【2017年3月30日最終更新】
かるび(@karub_imalive)です。
日本は美術展大国です。毎年、全国の美術館で何百もの企画展が行われ、沢山の貴重な絵画・工芸を初めてとする芸術品が展示されます。もう、たくさんありすぎてどうしよう?と思うくらいあるので、僕は、毎年半年に1回「行きたい展覧会」の予定を立てることにしています。
2017年度上半期についても、一通り各美術館から企画展の予定概要が出揃いました。そこで、本エントリでは、個人的に「これは絶対に行きたい!」と考えている注目の展覧会を中心に、おすすめの西洋美術展をまとめてみました。
そんな注目の展覧会の中でも、本稿では、
▶ 主に西洋美術を扱う企画展
▶ アート初心者でも安心して楽しめる
この3点を条件として、ピックアップしています。(※なので日本美術・工芸・現代アート等は別エントリでまた紹介したいと思います)
ここで紹介した展覧会は基本全部行く予定ですし、行ってきたら後日レビュー記事のリンクを随時アップしていきたいと思います。
それでは、順番に見ていきましょう!
- 1.クラーナハ展(東京・大阪)
- 2.ゴッホとゴーギャン展(名古屋)
- 3.ティツィアーノとヴェネツィア派展(東京)
- 4.ブリューゲル「バベルの塔」展(東京)
- 5.ミュシャ展(東京)
- 6.シャセリオー展(東京)
- 7.大エルミタージュ美術館展(東京・名古屋・神戸)
- 8.アルチンボルド展(東京)
- 9.アドルフ・ヴェルフリ展(神戸・名古屋・東京)
- 10.ディズニー・アート展(東京)
- 11.ランス美術館展(広島・東京・山口・名古屋)
- 12.ベルギー奇想の系譜展(宇都宮、東京)
- 13.オルセーのナビ派展(東京)
- 14.ジャコメッティ展(東京)
- 15.ルノワール展(仙台)
- 16.夢の美術館展(長崎)
- まとめ
- 2017年の展覧会「予習」に役に立つ書籍たち!
1.クラーナハ展(東京・大阪)
すでに、2016年10月15日から東京で大好評開催中のクラーナハ展。年季の入った美術ファンを中心に評判の高い展覧会ですが、初心者でも間違いなく楽しいです。中世~ルネサンスへの端境期で、ユニークなコンセプトの絵画を量産し、近代的な工房での生産体制を確立した巨匠、クラーナハの貴重な作品群は文句なくお勧め!!
1月末からは、大阪に巡回して、国立国際美術館にてピエール・アレシンスキー展と同時開催されます。関西や西日本の人はお待ちかねですね!
★参考記事「クラーナハ展」感想
2.ゴッホとゴーギャン展(名古屋)
2016年下半期、関東で入場者数No.1を記録し、土日には30分以上の入場待ちが発生した人気の「ゴッホとゴーギャン展」。年明け早々、正月三が日から愛知県美術館にて開催されます。初詣のあとは、ゴッホとゴーギャンですね?!
さて、僕は展覧会を見るまでは、ゴーギャンはゴッホと別れてから憎み合っていたのかと思っていました。展示を見るとわかりますが、全くそんなことはなかったんですね。ゴッホ・ゴーギャンの作品群をまとめて時系列順にチェックできますし、「耳切り事件」で終わったアルルでの共同生活を中心に、二人の交流をしっかり追った素晴らしいコンセプトの展覧会でした。ゴーギャン、いいやつでした・・・^_^;
★参考記事「ゴッホとゴーギャン展」感想
3.ティツィアーノとヴェネツィア派展(東京)
2017年の東京都美術館の企画展第1弾は、ヴェネツィア・ルネサンスの第一人者、巨匠ティツィアーノを中心に、ヴェネツィア派を取り上げる展覧会です。去年、国立新美術館/国立国際美術館で開催された「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展とコンセプトはほぼ同一です。
初期ヴェネツィア・ルネサンスのヴェリーニ工房作品から始まり、ハイライトであるティツィアーノ作品、そしてティツィアーノ没後のヴェネツィアを支えた巨匠たちを順番に時系列順に約70点紹介する展示が見どころ。
特に、日本初公開となるティツィアーノの作品「ダナエ」と「フローラ」は絶対に見ておきたいところです!
