かるび(@karub_imalive)です。
今日は、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで今日から開催となった西洋美術展、「フェルメールとレンブラント~17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち」に行ってきました。その感想を書いてみたいと思います。
1,初日だけど混雑していませんでした
到着したのは夕方18時過ぎ。実に5年ぶりくらいにヒルズの中に足を踏み入れました。ウインドウショッピングには目もくれず、会場の六本木ヒルズ53Fの展示会場へ直行します。東京会場が初日なので、もっと並んでるのかな~と思いきや、まさかの待ち時間ゼロ。すんなり入れました。
ただし、土日はかなりやっぱり混雑しそうです。朝一にでかけるなど、少しでも時間差で入れたほうがのんびり見ることができると思います。
2,展示会概要
17世紀のオランダ絵画全盛時代に活躍した画家達の、いわばオールスター展示会です。全48名、60枚の絵画が、ニューヨークメトロポリタン美術館、アムステルダム国立美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー(+個人所蔵いくつか)から集結しています。
一言先に苦言を呈すると、美術展タイトルである「フェルメールとレンブラント」が1枚ずつしかなかった件!いや、フェルメールが寡作なのは知ってましたが、1枚だけとは・・・T^T
せめてレンブラントを数枚取り寄せるとか、もうちょっと頑張って欲しかったです。集客上、大人の都合なんだろうな~。展示会タイトルに「フェルメール」って入っていたら人が集まりますからね。それだけ、しかし、さすがに本命が1枚ずつっていうのは美術展タイトルが独り歩きして誇張されすぎのような気がします。
が、サブタイトルどおり、「17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち」という意味では、まさに総力を上げた特集であり、結果的には十分楽しめるものでした。
ちなみに、借りた音声ガイドは550円。玉木宏がガイド音声でした。玉木、落ち着いた声でなかなか渋かったです。
3,オランダ黄金時代に花開いた絵画文化とは
まず、オランダって17世紀に世界最強の覇権国だったってこと、皆さん知ってました?
かるびは、あまり良く知りませんでした・・・確か長崎の出島でケチケチ貿易してたってことくらいしか(汗)高校の時、世界史を選択履修しなかったつけが、今のこの無教養さにつながっているのです。
そんなオランダが一番強かった時、政治経済だけじゃなくて文化面でも中心地になりつつありました。しかし、当時のオランダは絵画文化的にはまだまだ新興国であり、ローマ時代からの蓄積があるイタリアには勝てません。
世界の覇権を握ったオランダからも、レンブラントの師匠である、ピーテル・ラストマンなど、沢山の画家の卵がイタリアに絵画の修行に行っていたそうです。
彼らは修行後に、オランダに帰ってイタリア仕込みの絵を量産しました。16世紀後半に活躍したイタリアの天才、カラバッジョの影響を強く受けた、いわゆる「カラバッジョスキ」達や、写実主義の伝統に則った沢山の絵師がオランダで活躍していました。
音声ガイドによると、17世紀は貴族や王族に代わって、富裕層を中心とした市民がこうした絵画文化を支えたそうです。各家庭で、こぞって絵画を購入し、家に飾って客人をもてなしたといいます。
覇権国なので、食糧事情などもよく、衣食住以外の趣味を持つ余裕が一般市井にも浸透していたんでしょうね。(実際、展示されていた人物画は、二重あごのデブが実に多かった・・・)
4,オランダ黄金時代の作品の特徴
16世紀より前のルネッサンス系の絵画などは、総じてみんな頭の上に天使のわっかが乗っかったキリスト教の聖人やローマ神話に基づいた宗教画ばかりですよね。もう何枚幼いイエスとヨハネの寒そうな裸を見たことか(笑)
この17世紀は、宗教革命の影響などもあり、オランダではプロテスタントが主流となりました。プロテスタントでは、イエスやマリアなどの聖人等の偶像崇拝を禁忌としたため、絵画からも聖人達は一掃されていきます。
代わって登場したのが、市民を描いた肖像画、果物や異国の品を描いた静物画、海戦や漁業の様子を描く海洋画、人々の日常風景や自然を描いた風景画などでした。描き手の数も多く、画家はそれぞれ得意とするジャンルを絞って、お客さんのために描いて生計を立てていたとのことです。(と、玉木が熱弁を振るってました)
5,特に印象に残った絵画を紹介します
写真撮影は全面禁止だったので、画像を何枚か貼り付けて紹介していきますね。全作品リストは、こちらからダウンロードできますよ。
5-1:アールベルト・カイプ「牛と羊飼いの少年のいる風景」
まずこれ。カイプは、風景画のスペシャリストでした。中でもとにかく生涯ずっと牛ばかり描いており、まぁ大変な牛マニアであります(笑)
