あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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【緊急まとめ】3分でわかる「トルコ至宝展」の3つの注目点!

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かるび(@karub_imalive)です。

国立新美術館で開催中の「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」も気がつけば会期終了の5月20日まであと1週間足らずとなりました。

本展は、2007年に開催された「トプカプ宮殿の至宝展」以来、約12年ぶりに開催された「オスマン・トルコ」時代の美術品を特集した展覧会です。展示された約170件の作品はほぼ全点が初来日作品となっており、僕も会期終了前にもう一度しっかり観てこようと思っています。

そこで、今回はまだ観ていない方のために、ポイントを3つに絞って「3分でわかる3つの注目点」をまとめてみました。

注目点1:やりすぎ?!贅を尽くした宝飾類の超絶技巧!

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「儀式用宝飾水筒」オスマン帝国、16世紀後半

本展の最大の見どころは、数百年にわたって繁栄した、オスマン・トルコの王様(スルタン)が造らせた、贅を尽くした王侯貴族の宝飾品や財宝です。まるでRPGゲームやマンガ、アニメのように、現代の我々が「金銀財宝」を想像した時に思い浮かべるようなキラキラの財宝が、まるで宝箱を開けてそのまま持ってきたかのような感じで展示されているのです。まさに圧倒的な美しさ。

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「ターバン飾り」オスマン帝国(インド様式の影響が見られる)、17世紀

巨大なエメラルド、ルビー、水晶、真珠などが嵌め込まれた儀礼用装飾品や、柄の部分が丸々エメラルドで造られた短剣など、呆れるくらい贅沢できらびやかな宝飾類を見ていると、かつて栄華を極めたオスマン・トルコ帝国の繁栄を否が応でも感じざるを得ません。

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「宝飾つるし飾り」オスマン帝国、18世紀末~19世紀初頭

深い鑑賞知識は一切不用で、誰が見てもわかりやすく美しい展示です。まずはこれらを思いっきり楽しんでみて下さいね。

また、ちょっと余裕があれば、単眼鏡を持っていって当時の名もなき一流の職人達が細部にわたるまで徹底的にこだわり抜いて作り上げた超絶技巧ぶりを確認するのも面白いですね。

注目点2:布系の展示はとにかく「チューリップ」を探せ!

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「クッション・カバー」オスマン帝国、17世紀(両方とも)

でも、今回はわかりやすいほどにきらびやかな金銀財宝類は意外と多くない印象。そのかわり、スルタンを始め王族メンバーが着用していた絹織物などの服飾類や靴、カバン、小物入れ、絨毯、テントといった「布系」素材の展示が多めになっています。

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ちゃんと靴にもチューリップの文様が入っています
「長靴」オスマン帝国、16世紀後半

入り口近辺に展示されている金銀財宝類に比べると、若干地味かな??と一瞬思ってしまうのですが、そこでガッカリしてはいけません!

なぜ、敢えて一見地味めに思えるけれど、「布系」の展示が多いのか?それには、本展のテーマと深く関わる理由があるのです。

試しに、本展の英題を見てみてみましょう。「The Treasures and the Tradition of "Lâle” in the Ottoman Empire」となっていますよね。この中で注目したい単語は「Lâle(ラーレ)」、トルコ語で「チューリップ」という意味です。つまり、本展で主催者が鑑賞者に提案しているのは、数世紀にわたるオスマン・トルコが育んできた文化を「チューリップ」で読み解いてみませんか、ということなんですね。

そこで、本展ではぜひそういった一見地味に見える「布系」の展示物の中に散りばめられた、共通するモチーフ「チューリップ」を見てほしいのです。すると、展示アイテムの至るところにオスマン・トルコの国花ともいうべき「チューリップ」が文様やレリーフとして装飾に使われていることに気づかされるでしょう。

その出現頻度はまさに異常なほどです。日本人は「サクラ」が大好きですが、ここまで日用品にサクラづくしにすることはありませんよね。展示を見ていくと、トルコに生きる人々にとって、どれほどチューリップが大切な存在であるのかよくわかります。

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「チューリップ用花瓶(ラーレ・ダーン)」オスマン帝国、18~19世紀

