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東京の中堅Sierを退職して1年。美術展と人事労務系の記事が多め。

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【ネタバレ有】映画「ブレードランナー2049」 感想・レビューと11の疑問点を徹底解説!/ビジュアルもストーリーも超一級品に仕上がった傑作!

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かるび(@karub_imalive)です。

10月27日に公開されたSF映画ファン待望の「ブレードランナー2049」を見てきました。個人的には、この秋最大の期待作でした。早速ですが、映画を見てきた感想やレビューを書いてみたいと思います。
※本エントリは、後半部分でストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が一部含まれますので、何卒ご了承ください。できれば、映画鑑賞後にご覧頂ければ幸いです。

1.映画「ブレードランナー2049」の予告動画・基本情報

▶「ブレードランナー2049」公式予告動画
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【製作総指揮】リドリー・スコット
【監督】ドゥニ・ビルヌーブ(「メッセージ」「ボーダーライン」他)
【配給】ソニー・ピクチャーズ
【時間】163分
【原作】フィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」

前作「ブレードランナー」から実に35年ぶりとなった本作。今作は、前作のタイムラインから30年後の世界を描く直接の続編であり、リブート的な立ち位置の作品でもあります。前作で監督を務めたリドリー・スコットは、他作品との兼ね合いで製作総指揮に回り、今作でメガホンを取ったのは、前作「メッセージ」(2017)から2作連続SF作品を手がけることになったドゥニ・ビルヌーブ監督。

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引用:BLADE RUNNER 2049 - "Time to Live" Featurette - YouTube

意外なことに、全世界で公開されてから3週間経過した10月下旬現在、本国アメリカを含め、世界的な動員・興行収入はわずか200億ドル程度と、予想外に伸び悩んでいます。原因としては、多くの国で子供が見れない「R指定」が入ったこと、女性や若者への「ブレードランナー」というブランドが思ったほど浸透していなかったことなどが指摘されています。

ただし、そんな逆風下でも映画を見た人の評価は最高で、アメリカの評価サイト「Rotten Tomatoes」では、超大作ではめったに見ない「94%」を獲得。作品としてのクオリティは間違いないということでしょうか。

2.映画「ブレードランナー2049」主要登場人物・キャスト

主要登場人物

K(ライアン・ゴズリング)f:id:hisatsugu79:20171027210346j:plain
引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube
「インテリジェントでアクションもこなせるスマートな俳優」として、映画企画段階から、製作総指揮のリドリー・スコット、ドゥニ・ビルヌーブ監督から「逆指名」される形で、主役に抜擢されました。2017年はご存知「ラ・ラ・ランド」「ナイスガイズ」など、大活躍。人間なのかレプリカントなのかぼかされたままストーリーが進んだ前作と違い、Kは最初から「ネクサス9型」のレプリカントである、と明示されています。

リック・デッカード(ハリソン・フォード)f:id:hisatsugu79:20171027210155j:plain
引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube
今年で御年75歳となったハリソン・フォード。代表作「スター・ウォーズ」のハン・ソロ役に続いて、ブレードランナーでも32年ぶりの出演です。パンフレットを読むと、出演者陣だけでなく、制作陣からもハリソン・フォードへの賛辞の嵐・・・製作現場では、ハリウッドの生き字引的な「超大御所」として最大限リスペクトされ、気を使われていたことがよく分かりました(笑)

ジョイ(アナ・デ・アルマス)f:id:hisatsugu79:20171027210434j:plain
引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube
キューバ出身で、スペイン映画界でブレイクした女優。「AI」を搭載し、持ち主の好みや心情にピッタリ寄り添う男性向けの疑似恋人ロボットを演じます。エマネーターというガジェットを使うと、立体的なホログラムイメージとして外にまで持ち出せるという設定が絶妙でした。人間臭さというより「アイドル」的なキュートさをうまく演技で出せており、レプリカントとは別種のロボットとして「ブレードランナー2049」の新たな魅力になっています

ラヴ(シルヴィア・フークス)f:id:hisatsugu79:20171027210124j:plain
引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube
ウォレスから会社の舵取りを全面的に委任されている特別カスタマイズされた「ネクサス9」型のレプリカント。仕様通り、生まれ落ちた時の「恐怖感」に支配されつつも、表面的には感情を露わにせず、ご主人様であるウォレスに忠実に働く中で見せる、機械のような冷徹さが名演でした。