塩分を含んだ痩せた土地だった当時のオランダでは、農民は牛を使って必死に開墾し、労働手段だけでなく、その乳製品をカロリー源ともしていました。牛は富を生む繁栄の象徴で、聖なる生き物だったのですね。絵の需要もかなりあったそうです。この牛は、ちなみにホルスタインじゃないですね。ブラウンスイスかジャージー牛かな。
5-2:メインデルト・ホッベマ「水車小屋」
カイプが牛職人なら、こちらのホッベマはさしずめ「水辺の建物」職人です。彼もまた、水辺の水車小屋や、池のほとりに建つ一軒家ばかり描いていました。代表作はこんな感じのばっかり。かるびは、水辺の絵を見ていると非常に落ち着きます。この絵も、田舎ののんびりした情景が目に浮かぶような、涼しそうな作品でした。
5-3:ピーテル・デ・ホーホ「女性と召使いのいる中庭」
ホーホは街中や家の中の日常風景を得意としていました。例によって、彼は日常風景マニアなわけです。彼の作品群は、ほぼ全部日常風景に人物や動物が描かれるパターンで占められています。
この絵では、召使いが魚(なんかまずそう・・・)をさばこう?としている所を、後ろ向きの女主人がなにやら指示を出しているところです。女主人は後ろ向きなので顔が見えませんが、かなりデブふくよかで、裕福な家のようです。
5-4:フェルメール「水差しを持つ女」
これがメインその1でした。入り口から40数枚の絵を見てから「まだかな~」と焦らしきったところで満を持しての登場でした。が、すごく小さい絵です。40センチ✕40センチ位の作品で、これは混雑時は背伸びしないと見えなそうだな~。
日本初上陸とのことですね。フェルメールは、絵の中で地図や本など小道具にこだわりを持って描くことで有名です。この作品でも詳細分析によると、背景の地図を何度も書替えたようです。
そして、藍色のスカートは、通称「フェルメール・ブルー」と言われる独特の色使い。当時、このラピス・ラズリの岩石を砕いて作った「ウルトラマリン」と呼ばれる青色の顔料は、他の顔料の100倍以上の値段がつくほど非常に高価だったそうです。フェルメールは、この独特の青色に夢中になり、金に糸目をつけずガンガン使いまくりました。
5-5:レンブラント「ベローナ」
メインその2です。ちょうどオランダが神聖ローマ帝国からの独立交渉真っ最中であり、レンブラントもそれを意識してかローマ神話の戦いの女神「ベローナ」を描いたのでしょうか。・・・っていうか女神じゃなくて太ったオバちゃんじゃないですか?!
って、そう思ってるのは自分だけなのか??と思って心配になってツイッターで調べると・・・。
明日14日から始まる六本木の森アーツセンターギャラリー「フェルメールとレンブラント展」の報道内覧会へ。フェルメールの「水差しを持つ女」の繊細さに見とれました。レンブラントの「ベローナ」は戦の女神だけど普通のおばさんみたいです。音声ガイドが嬉しいことに玉木宏さんで聞き惚れました~!
— 下野綾 (@shimno_kanagawa) 2016, 1月 13
やっぱりどこにでもいそうなおばちゃんだよねぇ~(*´∀`*)
ものものしい鉄鎧に身を包んでいるにもかかわらず、このおばちゃんベローナの柔和で弛緩した表情が何とも対照的。美術館の照明を落とした暗がりだと、おばちゃんの顔が影の中に浮き上がり何ともいえませんでした(笑)ちなみに、この作品は少し離れた一からの鑑賞もおすすめです。離れて見ると、光陰のコントラストがハッキリ感じられますから。
まとめ
オランダの最盛期、絵画黄金時代に活躍した48名もの画家による全60点の絵画は、なかなか壮観でした。フェルメールは1枚しかなかったけど、それを埋めてくれるほどの充実ぶり。
100年もの間に、これだけのレベルの画家たちが同時期に大活躍したのは、流石に当時の大覇権国。宗教画ではない日常風景や人物、建築画など様々なジャンルでの職人芸を楽しむことができました。
特に、レンブラントとその仲間たちが多用した、薄暗い背景に、光がパッとあたったような明るい人物像は迫力がありました。そうそう、彼らが強い影響を受けたイタリアのカラバッジョですが、3月から東京で展示会があります!このエントリで触れてますので、もし良かったら見てください!
見終わった後は、同フロア(ヒルズ53F)の展望台から見える景色もキレイですよ。素人の自分にしてはまずまずいい写真が撮れた^_^
それではまた。
かるび
PS1、「フェルメールとレンブラント展」の公式Webとtwitterです。
公式Webサイト
フェルメールとレンブラント:17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展|TBSテレビ
公式Twitter
フェルメールとレンブラント展(東京) (@vermeer20152016) | Twitter
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PS2、フェルメールとレンブラントをまとめて予習する本もあります。かるびはこちらをある程度読み込んでから展示会に参加しました。