あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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美人画尽くしの上村松園展!山種美術館の珠玉のコレクションを堪能しました【展覧会感想】

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かるび(@karub_imalive)です。

暑かった夏も終わり、いよいよ芸術の秋が到来です。今年の秋は、京都で「国宝展」、東京で「運慶展」など、日本美術の大型企画展が目白押しですよね。

僕も、2017年の秋は思い切り日本美術を勉強したいなぁと思っているのですが、その第一弾として行ってきたのが、8月29日から山種美術館で開催されている企画展「上村松園ー美人画の精華ー」です。

本展は、山種美術館の保有する上質な上村松園コレクション18点を一挙展示している他、様々な時代の美人画を特集した意欲的な企画展でした。

早速ですが、行ってきた感想レポートを書いてみたいと思います。

※本稿で使用した写真は、予め主催者の許可を得て撮影したものとなります。何卒ご了承下さい。

1.上村松園って誰なの?

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2015年4月23日、生誕140周年を記念してGoogleのロゴにもなった
引用:上村松園生誕 140 周年(Google)

近代女性日本画家のレジェンド、上村松園

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上村松園(1875-1949)は、明治・大正・昭和に渡って、京都を中心に活躍した女性の日本画家です。生涯に渡って、女性目線で捉えた「美人画」にこだわり続け、「東の鏑木清方、西の上村松園」と並び称された通り、近代日本画における美人画の巨匠として大活躍しました。

ところで、写真を見ていただくとわかりますが、上村松園は女性です。現在でこそ「美人画」は女性画家が大活躍するジャンルになっていますが、100年前は、女性が画家を目指すこと自体、非常に珍しかった時代でした。

しかし、松園は母、仲子の理解も得て、幼少期から京都画壇の鈴木松年や竹内栖鳳ら一流の画家に指導を受け、才能を順調に伸ばしていきます。若干15歳の時、第3回内国博覧会に作品を出品した作品がイギリス皇太子に買い上げられたことが新聞で話題になるなど、早熟な天才ぶりも発揮しました。

修行時代は、師匠、竹内栖鳳から「とにかく写生をきちんとやれ」と常日頃から指導を受けていたようで、上村松園の個人美術館「松柏美術館」には、松園修行時代の膨大な写生帖やデッサンが展示されています。

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松柏美術館(2017年5月撮影、フジが綺麗でした)

また、上村家は、松園の子供、上村松篁、孫、上村淳之と、3代続けて芸術院に所属する日本画家として活躍する芸術家一家でもあります。確か、山種美術館の過去の展覧会でもいくつか上村松篁の作品を見た記憶があります。

伝記小説や、伝記映画も製作された 

圧倒的に男性優位だった明治期の日本画壇において、様々な困難を乗り越え、女性初の文化勲章受章者に輝くなど、揺るがぬ名声を打ち立てた上村松園ですが、そんな彼女の一生をモデルとした伝記小説も書かれています。

それが、宮尾登美子「序の舞」です。主人公の名前変更(「津也」)をはじめ、作中の登場人物は架空の人物に置き換えられ、プロットもかなり恋愛メインなエンタメ寄りの内容になっていますが、製作にあたってはかなり綿密に松園に取材したようです。

また、今見るとかなり問題がありそうな映像ですが、1986年には名取裕子主演で映画化もされました。予告編がYoutubeで見れるようになっていますので、紹介しておきますね。(※「R15+」レベルの性的表現がありますので閲覧注意)

2.上村松園展とは

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山種美術館で、上村松園を特集した展覧会は過去にも頻繁に開催されています。例えば、過去10年では

・2009年「没後60年記念上村松園/美人画の粋(すい)」
・2015年「上村松園 生誕140年記念 松園と華麗なる女性画家たち」

と、2回開催されています。

もちろん、松園が近代日本画におけるビッグネームである、ということもありますが、一番の理由は、山種美術館が日本屈指の松園コレクションを保有しているということも大きいと思います。美術館のメインコンテンツですからね。

山種美術館創始者、山崎種二と上村松園の親密な関わりについてはわりと良く知られています。一時期は松園が東京に出てくるたびに、山崎種二が東京での滞在費・交通費・食事代まで全て世話をしていたそうです。(今回の展覧会で、松園が実際に山崎種二に当てたお礼状も展示されています)

今回の2017年の上村松園展では、山種美術館の保有する上村松園作品全18点が、前後期通じて全て展示されています。全国各地の美術館でも、数点ずつの保有にとどまる中、どれも非常に状態の良い一級品がずらっと並んだ展示風景は非常に壮観でした!(お膝元の松柏美術館でも、一気にそんなには出ませんから/笑)

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3.僕が感じた展覧会の5つの見どころ・ポイント~展覧会感想~

