読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

MENU

大エルミタージュ美術館展が予想外に良い!楽しくアートを学べる展覧会でした!

スポンサーリンク

f:id:hisatsugu79:20170325094759j:plain

かるび(@karub_imalive)です。

ここ数年、数年に1度のペースで定期的に開催されている「大エルミタージュ美術館展」。2017年の展示は、副タイトルに「オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」とあるように、16世紀~18世紀までのルネサンス・バロック・ロココ期のヨーロッパ各国の巨匠たちの作品が一同に会した豪華な展覧会になりました。

各国別の作品群を見て回るだけでも楽しいし、非常に勉強になる良い展覧会でした。以下、詳細な感想を書いていきたいと思います。

1.エルミタージュ美術館の紹介と、2017年の「大エルミタージュ美術館展」の特色など

f:id:hisatsugu79:20170329113315j:plain
(引用:Wikipediaより)

17世紀、ロマノフ王朝の全盛期に、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクに設立されたエルミタージュ美術館。21世紀の今日に至るまで、世界各地の美術品や工芸品、古美術品の収集を続け、現在では美術品約310万点、美術絵画は17,000点もの大コレクションを保有するまでに成長し、ニューヨーク近代美術館(MOMA)、ルーブル美術館と合わせ、世界3大美術館と言われています。

そんなエルミタージュ美術館の膨大なコレクション群ですが、日本では数年に1回のペースで中規模以上の企画展が定期的に開催され、美術ファンに好評を博してきました。

今回、2017年に入って開催される最新の企画展は、「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち」ということで、過去数回の展覧会に比較すると、「西洋絵画」「16世紀~18世紀」というキーワードで展示範囲を絞り込み、テーマ性がハッキリした印象です。

エルミタージュ美術館を設立したのは、ロマノフ王朝全盛期で最強の女帝と謳われたエカテリーナ2世。展覧会の入口で、同館所蔵の、ウィギリウス・エリクセンの威厳のある肖像画がまず来場者を歓迎してくれます。

ウィギリウス・エリクセン「戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像」f:id:hisatsugu79:20170329112940j:plain
(引用:Wikipediaより)

エカテリーナ2世は、夫をクーデターで追放し1762年に王位に着くと、知略を尽くしてロシアの領土を拡大するなど政治・外交的手腕を発揮した一方で、莫大な財をつぎこみ、ヨーロッパ各地から物凄い勢いで美術品の収集にのめりこみました。

「エルミタージュ」とは、フランス語で「隠れ家」という意味ですが、エカテリーナ2世は、美術品を収集し始めた当初、宮殿の裏庭的な目立たない場所にひっそりと収集品を置いて、当時はごく限られた人たちしか見ることができなかったと言われています。

エカテリーナ2世が始めた美術品の収集は、その後のロシア歴代皇帝にも引き継がれていきます。そして、20世紀初頭にロシア革命が発生すると、ロマノフ王朝がそれまで収集してきた膨大なコレクションは、「エルミタージュ美術館」として国有化され、広く市民に開放されることになったのでした。

2.音声ガイドは大人用と子供用の2種類!

今回、音声ガイドは大人用と子供用(チェブラーシカガイド)の2種類が用意されていました。係員さんに聞いたところ、専門的なガイドが聞きたい人は大人用が良いとのことだったので、大人用をチョイス。(子供用は2回目に行った時に借りますので、後ほど感想追記しますね)

f:id:hisatsugu79:20170329115038j:plain
(引用:大エルミタージュ美術館展公式HPより)

大人用ガイドのナビゲーターは、今や文壇で大作家へのキャリアを登り始めた又吉秀樹。全20トラックはほぼナレーターが全部説明してくれるので、又吉はゲスト的な扱いでのちょい出演。

が、なんというか、彼の起用は微妙だったかも。原稿が完全に棒読み系な上、又吉が話す解説パートは、ロシア文学と絡めたアートと関係のない個人的な話か、あまり笑えないギャグ(笑)が入っているので、やや微妙でした。それであればもう少しアートの専門的な話をしてほしかったかな。(でも、作品解説のナレーションは普通に良いです)

反面、凄く良かったのがボーナス・トラック#80番の宇多田ヒカルのテーマソング「人魚」。ノスタルジックでミドルテンポの落ち着いた雰囲気の楽曲は、展覧会のイメージにぴったりでした。

一度全部の作品を見終わってから、最後「人魚」をかけながらザッと展覧会を2回ほど歩いて振り返ってみたのですが、音楽を聞きながらの鑑賞は、まるで映画を見ているようで、素晴らしい鑑賞体験になりました。美術館で音楽を聞きながら回るっていう経験はなかなか出来ないので、ガイドを借りたら是非「人魚」を聞きながら作品を見て回ってくださいね。

3.ミニガイドをもらうのをお忘れなく!