ジョシ(ロビン・ライト)f:id:hisatsugu79:20171027210216j:plain
引用:BLADE RUNNER 2049 – Trailer 2 - YouTube
最近では映画「ワンダーウーマン」やドラマ「ハウス・オブ・カード」など、出演作にヒットが続き、50代を越えた現在でも、渋い役どころで評価が高まっているロビン・ライト。本作では進化し、人類を凌駕しつつあるレプリカントの危険性を熟知し、彼らの芽を摘み取ろうとする保守的な人類の代表的存在として描かれました。

ニアンダー・ウォレス(ジャレッド・レト)f:id:hisatsugu79:20171027210100j:plain
引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube
当初起用予定だった、デヴィッド・ボウイの死去に伴う代役として白羽の矢が立ったのがジャレット・レトでした。研究者らしい無邪気な使命感と野心を持つ大権力者として、うまく表現できていたと思います。なお、両目が義眼という設定は、サイバーパンクSF後発の「ゴーストインザシェル(攻殻機動隊)」のバトーから逆輸入してきたような設定でした。 

マリエッティ(マッケンジー・デイヴィス)f:id:hisatsugu79:20171027210139j:plain
引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube
ストーリーの核心に絡んでくる、「ネクサス8」型(旧型)のレプリカント。ラヴやKと違い、最初から人間らしい感情に目覚めており、言動などは人間そのものでした。ジョイとシンクロしてKと絡むラブシーンは、必見!撮影も大変だったそうですが、編集作業には、約1年と途方もない労力がかかっているんだとか。

3.予告編の他に見ておきたい3つの公式動画

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引用:【『ブレードランナー 2049』の前日譚】「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」

「ブレードランナー2049」は、前作「ブレードランナー」の結末や残された伏線を引き継いでストーリーが展開しており、前作のタイムライン(2019年)から2049年までの間に起きた出来事を前提として語られます。

したがって、本作を120%味わい尽くすのであれば、前作「ブレードランナー」の復習だけでなく、映画リリース前にネット上で無料公開された前日譚3本をそれぞれ見ておいたほうが良いでしょう。

前日譚1:「ブレードランナー ブラックアウト 2022」

2022年に起きた、レプリカント達の反乱により、核爆弾がアメリカ上空で爆発し、世界中の電子機器・磁気記憶媒体が大きくダメージを受けた事件を描くアニメ短編。

▶「ブレードランナー ブラックアウト 2022」
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前日譚2:「2036:ネクサス・ドーン」

ウォレス社が政治家へ圧力をかけ、レプリカントの製造禁止を解除する法律を作らせるきっかけとなった歴史的な一場面を描くショートムービー。

▶「2036:ネクサス・ドーン」
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前日譚3:「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」

市民の間に目立たないよう溶け込んでいたネクサス8型のレプリカント、サッパー・モートンの日常とともに、彼がLAPDに追われるきっかけを描いたショートムービー。

▶「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」
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4.途中までの簡単なあらすじ

2049年、ロサンゼルス。LAPD所属のブレードランナー、K(ライアン・ゴズリング)は旧型のレプリカント、ネクサス8型の解任処分を担当していた。この日、上司のジョシ(ロビン・ライト)の命令により、ウォレス社の開発したロサンゼルス郊外の大規模農場に隠れていた農夫、サッパー・モートンを急襲、射殺したが、ドローンで空撮したサッパーの自宅側の枯れ木から、不審な小箱が見つかった。

小箱の中には、30年前に埋葬されたレプリカントの小骨と毛髪が入っていたが、このレプリカントからは、帝王切開で出産した痕跡が見られた。ジョシは、このレプリカントの骨から、人類社会を崩壊させるインパクトを持ち得るリスクを感じ取り、この骨に関わった危険分子のレプリカントを発見し、解任するよう指示を出した。

毛髪をウォレス社に持ち込み、調査を行ったところ、30年前に姿を消したブレードランナー、リック・デッカード(ハリソン・フォード)が深く関与していることが判明。Kはデッカードを追い、調査を行う中、サッパーの自宅の木の根元から、「6/10/21」という数字を発見するが、それは奇妙にもKの誕生日と一致した。

その後、LAPDのDNA保管室で2021年10月6日生まれのデータを調査し、サンディエゴの孤児院で手に入れたおもちゃの木馬から、自らが埋葬されたレプリカントから生まれた子供なのでは?と疑いを強めるK。

