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あいむあらいぶ

前職IT中堅企業の採用・営業担当で、現在は自主休暇中(要するに無職)。この休暇中に色々見聞きしたことを気ままに書き散らします。長文多めで、人事労務系と美術展関係の記事が多め。楽しんでいってもらえれば幸いです。

1dayインターンシップの功罪について、現役採用担当が本音で考えてみた

就職活動・転職活動
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かるび(@karub_imalive)です。

’17新卒採用がいよいよ本格化しているので、連日人事・採用ネタになります。今日取り上げるのは、「1dayインターンシップ」についてです。我が社の企業ブログに載せられるわけもありませんので、場末の採用担当として、個人ブログで思いっきり書かせてもらいます(笑)

1dayインターンシップって何?

1dayインターンシップとは、いわゆる新卒学生を中心とした未就業者が、実際に就職する前に、業界体験や就業経験を模擬的に積むことができる「インターンシップ」の時間短縮・変形ヴァージョンのことだと思ってください。文字通り、1日で完結するので、インターンシップ、というよりは、どちらかというと企業の採用活動と一体化した就業体験イベントのようになってきています。

インターンシップがいよいよ根付いてきた感あり

僕が就職活動をした1999年当時でも、非常にマイナーでしたが、いわゆる「青田買い」としてのクローズドな形のインターンシップはすでに存在していました。例えば、先輩OBの紹介経由や、どこからか入手した早慶東大の名簿などを元に、一部大手企業が大学限定等の青田買いとセットになったインターンシップを実施することが多かったように思います。

しかし、ここ10年ほどで、状況はかなり変わりました。一部の感度の高い学生や有力大学だけの狭いイベントだったインターンシップも、産官学を挙げたプロモーションが奏功して、ここ最近は幅広く認知され、いよいよ大学3年製の年間イベントとして根付いてきているように感じます。

マイナビのお手盛り統計ではありますが、学生の半数がすでに何らかの形でインターンシップに参加してきており、僕の学生の頃とは隔世の感があります。

通常のインターンシップは結構ハード

僕の会社はいわゆる中堅どころのSierですが、システム受託開発の部隊も幸いにして社内に恒常的に開発体制を持てているため、何とかインターンシップを実施できる環境があります。

東京・大阪・名古屋に事業所があるのですが、3事業所合わせて夏の間に70名~80名は受け入れます。全10営業日の就業体験プログラムを学生の夏休み中に3回転させる、それはそれは受け入れ側の採用担当にはタフでハードな「インターンシップ夏の陣」が展開されています。

もちろん、受けてもらう学生側もそれなりに大変です。参加する学生の大半はプログラミングなんかやったこともありませんが、それでも、その10日間の間に、有無をいわさずプログラム言語を習得してもらいます。

そして、グループ学習で簡単なWebシステムを構築してもらい、それを仮想客にプレゼンする、というところまでを1日8時間取り組んでもらっています。中には、自主的に居残りなんかもして取り組んでいく学生なども結構いて(決して残業を強要してないですよ!)かなり学生にもタフな内容なのではないかと思います。

割と本格的な分、システム開発のエッセンス位は余すことなく伝えることが出来たので、毎回学生さんの満足度は高いのが、やっていてよかったなと思う点です。

インターンシップを実施する際の企業側のメリット

ところで、企業側のインターンシップ実施の最大の意義ってなんだかご存知ですか?

それは、ずばり、翌年度の新卒採用につなげることです。3年生の夏の間にインターンシップに参加した学生が、まるで鮭が遡上するかのように、4年生の春に戻ってきてくれて、「御社が第一志望です」と相思相愛の形で採用が決まる。大体、何もしなくても、企業としてまじめにインターンシップをやっていれば、毎年3%~5%位は入社してくれます。インターンシップを社内調整して毎年大規模に実施すると、かなりの工数と費用がかかりますが、それでも十分モトが取れる投資なんです。

まぁ、マイルドな青田買いができるということなんですね。

中にはあからさまに採用直結であることを学生に隠さない企業なんかも結構あって、インターンシップ終了後に、優秀な学生さん向けに「内定パスポート」的な約束手形を切る会社もあるようですね。(国産ERPパッケージ会社のW社とか結構有名よね?)

もちろん、厚労省の外郭団体なんかから回ってきた企業向けアンケートには、「採用直結」とか「青田買い」のために役立ててますなんて書きません。新卒一括採用が念頭にあるため、現状ハッキリ「青田買いをやってます」なんて書いたら、頭の固い役所には引かれてしまい、まずいわけです。

それで、各企業は本音を隠して、「産官学連携での社会貢献のために役立った。」とか、「今年の学生のリアルな就業意識をつかむことができた」なんてそれらしい文言で当たり障りなく回答するのですけどね。

つまり、これまでは、企業側もやや遠慮がちにインターンシップを採用に役立てていたというわけです。

しかし最近潮目が変わり、あからさまになってきた

しかし、そんな遠慮がちなインターンシップ経由の採用活動も、昨年度あたりから各企業側の余裕がなくなり、あからさまにガツガツ展開されるようになってきたのです。

その一番の理由は、安倍政権下での採用スキームの変更です。昨年度、安倍総理の圧力?を受けて、経団連は企業の新卒採用内定出し解禁時期を、それまでの4月から8月に強引に変更しました。