これはちょっと文献やネットで調べてみるとわかるのですが、チューリップの発祥や原産地の一つが、現在のトルコ領土となっているアナトリア半島だと言われているのですね。

世界史の授業では、17世紀にオランダでチューリップ・バブルが起こり、その後もチューリップの一大産地として栄えたとしか教わりませんよね。だから、ついついオランダがチューリップ発祥の地だと思ってしまいがちです。僕もそうでした。

でも、そうではないのです。あくまで、オランダ人はトプカプ宮殿に美しく咲き誇っていた美しいチューリップを見て、これをヨーロッパに最初に持ち帰ったにすぎないのですね。

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「タイル」オスマン帝国・イズニク、16世紀後半~18世紀前半

とにかく、彼ら王族が身にまとった服飾品や、香炉、陶磁器などの日用品のデザインや柄をよーくチェックしてみて下さい。ほぼ全てのアイテムのどこかしらに「チューリップ」が配置されています。ちょっとした宝探し感覚で見ていくと、断然展示を見るのが面白くなってきますよ!

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梯子みたいなものにまで、ちゃんとチューリップ文様が入っています!
左:「梯子」オスマン帝国、19世紀
右:「サイド・テーブル」オスマン帝国、19世紀

注目点3:東西文化の要衝として栄えたイスタンブル

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会場内解説パネルより、トプカプ宮殿の当時の情景

トプカプ宮殿があったイスタンブルは、紀元前7世紀に「ビュザンティオン」としてギリシャの衛星都市として建設され、その後ローマ時代の「コンスタンティノープル」時代を経て、現在までずっと東西文化の要衝地として栄え続けています。

その特殊な地理的条件を反映して、オスマン・トルコ時代に歴代のスルタン達が収集した美術品も、東西文化それぞれの影響を受けたものがズラリ。ヨーロッパ文化の影響が色濃く反映された工芸品や絵画もあれば、中国・日本から輸入した陶磁器なども展示されています。まさに文化のるつぼ。様々な文化の影響を受けて形成されていったトルコ文化の面白さがたっぷり感じられますよ。

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ヨーロッパ風の七宝と鋼鉄製の細密工芸の傑作!
「香炉」オスマン帝国、19世紀

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歴代スルタンは、特に中国の陶磁器をこよなく愛したという・・・
左:「バラ水入れ」中国・清代、1700-25年/中:「急須」中国・清代、1700-25年/右
:「染付水差し」中国・明-清代、17世紀中期

展示最終コーナーでは、19世紀に日本とオスマン・トルコが交流した際、交流を記念して互いに贈りあった当時の美術品も展示されています。日本へ里帰りした江戸~明治時代に制作された花瓶や七宝、飾り棚や机なども展示されていました。

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日本からの輸入品にも、「チューリップ」がちゃんと描かれています!
左:「染付瓢箪型瓶」 瓶:日本・有田、1655-70年 銀製蓋:オスマン帝国、17世紀
中:「染付瓶」 瓶:日本・有田、1660-80年 銀製蓋:オスマン帝国、19世紀(?)
右:「染付カラック(芙蓉手)皿」 日本・有田、1670-1700年

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左:鏡(鏡枠)日本・明治時代 トルコ国立宮殿局コレクション
右:段違い飾り棚 日本・明治時代 トルコ国立宮殿局コレクション

もちろん、超一流の作品!・・・というわけではないのですが、こうした日本からの贈り物が今もトプカプ宮殿博物館で大切にされているのだと思うと、少し感慨深いですよね。

まとめ

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左:「備えつけ時計」ドイツ、18世紀末
右:「暖炉時計」フランス、1780~90年

近年、トルコにおける文化財保護についての法律が強化された影響で、以前に比べて文化財を国外に持ち出すのが難しくなっているそうです。そのため、2007年以来本当に久々の「トルコ展」となった本展。

東西文化の要衝として古来から栄えたトルコならではの、エキゾチックな香りのする美術品の数々は必見です。東京展は会期終了まであと1週間となりました。ぜひお見逃しなく!

それではまた。
かるび

※本エントリで使用した写真は、予め主催者の許可を得て撮影したものです。

展覧会情報

展覧会名:「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」
会場:国立新美術館 企画展示室2E
会期:2019年3月20日(水)~5月20日(月)
公式サイト:https://turkey2019.exhn.jp/