そして、デッカードの居場所をラスベガスに突き止めたKは、30年間行方不明だったデッカードと遂に対峙する。そしてKはデッカードが握る秘密を聞き出そうとした時、ウォレス社のラヴがデッカードとKを急襲するのだったー。

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5.映画「ブレードランナー2049」の感想・評価

リアルな近未来を予感させるディストピア描写が最高でした

180億ドル以上をかけて制作されたビジュアルの説得力はやっぱり半端ない!美術・セット・CGが非常に高レベルで融合し、前作「ブレードランナー」で確立されたディストピア的な世界観をガッツリ表現してくれました。

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大気汚染が極限まで進行した2049年
引用:BLADE RUNNER 2049 - "Time to Live" Featurette - YouTube

2022年のブラックアウト(核爆発)により、「核の冬」的な荒涼とした都市の景観が広がるロサンゼルス。すでに季節は夏なのか冬なのかも判然とせず、スモッグで薄汚れた暗い空に雪やみぞれが降っています。(温暖なロサンゼルスで雪?)ゴミに溢れ、不潔で薄汚れた街中に、都市で生活する人々(貧困層?)があふれかえる風景は、前作で描かれた2019年より地球環境が絶望的に悪化している状況を思い起こさせました。

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普通にガスコンロが現役で活躍中(笑)
引用:BLADE RUNNER 2049 – Trailer 2 - YouTube

また、AIで動く立体ホログラムロボットやレプリカント、空を飛ぶスピナー、偵察ドローンなどの未来的な機械技術が発達する一方、ガスコンロや水回り、生活道具などは70年代~80年代のまま進化していないようです。古いものと新しいもの、キレイなものと汚いものが混然一体となった混沌とした生活環境も、妙にリアルな感じがします。

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線形動物でさえ高値で売れる闇マーケット
引用:【前日譚】「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」 - YouTube

徹底して生命の痕跡が消えている描写も秀逸でした。人間はウォレス社の開発した人工農場で生産される食料のおかげで何とか生き延びていますが、芋虫のような醜い線形動物でさえ闇マーケットで高値で売買され、Kの持っていた木馬のおもちゃですら骨董品のように珍しがられる状況です。

1982年の「ブレードランナー」の登場により、近未来SFで描かれる風景は暗く汚い「サイバーパンク」な世界観に変わったと言われますが、そんな本家本元の「ブレードランナー」の世界観をディープに正統進化させた世界観は、没入感がハンパなかったです。

人間とは一体何なのか、哲学的な問いを突きつける本作

前作「メッセージ」でも、人間の進化とは何なのか?人間の運命とは何なのか?人間に自由意志はあるのか?といったように、ドゥニ・ビルヌーブ監督は、人間の本質について深く考えさせるテーマを鑑賞者に突きつけました。そして、今作でも、人間とは一体何なのか?何が人間を規定するのか?人間はどう進化していくのか?といった根源的な問題に迫っています。

本作では、前作「ブレードランナー」よりもさらに、人間とロボット(レプリカント)の境界線が曖昧になっています。映画内で描かれる人間模様や戦いは、もはや「人間対レプリカント」という単純な対立構造ではありません。

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引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube

Kとラヴのように、立場の違うレプリカント同士が対立し、戦うだけでなく、人工知能で動き、立体ホログラムで表現されるKのバーチャル恋人ロボット「ジョイ」や、レプリカントとその「ジョイ」がシンクロ・融合するシーンなど、レプリカントは人間不在の中、その活動様式や関係性を多様化しつつ、ますます人間と見分けが付かない活動をするようになっています。

そして、進化を極めたレプリカントは、人間同様に心を持つだけでなく、設定された寿命もなくなり、さらに生殖能力も獲得するに至ります。こうなると、人間とレプリカントの違いはもう何もありません。むしろ、身体・知的能力に勝るレプリカントこそが、より「進化した人類」であると言えなくもないでしょうか?