結果、これは単なる改悪だったわけですが(●`ε´●)、企業は例年よりも後ろだおしで、かつ短期決戦での採用活動を強いられることになりました。

ただし、学生や学校側は心配なので、いつもどおり2月、3月頃から動いているだろうと予測されました。企業側は、その間、直接の採用活動はできませんが、何かやっておかないと学生の心をつなぎとめることができません。そこで、最有力な対策として浮上したのが短期決戦でのインターンシップ・・・という名の採用活動でした。

大学3年時みたいに、1週間とか10日間とか学生を拘束することは出来ないけれど、2,3日、あるいは1日なら学生も気楽に来てくれる。ならば、ということで台頭してきたのが、「1dayインターンシップ」に代表される短期型インターンシップです。

1dayインターンシップは事実上の選考活動

1dayインターンシップでは、文字通り1日間で終わってしまうので、当然何か凄いことができるわけではありません。

ものづくりの会社なら、午前中に会社説明を行って、午後から工場見学をやって、おみやげを渡して終了、とか、IT系の会社なら午前中に説明会、午後には営業提案のシミュレーションゲームや、グループディスカッションなどでお茶を濁して終了、とかそんな感じです。

ハッキリ言って、もうインターンシップでもなんでもなく、単なる会社説明会、いや、もっと言うと学生の名簿集めであります。

学生側は、こんな1日きりの付け焼刃的なイベントで就業体験ができるのかというと、全く無理なわけです。せいぜい「面白かった~」的な前向きな感想が残ればいいところ。

でも、企業側は、必死です。イベントであってもしっかり各参加者の名簿リストを収集し、かつグループ活動をやらせた際のパフォーマンスも細かくチェックしているのです。事実上の1次選考のような感じですね。ここでおめがねにかなった学生を、後日のフォーマルな採用選考会に呼ぶのです。

しかし学生側もそこはよくわかっていて、インターンシップは常に青田買いと表裏の関係にあることは百も承知です。キャリア体験としての文脈で得られるものは薄そうであっても、意中の会社であれば必ず参加しにいくわけですね。

いわば、本音と建前はお互いわかってやっている茶番となりつつあるんですよね。

かくして、インターンシップ本来の産学連携教育の高邁な思想・目的は骨抜きにされた、日本ならではの独自発展したガラパゴス的就業体験イベントの最終形としてできあがったのが、1dayインターンシップだったのです。

しかし1dayインターンが採用構造を変える起爆剤になるかも?

今まで見てきたように、この1day型インターンシップですが、すでに本来の目的・意味としては換骨奪胎されてはいて、中身はスカスカなのです。が、そこは腐っても「インターンシップ」という名称はあるわけで、これが学生側にも、企業側にも通常一括採用とは別途「インターンシップ」と言う形を制度として根付かせる燃料にはなっているんですよね。

例えば、この記事にある通り、今年のインターンシップ実施率は過去最高となっており、大手も1dayに代表される短期型のインターンシップをガンガンやっています。ということは、インターンシップ経由の青田買い採用も過去最高になるはずなんです。

それは、すなわち横並びでの新卒一括採用慣行から、欧米型の通年採用へのゆるやかな、でも不可逆的な移行が、この17新卒採用からようやく始まったんじゃないかな、という予感を少し抱かせます。

日本独自で発展してきた新卒一括採用は、新卒者の失業率を一時的に押し下げるメリットもありましたが、近年はデメリットのほうが目立つようになってきていました。

できる人材も画一的に20万前後の「新卒賃金」で実力以下に賃金がダンピングされがちだったり、一度失敗したら特定企業には「新卒枠」としての入社チャンスはもう二度と無いなど。こういった硬直した採用構造が、企業活動の活性化にマイナスになってるのでは?という議論ですね。

これが、1dayを始めとした変形型インターンシップも含め、インターンシップ型採用と一括採用がしばらく並び立つ形に変わってきた印象があります。特に、東大や京大、早慶といった有力大学が秋季入学、秋季卒業を本格化させつつあることも、企業側でのインターンシップ経由の採用強化を後押しする効果が高そうです。

結語

もちろん、すぐには新卒一括採用文化はなくならないと思います。あと20年、30年は重厚長大産業や経団連系の大企業を中心に、一定数は残るでしょう。ただ、その一方で、従来の新卒枠以外のところから、通年での新卒採用枠ができてくるのであれば、やや遅きに失した感はありますが、良い方向に向かうのではないかなと思います。

その最初のドミノを倒すのが、チート的な1dayインターンシップに代表されるお手軽インターンシップの普及になりそうだ、、、っていうのがいかにも日本的で、奥ゆかしいなと思う今日この頃です。新卒の皆さん、今年もタフな就活戦線が始まりますが、是非がんばって下さいね。

それではまた。

かるび