【2016年7月22日更新】
かるび(@karub_imalive)です。
正月は、京都の実家にいつも帰省しています。・・・と言っても僕の実家は京都の最南端で、奈良県県境まで50mしかない田舎なのです。
元々は両親が転勤族だったので、この実家、両親が仕事引退後、終の棲家として選んだ場所です。僕は、社会人になってから、この実家を拠点に何度も京都・奈良へ足を運び、観光に行きました。
最初は、絢爛豪華な巨大建造物や超有名寺社のある京都に目が行きました。それが一巡してからは奈良観光にも精を出しました。今はどちらかと言うと奈良8、京都2くらいで観光に行きます。
昔から、観光地としては、「京都・奈良」とひと括りにして語られることが多いですよね。ですが、特にここ数年は存在感や受け入れ体制、観光客数、全ての指標において、京都が奈良を圧倒しています。
京都市が作成した「平成26年・京都観光総合調査」を見てみましょう。年間観光客数、宿泊客数、外国人宿泊客数、観光消費額、どれをとっても平成26年度に過去最高値を叩き出しています。凄い。
そう、体感的にも、統計データ的にも、一昔前は京都≧奈良位だったのが、今は、
京都>>>>>>>>>奈良
みたいな感じになってしまっています。
今日は、どうして奈良が京都に水を開けられてしまったのか簡単に触れてから、でも、それでも奈良に来るべき!3つの理由について、少し語ってみたいと思います。
1.奈良は観光地としてなぜイケてないのか(京都と比較)
1-1.京都vs奈良 観光客数の比較
もう、単純にグラフで見てもらいましょう。これが、ここ13年間の京都府、奈良県の年間観光客数推移となります。(縦軸:万人 横軸:年号)
引用先:
京都府平成26年観光入込客数及び観光消費額調査結果概要
奈良県平成26年観光客動態調査報告書
ここ数年で、京都は観光客数を大きく伸ばしています。京都が平成14年の6,522万人/年から、平成26年度はなんと8,375万人/年へと、実に28.4%増えています。対して、奈良は平成22年の平城京遷都1300周年記念イヤー以外は、ほぼ10年前から観光客が横ばいになっているわけです。
1-2.ネット上での関心度も京都>奈良
Googleキーワードプランナーにて、月間検索数も調べてみました。すると、観光客数の傾向の通り、こちらも京都系の検索が奈良系の検索数を遥かに上回っています。
1-3.京都が伸びている理由は、外国客を取り込めているから
少子高齢化が進行する中、京都の観光客受入が伸びている一つの理由は、外国客を取り込めているからです。こちらの朝日新聞の記事によると、アメリカの著名な雑誌で2年連続人気観光都市に選ばれたそうです。
米国の大手旅行雑誌「トラベル+レジャー」が7日発表した読者投票型の人気観光都市ランキングで、京都市が2年連続で世界1位に選ばれた。京都市は2012年は9位、13年は5位と順位を上げ、昨年初めて1位になった。今回は首位を守った形で、人気が定着してきたと言えそうだ。(中略)同誌は主に北米の富裕層をターゲットにした雑誌で部数は100万部近く、世界的な影響力を持つ。ランキングは、風景や文化・芸術、食事などの項目の総合評価で決まる。
実際に、京都市が毎年作成している京都観光総合調査では、外国人宿泊客がここ数年すごい勢いで増えている統計データが記載されています。震災後わずか4年で3倍以上になりました。
1-4.一方、奈良は外国人観光客対策が遅れがちになっている
一方で、奈良の状況はどうでしょうか。外国人観光客自体は増えていることは増えています。が、奈良県外国人観光客実態調査(平成24年)によると、同調査でのアンケートにおいて、「渡航前に不足した奈良県に関する情報」という項目では、軒並み高いパーセンテージの観光客が、情報不足を感じていたというデータがあります。
特に、交通手段や飲食店、宿泊施設や現地でのイベント情報等、大事な項目が渡航前に十分得られていないことがよくわかります。これじゃなかなか観光客を爆発的に呼びこむことは難しそうです。
1-5.奈良は外国人宿泊者を取り込めていない