生殖能力を獲得し、人間を凌駕するに至ったレプリカントと人間の争いは、数百万年前、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの両種が混在した先史時代に似ているような気がします。

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「声帯」の有無が両者の運命を決定づけた
引用:NHK特集「地球大進化」より

類人猿から進化した2つの人類は、外見上の違いはそれほどなく、両者ともに同じ時代に石器を使い、洞窟に住み、集団で狩猟生活を送りました。しかし、両人類は、わずかに声帯の形状が少し違っていました。声帯の形状が発話に向いていたホモ・サピエンスは「言葉」という新たな道具を獲得し、大きく発展の機会を掴みましたが、ネアンデルタール人は発話できず、「言葉」を持つことはありませんでした。

このほんのわずかな優位性が決め手となり、ホモ・サピエンスは、時には彼らと混血したり、争ったりしながら、ネアンデルタール人との生存競争に勝ち、やがて彼らを絶滅に追いやっていったと言われます。僕には、「ブレードランナー2049」で人類が置かれた立場は、かつてのネアンデルタール人が辿った絶滅への道のりに重なって見えて仕方ありませんでした。

レプリカントが高度に発達した2049年は、ジョシが危惧した通り、何かのきっかけひとつで絶滅しかねない、人類にとっては崖っぷちな状況です。それにも関わらず、レプリカントのことを「スキンジョブ」と罵り、差別を続けている危機感のない人間の愚かさを見て、なんとなく暗澹たる気分にさせられました。

誰よりも人間らしい行動を取ったKの最後の選択・行動が泣けた!

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引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube

そして、やっぱり泣けたのはラストシーンです。Kは、自分探しの旅の終着点で、自分が特別な存在ではなく、単に一介のレプリカントとして「おとり」的な使い捨てにされたことを自覚し、いったんは絶望します。ここで合理的に判断するならば、自分を取り巻く面倒な状況を回避するため、単純に事態から逃げ出すのが一番生存可能性を高めたはず。

それなのに、Kはわざわざ危険を冒して、「ただの他人」とわかってしまったデッカードを連れ去ったラヴを追いかけて、命をかけて戦って致命傷を負いつつも、自らの命と引き換えにデッカードを実の娘に会わせました。

ウォレス社によって、上司の命令に絶対服従する仕様として製造された「ネクサス9型」だったK。物語中、Kは自らのアイデンティティに深く関わる事件に巻き込まれるうち、自我が発達して、仕様を超えてより自分のため、自律的に行動するようになります。そして、最後には誰かのためを思い、また、自分がたしかに存在した証として、一見非合理に見える行動を、自らの意志で選択するまでになりました。

Kの取った自己犠牲的な最後の選択は、極めて人間的でした。愛とプライドに溢れた行動であり、自らの力で劇的に進化し、自らの存在証明をなしとげた偉大なレプリカントに思わず涙してしまいました。静かな感動を呼ぶ素晴らしいラストシーンです。

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6.映画「ブレードランナー2049」に関する11の疑問点~伏線・設定を徹底考察!~

本作をより深く理解するため、ストーリーや設定について、その要点となりそうなポイントを考察してみました。内容上、映画を1度見終わった人向けのコンテンツとなりますので、ここからはネタバレ要素が強めに入ります。予めご了承下さい。

疑問点1:ブレードランナーとはどんな職業だったのか?

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引用:【ワーナー公式】映画|ブレードランナー

本作のタイトルとなっている「ブレードランナー」とは、自我に目覚め、与えられた役目を放棄して人間になりすまし、脱走・逃亡するのを防ぐ「監視役」として任命されたレプリカントを指しています。

「Blade」は手術用メスを、「Runner」は密売人を指し示す言葉で、「Blade Runner」とは元々は「医療用具の密売人」という意味でした。当時、脚本家の自宅の本棚にたまたまあったウィリアム・バロウズの全く別のコンセプトで書かれた「映画:ブレードランナー」という本から名称をパクった?と言われています。(邦訳もされています)

また、小説「ブレードランナー2」では、この監視レプリカントは、最初ドイツ語で”静かにさせる者”という意味の「ブライブルーイッヒャー」と言われていたとされます。

やがて、逃亡レプリカントの追跡が警察の役目になった時、この「ブライブルーイッヒャー」という言葉が英語化され、「ブレードランナー」になったのだそうです。

疑問点2:サッパーとは誰だったのか?

