あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と映画にがっつりはまり、丸一日かけて長文書くのが日課になってます・・・

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サイレントお祈りはなぜ横行するのか?~企業がお祈りメールすら出さない理由とその対策~

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かるび@元中小Sier採用担当です。

今日、Yahooのトップページを見ていたら、こんな記事がありました。

記事によると、毎年の新卒採用において、40%近くの大企業は、採用面接終了後に学生を落とす際、メールや電話等の通知すらよこさないといいます。

通常、採用選考に落ちた際は、その企業から「◯◯さんの益々のご活躍をお祈り申し上げます」で締めくくられた通称「お祈りメール」が来るわけですが、これすら来ないので、「サイレントお祈り」と数年前から言われるようになりました。

まぁ、ぶっちゃけ就活での毎年の風物詩なのであります。

今から約25年前、つまりバブル期に話題となった若者の就職活動をコミカルに描いた映画「就職戦線異状なし」(1991年)の原作でも、出版社からのアナウンスメントで、こんなくだりがあります。

「最終試験にいらしていただく方には、ご自宅の方に明後日の午後七時から八時の間にお電話を差し上げます。お忙しいこととは思いますが、その時間帯は在宅していて下さい。残念ながら不合格になった方には連絡しませんが、今後とも当社の出版活動にご理解いただけることを望みます」

実際、僕も17年前に就職活動をした1998~1999年は、本当にこんな感じでした。まだ就活にインターネットや電子メールが活用されない「電話」中心の時代ですから、「◯◯日以内に電話がなければ、ご縁がなかったものと考えてください」と言われ、やはり落ちた際に電話が鳴ったケースはほぼ皆無でした。

ただし、一人ひとり電話で通知しなければならなかった昔とは違い、今や採用管理システム上などから、メール1本送るだけの手間なので、各企業には、せめて落ちた時の通知くらいはしっかりやってもらいたものですよね。

では、なぜお祈りメールすら来ない「サイレントお祈り」がいまだに幅をきかせているのでしょうか。

上記の東洋経済のエントリでは、大企業が無作法とわかっていながら、不合格通知すら出さない理由をこのように分析しています。

企業側は最初に合格通知を出す層に辞退者が多い場合のために、ボーダーライン上にいる層を第2次の合格通知者候補として残しておかなければならない。内定辞退者が予想よりかなり多い可能性を考えると、第3次、第4次に通知をする層も残しておかなければならない。最初のほうに出した内定者がすぐに辞退を決めれば次の層に拡大してすぐ通知できるが、内定者の多くが迷って時間がかかるかもしれないので、次の層に通知をするタイミングが事前にはっきりしない。そのために、時期を曖昧にしつつ連絡がなければ不合格といった結果通知の方法を取るのである。

つまり、合否ボーダーライン上の補欠合格者をいつでもキープできるように、あえてあいまいな状態にしたほうが企業側はやりやすいのだ、という意味なのですが、だったら、確定してからでもいいので合否をハッキリさせてほしいものですよね。

実は、これ以外にも、企業側がお祈りメールすら出さない理由や、連絡が遅延してしまうケースがあります。いや、理由になっていないのも結構あるのですが、とりあえずピックアップしてみますね。

「サイレントお祈り」が発生する、補欠調整以外の理由

理由1:忙しくて手が回らない

これが一番大きい理由かもしれません。

ここ数年、新卒採用・中途採用は空前の売り手市場が続いています。そのため、明らかに各企業における採用担当者の業務量は増えているのです。

例えば、新卒採用では、安倍政権が昨年度から就活解禁日を8月に繰り下げたため、通年採用をせざるを得なくなった企業が相当数ありました。また、学生の早期囲い込みのために、インターンシップも採用担当の通常タスクになってきています。これが重たいんですよね~。プラス、サービス業や好況業種などでは、業容拡大のために、各事業部門の要望を聞いて、中途採用も随時行わなければならない。

一昔前までは、採用職という仕事は、経理職同様、どこか季節労働者みたいなところがありました。1年の業務のピークが新卒採用が盛り上がる3月~6月頃で、あとは平常運転でOKでした。これが、今や年中業務のピーク、みたいな感じになっているのです。

にも関わらず、採用担当という仕事は、基本的に景気が良かろうが悪かろうが、一般的には経営陣から「コスト部門」と見られがちなため、業務量が増えても、ギリギリの人員で回そうとする。

こんな中で仕事をしているため、つい忙しくなってしまうと、まず「合格者」「選考中」の人材の対応を最優先で行うことで一杯一杯となってしまいます。「落ちた人」への配慮は後回しになり、お祈りメールを出し忘れていた、ということが頻繁に起こっていると思われます。

理由2:面倒だからやらない

これは駆け出しのベンチャーや、中小企業に多いのですが、つい最近、今年から採用担当になったばかりで、業務を理解していない、とか、何かの仕事と兼任しており、片手間でやっていたりと、業務理解や業務への意識が低い場合です。

面接の場では、「また連絡します」と伝えるのが単なる社交辞令となっているケースもありますね。得てして、こういう会社は中に入ってからもろくに労働法令を順守していないのでしょうから、結果的に連絡が来なくてよかったね、ということですね。

理由3:落とした人からのクレームが怖い

新卒採用の場合はあまりないのですが、中途採用だと、しばしばモンスター・クレーマーみたいな選考希望者が来ます。多くの場合は、そういった人材は面接中にすぐその異常性に気づいて、落とすことになるわけですが、正直な所、そういったクレーマー体質の人に対して、ネガティブな内容の連絡をするのは腰が引けるものです。

僕が現役の採用担当をやっていた時も、何度かはメールや電話にて「僕の何がいけないんですかね?!」的な感情的な反論を頂いたこともありますから。こちら側は手続き通り進めてはいるものの、労働関連法令は、労働者側に有利です。かなりあせりました。

実際は、弁護士や社労士に確認してもらった法的な問題をクリアしたテンプレートを使って機械的にメールか文書で通知すればいいだけなのですが、及び腰になり、ついつい、「まぁいいや」ということで、お祈りメールすら出さずじまいでうやむやに・・・ということも結構あるわけです。あ、言っておくと、現役時代、僕はそんなことしたことないですよ?

