あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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凄まじい画力の猫絵師・陳珮怡の個展に行ってきた!【感想・レビュー】

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かるび(@karub_imalive)です。

上記の画像、どう見ても写真に見えますよね?!

でも、違うんです。これは写真ではなく、実際に岩絵の具で描かれた細密絵画の一部なのです。しかも、原寸大ではなく拡大部分画像なのに、全く筆使いの跡が見当たりません!すごすぎます。

最近の美術展では、「超絶技巧」という単語をしょっちゅう聞くようになりました。丁寧な手仕事で仕上げられた細密工芸や細密画の展覧会が一気に増えてきた感触があります。また、細密絵画ばかりをコレクションしたホキ美術館、陶磁器や七宝などの優品が世界的に注目される清水三年坂美術館など、「超絶技巧」系の作品を主に収集している美術館の人気も高まってきています。

そんな中、今回行ってきたのが、銀座「ぎゃらりい秋華洞」で開催されている「ネコ」の超リアルな細密画で注目されている台湾出身の画家・陳珮怡(チン・ペイイ)さんの個展です。

早速ですが、感想レポートを書いてみたいと思います!

1.陳珮怡さんについて紹介

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非常にエネルギッシュな雰囲気もある陳さん

僕は個展開催初日に行ったのですが、ギャラリー内に常駐していた陳珮怡(チンペイイ)さんと運良くお会いすることができました。早速記念写真を撮らせていただき、少しお話を伺いました。

陳さんが猫の細密画を初めて描き始めたのは、台湾・東海大学大学院(※日本の東海大学ではない)を修了した直後の2011年。日々3匹の猫たちと暮らす陳さんにとって、猫たちは単なるペットではなく、人生の大事なパートナーなのだそうです。

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作品制作も大好きなネコと一緒です。

大好きな3匹の愛猫との日常生活を送る中で、彼らが一瞬のうちに見せる様々な表情をスナップショットのようにとらえ、作品に残し続けること7年。気がついたら、台湾で最も注目される「猫」を描く人気絵師となっていました。

彼女の凄いところは、油絵の具ではなく、伝統的な中国絵画や日本画同様、膠彩で描いているということ。これ、本当に驚きました。

ちょうど初日の夕方、彼女の応援にかけつけた池永康晟先生も、レセプションのスピーチで「僕にはこんな凄い絵は描けない。悔しい」と変則的な言い回しで絶賛されていました。

池永康晟先生といえば、現在静かなブームとなっている「美人画」ジャンルで最も注目されている人気作家の一人ですが、元々彼女を発掘したのが池永先生でした。台湾のアートフェアで偶然作品を見てから、「日本人では描けない冷徹な目と圧倒的な作画能力を持っている」と高く評価し、ぎゃらりい秋華洞を通じて彼女を日本へと紹介したのです。

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秋華洞の入り口看板

実は、すでに池永先生と陳さんは昨年11月に秋華洞にて「池永康晟・陳珮怡二人展」を一度開催した実績がありました。そしてこれがきっかけとなり、2018年11月にはこれまで描いた作品をまとめた画集が青幻舎から発売されることが決定。今回の個展は、この画集発売を記念して開催されたものとなります。

現在Amazonでは予約受付中となっていますが、すでにギャラリー内ではいち早く販売が開始されていました。また、都内の大手書店でも一部店頭に並んでいるところがあります。(11月11日、丸善丸の内オアゾで確認)

展示が気に入ったら、その場で画集も手に入れてしまいましょう!

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お店の中で販売されている画集

2.驚異の作画技術。展示作品を紹介!

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左:陳珮怡《被裡窩(ごろり)》/右:陳珮怡《警戒》

彼女がどれだけ凄い技量を持っているかは、ギャラリーで直接確認して頂いたらすぐにわかるのですが、こちらでも画像を使って説明しておきますね。

たとえば、上の写真の右側の作品《警戒》。ネコが姿勢を低くして獲物を狙っているような鋭い目つきで何かを睨んでいますね。

これを、原寸大以上に拡大した部分図がこちら。 

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どうですかこのすごすぎる技量。原寸大より拡大しても、ほとんど写真にしか見えません。でも、陳さんにお聞きしたところ、たとえばヒゲなどは、実際よりも長くしていたり、写真より「盛った」描き方をしている箇所もあるそうです。たとえば、淡く七色に光るネコの瞳なんかも、実物よりも美しく描かれているような気がします。

さらにこの絵のもっと凄い点は、ネコが座っている絨毯の質感なども、完璧に表現されているところ。足元を見てみましょう。温かみのあるペルシャ絨毯が描かれています。

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これを更に拡大すると、こんな感じ。模様や縫い目、絨毯の質感まできっちり1つ1つ描きこまれています。 

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そしてさらに拡大してみます。 

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どうでしょうか。ここまで拡大すると、1つ1つ絵の具が置かれていたり、 線が手作業で引かれていたりと作家の筆使いが感じられ、確かに写真ではないことがわかりました。虫眼鏡でみないとわからないくらいの細かい手仕事は、見事としか言いようがありません。

その他にも、個展では2018年の新作を中心に約10点が展示されていました。

いくつか、簡単に紹介したいと思います。

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陳珮怡《親情(親の愛)》

2匹のネコが体を寄せ合って、あたたかそうに目を細めています。心温まる構図でした。毎日眺めていると元気を貰えそうな1枚です。ちなみに、背景の模様も全て彼女が手作業で描いています。 

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陳珮怡《被裡窩(ごろり)》

タイトルそのまんま、あたたかそうな毛布の上に、丸まってゴロゴロするネコ。こちらを見つめるちょっとびっくりしたような目つきと、差し出された左前脚がかわいいです。

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陳珮怡《獅子吼》

続いては、こちらを向いて、口を一杯に空けて威嚇するネコ。よーく見ると、頭のところの毛が赤く塗られていたり、長すぎる舌が一直線になっていたり、ヒゲがゴージャスすぎたりと、ところどころ写真以上にドラマティックに描かれていますよね。目を凝らして丹念に見ていくと、確かに写真以上に思い入れを持って描かれた部分が見えてきます。

他にもまだまだ個展では魅力的なネコたちが待っています。僕が行った初日にはすでに売約済みとなっている作品がかなりありました。(ざっと半分くらい?)きっと今回の個展で完売しちゃうかもしれませんね。

3.祝!画集「猫さえいれば」発売!

冒頭でも書きましたが、青幻舎から初の画集「陳珮怡画集 猫さえいれば」が発売中です。僕もAmazonでポチりました。届くのが楽しみです! 

4.まとめ

今回の個展や画集発売をきっかけに、日本での人気が更に高まりそうな陳珮怡さん。11月19日まで開催中の個展で発表されている作品は、全て写真撮影OK&SNSへのアップOKとなっています。銀座・ぎゃらりい秋華洞に気軽に立ち寄り、その驚異的な技量で描かれた魅力たっぷりのネコの細密画を堪能してみてくださいね。

それではまた。
かるび

個展開催情報

秋華洞「陳珮怡個展」
■ 展覧会期間:11月9日(金)~11月19日(月)
10:00~18:00 会期中無休 入場無料
■ 会場:「ぎゃらりい秋華洞」
東京都中央区銀座6-4-8曽根ビル7F
https://www.syukado.jp/feature/2018/11/chen-pei-yi.html