あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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大雪が降ったら勇気を持って会社を休もうよ?~また豪雪で消耗した首都圏民~

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かるび(@karub_imalive)です。

1月18日の大雪は、またも首都圏の朝の通勤ラッシュを直撃しましたね。

あれから3日経過し、すでに都心部では雪は全て消えてしまいました。今回の雪害では、幸いにも一人も死者が出ず、被害は軽くすみました。とは言え、年々大雪時の混乱が拡大しているような気がします。いい機会なので、少し「首都圏の雪害」についてまとめてみることにしました。例によって長文ですが、もしよければお付き合いください。

0,今回の1月18日の首都圏大雪を振り返る

かるびは職住近接なので電車を使わず、徒歩で会社に行ける距離に住んでいます。大雪や台風などの天候不順時でも、基本的には問題なく会社にいけてしまう、クソッるのです。

1月18日も、「あーあ、どうせ今日は仕事にならないんだろうなぁ」としぶしぶ出勤してみると、朝9時の始業時間までにオフィスにいたメンバーはわずか5名(内勤者約40名中)「前日から雪が降るってわかってたのになんでみんな遅刻するんだ!」と同じく徒歩通勤の事業部長さんがお怒りでした(笑)いや、無理やろ・・・

1,ここ最近、首都圏はさらに大雪に弱くなっている?

しかし、最近特にここ数年、首都圏は大雪に弱くなったと思いませんか?年に1~2度大雪に降られるたびに、確実に半日程度は通常業務がストップするくらい、ビジネスが停滞します。

そこで、近くの深川図書館に行って、確認してみることにしました。朝日新聞縮刷版で過去5年分の縮刷版をチェックします。すると、新聞紙面で社会面含め、大見出しつきで首都圏の大雪ニュースが掲載されたのが10回ありました。

うち、影響が特に大きかったのは2012年1月23日、2013年1月14日、2014年2月7日、2014年2月14日、そして今回の2016年1月18日の5回。つまりここ数年は、1年に1回はやられているということ・・・。特に2014年2月14日の大雪は、数十年に1度の大規模雪害となり、約1週間に渡って首都圏だけでなく、日本列島全体の物流網が麻痺するほどの甚大な被害となりました。

ニュースでは、特に大雪によって、鉄道網・道路網が機能しなくなることが大きくクローズアップされていました。よって、以降は、この2点を掘り下げていきたいと思います。

2,首都圏が大雪に弱い理由を考える(鉄道編)

2-1:直通運転で1箇所の遅れが広範囲に影響する

ここ数年で、JR、各私鉄での相互乗り入れでの直通運転が増えました。通常時は確実に便利になりましたが、ダイヤが過密になる時間帯では、雪が降らなくても、すこし雨が降った、とか誰かが飛び込んだ・・・とかで、運転の遅れが目立つようになってきています。例えばこれ。

通常時でさえ、遅れが増大しているため、台風や豪雪時などの災害時はもう全然ダメになってしまうわけですね。

2-2:融雪/除雪設備が整備途上にある首都圏各鉄道会社

鉄道運行にとって、最大のボトルネックがレール接合部の「ポイント」と呼ばれる装置です。まず、大雪が降るとこの「ポイント」部分の雪が溶かせなかったり、「ポイント」装置が故障します。

実は、2013年の段階で小田急電鉄、東武鉄道、東武鉄道、JR東日本などは、独自に電気融雪や火力での融雪装置を導入しており、ここ最近、一定の効果は出始めているんです。実際に稼働している動画を見ると、対策はある程度は進んでいるんだな、と確認はできます。(火が出てる!)

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しかし、首都圏にポイントは約3900箇所あるといいます。まだまだ対策ができていない鉄道会社もあるわけです。(引用元:首都圏の鉄道の「大雪対策」が北国並みにできない理由 | ハーバービジネスオンライン

今回の1月18日の大雪では、対策ができていなかったJR中央線、西武鉄道、京浜急行で少なくともポイント故障があり、一時期完全に輸送がストップしてしまいました。

2-3:間引き運転で輸送力大幅低下

ポイントへの融雪装置の導入で、完全に運行中止にはなりづらくなってきています。しかし線路自体は依然滑りやすくなっていますので、結局は運行速度を落とし、間引き運転をするしかなくなります。朝の首都圏過密ダイヤで、間引き運転をすると、どうなるか・・・。必然的にホームに人が溢れ、入場制限をするしかなくなります。

また、ノロノロ運転で前が詰まっちゃうので、こんな感じになっちゃうわけです。(鉄道ファンには面白い構図?!)

すぐ近くまで電車は来てるのに、来た電車にはすでに人が満員入っていて乗れないという・・・。これでは、どうしようもないですね。

2-4:倒木や雪の重みで架線が切断される

雪の重みで倒れた木が、鉄道の架線を切断するケースもよくあります。今回も確認されているだけで、倒木による架線切断が京王相模原線、東武東上線、JR川越線で発生。また、中央線では雪自体の重みで架線が切れました。京王線は、車庫近くの架線だったため、車両自体が車庫から出られなかったという不運も・・・

各社も、線路沿線の木を除去するなど対策はしていますが、首都圏で雪が降った場合、水分を多く含んだ湿雪になり、かなりの重量になってしまうため、対策が難しいようです。

3,首都圏が大雪に弱い理由を考える(道路編)

大雪が降ると、電車だけでなく、高速道路や一般道もかなりの影響を受けます。2014年の2回目の大雪時は、東名高速上り線で40キロの大渋滞になりました。

電車だけでなく、道路交通網も大打撃となるのが首都圏の特徴です。なぜそうなってしまうんでしょうか?

