【2017年3月7日更新】
かるび(@karub_imalive)です。
3月3日に公開された映画「アサシン クリード」を見てきました。1億2500万ドルという巨額をかけて製作されたゲーム実写化映画でしたが、早速、見てきた感想やレビュー、あらすじ等の詳しい解説を書いてみたいと思います。
※本エントリは、ほぼ全編にわたってストーリー核心部分にかかわるネタバレ記述が含まれますので、何卒ご了承下さい。
- 1.映画「アサシン クリード」の基本情報
- 2.映画「アサシンクリード」主要登場人物とキャスト
- 3.映画「アサシン・クリード」結末までのあらすじ(※ネタバレ)
- 4.映画「アサシン クリード」感想や評価(※ネタバレ)
- 5.伏線や設定などの解説(※ネタバレ)
- 6.まとめ
- 7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
1.映画「アサシン クリード」の基本情報
<映画「アサシン クリード」予告動画>
【監督】ジャスティン・カーゼル(「マクベス」「スノータウン」)
【配給】20世紀フォックス
【時間】116分
Xbox、PS4などで、既に10作以上リリースされている人気の歴史サスペンス・アクションゲームシリーズの映画化作品。バイオハザードシリーズ同様、今後シリーズ化前提で製作された第1作目となります。
なお、ジャスティン・カーゼル監督は、前作「マクベス」に続き、主演マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤールとのタッグを組んでいます。
2.映画「アサシンクリード」主要登場人物とキャスト
カラム・リンチ/アギラール(マイケル・ファスベンダー)
物語の主人公。死刑囚として死刑執行される際、アブスターゴ財団の実験棟に秘密裏に移送され、ソフィア・リッキンの「エデンの果実」探しに協力をさせられる。前作「マクベス」での情熱的な演技に比較して、今作では終始若干醒めた感じの抑え気味の演技でした。
ソフィア・リッキン(マリオン・コティヤール)
ヒロイン役。アブスターゴ財団のCEO、父、アラン・リッキンの下、天才的科学者として人類の暴力を根絶する方法を研究するため、カラムを刑務所から連行する。一見優しく思いやりがあるように感じられるが、「人類の暴虐性を抑えるため、人類の自由意志を制限しなければならない」というトンデモ思想を持っている。現在公開中の映画「マリアンヌ」での情熱的な演技に比較して、かなり抑えめの淡々とした演技は、マイケル・ファスベンダー同様でした。
アラン・リッキン(ジェレミー・アイアンズ)
表の顔はアブスターゴ財団のCEO、裏の本当の顔はテンプル騎士団の幹部クラス。国連で世界平和を訴えるスピーチをしてプロパガンダに勤しむ一方、エデンの果実を使ってアサシン教団を滅ぼし、人類をコントロールしようとしている、いわゆる「巨悪」。
ジョセフ(ブレンダン・グリーソン)
カラムの父親。迫り来るテンプル騎士団の追っ手から妻の持つ秘密を守るため、妻を殺して子、カラムを逃がす。自分自身はアブスターゴ財団へ連行され、「アニムス」で精神崩壊へと追い込まれた。
ムサ(マイケル・K・ウイリアムズ)
カラムがアギラールとアニムスなしでも100%シンクロするようになった時、施設内で反乱を起こしてカラムとともに脱出し、以後行動をともにするアサシンの末裔。「アニムス」被験者として施設内で暮らしている。
マリア(アリアンヌ・ラベッド)
1491年のスペインで、アギラールとともに「エデンの果実」奪還作戦を遂行した。最後にオヘダに捕まり、秘密を守るために恋人、アギラールの前で自決する。
エレン・ケイ(シャーロット・ランブリング)
テンプル騎士団の最高幹部。物語前半で、財政上の困難を根拠に、「アニムス」の計画中止をアラン・リッキンに非常にも通告する。
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3.映画「アサシン・クリード」結末までのあらすじ(※ネタバレ)
3-1.カラム・リンチ、アブスターゴ財団へと拉致される
