【2017年4月30日更新】
かるび(@karub_imalive)です。
山種美術館で4月22日から開催中の「花*Flower*華」展に行ってきました。副題に「ー琳派から現代へー」とある通り、酒井抱一、鈴木其一ら琳派の画家を目玉として、山種美術館で所蔵する江戸~昭和期までの様々な日本画の有名画家たちが描いた「花」の作品を集めた展覧会です。
※ブログ内での写真撮影は、予め主催者の許可を得て撮影しています
1.「花*Flower*華」展のコンセプト
田能村直入「百花」部分拡大図
春になると、特に日本画を多数所蔵する美術館を中心として、「桜」や「菖蒲」「牡丹」といった花をテーマとした作品を企画展示する展覧会が増えてきますよね。前回、「日本画の教科書(東京編)」で、開館50周年と銘打った一連の大型企画が終了して、2017年4月から新年度の企画展が始まった山種美術館でも、その第一弾として企画されたのは「花」をテーマとした展覧会でした。
さて、山種美術館といえば、主力は18世紀の江戸琳派以降、明治~昭和期の近現代日本画の大量コレクションで有名です。
ゴージャスな金屏風!/鈴木其一「四季花鳥図」
今回の展覧会でも、江戸琳派の大御所酒井抱一、鈴木其一から始まり、現在でもバリバリ活躍中の千住博、牧進ら、現在でも現役で活躍中の現代日本画作家まで、幅広い所蔵品で春夏秋冬それぞれの「花」をテーマとした絵画で楽しませてくれます。
出品数は、全部で60点。各作家から1点~3点程度の出品(最大は奥村土牛の7点)で、バラエティに富んだ様々な作家の作品が楽しめるので、本当に日本画好きにはたまらない展覧会になりました。
2.展示に様々な工夫もなされています
山種美術館は、コンパクトな展示スペースながら、非常に毎回丁寧で鑑賞者に優しい構成の展示が素晴らしいのです。今回の展覧会の展示スペースで目についた工夫を紹介しますね。
2-1.丁寧な音声ガイド
僕は美術館に行くと、あれば必ず「音声ガイド」を借りることにしています。ただ、企画展に合わせた「音声ガイド」は、やっぱり製作費も手間もかかることから、大抵は大規模な企画展に限られるもの。
そんな中、中規模展示でも必ず充実した音声ガイドをつけてくれる日本画系の美術館が、根津美術館と山種美術館。決して華美な演出はありませんが、60点あまりの作品群に対して、24項目約30分のガイドは非常に丁寧です。作品3点に1点強に音声解説が割りあたるので、作品一つ一つを非常に深掘りしてじっくり味わえるのです。
2-2.写真撮影OKの展示がきちんと用意されている!
そして、山種美術館では、展示会場内の指定作品1点に限り、昨年度から展示作品の写真撮影がOKになっています。
記念撮影コーナーでプラスチックのパネルが用意されていたりという工夫は他の美術館でもよくありますが、日本画の作品自体が撮影OKというのは、国立美術館、博物館系を除くとまだほとんどありません。
やっぱり、せっかく来たからには記念に作品を撮って帰りたいですし、SNSにもアップしたいですよね。 今回撮影がOKなのは、酒井抱一「月梅図」。山種美術館所蔵の抱一作品の中でも非常に目を引く代表的な作品です。
修復作業を終えて、より華やかになった本作をしっかり撮影して、思い出を記念に持って帰りたいところですね!
酒井抱一「月梅図」
2-3.企画展にちなんだ期間限定の和菓子が味わえる!
