顔つきに反して、カウンセラーのカマル以外、男は一貫して無責任な存在として描かれました。スコットは支配的で女性を縛り付けるキャラクター。トムは、社内の人間関係は壊すわ次々に不倫するわ、堕胎させようとするわですし、メガンの過去の恋人も、蒸発してメガンの苦悩を支えようとしませんでした。
そんな男性から押し付けられた苦悩を引きうけ、乗り越えようと描かれた女性たち
この女性3名は、それぞれ形は違いましたが、出産育児や家庭内でのありかたをめぐって、パートナーや、あるいは社会から期待される振る舞いに対応しきれず、苦悩していました。
レイチェルは不妊治療に失敗してトムから愛想をつかされ、アナは育児に専念し、夫の帰りを待つだけの無力な専業主婦でした。殺されたメガンは、過去に夫が蒸発して育児に失敗したトラウマを一人で背負い、現在の夫スコットからも日常的にコントロールされ、抑圧されていました。
レイチェルとアナが、いわば男性の「身勝手さ」の集大成として描かれたトムを、正当防衛をやや越える形で殺害するクライマックスは、視聴者には胸のつかえがスーッとするシーンでした。と、同時に、女性特有の「育児出産」「家庭内での伝統的な役割」にまつわる苦しみや苦悩からの解放に向けての二人の決意を象徴していたのかなと思います。
メガンは殺されてしまいましたが、残ったレイチェルとアナはトムという共通の「敵」を倒したことで、同性として同じ苦しみを時間差で味わったことへのシンパシーや同じ秘密を共有する仲間意識が芽生えたのでしょうね。
衝撃のラスト!変わり身の速さは恐ろしいものがあった(笑)
しかし、それにしてもアナの変わり身の速さ。トムが殺人鬼で、生かしておくと将来の自分自身と娘、イーヴィの禍根になると悟った瞬間、レイチェルの加勢をしてトムの息の根を止めてしまうとは(笑)
こういった土壇場での女性の変わり身の速さや精神的な強さ、一瞬でできる連帯意識には空恐ろしさを感じました・・・。
プロットの緻密さは原作に軍配が上がるけど、映像ならではの良さもあった良作
ストーリーの複雑さや、スリリングな展開、心理描写は原作のほうが優れているとは思いますが、エミリー・ブラントの怪演が素晴らしかったし、それ以外の俳優たちも美しい肉体美やそれぞれに宿る狂気・苦悩をしっかり演技として表現できていました。
また、物語の大事なシーンで「電車」が必ず後ろを通りかかる演出や、アート好きなレイチェルが最後に3人の絆の象徴として描いた公園のブロンズ像なんかも良かった。
6.原作との相違点(※ネタバレ有注意)
すでに映画が公開後大ヒットしたアメリカの有名なレビューサイトを見ていると、原作読了後のレビュアーの感想では、映画<<<<<原作と評価している人が多いようです。ここでは、映画化するにあたり、省略された点や変更点をまとめていきます。
6-1.原作はよりエグい不倫関係が展開されます
映画では関係があったのかなかったのかハッキリしない描かれ方をしていましたが、原作では、スコット✕レイチェル、メガン✕カマルが物語の時系列の中で、明確に不倫関係として描かれます。
特に、スコットはメガンが死亡して1ヶ月後に、知り合ったばかりのレイチェルと共依存的な不倫関係に落ちていくのが印象的でした。
6-2.舞台設定と時系列の違い
原作の舞台設定はロンドン郊外でしたが、ハリウッドで映画化されたことから、ニューヨーク郊外へと変わっていましたね。また、原作で事件が起きたのは2013年夏でしたが、映画では公開時期に合わせたのか、2016年秋~冬になっていました。
6-3.担当刑事が原作では2名
映画中、レイチェルの取り調べはほぼテイラー刑事1名によって行われましたが、原作では、レイチェルに好意的な男性の刑事ガスキルと、映画同様レイチェルに懐疑的なテイラーの2名体制で行われました。同性への捜査は厳しくなるのが通例ですね。
7.まとめ
原作小説は、イギリス版「ゴーン・ガール」と言われた心理サスペンスの名作でしたが、わりと忠実にイメージ通り映画化されたと思います。映画中、どんよりとした秋のシーンが印象的でしたが、レイトショーなんかで見ると情緒たっぷりなんじゃないかなと思います。ラスト20分で犯人判明し、豹変した犯人との衝撃のラストシーンは圧巻ですよ。
それではまた。
かるび
8.映画を楽しむための小説やガイドなど
全米をはじめ、世界中でベストセラーとなった映画原作。完成度の高いミステリー小説のお手本みたいな作品で、緻密に練られたプロットと描写力で、レイチェル・メガン・アナそれぞれ3人の視点が入り乱れ、ほぼそれぞれの時間軸が進んでいきます。
特に、後半のクライマックスにかけてが圧巻!伏線や設定をきれいに巻き取って、パズルのピースがぴったりはまるように、3人の時系列が一致してエンディングへと加速していく流れは読んでいてスリル満点でした。間違いなくオススメ!!