1491年、アギラール・デ・ネルハ(マイケル・ファスベンダー)は、殺された両親が所属したアサシン教団で、同僚以上恋人未満であるマリア(アリアンヌ・ラベッド)の徹底した訓練を経て、初のミッションに挑もうとしていた。
グラナダまで迫っていた、トマス・デ・トルケマダ率いるテンプル騎士団が、イスラム最後の王朝を滅ぼし、イスラム王朝の王が所持していた「エデンの果実」を奪取しようとしていたのだ。これを阻止するのが、アギラールに与えられた使命となった。
一方、1988年。カラム・リンチ(マイケル・ファスベンダー)がいつものように自宅に戻ると、父親が、母親を殺害した現場を目撃する。遠くから近づいてくるテンプル騎士団の車列から逃れつつ、父に促され、突然家を去ることになった。
それから約30年経った2016年。カラムは殺人罪で誕生日に死刑執行されるところだった。死刑台に座り、薬物を注入されて死亡したはずだったが、目が覚めたら実験室のようなところにいた。目が覚めた時横にいた女性はソフィア・リッキン(マリオン・コティヤール)で、アブスターゴ財団のスペイン支社で最新のヴァーチャル・リアリティ装置「アニムス」の研究開発に携わっていた。混乱したカラムは、実験棟を歩き回り、自分が今アメリカにいないことを悟った。
カラムは、ソフィアから、【法的には死亡した状態で】アブスターゴ財団へ連行されたこと、理想の人類を追求するため、新たな方法で暴力を根絶するための手がかり、「エデンの果実」のありかを探るためのヴァーチャル・リアリティ実験への協力依頼を受けた。
カラムはVR装置「アニムス」の実験室へと連行され、そこで「エデンの果実」のありかを知るキーマンである500年前の祖先、アギラール・デ・ネルハの人生を追体験することになった。彼は、アギラールの世界へと入っていった。
1491年。スペインのグラナダ包囲戦で、導師のベネディクト、同僚のマリアと共にテンプル騎士団からイスラム王朝のグラナダの王子を奪還する作戦に携わっていた。アギラールは首尾よくラミレス将軍を倒すことができたが、王子を擁するオヘダという屈強な黒騎士に近づくことができず、激しい戦闘が続いた。
王子を拉致して逃げるテンプル騎士団の馬車を奪い取り、王子の奪還に一旦は成功したアギラールだったが、結局テンプル騎士団に追い詰められ、マリア、ベネディクト導師と共に捕らえられてしまった。
そこで、一旦シンクロが乱れ、カラムの精神が限界に達したため1度目の遡行体験は終了した。
3-2.「エデンの果実」の秘密と、アブスターゴ社の計画
実験を終え、カラムに休息を与えると、ソフィアは実験棟に来ていた父、アラン・リッキンと合流した。アランの表の顔は、巨大企業、アブスターゴ・インダストリーズのCEOであり、G7で平和に向けてのスピーチをする程の実力者だった。しかし、彼には秘密結社テンプル騎士団の最高幹部としての裏の顔もあった。彼の推進する「アブスターゴ計画」では、「エデンの果実」からDNAの遺伝暗号を取り出し、人々の自由意志を操り、長年テンプル騎士団と対立してきたアサシン教団を滅ぼし、彼らがコントロールする世界を作り出そうとしていた。
彼が急遽イギリスからスペインの「アニムス」実験所に飛んできたのは、遅々として進まない「アブスターゴ計画」を中止するとテンプル騎士団の最高幹部から通告されたからだった。社運を掛けたプロジェクトをやめるわけにいかず、彼自身が娘に代わり、陣頭指揮を取るつもりだった。
一方、1度目の遡行を終え、自室で目覚めたカラムは混乱していた。目の前に追体験したアギラールの幻影が見える「流入現象」に悩まされていた。これが行き過ぎると「神経分離」を起こし、廃人同様になってしまうという。
ソフィアは、強制ではなく、カラムにどうしても「自発的に」実験に協力して欲しいと願い、自分の研究室にカラムを案内し、「エデンの果実」の秘密やカラムの両親、アサシン教団の秘密などを語り聞かせた。
