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あいむあらいぶ

東京の中堅Sierを退職して3ヶ月。無職または専業主夫で、ブログ書いてます。美術展と人事労務系の記事が多め。

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ガラガラで穴場?!でも見応えたっぷりの「ポンペイの壁画展」に行ってきました。

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かるび(@karub_imalive)です。

僕が頻繁に美術展回りをしだしたのは、35歳を過ぎてからなんですが、数をこなしているうちに、好きなジャンルが固まってきます。僕の場合は、西洋絵画と日本絵画が好きなのですが、もう一つ好きなのが、「遺跡系」や「仏像系」の展示会。

遺跡系展示会(と勝手に自分が命名している)の良い所は、陳列された出土品を「美術展」としてだけでなく、「歴史資料」としても味わえるところです。遥か昔に生きた人達の生活や精神文化に触れつつ、歴史を学ぶと、純粋に知的好奇心が満たされるだけでなく、現実逃避ができるのです。(僕の地元近くに平城京跡があるのですが、一日中ぼーっとできる遺跡であります)

今日取り上げる「ポンペイの壁画展」は、そんなローマ時代の世界遺産をテーマとした展示会です。「ポンペイ」の展示会は、特にヨーロッパを中心として、世界的に動員数を伸ばしている今一番熱いコンテンツで、2013年に行われた大英博物館でのポンペイ展では、同博物館の動員数記録を塗り替えたんだとか。

ということで、早速まとめていきたいと思います。

1.混雑状況と所要時間目安

僕が行ってきたのは、平日午後15時頃でした。いつものように、六本木ヒルズの1F入り口で待ち時間をチェックすると、5分待ちの表示。f:id:hisatsugu79:20160524163427j:plain

おぉ、意外と混んでいるんだなと思って52Fに上がってみると・・・

混んでいたのは、おとなりの「セーラームーン展」に併せて期間限定でオープンしていた「ちびうさカフェ」でした。こっちの喫茶店の待ち時間は180分だそうです。えげつない話や~。

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そして、お目当ての「ポンペイの壁画展」自体は、ガラガラでした。ここ最近行った展示会の中では一番空いていたかも・・・。ひと部屋貸し切り状態でゆっくり見れる瞬間も結構ありました。

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裏で実施している若冲展とルノワール展にお客を取られているんでしょうか?あるいは、後援が東京新聞だから広告宣伝が弱すぎて認知されていないのでしょうか?(毎日のように東京新聞の文化面に記事が出てはいるのですが・・・)

いずれにしても、休日に行ってもそれほど並ぶことはないと思います。

展示点数も、なにせ扱っている展示物が「壁画」そのものなので、約60点ほどと、少なめになっており、所要時間は1時間~1時間30分もあれば見て回れそう。実測した所、僕の場合は2時間15分でした。

なお、1箇所だけ写真撮影が可能な場所があります。下記の写真パネルがある場所なのですが、ここで記念撮影などをして、SNS等で拡散してくれ!ってことなんでしょうね。できればこういうのじゃなくて、フラッシュ無しでいいので壁画を撮らせて欲しかったのですが・・・。

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2.音声ガイドは声優の三木眞一郎さんと畠山美和子さん

アニメファンじゃないのでよく知らなくてすみません(汗)、二人共実績のある声優さんだそうです。こちらで、メインガイドの三木さんからの今回の展示会についてのコメントも聞くことができますよ。正直、今回の展示会で予習をしたかったのですが、あまり予習できる資料が手元に入らなかったので、音声ガイドを調達出来てよかった。非常に重宝しました。

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(引用:http://www.tokyo-np.co.jp/pompei/guide.html

今回の展示会では、ただ壁画を見るだけじゃ絶対もったいないので、音声ガイドのレンタルを強くおすすめします。

もしくは、こちらで内覧会時の本展監修者、芳賀京子氏の解説動画を予習して臨むのもいいと思います。見どころについて非常に丁寧にわかりやすく解説されています。(約13分程度)


世界遺産 ポンペイの壁画展 報道内覧会

おせっかいかもしれませんが、この展示会は背景知識なしで手ぶらで行くより、予習をしておいたほうが数倍楽しめると思います!