ポイント1:上品で清楚な描写が見飽きない上村松園の作品群

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上村松園「春風」/山種美術館所蔵

これは、一緒に回っていた先輩ブロガーさんに言われてすごく腑に落ちたのですが、上村松園の描く美人画って、どの絵もきちんと胸元や襟が閉まってて、着物をきっちり着こなした状態で描かれており、非常に清楚で品があるんですよね。

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上村松園「杜鵑を聴く」/山種美術館所蔵

その点、誰とはいいませんが(笑)、男性作家の描いた美人画は、妙に服がはだけていたり、胸元が開いていたりするわけです。ぶっちゃけ、スケベ親父のエロ目線で女性を捉えた美人画になっているものも結構あるような気がします。(それはそれで良いですが^_^;)

上村松園はあくまで女性の清楚さ、上品さにきちんと気配りした上で、そこからほのかに醸し出される色気やあでやかさを控えめに表現しているんですよね。上村松園特有の抑制された女性の優美さは、なんだか見ていてホッとします。

ポイント2:表装の美しさも注目ポイント!

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館内で販売されている図録でも言及されていますが、上村松園の作品は、どれも作品を飾る表装部分も手を抜かず美しく装飾されているんです。ぜひ、1点1点の表装部分も合わせて味わってみてくださいね。

松園の絵画がどの作品も安定して優美さ・華やかさに溢れている一つの理由として、表装部分の出来の良さもあるのかもしれませんね。

ポイント3:近代で再評価を待つ実力派たちの美人画も!

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森田曠平「百萬」/山種美術館所蔵

本展では、上村松園の他にも、明治~昭和期を忠臣として、山種美術館が所蔵している美人画コレクションを一気に展示しています。特に、昭和高度成長期以降に制作された比較的新しい作品の中に、まだまだ僕も知らない凄腕の日本画家を味わうことが出来たのは、すごく新鮮でした。

亡くなってから、残念ながら埋もれてしまっている感のある松岡映丘、川崎小虎、森田曠平、山川秀峰らの作品も、美術館でこうして誰かに発見されて、再評価されると良いなぁと思って見ていました。是非、自分だけの掘り出し物作品を見つけてみてください!

ポイント4:グッズや図録も充実!

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今回の企画展にあわせて、既存のグッズに加え、新たに多数の上村松園グッズがラインナップされました!僕も、松園のクリアファイルを一つ持っているのですが、どれも非常に落ち着いたデザインですので、是非チェックしてみてくださいね。

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松園のクリアファイルやレターセットなどグッズが充実!

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松園の絵画にちなんだ手ぬぐい(新商品)

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和手玉をかし(お手玉)

また、本展では、図録も2種類用意されています。山種美術館で所蔵する上村松園コレクションを特集した小冊子と、前回の上村松園展で製作された人画コレクションをまとめた図録と、2タイプ用意されています。前回の川端龍子展では、会期終了を待たずして図録が完売する人気ぶりだっそうなので、お早めに!

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2種類の上村松園関連の図録

ポイント5:写真撮影が許可されている作品も!

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山種美術館で開催される企画展では、毎回1点に限り撮影OKな作品があります。今回撮影がOKな作品は、上村松園の大型作品「砧」です。山種美術館で撮影許可OKとなる作品は、毎回美術館の主力作品が多いのも嬉しいところです。

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4.特に気に入った作品について

展示作品中、どれも素晴らしいクオリティで、ずっと見ていたいと思わされる優品が多かったですが、個人的に特に印象的だった作品を幾つか紹介しますね。

4-1.上村松園「娘」

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上村松園「娘」/山種美術館所蔵

上村松園は、京都の町家での日常生活風景を切り取って画題にすることも多かったようですが、本作も、裁縫をする場面を丁寧に描いています。

上村松園「娘」部分拡大図
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針に赤い糸を通そうとしているのですが、よく見ると針や糸の細かいところまできちんと描きこまれており、丁寧な描写に好感が持てました。 

4-2.橋本明治「月庭」

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橋本明治「月庭」/山種美術館所蔵

右上方から月明かりに照らされた椅子で休む着物美人を描いた作品。極太の輪郭線、無表情なすまし顔、寒色系でまとめられた平面的な絵は、どことなく近代西洋絵画の巨匠、ベルナール・ビュフェやピカソなどを彷彿とさせます。

なにより、離れて見た時の絵の力強さ、存在感が違います。和室に飾るよりは、洋館の大広間にどーんと飾りたいような、そんな作品でした。

4-3.山川秀峰「芸者の図」

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山川秀峰「芸者の図」/山種美術館所蔵

没後、埋もれてしまった感のある山川秀峰ですが、現役当時は、伊東深水・寺島紫明とともに、鏑木清方の三羽烏と呼ばれたほど、その腕前が評価されていました。本作も、構図も素敵なんですが、描かれた女性の顔が、おっとりした古風な感じが良かったです。