カラムはその後、大部屋で同じく被験者となっているアサシン教団の末裔、ムサやリンたちと挨拶をすませ、食事を摂ったが、一口食べたところでふたたび流入現象に襲われ、苦しんだ。部屋に戻ってもアギラールの幻影は続いたが、アラン・リッキンは実験を急いだ。カラムは無理やり「アニムス」へ連行され、2回目の遡行が始まるのだった。
1491年へ遡行すると、導師のベネディクト、マリアとともにアギラールははりつけにされており、異端審問官トマス・デ・トルケマダによる異端審問が始まるところだった。導師ベネディクトが火あぶりで苦しんで死亡する間に、足枷と手枷を解いたアギラールは、マリアを解放し、混乱のさなか逃げ出すことに成功した。
テンプル騎士団の追っ手を撒くため、グラナダの街の屋根づたいに敵を倒しながら必死で走って逃げたが、最終的には尖塔のてっぺんに追い詰められてしまう二人。しかし、彼らは臆することなく、鷹のように手を広げ、空中へとダイブして逃げ去った。
そこで、第2回目の遡行は打ち切られた。アニムスとのシンクロがずれ、またもカラムの精神負荷が限界を超えたためだった。
3-3.父との再開後、自らの遺志でアニムスへ向かうカラム
しかし、次の実験を急ぐアラン・リッキンは、娘の制止を振り切り、カラムを焚きつけようと直接カラムに交渉し、さらに、彼の父を軟禁している、「神経分離」により正気を失った被験者達を収容する「インフィニティ・ルーム」へカラムを案内した。
ずっと父を殺したいと思っていたカラムだったが、ジョセフが母を殺害したのは苦渋の選択だったことを完全に理解した。時間遡行を矯正され、精神崩壊した父を見て、カラムは、何が遭ったのか真実を知るため、初めて自発的に「アニムス」に入ることを決意した。
そして、3度目の遡行が始まった。トルケマダは、誘拐したグラナダの王子と引き換えに、グラナダの王が持っていた「エデンの果実」を手に入れようとしていた。それを天井裏から見ていたアギラールとマリアは、次の瞬間、天井裏から降りて彼らを襲撃した。トルケマダを殺害し、「エデンの果実」を奪取したアギラールだったが、マリアが黒騎士オヘダに捕まってしまう。アギラールは躊躇したが、マリアは短刀を持つオヘダの腕を自らの首に強く押し当て、自害した。アギラールはオヘダとの激しい戦闘の末、オヘダも殺害した。
その時、激しい動きに「アニムス」のカラムを支えるアームが千切れて壊れてしまったが、完全にアギラールとシンクロしていたカラムは、そのまま遡行を続行した。カラムの元に、次々に歴代のアサシン達のホログラムが現れるという、不可解な現象が出現し、ソフィアは驚いた。一瞬だが、そこになぜかソフィア女自身の顔が見えた。
やがて、アギラールがクリストファー・コロンブスに「エデンの果実」を託し、コロンブスが「墓まで持っていく」と会話するシーンがホログラムに映し出された。ソフィアとアランは、「エデンの果実」が現在のコロンブスの墓所である「セヴィリア大聖堂」にあることを突き止めた。
3-4.アサシン達の復活とエデンの果実の奪還
同じ頃、ムサたちは、内部で反乱を起こしていた。守衛たちを突破し、カラムの元へ集結するアサシンの末裔たち。しかし、すでに「エデンの果実」の有りかを突き止めたアランには、施設の維持は不要だった。アランとソフィアは混乱する施設を捨て、ヘリで脱出し、セヴィリア大聖堂で念願の「エデンの果実」を手に入れた。
後日、ロンドンで開催されたテンプル騎士団の会合で、アラン・リッキンは「エデンの果実」を手に入れた成果の報告スピーチを行っていたが、スピーチ中にカラムが潜入してきた。カラムは、舞台袖に控えていたソフィアを仲間に引き入れようとしたが、ソフイアは父への愛情とカラムへ惹かれる気持ちに引き裂かれ、身動きができなかった。
そして、カラムはアラン・リッキンを暗殺し、スピーチ会場は大混乱に陥った。カラムと仲間のアサシン達は、「エデンの果実」を奪取し、大衆に紛れて会場を脱出した。ソフィアは、父の後を継ぎ、アサシン教団への復讐を心に誓うのだった。
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4.映画「アサシン クリード」感想や評価(※ネタバレ)
4-1.ゲームを再現したパルクールでのアクションシーンは良かった!