今回、ロシア産のキャラクター「チェブラーシカ」のイラスト入り「子供用」のガイドパンフレットが特別に無料配布されているのですが、これが素晴らしいのです。

子供用ガイド「チェブラーシカ、美術館へ行く」
f:id:hisatsugu79:20170329114753j:plain

画像を見ていただくとわかりますが、子供でも理解できるようわかりやすく書かれています。でも、大人が普通に読んでも十分興味深く読める内容に良くまとまっているのですよね。無料だし、絵を見ながらガイド代わりにその場で読んでいってもいいですね!

スポンサーリンク

 

4.各国別展示がわかりやすくて良い!

今回の大エルミタージュ美術館展では、全89枚の巨匠たちの絵画を、各国別・地域別に分類して展示しています。入口を入ると、まずティツィアーノの絵から始まるイタリア編でスタートし、続いてオランダ、フランドル(今のベルギーやドイツ北方周辺地域)、スペイン、フランス、そして最後にドイツとイギリス絵画が一括りになっていて、クラーナハの絵を見て美術館を後にします。

ルネサンス期にイタリア中部で本格的な発展を遂げた西洋絵画が、次第に各地域によって特色・特徴が分かれていく時期が、今回の展覧会でターゲットにしている「16世紀~18世紀」頃でもあるので、この分類法は単純だけどわかりやすくて非常に良かったと思います。

それでは、各国別に、特に僕が見て気に入った絵画を紹介していきますね。

4-1.イタリア(ルネサンスからバロックへ)

イタリア絵画が一番輝いていた16世紀~17世紀中盤にかけての絵画群が紹介されています。宗教画と風景画が中心ですが、風景画に良いものが多かったです。

ティツィアーノ「羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像」f:id:hisatsugu79:20170329115904j:plain
(引用:Wikipediaより)

ティツィアーノらしい、気品あるふくよかな貴婦人像。ちょうど裏番組で4月上旬まで東京都美術館で開催中の「ティツィアーノとヴェネツィア派展」のメイン展示「フローラ」も同じようなポーズでしたね。

カルロ・ドルチ「聖チェチリア」
f:id:hisatsugu79:20170329100956j:plain
(引用:http://www.arthermitage.org/Carlo-Dolci/St-Cecilia.html

国立西洋美術館でも、青いローブを羽織った清楚なマリア像の展示が非常に印象的なカルロ・ドルチの「聖チェチリア」。チェンバロを弾きながら、モナ・リザのようなアルカイックスマイルでこちらをじっと見つめる肖像画は、いつまでも見ていても見飽きない不思議な魅力があります。

ミケーレ・マリエスキ「フォンダメンテ・デル・ヴィンから眺めたリアルト橋、ヴェネツィア」
f:id:hisatsugu79:20170329101358j:plain
(引用:https://www.hermitagemuseum.org/wps/portal/hermitage/digital-collection/01.+Paintings/32232/?lng=en

17世紀ヴェネツィアの活気ある街並みを素朴に描いた風景画。風景だけでなく、そこで生活している人々を丁寧に一人ひとり描いているんですよね。よく見ると酔っぱらいが喧嘩していたりとか、人物一人ひとりのアクションがすごく面白いのです。

去年、スマッシュヒットした映画「インフェルノ」で2016年のヴェネツィアの風景をじっくり堪能できたのですが、17世紀も21世紀もほとんど街並みの景観が変わらないのがヨーロッパの凄いところですよね。一度でいいからヴェネツィア行ってみたいなぁ・・・。

4-2.オランダ(市民絵画の黄金時代)

17世紀に世界の覇権を握ったオランダの黄金時代において、絵画はもはや王侯貴族だけのものではなく、広く市民階級に親しまれる趣味・教養になっていました。17世紀、風俗画・風景画・肖像画・静物画など、次々に新ジャンルの専門画家が生まれていったのがオランダ絵画の特徴ですね。レンブラントも1枚来ていました。

ヘラルト・ファン・ホントホルスト
「陽気なリュート弾き」(左)
「陽気なヴァイオリン弾き」(右)f:id:hisatsugu79:20170329102039j:plain
(引用:Pinterestより)

17世紀オランダ黄金時代に活躍したホントホルストやフランス・ハルスらの描く肖像画って、一般市民ののいきいきとした表情を捉えた素朴な「楽しさ」があるから大好きなんです。