ティツィアーノ「ダナエ」
(引用:Wikipediaより)
ティツィアーノ「フローラ」
(引用:Wikipediaより)
★参考記事「ティツィアーノとヴェネツィア派展」感想
もう1点、昨年度国立新美術館(東京)国立国際美術館(大阪)で開催された、同様のコンセプトの展覧会レポートも参考に貼っておきますね。
★参考記事「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち展」感想(終了)
4.ブリューゲル「バベルの塔」展(東京)
(展覧会チラシより)
北方ルネサンスの雄、ブリューゲルが残した傑作「バベルの塔」2枚のうち、「小バベル」が24年ぶりに来日。画面に所狭しと描かれた1400人以上の人物をじっくり見れるよう、デジタル複製画の展示も見どころです。
副題に「16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-」とあるように、没後500年で盛り上がる奇想の画家、ヒエロニムス・ボスの油彩画2点も同時来日します。
また、「プロジェクトBABEL」と題して、大規模なグッズ等の関連企画も進行中。奇想の画家たちをモチーフに、斬新なグッズがあふれるんだろうな~。楽しみ。
プロジェクトBABEL|ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 BABEL 16世紀ネーデルラントの至宝 ―ボスを超えて―
スポンサーリンク
5.ミュシャ展(東京)
(引用:展覧会チラシより)
毎年全国各地で開催されるミュシャ関連の展覧会ですが、2017年3月から始まる国立新美術館の「ミュシャ展」は、間違いなく2017年を代表する最重要の展覧会です。
(引用:国立新美術館HPより)
1点が6m✕8mという、ミュシャの代表作にして巨大な油彩画「スラブ叙事詩」20作全点が一挙に来日決定!国立新美術館のゆったりとしたスペースの中で、心ゆくまで何度でも味わいたいところですね。
★参考記事「ミュシャ展」感想
6.シャセリオー展(東京)
(引用:国立西洋美術館HPより)
「シャセリオー、誰それ?」っていうくらい、コアな美術ファンにもあまり知られていない、19世紀中盤に活躍し、37歳で夭逝したフランスロマン派の画家、シャセリオーを特集した意欲的な展示。2015年「グエルチーノ展」みたいに、大規模展覧会をきっかけとして、日本のアートファンにシャセリオーが「見つかる」きっかけになるでしょうか?
マイナーな存在ですが、腕は確か。師匠、アングルから「この子は将来フランス絵画のナポレオンになる!」とお墨付きをもらうくらい上手で、しかもわかりやすい作風だから、初心者でも安心して楽しめそうですよ。
★参考記事「シャセリオー展」感想
7.大エルミタージュ美術館展(東京・名古屋・神戸)
<大エルミタージュ美術館展 公式動画>
2006年、2012年に続いて、定期的に開催されているロシアの「エルミタージュ美術館」展の最新版です。300万点以上の収蔵品を所蔵し、世界三大美術館の一つとされる「エルミタージュ美術館」の常設展示から選りすぐった、”オールドマスター”達の作品約80点を展示します。
ティツィアーノ、ブリューゲル、レンブラント、ルーベンス、クラーナハなど、ルネサンス期以降の様々な西洋絵画が楽しめます。東京だけでなく、中部・関西にも巡回するのが嬉しい所。
★参考記事「大エルミタージュ美術館展」感想
8.アルチンボルド展(東京)
16世紀後半に、ウィーンやプラハで活躍した知性と意外性の宮廷画家、アルチンボルドの作品を徹底的に掘り下げる展覧会。野菜や花、植物などで肖像画を描いたアルチンボルドは、一般的に「だまし絵」的なアプローチで幅広い認知がありますが、そんな彼の代表作、ルーブル美術館収蔵の「春」「夏」「秋」「冬」の一挙展示が最大の見どころになりそう。
(引用:Wikipediaより)
具体的な内容はまだ公式HPにアップされていませんが、とにかく楽しそうな展覧会なので、期待しています!