歴代のゲーム「アサシンクリード」シリーズでの特徴だった、忍者のような屋根伝いでのスリリングな格闘バトルシーンや、そのハイライトとして、高い尖塔から手を広げて一気に下に飛び降りる「イーグルダイブ」など、歴代ゲームシリーズをしっかり実写で再現したアクションシーンは、世界観の再現度も高く非常に良かったと思います。
こうした激しいアクションシーンのほぼ全てが、CGに頼らずにスタントマンが実際に演じた「こだわり」は素晴らしかったです。特にイーグルダイブを決める場面は、パルクールの第一人者、ダミアン・ウォルターズが、スタントマンとして自ら志願して37メートルの高さからジャンプするシーンを撮ったのだとか。。。
4-2.できるだけ史実上のキャラをストーリーに登場させる設定は好感
過去に遡行した主人公が、その時代の実際の歴史で活躍した実在の人物と関係を持ちながらストーリーが進んでいくのも、歴代のアサシンクリードのゲームシリーズのコンセプトに忠実に沿っています。今回も、15世紀末ルネサンス期のスペインで、カトリック勢力を後ろ盾にしたスペイン王国によるレコンキスタ(国土回復運動)と、スペイン異端審問を絡めて、グラナダへとイスラム系のナスル王朝を追い詰めた所から物語がスタートしていました。
ちょうど広場で異端審問官、トマス・デ・トルケマダ(歴史上の人物)がアサシン教団メンバーを火あぶりにした「異端審問」のシーンは迫真のシーンでしたし、その後ナスル朝の最後のムハンマド11世が異端審問官に追い詰められてエデンの果実を渡してしまうシーンなどは、まさに「王国の滅亡」のワンシーンを描いているようで良かったです。(なぜ片田舎で滅亡寸前のイスラム王朝が「エデンの果実」を持っているのかというツッコミはあるものの・・・)
4-3.ゲームをやっていない人には導入部分がちょっとつらかったのでは?
アクションシーンや時代考証に基づいた詳細な歴史描写が素晴らしかった反面、ストーリーのわかりにくさが少し気になりました。僕自身は、映画に行く前にノベライズ版を先に読み、ゲームの実況動画などを見てから映画に臨んだため、何とか入っていけましたが、あの冒頭のスター・ウォーズの字幕みたいな説明一つだけで、ゲームを知らない初見の映画ファンを引き込むにはムリがあったのではないでしょうか?
少なくとも、映画冒頭にて、
・アサシン教団とテンプル騎士団がなぜ何世紀もの間、対立しているのか
・そもそもこうした秘密結社はなぜ結成されているのか
・アサシン教団のとテンプル騎士団の違いは何なのか
このあたりをしっかり説明してくれないと、ついていけないような気がします。
実は、映画予告編の一つに、本編からカットされたと思われる、秘密結社やアサシン教団、テンプル騎士団についての背景説明を行うシーンが収められています。これを見ると少し背景が理解できると思います。(画像をクリックしてスタート)
4-4.人物像の掘り下げは全体的にかなり弱め
アクションシーンは全般的に秀逸な反面、各キャラクターの描き込みが弱く、しばしば物語への没入しづらい場面がありました。確かに、カラムの現代とアギラールの15世紀を行き来する忙しい展開にはなるのですが、もうちょっとやりようがあったはず。
例えば、主人公カラム・リンチは幼少期に実父が実母を殺すシーンを見てから家を出て、その30年後、いきなり死刑囚として死刑執行されるシーンへ飛んでいきます。そこで、カラムが重大な殺人を犯した、と一応説明があるのですが、なぜカラムが凶悪殺人犯になったのか、30年間のブランクで何があったのか全く説明がなく、いきなり次の瞬間にアブスターゴ財団の実験棟へと連れてこられます。(途中、マリアとの会話の中で、「ポン引きを殺した」と一言語られるのみ)
さらに、現実世界での施設にとらわれている他のアサシン教団の末裔たちの人物像の描かれ方が雑すぎて、誰が誰なのかもちゃんと描かれません。カラムとほとんど交流もないのに、ラストシーンでカラムと同調して反乱を起こし、普通に行動を共にしているのも不可解です。
総じてストーリーだけが勝手に進んでいき、なぜそのシーンでその行動が取られるのか、各キャラの心情の動きや行動の動機が弱すぎるのが気になりました。(皮肉にも、公式ノベライズの出来が非常に良く、納得の行く説明が全部描かれています。先に予習をするか、あとで復習として答え合わせ代わりに読むと非常に良く理解できる)
4-5.コロンブスにエデンの果実を託すシーンで置いて行かれた・・・
驚いたのは、「エデンの果実」の行く末にクリストファー・コロンブスが絡んでいたこと(笑)えっ、まさかそう来たか?と・・・。
1492年といえば、スペインの歴史上、グラナダでイスラム王朝を滅ぼしたスペイン王朝に財政的に余裕ができたため、コロンブスを第1回航海に派遣した年です。だからといって、異端審問官から奪い返した大事な大事なエデンの果実を、アギラールが初対面のコロンブスにパッと託しちゃうのはどうなんでしょうか????