また、ホントホルストの絵画は、特に右側の女性の絵の服装の描き方や顔つき、モチーフ(しわや服の色合い)などが、どことなくフェルメールに似ているようで興味深かったです。

伝アールベルト・カイプ「川沿いの夕暮れ」f:id:hisatsugu79:20170329102622j:plain
(引用:http://www.arthermitage.org/Aelbert-Cuijp/Sunset-over-the-River.html

夕暮れの川沿いで、老夫婦が佇む後ろ姿をポツンと画面右端に配置した風景画。人物ではなく田舎の純朴な風景が主役です。山がなく、地平線まで平野が広がるオランダの田園風景が素晴らしく、ずっと見ていたい気分になりました。

4-3.フランドル(バロック的豊穣の時代)

17世紀、ルーベンスが大活躍した時代の作家たちの特集が組まれていました。この時代のフランドル地方で有名な画家は、ほぼルーベンスの弟子か、工房の仲間たちっていうのが凄いです・・・。

ヤコブ・ヨルダーンス「クレオパトラの饗宴」f:id:hisatsugu79:20170329103155j:plain
http://www.arthermitage.org/Jacob-Jordaens/Cleopatra-s-Feast.html

ルーベンスと並んで、17世紀フランドルを代表する画家だったヨルダーンス。明るく表情豊かな人物画は、オランダの風俗画とも近いものを感じます。画力も素晴らしく、同時代のルーベンスの影に隠れて日本ではマイナーですが、実力のある素晴らしい画家だと思います。回顧展とかやってほしい・・・。

フランス・スネイデルス「鳥のコンサート」f:id:hisatsugu79:20170329103251j:plain
(引用:大エルミタージュ美術館展オフィシャルHPより)

人物よりも、動物画が特に得意だったフランス・スネイデルスの力作。あらゆる種類の鳥類が写実的に丁寧に描きこまれ、画面中央のフクロウをオーケストラの指揮者に見たて、鳥の鳴き声コンサートを開こうとしますが、まとまらない様子をおかしく描いた傑作。展覧会で、とにかく目を引く1枚でした。 

4-4.スペイン(神と聖人の世紀)

17世紀スペインでは、カトリック復興を目指した対抗宗教改革が進み、それと同時にフランスやイタリアの模倣ではなく、宗教画を中心として、この地域独特の感性や特徴を持った画家達が出てきました。描かれる人物の顔つきが、やっぱりイタリア人やフランス人ではなく、スペイン人なんですよねぇ・・・(笑)

ムリーリョ「聖母マリアの少女時代」
f:id:hisatsugu79:20170329103404j:plain
(引用:大エルミタージュ美術館展オフィシャルHPより)

4-5.フランス(古典主義的バロックからロココへ)

僕が一番見たかったのが、18世紀フランスのロココ絵画です。文化芸術の中心地がイタリア中部からパリへと次第に移り変わる中、宮廷のサロン文化を色濃く反映した優雅な作風が特徴ですが、今回来日した絵画群では、ロココ絵画の良作が多かったです。

ニコラ・ランクレ「春」
f:id:hisatsugu79:20170329103700j:plain
(引用:http://www.arthermitage.org/Nicolas-Lancret/Spring.html

18世紀、フランスのロココ美術の代表的作家の4連作「春」「夏」「秋」「冬」のうち、「春」「夏」が来日しています。この「春」は、18世紀におけるリア充貴族たちの野外での合コンシーンを描いています(笑)メンバー全員が原色系で派手な服装なのも冬が明け、開放的な春らしい装いですね。見ていて楽しくなる1枚です。

ユベール・ロベール「運河のある建築風景」
f:id:hisatsugu79:20170329103927j:plain
(引用:http://www.arthermitage.org/Hubert-Robert/Architectural-Landscape-with-a-Canal.html

ユベール・ロベールは18世紀に水場のある風景画を沢山描いた画家ですが、このローマの廃墟で人々が憩う様子が、まるで写真のように生き生きとしていて目を奪われました。クロード・ロランといい、ユベール・ロベールといい、この時期のフランス風景画は本当に素晴らしいです。 

4-5.ドイツ&イギリス(美術大国の狭間で)

美術史の中では、ドイツもフランスもどちらかというと周辺地域として扱われ、あまり目立たない国々ですが、今回展示ではクラーナハがしっかり存在感を放っています。

ルカス・クラーナハ「リンゴの木の下の聖母子」f:id:hisatsugu79:20170329103959j:plain
(引用:大エルミタージュ美術館展オフィシャルHPより)

