かるび(@karub_imalive)です。
寒くなってきましたね。冬のボーナスがもう早い会社だと今週末あたりに出た人もいるかもしれません。
さて、Sier、特にかるびの所属しているような中小Sier(概ね300人以下位)に勤務していると、この時期あたりから翌年3月位まで、エンジニアの退職者が目立つようになります。かるびは採用担当という立場なので、何よりもつらいのが退職者を送り出すことなのです。大手Sierと違い、中小Sierの泣き所は退職率の高さ。
今日は、そんな中小Sierの退職について少し考えてみたいと思います。
中小Sierの平均退職率はどんなものなのか
これはなかなかいいデータがないのですが、リーマン・ショックが終わってから落ち着いてきた近年は、概ね10%~15%位であると推測されます。下記の記事でもそんなものである、と書かれています。かるびの会社でもここ数年は10%~12%くらいで収束していますので。
また、厚生労働省の平成26年度雇用動向調査結果によると、Sierを含む情報通信業が11.3%、一番離職率が高い飲食サービスで31.4%ですね。(飲食の突出ぶりすごいですね)
退職理由は意外にもお金ではない
これはかるびの自社退職者を分析した統計上のデータからわかったのですが、中小Sierの退職理由って、お金がNo.1の要因ではないんです。大手なら、なおさらお金より他要因の占める要素が高くなるでしょう。
Sierの平均給与において、上場企業は450万~650万程度のレンジに収まっていることが多いです。それに対して、かるびのような中小Sierは400万以下の場合が多いです。給与格差はやはりかなりあるんですね。
だから、景気回復とともに転職市場が活発になり、実力のあるエンジニアは、もっと給与の高い大きな会社に行くのが自然な流れです。よって、それが転職理由なんだとずっと思っていました。でも、よく分析したらお金は一番の理由ではなかったんですね。
1番の退職理由はマネジメントの拙さだった
「2000万円でもいいです。お金じゃないんです、ホントに」欲しいのは、本当は金じゃなくて、誠意なんだ!と悲痛な叫びを上げたのは、2007年オリックスとの残留交渉で決裂したノリさんこと中村紀洋でした。そして、これ、ITエンジニアの場合も同じなんですよね。
彼らに退職を決意させる一番の要因は、「お金」じゃなくて、自分がそのプロジェクトや会社で必要とされているか活躍できるのか、あるいは、プロジェクトで体力的・精神的な面で不安なくやっていけるかどうか、それが一番大きいんです。
もう少し具体的に言うと、以下のような感じ。
具体的な退職理由としては・・・
例えば、以下の理由が多いです。
こんな感じですね。これらは、主に2つの共通要因が根底にあります。すなわち、1)現場でのマネジメントの失敗と2)経営的なマネジメントの失敗の2つです。これら両輪のうち1つ、または両方損なわれると、社員の気持ちは一気に退職へ流れていきます。
1) プロジェクト現場のマネジメントが悪い
中小Sierなので主に常駐/派遣先のプロジェクトが多くなります。派遣的な案件は、ハズレ案件に参入した際、かなりの高確率で問題が発生します。
派遣ゆえ自社からの客先プロジェクト側へのコントロールが効きません。下請けならではの力の弱さもあり、待遇改善交渉は不発に終わりがちです。
そこへ、炎上案件での元請け側のプロジェクト管理体制の甘さが目立ち、具体的な目的、説明のないまま長時間残業が慢性的に続くと、一気に現場にいる社員は気持ちが萎えて退職に気持ちが動きます。
また、チーム単位での参画ではなく、一人常駐となった場合も、社員の帰属感が薄れて会社から気持ちが離れる要因になります。
2) 経営的なマネジメントが悪い
管理リソース不足、能力不足から、各社員の目指すキャリアの方向へ対応しきれないケースが多発します。結果として、(案件を用意できず)本人の意にそぐわない案件へ長期間固定してしまったり、社員の大半が客先常駐対応ばかりとなったり、自社独自のサービスが打ち出せずにいる中小Sierはかなりあります。これらから、会社の将来性や成長性を疑われたりした時に気持ちが折れてしまうようです。
また、最近多くなってきたのは、社員の求めるワークライフバランス=働き方の多様性に対して、Sier業界特有の長時間常駐型のワークスタイルが合わなくなってきていること。男性だって育休を主張する時代です。それなのに、相も変わらず長時間残業が前提の派遣常駐しか就労メニューを用意できないのは大きなマイナスになりつつあります。
お金の問題は副次的に発生する
まず、現場や経営的なマネジメントの失敗から、モチベーションの落ちた社員は転職を検討し始めます。すると、転職市場を見た時に、少なくとも中堅以上のスキルを保有するITエンジニアにとっては、現在の市場感は完全に売り手優位の状況とすぐに気が付きます。
そこで、「うわっ、私の給料低すぎ・・・」と、この絶好の転職の好機における自分の市場価値に気づくのですね。
2015年冬の現状の市況感なら、中小Sierで働いている技術者であれば、普通に転職活動をするだけで、勝手に年収ベースで50万~100万程度は上がってしまうポテンシャルはあるんです。だから、結果的に転職すれば給与もアップしていきます。
こうして、後付で転職活動のおまけみたいな形で、金銭的な原因があったように錯覚させられるような状況が生まれます。
次の転職先が決まった退職者から転職先企業状況をヒアリングした際に、情緒的に表面的なところしか退職理由を分析してないと、「どうせお金が原因で高い会社へ行ったんだろう」などと事実誤認してしまいがちになるんですね。そうではなくて、マネジメントができてなかったからなんですよ。社長さま。
まとめ
ちょっと前まで、Sierの社会的ステータスが高かった2000年代前半位頃までは、「とにかく常駐して頑張ってこい!」ってことで社員を現場に送り出しておけば、勝手にあとはみんな残業して頑張ってくれました。ステータスも高かったし、みんなそういうものだと思ってました。
でも今はもう違います。以降、IT業界不人気化による人手不足の慢性化、働き手のコンプライアンス意識の向上や一人ひとりの労働観の多様化が加速します。2015年現在、社員のモチベーションを適切にコントロールする観点から、常駐メインの請負開発だけを手掛ける中小Sierには、プロジェクト管理や経営管理が非常に難しくなってきていると言わざるを得ない。
請負開発メインの中小Sierは、派遣・SES(準委任)契約での客先常駐が中心になる以上、上記課題と真剣に向き合わないと、すぐに従業員は不満を抱え、退職への動機を膨らませてしまいます。そして、それが結果として早期離職、同業他社への転職へとつながっていく。
今日の話として、社員のリテンションは、お金じゃなくてマネジメントの巧拙が左右する、という結論でした。じゃあそれをどうしたらいいのか?という話はまた別のエントリで。
それではまた。
かるび