理由4:手続き上の遅延(社内承認待ちなど)

特に最終面接前の調整などでよく起こることです。選考プロセスが進んでいくと、業務多忙な上位役職者や役員との面接を設定しますが、なかなか面接の日程調整が決まらなかったり、あるいは、次の面接に進めていいかどうか上司の承認待ちのまま、選考対象者への連絡期限になってしまうことがあります。

この場合は、少し待てば、企業側から数日後に合否連絡が来ることもありえます。

理由5:部内での事務作業分担ミス

よくあるのが、業務のお見合いです。面接時に採用担当Aさんと採用担当Bさん両名で担当しましたが、その後のフォローアップについて、お互いが相手がやるものだと思っている場合。AさんはBさんに、BさんはAさんに任せたつもりでいるのですが、実際はメールが出せていませんでした。と言うケースです。

その他、連絡をしたつもりでしていなかったり、メールが不調で届いていなかったりという事務ミスもそれなりに発生します。

理由6:風邪で休んでいたり、休暇を取得している

冬場など、普通に風邪等で寝込んでしまい、期日までに求職者への連絡が遅延するケースは結構あります。上述したとおり、担当者の数が少なく、中には一人で回している会社もあるわけですから、こういったことは割と頻繁にあります。

また、外資系企業の場合は、連絡が来ないので、こちらから問い合わせたら「海外旅行に行ってます」みたいなのんびりしたところもあります。なんという個人優先(笑)。外資系でも、日本法人の場合はまだマシで、海外法人に応募した場合は、こんなことは日常茶飯事であります。

理由7:求職者側の聞き間違いや認識違い

意外に多いのですが、採用担当が、求職者側から「返事を受け取ってない!」と連絡をもらい、慌てて確認したところ、求職者側の単純な認識ミスだった場合です。

求職者が、履歴書に記載されたメールアドレスとは別のメールアドレスをチェックしている。あるいは、郵送で「お祈りレター」を送ると言ったのに、メールをずっとチェックしているとか。

実は海外でもサイレントお祈りは横行している

この「サイレントお祈り」、日本だけの現象ではなく、海外でも共通する求職者の悩みなんですよね。例えば、アメリカで2012年に約4,000人の求職者を対象に実施された企業調査では、アメリカでも、約75%の求職者は、求職活動中に「サイレントお祈り」を経験しているとのこと。つらいですね・・・。

Seventy-Five Percent of Workers Who Applied to Jobs Through Various Venues in the Last Year Didn’t Hear Back From Employers, CareerBuilder Survey Finds - CareerBuilder

サイレントお祈りへの一番の対策は問い合わせを入れること

さて、サイレントお祈りとなった場合、上記で書いたとおり、「敢えてわざと連絡しない」のではなく、様々な事情や行き違いがあって、連絡が遅れているケースがあるわけです。

もちろん、きちんと遅れるなら遅れるで連絡を入れてこない企業側に責任はありますが、事態を打開するなら、やはり求職者側から問い合わせを入れることが一番です。「◯◯までに合否連絡をします」と言われた期限から、3営業日程度待っても返事がなかった場合は、こちらから、連絡をしましょう。

サイレントお祈り防止の最強の対策は、面接後のお礼ハガキ

サイレントお祈りになってしまうのは、やはり何百人、何千人と選考を受ける中、採用担当者に強い印象を残せていないことが大きいです。面接の出来/不出来に関わらず、確実に採用担当者に覚えてもらうには、面接後にお礼ハガキを出すことをおすすめします。(メールでもいいけど、効果は半減)

ハガキであなたからの好意を受け取った採用担当者は、これで選考の出来/不出来に関わらず、「返報性の法則」により、あなたのことを無碍には扱えなくなるんです。その他凡百の求職者から一歩抜け出し、差別化ができるため、合格の可能性も高まるし、落ちていたとしても、少なくともしっかりと連絡はあなたのもとに届くはずです。

ほとんどの求職者がやらないけれど、非常に効果の高いワザです。サイレントお祈りの防止以上の働きをしてくれますので、ここ一番!の本命企業には、是非ハガキを出してみましょう。

まとめ

求職活動を開始したら、中途/新卒に関わらず、多数の会社の選考を受けるうち、必ずと言っていいほど、企業からのレスポンスを期限通りもらえない悩みにぶちあたります。そういった時、大半のケースでは残念ながら「落ちている」ことが多いです。 それは、以前以下の記事に書きました。

ただし、そこで諦めて泣き寝入りするのではなく、まずはダメもとでいいので、問い合わせを入れてみることは非常に大事です。

企業の採用担当側のモラルやマネジメントに問題があることは明らかなのではありますが、それを嘆いていても始まりませんからね。どうしても入りたい企業であれば、企業側の無作法は笑って流し、能動的に求職者側から動いてみる事をおすすめします。

それではまた。
かるび