3-1:高速道路はすぐに通行止めになりやすい

首都圏の高速道路は、融雪・除雪装置が貧弱な上、利用者側がタイヤチェーンを普段から携行してなかったりスタッドレスタイヤの装着が間に合わないため、大雪時は極端に利用が減ります。交通量の減った高速道路にはあっという間に雪がたまり、結果としてあっという間に通行止めになってしまうようです。

3-2:特に、首都高は排水設備がなく、凍結しやすい

さらに、首都高は大雪が降った際に、その雪を逃がすための排水設備がありません。よって、降った雪は全部道路の上にたまるので、除雪車が雪を集めて、高架道路外へ排雪する必要があります。そして、溶けたら溶けたで洪水にもなります。

こうして、全線のかなりの部分が高架道路である首都高(特にC1)は、大雪時には雪が排雪しきれず、雪と水が混ざった状態でたまります。すると、たまった雪はそのまま翌日から凍結し、通行止め状態が長く続く・・・という悪循環があります。

3-3:雪装備が薄くて、商用車が立ち往生

大雪の日は、さすがに私用での車利用者は減りますが、それでも社用・商用等でどうしても移動しなければならない人は、ノーマルタイヤで無理をします。結果、甘く見すぎていて高速道路上で立ち往生 する車が続出。

これは、2013年大雪時のまとめですが、こうなってしまうと、車線は塞ぐは除雪の妨げになるわで、より状況が悪化してしまうわけです。

4,東京都や国の対策は・・・?

ここまで見てきたように、首都圏では、一度大雪が降ったら、交通網にかなりのダメージを与えることがわかりました。年に1回~2回レベルとは言え、交通網がこれだけ混乱してしまえば、前後数日間は経済的にも社会的にもかなりの損失や混乱を招くわけです。

にも関わらず、首都圏の雪害では対策は後回し、、、というか殆どなされていないのが現状です。震災や風水害への防災対策は、国レベル・都道府県レベルでかなり充実してきているのとは好対照ですね。

国の雪害対策をみてみましょう。内閣府で取りまとめられている「防災基本計画」の雪害対策ページを見ると、現状は豪雪地帯への対策は進んできているものの、首都圏・大都市圏での対策についてはほぼ言及されていません。

また、東京都の防災対策ページでも、風水害対策・震災対策については触れられていますが、雪害対策については基本的な方針も掲載されていない状況です。市町村レベルで見ると、ようやく対策を打っている自治体がちらほら出始めます。(大雪時の被害が深刻化しやすい多摩地区の町田市「町田市地域防災計画」など・・・)

5,結局、首都圏での大雪時は自分で身を守るしかない

国や都道府県レベルでの対策があてにならないことはわかりました。したがって、大雪時は、自分で身を守るしかないということでしょう。

とにかく、一番の対策としては、大雪時は車でも電車でも「家の外に出ない」につきます。電車に乗ろうとしても、間引き運転と入場制限でヘタしたら半日程度寒い中で立ち尽くさなければなりません。だからといって車で出勤しようにも、チェーンもなければ、立ち往生している車だらけで渋滞していて、まともに動くこともできません。

少し前に話題になった東京都が各家庭に配布した防災対策本、「東京防災」の雪害対策ページ(P158-P159)にも、とにかく外出しない、車には乗らない、と手堅くまとめられています。

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6,勇気を持って会社を休んでしまおう。

だったら、会社を思い切って休みにしちゃいませんか。抵抗あるなら、せめて半休を。

いや、そうは言ってもズル休みはいかん!とか、会社から自宅待機指示が出てなければ行かなきゃ!と直感的には考えてしまうかもしれません。

でも、どうせ行ってもミーティングは中止、顧客訪問も延期になります。急ぎのメールを打っても相手からの返事はありません。

「前もってわかっているなら早く自宅を出ろ!」という前時代的な事を言う上司もいるかもしれませんが、いかに早く出ても遅刻する確率は極めて高く、ただ駅で立ち尽くして消耗するわけです。人口密度の高いところにいて、誰かから風邪をうつされるかもしれませんしね。

仮に、たまたま早くたどりついて上司にアピールしたとしても、仕事の生産性は上がらないので、やはり割に合わない虚しい努力になるわけです。

急ぎの用事がないのなら、思い切って休みをとりましょう。可能なら自宅で仕事をして、無理なら思い切って体を休める。会社には「電車が止まって行けません」「ノーマルタイヤしかないので出勤できません」と連絡すればいいわけです。

自分が休むことで、どうしても出勤しないといけない緊急性の高い人のみスムーズに優先して行かせられるようにする。こうすることで、自分にとっても社会全体にとってもプラスになるのではないかなと思います。

7,まとめ

年に数度の首都圏を直撃する大雪。現状は、各公共機関や地方自治体レベルでの散発的かつ自主的な取り組みしか用意されておらず、自分自身で自衛するしかありません。

かるびも、社会人になった頃、熱血上司から「這ってでも出てこい」とよく言われたものですが、もうそんな時代ではありませんよね。大雪時で交通機関が麻痺したら、スパっと休む。回復したらその時に家を出る。それで十分なのではないかなと思います。

それではまた。

かるび