上記理由があるからなのか、外国人は奈良は日帰りで訪問し、京都か大阪に宿泊する傾向のようですね。奈良市観光交流推進計画(PDF)によると、ちょっと古いデータで恐縮ですが、2006年度の大阪・京都・奈良の外国人客の動向についてまとめられています。
外国人観光客の宿泊日数をみると、奈良市内で1泊以上宿泊する外国人観光客は約3割にとどまり、多くが日帰りで訪れていることがわかる。一方、京都市では約7割、大阪市では約8割の外国人観光客が宿泊しており、5泊以上滞在する観光客も約1割いる。
ということは、奈良に行った外国人は、日帰りでささっと短時間でチェックした後、大阪か京都あたりの近隣県で宿泊していると言う推測ができそうです。
1-6.奈良は若い人にアピールできない街
若い人は、奈良では遊びません。大体京都か大阪、神戸に出てしまいます。なぜでしょうか?まず、奈良に気の利いたアウトレットやテーマパークのような大型アミューズメント施設がありません。ショッピングモールはイオン系を始め、いくつかありますが、街の中心部に美味しいお店やキレイなホテルもほとんどありません。
歴史的建造物や遺跡発掘による法規制もあり、街の開発も思うように進まない現実。
そして、商売っけのなさ。すぐにお店が閉まります。奈良市内の一番の繁華街でも、夜8時までにはシャッターがバッサリ降りてしまいますから。
奈良県民すぐ店締めるから夜中まで遊べないよ
— ぶぶ (@nrb09) 2016, 1月 12
1-7.そもそも奈良は宿泊客を収容するホテルの質も量も足りてない
外国人だけでなく、日本人にも日帰りされちゃうんですよね。他の都市に比べると、観光地なのに驚くほどホテルや旅館が少ないです。また、バラエティにも乏しく、老舗は老朽化しているところも多いです。
この記事によると、奈良のホテル数は全国ワーストだそうです。
これじゃ、日帰りにするか、他府県のホテルへ泊まるしかありませんよね。
1-8.日帰りばっかりだとお金も落としていかない
よって、遠方から来た観光客も、宿泊地は大阪か京都になっちゃいます。観光でお金を落としていくのは、やっぱり宿泊客がメイン。奈良県の平成26年度観光客動態調査報告書データでも、日帰り客は、宿泊客に比べると使うお金の量は約1/6にすぎませんから。
こうして、なかなか観光やインバウンド需要を起爆剤にして街全体を盛り上げていくことがなんとなくできずにいるのが、今の奈良の現状です。
2.それでも奈良に観光に行くべき3つの理由
いろんな指標を見ていると、もう奈良はオワコンなの?!と思ってしまいがちですが、とんでもないです。上手く初回訪問客にアピールできてないだけなんですね。
ここからは、何度も何度も足を運んだ結果、僕が京都より奈良を推す、幾つかの理由を書いてみたいと思います。(ここからは急にデータではなく単なる感想になります/汗)
2-1.奈良は落ち着いて観光を回ることができる
京都は特にここ数年、慢性的に人が多すぎです。特に、紅葉シーズンは有名スポットなどは入るだけで2時間待ちとか普通にあります。ここはディズニーランドか!!と毒づきたくなるほどの人口密度。
それに対して、奈良はいい意味でも悪い意味でも人が少ないのです。観光中心地の東大寺や奈良公園あたりは、さすがに土日は混雑します。でも、中心地を少し外れたらすぐに静かになり、落ち着いて回ることができます。若草山で鹿と思う存分遊べます。
特に、平日などは国宝クラスや重要文化財クラスが収められているお堂を独り占め、、、なんてことは本当によくあります。なんとも言えない贅沢な空間を味わえますよ。正月三が日以外は、ゆったりしているのが奈良のいいところです。
2-2.いい意味で田舎な雰囲気がどこまでも漂う
京都に遷都されて以来、ついに現代中核都市へと発展出来なかった街、それが奈良です。未だに、奈良時代の古都を彷彿とさせるノスタルジックで牧歌的な風景がいくらでも広がっています。有名な写真家、入江泰吉は奈良を中心とした大和路の写真を多数残していますが、こういった作品を見ると納得できます。
京都がきちんと造られた美観を売りにするならば、奈良は、自然と共存した郷愁漂う枯れた美しさがあります。
お薦めは、山の辺の道散策。自転車や徒歩でぶらぶら1日中歴史に浸りながらフィールドワークができますよ。(※冬は朝晩かなり冷えるから防寒は必須)