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一見なんでもないような普通の美人画なんですが、家に飾るなら、こういった飽きの来ない落ち着いたものがいいなぁと思って見ていました。

4-4.池田輝方「夕立」

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池田輝方「夕立」/山種美術館所蔵

池田輝方の作品は、つい先日松岡美術館でも妻、池田蕉園と合作した「桜舟・紅葉狩図屏風」という作品が見事でしたが、保存状態や完成度ではこちらの「夕立」のほうが上だと思います。この「夕立」も名義は池田輝方単体ですが、文展で特選を取った時、妻とともに受賞しているので、合作なのかもしれませんね。

・・・。

・・・。

ところで、本作品に限っては、女性・・・というより・・・、、、男性2名にどうしても目が行ってしまいました(爆)なんというか、美人画の中の男性像だからなのか、妙に艶かしく色気づいている気がしてならないのですよね。

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左隻抜粋:妙に艶めかしい男性2名

さらに拡大して見てみましょう。どうですかこの表情。何とも言えない切なさに溢れた雰囲気を醸し出していると思いません?

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この二人、互いにそっぽを向いているのですが、二人のただならぬ表情を見ていると、どうも禁断の愛を育んでいるようにしか見えないのですよね。きっとこの二人は、夕立が止んで、邪魔な女性3名が消えたら二人でどこかへ出かけるのか、あるいは二人の禁断の愛がたった今終わったばかりなのか・・・。

特段BL脳を持ち合わせていないのに、池田輝方の描く男性像は意味ありげに見えて仕方ありません^_^;

ちなみに、こちら少し部分図を加工して、お互いを見つめ合わせてみました。どうですこの色気!ヤバくないですか(笑)

禁断の愛を育むふたりf:id:hisatsugu79:20170901114250j:plain 

5.混雑状況と所要時間目安

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今回の展覧会は、山種美術館の所蔵品コレクションが展示の中心となりますので、大型連休中を含め、そこまで混雑することはないと思われます。所要時間としては、約60分~90分あれば十分じっくり見て回れそうです。いつもながら、音声ガイドが非常に充実しているのでおすすめですよ。

6.併設のカフェで展覧会限定メニューもオススメ!

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毎回行くたびに立ち寄らずにはいられない館内1Fに併設の「カフェ」。今回の企画展でも、ちゃんと期間限定のオリジナル和菓子が5つ用意されていました。

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毎回用意される5種類のオリジナル菓子ですが、今回は5種類あるうち、四角形の「双鶴」が激ウマでした。お茶が進む進む!展示を見終わった後、疲れた脳を休めるためにぴったりですね。

7.関連書籍・資料などの紹介

入門書の決定版「もっと知りたい上村松園」

上村松園の作風や作品について、初心者でもわかりやすく解説したコンパクトな入門書の決定版!カラー写真もふんだんに使われており、一つ一つの作品について丁寧な説明が嬉しいです。

上村松園をモデルとした伝記小説!宮尾登美子「序の舞」

松園の代表作「序の舞」をタイトルとした、松園の伝記小説。穏やかで優美な作風とは裏腹に、実生活は意外に波乱万丈で個性的な松園は、伝記小説の題材としてぴったりだったのかもしれません。創作部分もふんだんに入っていますが、松園の人となりや考え方、そして激しい恋愛を物語形式で知ることができるのはうれしいところ。映画はもっと過激ですけどね(笑)

8.まとめ

上村松園の円熟期の作品を中心に、山種美術館の松園コレクションを一気にチェックできる本展。非常に満足度の高い展覧会でした。日本画初心者はもちろん、目の超えたマニアまで幅広く楽しめる企画展です。オススメ!

それではまた。
かるび

展覧会開催情報

◯美術館・所在地
山種美術館
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
◯最寄り駅
JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
JR渋谷駅15番/16番出口から徒歩約15分
恵比寿駅前より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分(降車停留所③、乗車停留所④)
渋谷駅東口ターミナルより日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分(降車停留所①、乗車停留所②)
◯会期・開館時間
2017年8月29日(土)~10月22日(日)
*会期中、一部展示替えあり
(前期: 8/29~9/24、後期: 9/26-10/22)
10時00分~17時00分(入場は30分前まで)
◯休館日
毎週月曜日
(但し、9/18(月)、10/9(月)は開館、9/19(火)、10/10(火)は休館)
◯公式HP
http://www.yamatane-museum.jp/index.html
◯Twitter
https://twitter.com/yamatanemuseum