歴史上、テンプル騎士団の残党とコロンブスは新大陸発見を争っていたようなので、アサシン教団と利害関係は一致していたとは考えられますが、普通に考えたら、エデンの果実はアサシン教団内で厳重確保すべきなのでは??
アニムスに映し出されるアギラールの「船」のイメージを見て、ソフィアが「コロンブスだ!」と疑わず、その後研究所を脱出してコロンブスの墓に直行するシーンでは少しあっけにとられました(笑)「ダ・ヴィンチコード」シリーズのような謎解き要素を加えようと頑張ったのだろうと思いますが、これはやり過ぎなんじゃないかと感じました・・・
5.伏線や設定などの解説(※ネタバレ)
5-1.映画タイトル「アサシン クリード」の意味とは?
映画の原題は、「Assassin's Creed」です。Assassinは、「暗殺者」という意味で、Creedは「信条、教義」と訳すことができます。つまり、「暗殺者の教義」という意味ですね。パンフレットにも明記されていますが、アギラールらが所属する暗殺教団には、その教義=掟としてこんなものがありました。
・罪なき者に刃を向けるなかれ。
・身をさらすなかれ。
・決して仲間を裏切るなかれ。
さらに、映画冒頭でアギラールが出陣する前に、教義を詠唱するシーンもありますが、どちらかというと宗教というより、特定の思想下で活動する正義の秘密結社のような集団だと捕らえておけば良いと思います。
5-2.アギラールはなぜアサシン教団に入団したの?
アギラールの両親もアサシンでしたが、テンプル騎士団のトルケマダ(劇中で白いローブを着た異端審問官)と、黒騎士オヘダによって火あぶりの刑で殺されました。アギラールは、教団に殉じて亡くなった両親の遺志を継いで、1491年のグラナダ包囲戦の直前にアサシン教団に入団したのでした。
アサシン教団は、当初アギラールの入団を断りましたが、単なる両親を殺された復讐以上の大義を彼の入団動機に見い出したため入団を許し、マリアに戦闘技術を仕込ませて、短期間で一流のアサシンへと成長させました。ちなみに、この教育課程でマリアとアギラールは同僚以上恋人未満のいい関係になっていきます。このあたりの経緯は断片的にセリフから拾える他、ノベライズ版で詳しく描かれます。
5-3.カラムはなぜ死刑になったのか?
幼少時、家を出てから、30年後の次のシーンでは、カラムは死刑囚として収容所の中にいましたが、映画では、ソフィアとの会話の中で、ただ一言「ポン引き」を殺したとしか説明がありません。(雑すぎ・・・)
ノベライズ版では、映画では省略されたカラムの過去30年の所業が断片的に描かれています。それによると、
・家を出てから暴力・けんか・犯罪三昧だった
・10代の時、店で窃盗したゲームソフトを子供達に売りさばいていた
・殺人で捕まる直前は、アトランタの路上でひったくり泥棒をしていたが、いつも手がかりを残さず、捕まったことはなかった
・出入りしていたバーで娼婦の少女達に暴力を振るうポン引きに義憤を感じ、ポン引きを殺してしまった
これらノベライズに散りばめられたエピソードから、暗殺教団で活躍するための素養「暴力性」「知性」「大義に生きる心」を持ったカラムは、たしかにアギラールのDNAを継いでいることがわかりますが、残念ながら映画内ではこのあたりの詳細な描写は全部カットされていました。
5-4.ソフィア・リッキンと父、アラン・リッキンの思惑の違いとは?