https://ja.wikipedia.org/wiki/user:663highland
2-3.歴史的建造物、資料は京都を凌駕する
歴オタ、歴女の方々ならわかって頂けると思いますが、奈良の歴史歴建造物や仏像などの文化財は、飛鳥時代や奈良時代に起源を発する物が腐るほどあります。神社仏閣の由緒書きを見ると普通に1200年~1400年前に建造されてたりしてて、京都とは古さのレベル感が違います。また、それに遡る古墳時代の王墓なども手付かずで残っていて、圧倒的な歴史の重みを感じられます。(すでに平成天皇の御陵も用意されている)
3.目立たなくて穴場だけど凄い奈良の寺社を少しだけ紹介
上記で書いた通り、奈良には京都のお寺よりも古く、お堂に国宝、重要文化財がゴロゴロしているにもかかわらず、マイナーで閑散とした寺社が多いです。ここでは、奈良北西部(もしくは京都最南端部)にあって、それなりにアクセスしやすいところでお薦めの寺社を少し紹介しておきますね。
3-1.新薬師寺
新薬師寺十二神将像
(引用:http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/a2/973954d0d41b0318dfde525faeaf5a32.jpg)
薬師寺じゃなくて、「新」薬師寺です。若草山のほとりにある小さなお寺ですが、このお堂の中に安置されている十二神将像と薬師如来像が本当にすばらしい。張り詰めるような神々しさです。夏でもヒンヤリとしたお堂で強烈なオーラに心震えますよ。
3-2.岩船寺
木津川市加茂町にある、行基が天平年間に開いた古寺です。庭園と調和した本堂、あじさいの映える三重塔は見事です。観光客は非常に少なく、この落ち着いた空間を贅沢に独り占めできます。個人的にお薦めの訪問時期は梅雨どきです。
3-3.浄瑠璃寺
同じく木津川市の古刹。岩船寺と合わせて回る事が多いです。こちらは紅葉が本当にみもの。シーーーーンとした空気の中、池に映える鮮やかに色づく木々と、バックの三重塔を見ているとあっという間に時間が過ぎていきます。また、本堂は国宝だらけ!お参りも心洗われますよ。
3-4.石上神宮
奈良県天理市の山の辺に位置する、物部氏の氏神として建造された神社です。非常に格式が高く、荘厳で男性的な雰囲気のする神社です。境内は掃き清められ、心ゆくまでゆっくりお参りができます。朝一の参拝が超オススメ!
3-5.大和神社
奈良県天理市の神社。こちらは、日本最古の神社と言われています。戦艦「大和」と同名であったことから、戦艦大和で戦没した英霊を合わせて祀っています。
3-6.秋篠寺
奈良市の古刹。奈良時代建立の本堂は国宝で、仏像類はまとめて重要文化財指定を受けています。近鉄平城山駅か高の原駅からバスでないと行けない、市内中心地からだいぶ外れた所にあるため観光客は少なめです。
3-7.西大寺
奈良市のお寺です。奈良時代、東大寺を意識して造営され、一時は南都七大寺として大いに栄えましたが、その後没落。今はひっそりと佇んでいます。近鉄西大寺駅から徒歩で行けます。境内は、お堂の跡(現在は焼失済)がそのままにされており、なんとも言えない哀愁が漂います。近年、JR西日本の紅葉PRポスターに選ばれて少し注目されましたが、マイナーな存在です。
まとめ
マイナーだけど、凄い歴史を重ねた奈良の寺社にポツーンと一人で拝観していると、いつも思うこと。それは、これだけのコンテンツが埋もれ放題で正直もったいない!ということです。そして、「これは誰かに教えてあげたい!」と思ってしまいます。
宿泊、飲食、交通、外国人受入体勢、どれをとっても正直パッとせず、2045年のリニア開通まではまぁこんな感じで行くでしょう。でも、上記で書いたように、見るべき所は山程あります。是非奈良に遊びに来て、まったり、ゆったり旅を楽しんでもらえればなぁと思います。
最後に、奈良大和路に生涯こだわり続けて風景写真を撮り続けた写真家、入江泰吉の仏像についての写真集を紹介しておきますね。郷愁を強く誘うノスタルジックな写真は本当に癒やされます。
それではまた。
かるび