3.ポンペイの壁画展について

3-1.ポンペイって?

ポンペイは、現在のイタリア、ナポリのあたりに実在したローマの古代都市でした。ローマ帝国全盛時代に、ローマのほぼお膝元として数百年間にわたり、栄えました。そんな中、紀元79年8月24日~25日にかけてヴェスヴィオ火山の突然の大爆発により、一瞬で高熱の火砕流に街全体が飲み込まれ、街ごと全て、瞬時に消滅します。

イメージとしては、2014年の映画「ポンペイ」の予告編がいい感じに映像としてまとまっていますので、こちらのリンクを貼っておきますね。


ポンペイ - 映画予告編

その後、古代~中世を過ぎ、18世紀中ごろまで、完全に火山灰の下に埋もれ、忘れ去られた存在となっていましたが、1709年、偶然に地元の住民がツボを発掘したところから、遺跡の存在が明らかになります。そして、1748年にとうとう当時のナポリ王国の国王のイニシアチブの下、大規模な発掘作業が始まりました。

発掘は今でも続いていますが、家屋や壁画、調度品や生活用品、遺体跡まで、街全体のありとあらゆるモノが2000年前の当時のまま、火山灰の下からいわばタイムカプセルのような手付かずの状態で出てきたといいます。

様々な推計がありますが、ポンペイの人口はおおよそ1万2千人程度で、広さは約66ヘクタールと当時で見ても割と小規模~中規模程度の都市だったと言われています。(ちなみにローマは100万人を超えていたと推定されている)

その文化水準は非常に高く、上水道完備の大邸宅、公共浴場、劇場、円形の闘技場、運動場、宗教施設(集会所)など、社会インフラはヨーロッパの産業革命前とほぼ同レベルの高い水準を誇っていたそうです。

3-2.ポンペイの壁画はどうやって造られたの?

今回は、60数点のほぼ全部の展示がポンペイの「壁画」だけをフィーチャーした展示会なのですが、当時の壁画は、公共系の建築物だけでなく、少し裕福な一般家庭の住宅内も、まるで宮殿のように壁一面を彩っていたそうです。(正直な所、家の中までこんなに仰々しい壁画に囲まれていたら、ちょっと落ち着かないだろうなぁと思ったのですが、当時のハイセンスな家庭では普通だったのでしょうね)

3-3.壁画展の見どころ

今回は、ナマの壁画の表面を削りとって、そのまま日本に持って来ちゃったのですが、恐らくこれだけの規模でポンペイの壁画を一望できる展示会は、今後もないはず。壁画をたっぷり堪能してみてください。

壁画と言っても、ポンペイの遺跡から出土した壁画だけでも、紀元前2世紀から街が火山に飲み込まれて消滅した紀元79年までの約300年間で、大きく分けると「第1様式」~「第4様式」まで、4つの様式が確認されています。展示会では、時代ごとに細かくその壁画の描かれ方が変わっていくところも、わかりやすく前半部分の展示で説明されています。

壁画は、ギリシャ文化の影響を強く受けた、ヘレニズム世界での古代神話の様々な場面をモチーフに描かれています。中でも、今回の展示会では「お酒の神様」であるデュオニソスの出番が多かったのは、いかにもワイン作りが盛んだったイタリアらしい一面を感じました。

現在、国立東京博物館で開催中の「アフガニスタン展」でも色濃くギリシャ文化の影響を受けた出土品が多数出展されていることから、併せて観ると、古代ギリシャのアレクサンドロス大王の古代世界に与えたインパクトの大きさを改めて実感できます。

4.一番の目玉は「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」

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この「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」は、1739年11月25日にエルコラーノのアウグステウムで発見されました。これがヨーロッパを出るのは初めてで、もちろん日本初上陸です。そして、展示会後半部分のハイライトとして圧倒的な存在感を持って展示されています。素人目で見ても、他の壁画とは完成度のレベルが違うことはすぐにわかりました。