ソフィア・リッキンは、幼少時に母をアサシン教団に殺されてから、この世にはびこる暴力を根絶するためにエデンの果実を手に入れて、暴力の源泉ともなる人々の自由意志を抑えるDNAコードを抽出して制御する方法を模索していました。
これに対して、テンプル騎士団のグランドマスタークラスでもある、父、アラン・リッキンは娘に「アニムス」を研究させ、エデンの果実を手に入れたら、人々の自由意志をコントロールして、テンプル騎士団の天敵であるアサシン教団を壊滅させることを第一に考えていました。「暴力を根絶する」というのは表向きのプロパガンダに過ぎなかったわけです。
クライマックス・シーンでそれをハッキリ認識させられたソフィアが、父に「騙したのね」と抗議していましたが、聡明なソフィアのことなので、薄々気づいてはいたけれど、見て見ぬふりをしてきた、といったところだったのではないかと思います。
5-5.エデンの果実とは何なのか?
人間の暴力性を取り除くための鍵となるDNAコード情報が封印されていると言われる古代の遺物。テンプル騎士団が人々を支配するために躍起になって探し続けると同時に、暗殺教団では「果実」を守ることを最優先とする教義があります。
旧約聖書では、アダムとイブが食べることを禁じられた「禁断の果実」として記されていますが、「アサシン クリード」の世界では、古代の神々に近い存在が作り出した人工的な遺物として描かれます。
なお、ゲーム世界では「リンゴ状のアイテム」以外にもエデンの果実はいくつも存在しています。いずれも過去の偉人達の手を渡りつぎ、最終的にほとんどすべてがテンプル騎士団の手に落ち、世界がテンプル騎士団の支配下に置かれようとしているディストピア的世界観が描かれています。ひょっとしたら、次回作で第2、第3の「エデンの果実」が出現するかもしれませんね。
5-6.暗殺教団やテンプル騎士団は実在した秘密結社なのか?
暗殺教団は、もともとイスラム教シーア派の中で、11世紀頃特に過激な一派が分派してできた集団で、対立するイスラム教徒の派閥や、エルサレムへ迫りくる十字軍の要人の暗殺に暗躍したとされます。しかし、いずれも明確なエビデンスに乏しく、現代では史実としてよりも「伝説」として位置づけられているようです。
一方、テンプル騎士団は、中世に実在した修道士の兵士集団でした。日本的に言うと興福寺や比叡山の僧兵集団みたいなものでしょうか。公式に解散したのは、フランス国王フィリップ4世が、テンプル騎士団の一斉弾圧・逮捕をした1314年のことでした。それまでは、十字軍に従軍したり、商業活動でその組織を拡大したりと、それなりの存在意義がありました。
14世紀に組織が解体して以後も、近代以降にはじまり、現代迄続くフリーメイソンのようなグループが、そのルーツをテンプル騎士団に見出したり、映画「ダ・ヴィンチ・コード」などで大きくクローズアップされたりなど、神秘的なイメージが定着していますね。
5-7.続編製作中?!回収されずに終わった伏線の数々
今作では、カラムを利用してエデンの果実のありか(=コロンブスの墓)をソフィアの父、アラン・リッキンが手に入れ、テンプル騎士団が果実をアサシン教団撲滅のために使う前にカラム達がアラン・リッキンを暗殺したところでストーリーが終わりました。恐らく次回作につなげるため、意図的に沢山の伏線を残したまま終了したのでしょうが、残された伏線が多すぎて、すっきりしなかったのも確か。
例えば、以下のような伏線や謎が回収しきれず残りました。
・カラムのアニムスでの3回目の遡行終了後、カラムの近くに現れた歴代のアサシン教団の仲間たちの中に、ソフィアと同じ顔の女性がいたのはなぜなのか?
→恐らくソフィアの母であったでしょうが、説明がありませんでした。
・結局ソフィアの母親はどのような経緯・理由でアサシン教団に殺されたのか?
・カラムの父は、なぜ母親を殺害したのか?(母親はどのような秘密を持っていたからカラムの父に殺されることを同意したのか?)
・結局アサシン教団とテンプル騎士団の間の争いはどう決着が着くのか?
・カラムはエデンの果実を奪って、その後どうしたのか?