山種美術館では、美術館カフェガイド本「カフェのある美術館」にも掲載された、趣のある1Fのカフェコーナー「椿」で、毎回の企画展ごとに、展示作品とコラボした期間限定のオリジナル和菓子を味わうことができます。
今回はこのラインナップ。
そして、「どの作品がオリジナル和菓子のモチーフに使われたのかわかりやすくして欲しい」という、ブロガーから挙げられた要望に答えて、今回から作品のキャプションに下記のようなマークがついて、和菓子コラボ作品が明示されました。
展示を見ながら、このマークを探してみてくださいね。見終わったら、喫茶コーナーでどんなお菓子になったんだろう、と作品と見比べてみるのも面白いかもしれませんね。
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3.特に気に入った展示を幾つか紹介します
3-1.鈴木其一「牡丹図」
江戸琳派の大御所でありながら、 装飾的な表現だけでなく、写実的な緻密さも追求した鈴木其一の優雅な作品。2株の牡丹から、3種類の牡丹が咲き乱れる(そんなことってあるのかな?)華やかな作品。
今回の「花*Flower*華」展の第二展示室は、全部牡丹の作品で統一されていますが、その中でも一番気に入りました。
3-2.奥村土牛「醍醐」
彼が兄弟子のように慕っていた小林古径の奈良での7回忌の法要の帰りに立ち寄った京都の醍醐寺で見かけた満開の桜に感銘を受けて制作された作品。
山種美術館の所蔵する奥村土牛作品の中でも代表作として知られ、中でも独特のピンク色の色彩が美しいです。食紅の材料としても知られるコチニール色素を綿臙脂という絵具と胡粉を薄く溶いて塗り重ね、この味わいのある色合いを出したのだとか。
3-3.千住博「夜桜」
京都の寺社で最近よく襖絵や屏風絵が奉納されている現役作家・千住博の作品。
本当は正面から撮りたかったのですが、映り込みがどうしても回避できず、ちょっと変な角度からの撮影になってしまいました。しかしこれが非常に美しい夜桜なんですよね!こんな夜桜の下で花見をしたいなぁと、ほれぼれするような作品でした。
3-4.結城素明「躑躅百合(つつじゆり)」
戦前は日本画の大家として知られましたが、昭和に入ってから忘れ去られてマイナーな存在となってしまった作家。(確かに今Google検索してもわずか18,700件しか引っかからない)写実的で堅実な作風は、もっと見直されてもいいような気がします。山種美術館で32年前に「結城素明 : その人と芸術 : 特別展」が開催されていますが、どんな展覧会だったのでしょうね、、、
3-5.渡辺省亭「牡丹に蝶図」
2017年春、加島美術での個展をはじめ都内各所で連動した作品展示が仕掛けられ、急速に日本画ファンの間で知名度をアップさせている渡辺省亭の作品。本展で唯一の個人蔵作品です。
まだ企画段階のようですが、数年後に大規模な回顧展が企画されつつあるようですね。伊藤若冲、河鍋暁斎らのように近年再評価が進む江戸末期~明治期の日本画作家が多いですが、渡辺省亭もいよいよブレイクでしょうか?!
3-6.山口蓬春「梅雨晴」
(引用:山種美術館オフィシャルHPより)
雨上がりの陽の光に明るく輝くあじさいを画面いっぱいに描いた初夏を感じさせる爽やかな作品。西洋画から後に日本画へと転向した山口蓬春らしい、油絵的なセンスも感じられる佳作でした。
3-7.加山又造「華扇屏風」
今回の展覧会で個人的にはNo.1だった作品。キュビスム~シュルレアリスムから琳派まで様々なスタイルを遍歴してきた加山又造ならではの、現代的なセンスと伝統をミックスして制作された「華扇屏風」。様々に人工的に酸化・退色させた「銀」地のコントラストの上に浮かぶ扇上の花々は見飽きません。
著作権の関係から、画像撮影NGでしたので、山種美術館HPのこちらの画像をご覧ください。
加山又造「華扇屏風」
http://www.yamatane-museum.jp/image/20170422-08.jpg
3-8.木村武山「秋色」
秋の草花をちりばめ、全体的に淡い色で統一された、写実的で優しい雰囲気の作品です。横山大観、下村観山、菱田春草らと、岡倉天心の下で明治期の新しい日本画をリードした木村武山ですが、生前大量に作品を残したため、大観らに比べると驚くほど安い値段で作品が流通しているそうです。
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4.企画展に連動したグッズ類
今回の企画展で新たに制作された「花」にちなんだオリジナルグッズや、コンパクトな図録も発売されていました。
新作もたくさん用意されたグッズ類!
奥村土牛「醍醐」にちなんだクリアファイルや一筆箋
5.まとめ
いつもながら、日本画の奥深さと魅力を存分に味わえる展覧会でした。有名な作家からマイナーな掘り出し物まで、春夏秋冬それぞれの「花」に関する優れた作品がその膨大なコレクションから厳選して展示されています。会場内で2時間30分、一つ一つの作品を堪能させてもらいました!日本画が好きな人は是非!
それではまた。
かるび
展覧会開催情報
◯美術館・所在地
山種美術館
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
◯最寄り駅
JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
JR渋谷駅15番/16番出口から徒歩約15分
恵比寿駅前より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分(降車停留所③、乗車停留所④)
渋谷駅東口ターミナルより日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分(降車停留所①、乗車停留所②)
◯会期・開館時間・休館日
2017年4月22日~6月18日(月曜日定休)
10時00分~17時00分(入場は30分前まで)
◯公式HP
http://www.yamatane-museum.jp/index.html
◯Twitter
https://twitter.com/yamatanemuseum