それもそのはず。「アウグステウム」とは、当時のローマ皇帝アウグストゥスを礼賛するため、街の郊外に置かれた一種の集会所的な特別施設なのです。再現イメージとしては、こんな感じ。

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(引用:http://vast-lab.org/3dicons/page.php?obj=1770

街で一番大切な施設の一番大事な壁面に飾られていたので、腕の良い絵師を使って予算をかけて製作されたものだと思われます。

5.その他気になった展示

5-1.赤い建築を描いた壁面装飾

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入口入って次の部屋の右側一面に展示されています。紀元前1世紀後半頃の「第2様式」と呼ばれるスタイルで描かれており、その特徴は、飛び出す絵本的な効果を持つ遠近法の使い方をしていることです。2000年も前に、一種の『だまし絵』的な立体感を持たせる技法が既に完成していたんだな、と非常に感心しました。

しかしよく見ると、神社の鳥居のように真っ赤な神殿に、大仰な空想上の動物や女神像を配置するなど、現実離れした豪華さですよね。部屋の中壁面いっぱいに空想上のゴージャスな建造物を描くなど、ローマ帝国全盛期らしい派手な絵が印象的でした。 

5-2.コブラとアオサギ

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これはどちらかと言うとつなぎ的な意味合いで飾られていた小品なのですが、どうも若冲展を見てきたばかりなので、こういう動物を素朴に描いた絵画に目が釘付けになってしまいました。

特にコブラは日本には生息しないため、日本画ではお目にかかれない動物ですが、ローマ時代のイタリアでは、建築物を彩るフレスコ画で頻繁に登場しています。若冲だったらどう描くんだろうなぁと考えながら見てました。

5-3.アレクサンドロス大王とスタテイラ

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これは、アレクサンドロス大王と、大王が東征にて滅ぼしたアケメネス朝ペルシャの王女スタテイラ、もしくはバクトリアの豪族ロクサネのツーショットを描いたものです。

壁画展後半では、神話や歴史の一場面を描いた歴史画がほとんどなのですが、気付かされるのは、ローマ人のギリシャ文化への傾倒です。

この頃になったら、一応ローマにもそれなりの文化・歴史があったはずですが、描かれるのはギリシャ神話ばかり。共和制末期以降のローマ人富裕層にとって、ギリシャ神話、ギリシャ文化は抑えておくべき必須の教養・文化だったことがよくわかります。

6.まとめ

紀元79年といえば、日本で言えば、まだ弥生時代に入ったばかり。狩猟採集生活から、ようやく稲作を始めたころの話ですから、こうして、壁画一つ見ていても、当時のポンペイの文明レベルの高さには驚かされます。

今回の展示会、若冲展が終わったらどうなるかわかりませんが、とにかく来場者が少なくてガラガラのようです。展示自体は全然悪くないのです。「壁画」というテーマに絞り込んだ展示会としては見応えたっぷりでした。若冲で並び疲れたら、六本木にぶらっと行ってみるのもいいと思います。

それではまた。
かるび

おまけ:今回の展示会の予習/復習で役に立ったもの

とり・みき/ヤマザキマリ「プリニウス」

買ってみましたが、プリニウスが1巻の中盤で、ちょうど噴火したばかりのポンペイに遭遇するシーンがありました。今回の展示会と併せて読んでみると、当時のローマ文化や歴史について、学びになりますね。スペシャルコラボグッズも出ていましたよ。

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さらにおまけ:同時開催の古代ギリシャ展@東京国立博物館はおすすめ!

ポンペイ展よりもさらに遡ること数百年、今回の壁画のモチーフとなったギリシャ神話の神々が生み出された「古代ギリシャ」の歴史・生活・文化・美術など、幅広いテーマで総力特集した素晴らしい展示会でした。全ての展示品がギリシャから運ばれ、その数何と325点!!東京国立博物館の底力を感じました。是非、ポンペイの壁画展に満足したら、こちらも回ってみてください!おすすめです!