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引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube

本作の冒頭で出てきたウォレス社の経営する巨大農場でKに殺害された中年男性サッパー。彼は、ネクサス8型の旧型レプリカントで、巨大農場で「タンパク源」として芋虫のような線形動物を育成し、それをブラックマーケットで売買して生計を立てていました。

彼は死ぬ間際にKに「奇跡を見たことがないのか」と語っていましたが、この「奇跡」とは、まさにレプリカントであるレイチェルが出産するシーンに立ち会った、という意味でしょう。彼は、元々戦場で使役される救護兵でしたので、レイチェルの帝王切開出産も、彼が執刀したのかもしれません。

つまり、サッパー前作「ブレードランナー」でデッカードと共に逃亡したレイチェルの出産、及びその娘の隠匿を手伝ったレプリカントのレジスタンスの一味だったとみなすことができます。

疑問点3:2022年に起きた「ブラックアウト」とは?

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引用:「ブレードランナー ブラックアウト 2022」 - YouTube

2022年に宇宙空間で爆発した核兵器から放射されたEMP電磁波によって、世界中の電子機器・磁気データベースが一斉に無効化された事件です。首謀者は、反乱を起こしたレプリカント達でした。取締が強化されたレプリカント狩りから逃れるため、彼らはタイレル社のデータベースに登録されたレプリカント情報を削除する目的で、タイレル社で核弾頭を管理する人間の担当者レンと結託して、核兵器を発射したのでした。

これにより、紙媒体や一部のデータ以外、大半の電子化された2022年以前のレプリカント情報は失われてしまい、寿命の定められていない「Nexus8型」レプリカントは、人間になりすましたり、組織化してレジスタンス活動を行うことが可能になりました。

奇しくも、デッカードとレイチェルの子供が生まれたのは2021年10月16日。(木馬の人形に刻印されている)ブラックアウトによって、彼らの子供=アナの記録が削除され、デッカードも「死の街」となったラスベガスで誰にも見つからない隠遁生活を送ることができたのでした。

疑問点4:前作で出てきた「タイレル社」はどうなったのか?ウォレスとは誰なのか?

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引用:BLADE RUNNER 2049 – Trailer 2 - YouTube

2022年のブラックアウトによりレプリカント情報が失われたことや、2023年に全てのレプリカント製造が禁止されたことから、タイレル社は利益の源泉を失い、倒産してしまいます。

そんな中出てきたニアンダー・ウォレスは、野心的な天才科学者でした。彼は、ウォレス社を創業し、「遺伝子組み換え技術」を応用し、世界の食糧危機問題を解決します。ここで得た富と名声をテコに、彼は、2028年に、倒産したタイレル社の保有していた遺伝子工学や記憶移植の技術を得て人間に従順な新型レプリカント「ネクサス9型」の開発に成功したのでした。

疑問点5:ウォレス社を全面的に仕切るラヴとはどんなレプリカントなのか?

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引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube

ラヴは、2035年~2036年頃にウォレス社で製作された、最初期の「ネクサス9型」レプリカントです。身体能力が高く、格闘スキルに優れた「ターミネーター」のような鋼の意志を持つレプリカントでした。

ウォレスはラヴに対して特別な思いを抱いており、「天使」と表現していましたし、彼女自身も自らがウォレスの「一番」であると自覚していたでしょう。ウォレスは、ラヴを自身の片腕として、ウォレス社の経営・外交・個人的な秘書など全ての日常業務を任せていました。

疑問点6:老人ホームでKがコンタクトした老人は誰だったのか?

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引用:映画.comより(※「ブレードランナー」の若き日の写真)

Kはデッカードを捜索中、ある老人ホームに立ち寄って老人と面会します。彼の正体は謎でしたが、面会が終わった時、画面に羊の折り紙がそっと机に置かれたカットが写ったことで、この老人の正体が判明します。彼は前作でデッカードの同僚、ガフです。

彼は、前作「ブレードランナー」でロサンゼルス警察メンバーとして、デッカードのその仕事ぶりを監視する役目を負っていました。特技は折り紙で、数か国語を操るミステリアスな存在として描かれましたが、デッカードの人物像や、本当は何者なのかを熟知していた数少ない人物でした。

疑問点7:デッカードはラスベガスで何をしていたのか?

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引用:BLADE RUNNER 2049 – Trailer 2 - YouTube

デッカードは、レイチェルとの間に子供ができたことを知ると、子供を守るため、自らは出産にさえ立ち会わず、レイチェルの側から敢えて姿を消して身を隠して生きて行くことを選択しました。

ラスベガスは、2022年の核爆発で特に放射性物質が激しく降り注いだ街の一つであり、街はチェルノブイリのように廃墟になっていました。放射線が減少したあと、彼は残された廃墟に住み着き、一人でひっそりと隠遁生活をしていたのでした。

疑問点8:なぜデッカードとレイチェルの子供が必要とされたのか?