スポンサーリンク
9.アドルフ・ヴェルフリ展(神戸・名古屋・東京)
世界的に再評価が進む、特定の流派や流行に沿わず、独自の芸術世界を表現した「アウトサイダー・アート/アール・ブリュット」の代表格であるアドルフ・ヴェルフリ。2017年、日本で初めてとなる彼の総合回顧展が3箇所で開催されることになりました。
「聖アドルフ=王座=アルニカ」
(引用:展覧会|特別展|名古屋市美術館)
30代以降、亡くなるまでずっと精神病院で過ごしたヴェルフリが独自の感性で描いた作品群は、ユニークそのもの。入院中、時には鉛筆や日用品との物々交換のために大量に作品を描いたという逸話も面白いですし(Wikipediaより)、今回まとまって、そのやりすぎなまでに緻密に作り込まれた作品群を見るのが楽しみです。
10.ディズニー・アート展(東京)
厳密には「西洋美術」じゃないんですが、まぁわかりやすさではダントツだろう、ということで取り上げてみました。約90年に及ぶディズニーのアニメーションについて大特集する原画展で、ミッキーマウスからアナ雪、ベイマックス、そして最新作「モアナと伝説の海」まで、日本初公開となる原画・アニメ・資料集を大展示する展覧会です。
<ディズニー・アート展公式動画>
グッズやタイアップイベントにも要注目ですね。すでに全世界でヒット中のディズニーの最新作「モアナと伝説の海」が日本でも3月に公開となり、GWや夏休みは大混雑必至の人気展になりそうです。
11.ランス美術館展(広島・東京・山口・名古屋)
2016年の静岡展から始まり、広島、東京、山口、名古屋と全国をくまなく回り、ランス美術館収蔵の名品群をまとめて見れる展覧会です。
フランス絵画が西洋美術史の中で最前線に躍り出たバロック期以降、ロココ、新古典主義、ロマン主義、バルビゾン派、印象派、ポスト印象派あたりまでの名画をまんべんなく特集した展示。見るだけで、18世紀以降の西洋美術史を振り返れてしまいますね。
割と地味ですが、来ている作品は見逃せない佳作揃いです。
ダヴィッド(かその工房)「マラーの死」
ピサロ「オペラ座通り テアトル・フランセ広場」
12.ベルギー奇想の系譜展(宇都宮、東京)
(引用:宇都宮美術館HPより)
4月から開催される「バベルの塔」展では、ネーデルラント出身のヒエロニムス・ボスやブリューゲルなど幻想的なテーマの作品群が紹介されます。こちらの巡回展も、ベルギーやその周辺地域で活躍した中世~ルネサンス期の画家から、宇都宮美術館が所蔵するマグリットなどの現代アート作家まで、ユニークな画題・作風で名を知られた「奇想の」画家たちを取り上げます。
詳細はまだ明らかにされていませんが、2016年にベルギー・日本国交150周年を迎えてから、ポール・デルヴォー、ピエール・アレシンスキーなどベルギー関連の展示が増えてきていますね。楽しみな展覧会です。
13.オルセーのナビ派展(東京)
(引用:三菱一号館美術館HPより)
20世紀美術と印象派をつなぐ「ミッシング・リンク」として、長年あまり注目されなかった19世紀終盤~20世紀初頭に活動した「ナビ派」を取り上げます。ゴーギャンに影響を受けた若い芸術家たちが目指した、平面で革新的な絵画技法やその背景思想を、オルセー美術館のナビ派作品群で振り返る展覧会。
ちょうど、「ゴッホとゴーギャン展」で、ゴーギャンの画業について学んだアートファンが「次」見るべき展覧会として、ぴったりの時期に開催されます。個人的な印象ですが、ナビ派は、見れば見るほど味わい深い、「スルメ」的な作品が多いんですよね。
ヴァロットン「ボール」
ゴーギャン「黄色いキリストのある自画像」
初心者でもちゃんとついていけるよう、まだ「具象絵画」の領域ですし、後世の金現代美術につながっていった過渡期の芸術家達をまとめてチェックできる貴重な機会だと思います。個人的に、ものすごく楽しみにしています!