昨年10月から日本で回顧展が絶賛開催中のクラーナハ。今回の展覧会ではドイツ代表として、クラーナハの絵画がトリを飾ります。89点の絵画がザーッと並んだ中では、やっぱり「個性」という意味ではずば抜けて目立ちます。

スポンサーリンク

 

5.連動する映画公開も!『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』

f:id:hisatsugu79:20170329124304j:plain

今回の「大エルミタージュ美術館展」に合わせて、4月29日からドキュメンタリー映画『エルミタージュ美術館 美を守る宮殿』が、順次封切りになる予定。

エルミタージュ美術館の約300万点の美術品から、エカテリーナ2世の宝石コレクションや、巨匠たちの名画を順番に紹介していくドキュメンタリー映画です。

ルネサンスの3巨匠(ミケランジェロ、ダヴィンチ、ラファエロ)はもちろん、ルーベンス、レンブラント、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソなど近現代までの超有名作家の作品を精細な映画仕様のゴージャスな撮影でチェックできる機会です。

これは楽しみですね!

6.まとめ

2017年の大エルミタージュ美術館展は、例年よりもコンセプトを明確にした分、非常にわかりやすくまとまりのある展覧会になりました。確かに超有名な巨匠の絵画はありませんが、まだまだ日本で知名度が高くないけれど、本当に実力のある沢山のオールドマスター達の絵画を、各国別にじっくりチェックできる素晴らしい展覧会でした。

教養が深まるし、何よりもバラエティに富んだ様々な絵画群は、見ていて楽しいのです。デートや友人と来てもいいし、一人で仕事の合間に癒されに来てもいい、安心して何度もリピートできる素晴らしい絵画たちを、是非お見逃しなく!!

それではまた。
かるび

お勧めの関連書籍など!

ロマノフ王朝の至宝 

2017年の大エルミタージュ美術館展と完全に連動した企画本。本展で取り上げられた絵画を中心に、エルミタージュ美術館の絵画や古美術品について、美麗なカラーでしっかり特集したムックです。展覧会の予習・復習に使えますし、軽くてコンパクトにまとまっているので、公式図録までは重たいのでちょっと・・・という人にもおすすめです。

宇多田ヒカル「Fantôme」

展覧会の公式ソング「人魚」が収録された、昨年発売された最新のアルバム。「人魚」は音声ガイドにてフルバージョンで聴けますが、30代になって落ち着いたトーンで円熟した歌唱を聴かせてくれる宇多田ヒカルは、展覧会のイメージにぴったり。これを聞きながらゆったり会場を回ってみると、近世ヨーロッパの絵画世界にトリップしたような気分が味わえます。凄く良い選曲だったので、ついでにアルバムも買ってしまいましたが、アルバムも素晴らしい出来でした。

展覧会の混雑状況と所要時間目安

f:id:hisatsugu79:20170329113207j:plain

六本木地区の裏番組で強力な「ミュシャ展」「草間彌生展」があるので、そちらにお客さんが流れているのか、まだそれほど混雑していません。混雑状況は、オフィシャルHPのトップに記載されていますので、土日は事前にHPを見てから来たほうがいいかもしれません。

点数が85点とそれほど多くはないので、混雑していなければ所要時間は90分あればOKだと思います。僕は、じっくり2度回り直して125分でした。

展覧会開催情報

「大エルミタージュ美術館展」は、東京展のあと、中部・関西の国内2箇所を巡回予定です。対象地域の方は、お楽しみに!

◯美術館・所在地
〒106-6108 東京都港区六本木6-10-1
六本木ヒルズ内52F
◯最寄り駅
東京メトロ 日比谷線「六本木駅」1C出口 徒歩0分(コンコースにて直結)
都営地下鉄 大江戸線「六本木駅」3出口 徒歩4分
都営地下鉄 大江戸線「麻布十番駅」7出口 徒歩5分
東京メトロ 南北線「麻布十番駅」4出口 徒歩8分
東京メトロ 千代田線「乃木坂」5出口 徒歩10分
◯会期・開館時間・休館日
午前10時-午後8時(火曜日は午後5時まで、但し5/2は午後8時まで)
休館日:5月15日
※入館は閉館の30分前まで

◯公式HP
http://hermitage2017.jp/index.html
◯Twitter
https://twitter.com/Dai_hermitage

◯美術展巡回先
■愛知県美術館
2017年7月1日(土)~9月18日(月・祝)
兵庫県立美術館
2017年10月3日(火)~2018年1月14日(日)