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引用:BLADE RUNNER 2049 – Trailer 2 - YouTube

デッカードとレイチェルの子供は、100%レプリカントか、少なくとも人間とレプリカントのハーフとみなすことができます。ウォレスも、レジスタンスも、そんな極めて特殊な存在である彼らの子供を必要としていました。

高性能な「ネクサス9型」レプリカントの開発に成功していたウォレス社でしたが、宇宙全体の権力を手に入れるためには、レプリカント達に生殖能力を持たせ、短期間で増やすことで、さらに強大な軍隊を作る必要があると考えていました。

しかし、タイレル社の保有していた「レプリカントの生殖能力」に関する技術情報は2022年のブラックアウトで失われてしまっており、彼らは、子供を手に入れて、そこから遺伝子工学的にリバースエンジニアリングをかけることで、レプリカントの「生殖能力」を手に入れたいと考えていました。

また、レジスタンス側でも、デッカードとレイチェルの子供を錦の御旗に立て、人間に対するレプリカントの地位向上(または大規模反乱?)の切り札にしたいと考えていました。

疑問点9:結局デッカードは人間なのか?レプリカントなのか?

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引用:BLADE RUNNER 2049 - "Time to Live" Featurette - YouTube

最終的に映画内では、前作、本作ともに明示されてはいませんが、基本的には「レプリカントである」という前提で映画を見ておいてOKかと思われます。その根拠としては、

放射能が未だ強く残存するラスベガスで、何年間も普通に生活をしている。(人間ならすでに死亡している)
・前作の監督、リドリー・スコット監督自身が、「デッカードはレプリカントである」とインタビューで明言している。
・「ブレードランナー」撮影時は、リドリー・スコット監督の解釈に嫌悪感を示し、決してレプリカントを匂わせる演技をしなかったハリソン・フォードも、最近のインタビューで監督の解釈に同意している。(映画パンフレットより)
・「ブレードランナー」ファイナルカット版では、レイチェルと逃亡しようとするデッカードの自宅の前に、ガフが折った「ユニコーンの折り鶴」が落ちている。(デッカードはよくユニコーンの夢を見たが、誰にもそのことは話していない=何らかの形でデッカード=レプリカントに移植された記憶をガフは把握していた)
小説版「ブレードランナー2」にも「デッカードはレプリカントである」と明示されている。元々「ブレードランナー」という職業自体、レプリカントを取り締まる”憲兵”のようなレプリカントである。
前作から30年経過し、外見上加齢しているのは、デッカードがネクサス6型の特別仕様だったからなのでしょう。ネクサス8型のサッパーも、前日譚のアニメ短編の風貌から明らかに加齢している様子ですし、レプリカントもDNA情報を持つ以上、年齢相応に外見上の風貌が変化するのは不思議な事ではありません。

疑問点10:Kの記憶はなぜ植え付けられたのか?また、誰に、どうやって植え付けられたのか?

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引用:BLADE RUNNER 2049 - Official Trailer - YouTube

Kは、孤児院施設で、木馬の人形を友達に奪われそうになり、それを暖炉に隠すという幼少時の記憶の断片を手がかりに、実際に木馬の人形を見つけ出します。記憶と現実がリンクしたことから、Kは自分こそがデッカードとレイチェルの子供なのでは?と信じかけます。しかし、物語終盤でレジスタンスのリーダー、フレイザから、彼らの子供は「女の子」であり、Kが調査の過程で見た男女のDNA記録は作られた偽物であると知らされました。

つまり、Kは警察当局によって調査が入った時、捜査撹乱のおとりとして機能するように「女の子」=アナのリアルな幼少時の記憶を植え付けられただけであるということですね。

では、誰がKに記憶をインプラントしたのでしょうか?物語中では詳細は明かされませんが、以下の2通りのシナリオが考えられそうです。

1つは、レジスタンス組織が、Kや他の「ネクサス9型」レプリカントにアナの記憶を植え付けたという説。フレイザは、「誰しもが自分こそが子供かもしれないと思う」と確信めいて言っていた通り、事情を知っていそうです。

もう1つは、アナ自身が植え付けたという説です。アナは、ウォレス社に雇われ、レプリカントに植え付ける記憶を作るデザイナーとして働いていました。自分が本当は何者なのか(恐らく)知らなかったアナは、これが彼女自身のアイデンティティを明らかにする手がかりであるとは考えず、無邪気に彼女自身の持っていた幼少時の記憶を使ったのかもしれません。

疑問点11:続編はあるの?ラストシーンまでで未回収となった伏線がかなり多かった!