・エデンの果実は実は偽物?(エデンの果実を保管していたハコが、2016年にコロンブスの墓から発見された時、別のデザインに変わっていた)
ちょっと未回収の謎が多すぎるような気もしますが、このあたりも今ひとつこの映画の評価が上がってこない理由なのかもしれません。
実は、現在まだ構想中ではあるのですが、主演のマイケル・ファスベンダーとジャスティン・カーゼル監督は、すでに第2弾の構想を検討し始めたとの報道もありました。
大作映画に負け、アメリカ国内では事前に期待されていたほどの興収を挙げられなかった本作ですが、Ubisoftはこの映画を将来に向けたブランディング強化費用と割り切っているフシもあり、恐らくそのまま第2弾の製作に入るのではないかと予想しています。次回はもっと人間ドラマにも焦点を当てて製作してほしいです・・・
6.まとめ
映画の感想で、少し辛辣な意見も書いてしまいましたが、決して「全くダメだった」わけではありません。1491年のルネサンス期スペインでのグラナダ包囲戦の描写は惚れ惚れするほど素晴らしかったですし、パルクールを活用したアクションや、ゲーム同様史実で登場するキャラを絡ませてストーリーを構築する姿勢も好感が持てました。
各キャラクターの描き方が淡白(というか雑)になり、次回作に残しすぎた伏線が多すぎて若干不完全燃焼で終わったのは残念でしたが、世界観は凄く良かったと思います。
ノベライズの出来が非常に良いため、もしこの作品を120%楽しむのであれば、小説版で補完することで、味わい尽くすことは可能だと思います。ここまで伏線を残したのだから、是非次回作も頑張って作って欲しいなぁとは思いました。
それではまた。
かるび
7.映画をより楽しむためのおすすめ関連映画・書籍など
公式ノベライズ「アサシン クリード」
映画の公式ノベライズ。通常、公式ノベライズは技量が劣る素人以上、小説家未満の専業ライターが書くことが多いのですが、本作は例外的に素晴らしいクオリティです。
映画本編を忠実にノベライズ化しつつ、登場人物の心情変化や説明描写が詳細で、映画を見る前の予習としても、映画鑑賞後の答え合わせとしても最適な1冊。訳者も推奨する通り、映画を見る前に一読しておくと、映画をより楽しめるようになります!
また、映画では描ききれなかったムサやリン(最後にカラムと行動を共にしたアサシンの末裔)の「アニムス」を使っての遡行記録を描いたオリジナルスピンオフ小説も合わせてついています!
ゲーム「アサシン クリード エツィオ コレクション」
アサシン クリードシリーズの初期作品3作が、PS4でリメイクされて、映画リリースとほぼ同期にリリースされました。映画同様、15世紀後半のイタリア・ルネサンス最盛期でフィレンツェの町を縦横無尽に駆け回る「エツィオ編」を網羅した一作。映画を見てゼロからゲームを始めるなら、まずこの「エツィオ・コレクション」から入るのがお得でわかりやすくておすすめ!
マイケル・ファスベンダー主演映画は、まとめてU-NEXTで!
上記でオススメした関連作品以外にも、マイケル・ファスベンダー出演作品を一気に楽しむには、ビデオ・オンデマンドが一番時間をお金を節約できるベストなサービスだと思います。僕も、今回過去作「それでも夜は明ける」など、他作品は、加入中のU-NEXTで視聴しました。最近、手放せない頼もしいVODサービスになりつつあります。
現在、僕はU-NEXT、Hulu、AmazonPrimeと3社のオンデマンドサービスに加入しているのですが、マイケル・ファスベンダー出演作品はU-NEXTが一番品ぞろえが良く、オトクでした。
加入初月は無料。見放題以外の有料作品も、毎月自動的に付与される1000ポイントを使えば、3本まで無料で見れるようになっています。国内最大120,000点の品揃えは映画ファンにはたまりません!
2017年3月4日現在、マイケル・ファスベンダー出演作品は、全部で13作品がラインナップされており、6作品が見放題。残りの7作品はポイントを使って無料で見れます。
マイケル・ファスベンダーの演技に惹かれて、他の作品も見たくなったら、お金を節約できるU-NEXTがおすすめです!
その他アサシンクリードシリーズのグッズはこちら
これまで、ゲームを中心として、そのノベライズやグッズ類など、様々な関連商品がリリースされてきた「アサシン クリード」シリーズ。下記リンクに、それぞれAmazon、楽天の関連グッズのページを整理しました。よろしければ、ご活用ください!