★参考記事「オルセーのナビ派展」感想
14.ジャコメッティ展(東京)
(引用:箱根彫刻の森美術館より/「腕のない細い女」)
国立新美術館で開催されるジャコメッティ展。まだ何も情報が出てきていませんが、彫刻や絵画、素描などが並ぶんでしょうか・・・。これも「西洋美術」というより、「20世紀アート」の巨匠という感じですが、一度見たら忘れられない「縦に引き伸ばした人間や動物たちの」作品群は、今回是非まとまってみておきたいところ。
どんな作品が出てくるのか楽しみですが、一つ言えるのは、天井の高い国立新美術館なので、どんな縦長の作品が来てもちゃんと収容・展示してくれることでしょう!
15.ルノワール展(仙台)
(引用:宮城県美術館HPより)
モネと並び、日本で一番企画展の開催頻度も高いルノワールですが、2017年上半期は、宮城県美術館で開催される「ルノワール展」が一番レベルも高く見ごたえがありそう。
『第1回印象派展』出品の代表作「バレリーナ」(上記チラシ画像)を皮切りに、ルノワールの画業の変遷がわかるように、まんべんなく初期から後期までの作品群を海外から取り寄せて展示しています。個人的には、春スキーなどで東北旅行に行った時に、必ず立ち寄ろうと思っています。楽しみ。
16.夢の美術館展(長崎)
九州で、同時期にリニューアル工事を実施中のため休館する北九州市立美術館と福岡市美術館。両館のリニューアル工事中、この2館の保有するコレクションの美味しいところを借りて、各地美術館で展示する「夢の美術館展」企画。ラストは、長崎へと巡回します。
モネ「睡蓮」
ダリ「ポルト・リガトの聖母」
モネの「睡蓮」、ダリの大作「ポルト・リガトの聖母」、そして、草間彌生「南瓜(かぼちゃ)」など、西洋絵画から現代美術まで、幅広い時代を押さえた名作たちを見れるチャンスです。九州方面在住のアートファンは必見の美術展ですね。
まとめ
こうしてまとめてみると、本当にたくさん良さそうな展覧会があるものですね。この他にもまだ、日本画や工芸、現代アートなども含めると、本当に日本は美術展が充実しているんだなと改めて実感させられます。
みなさんも、気に入った美術展があったら、是非チェックしてみてくださいね。
それではまた。
かるび
2017年の展覧会「予習」に役に立つ書籍たち!
日経おとなののOFF 2017年1月号
毎年欠かさずこの時期に次年度の美術展を特集してくれる「日経おとなのOFF」。別冊の美術展スケジュールカレンダーや、付録のクリアファイルも重宝します。題名どおり、「絶対に見逃せない美術展」を厳選した特集ページや、恒例となった山下裕二教授と山田五郎のマニアックな美術展対談も楽しいです。お勧め。
美術展完全ガイド「美術展2017」
いろいろなテーマでまとめ本的なムックを製作する「晋遊舎」から、2017年の美術展まとめ本が出ていました。こちらも購入してみました。「日経大人のOFF」よりも、よりマニアックな視点で、マイナーな展覧会や地方開催の一押し企画展なども拾い上げて特集しています。日経おとなのOFFと併読して、予習に役立ちました。これもおすすめ。