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引用:BLADE RUNNER 2049 - "Time to Live" Featurette - YouTube

本作は、意外にも語られること無く、未回収となった伏線や設定がかなり残されました。とはいえ動員・興収的に次回作製作には「黄信号」となっており、今のところ続編製作のニュースは全くと言っていいほど出ていない状況です。(このまま無くても特に違和感は感じないですが・・・)

ここでは、もし続編製作が決定したとしたら、語られるチャンスがあるかもしれない未回収の伏線部分を列挙してみたいと思います。

・ラヴのいなくなった後、ウォレス社はレプリカントの子供を見つけ出すためどんな手を打つのか?
・デッカードとアナは、対面した後どうなったのか?
・アナは結局人間なのか、レプリカントなのか?アナの正体とは?
・デッカードは人間なのか、レプリカントなのか?(限りなくレプリカントだと言えそうだが、物語中で明示されなかった)
・フレイザ達によるレジスタンス運動はその後どうなったのか?アナ、デッカードと合流を果たしたのか?
・地球から移住した人類が住む9つの植民惑星の様子はどうなっているのか?

7.まとめ

科学とテクノロジーが進化し、人間とロボットの境界が曖昧になる中で、核爆弾と環境汚染で極端に悪化した気候・環境下、大多数の庶民は非衛生なスラム化した大都市で貧しく暮らしているー。近未来で本当に有り得るんじゃないか?と思えるほどリアルに描き出されたディストピア社会で紡ぎ出された珠玉のストーリーは、見終わった後、強いインパクトを残してくれました。前作「ブレードランナー」から正常進化した素晴らしい作品だったと思います。お薦め!

それではまた。
かるび

8.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など

映画「ブレードランナー」ファイナルカット

「ブレードランナー2049」を最大限楽しむには、前作をまずチェックしておくのが大前提となります。これを機に、愛蔵版としてDVD/ブルーレイで揃えておいて、何度も見たい時に見返すのもいいですね!ファイナルカット版などは、映像も見やすくデジタル処理されているので、古さを感じさせないところも良いです!

雑誌「Pen」ブレードランナー特集号”SF絶対主義”

映画「ブレードランナー」を中心に、Pen編集部で特にオススメのSF映画・マンガ・小説を紹介してくれます。SF初心者にはぴったりの特集でした。安いし気軽に買えますね。

さすが洋泉社!最高にマニアック!「ブレードランナー究極読本」

他の急造特集本が、単なる「ブレードランナー」の表面的な回顧録になりがちな中、本作は最新作「ブレードランナー2049」を含め、あらゆる角度からマニアックに深く切り込んだ特集が素晴らしい!さすがは洋泉社。初心者からマニアまで納得の、圧巻の大特集でした。ムック本ならこれが絶対におすすめ!

映画の見方がわかる!「ブレードランナーの未来世紀」

カルト的な人気を博す、町山智浩の映画解説書の決定版「映画の見方がわかる本」第2弾です。「ブレードランナー」他7つの映画に対して、それぞれの映画に隠されたテーマや製作背景、ストーリーの考察等を、実に400ページ以上の徹底的な分析で解説した良書。映画「ブレードランナー2049」に合わせ、加筆・訂正された上で文庫化されています。よく文庫化してくれました!偉い新潮文庫!

現在Huluで前作「ブレードランナー」を3バージョンで配信中!

今作の映画公開に合わせ、前作「ブレードランナー」がHuluで独占配信されています。素晴らしいのは、字幕・吹替をあわせ、「オリジナル版」「ディレクターズ・カット版」「ファイナル・カット版」の3バージョンを見比べることが出来る点です。特に、エンディングがそれぞれで違っているので、これは見応えがあります!

★最初の14日間は無料!

僕は、今回映画公開前にHuluで配信されている3バージョン全部を復習してから映画に臨みました!登録後最初の2週間は無料で視聴できるので、無料期間中に見てしまえば、実質タダで見れますね!

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