かるび(@karub_imalive)です。
10月3日からいよいよ始まった、2017年秋期最大級の注目展覧会「国宝展」(京都国立博物館)に行ってきました。会期がわずか50日程度と短く、秋の旅行シーズンにガッツリ重なって開催されることから、混雑必至となる展覧会です。
幸運なことに、10月2日の会期前日にあたるプレス内覧会で取材する機会をいただけましたので、会場の様子なども含め、感想レポートを書いてみたいと思います!
※本エントリ内で使用した展覧会内の画像は、予め主催者の許可を得て撮影した写真となります。通常開館時は、館内は撮影不可となりますので、予めご了承下さい。
- 1.国宝って何?
- 2.国宝展とは
- 3.国宝展の見どころは?
- 4.個人的に見ごたえのあった作品を幾つか紹介
- 5.特設コーナーもあるグッズコーナー!激重だけど、おみやげの本命は図録!
- 6.混雑必至!穴場は会期前半の平日か、夜間開館日!
- 7.まとめ
- 関連書籍・資料などの紹介
- 展覧会開催情報
1.国宝って何?
まず、展覧会の内容に触れる前に、「国宝」っていうのは何なのか、簡単に説明をしておきますね。
一般的に、「文化的・歴史的に価値が高い」有形の文化財は、文化財保護法という法律で、国レベルで「重要文化財」として指定されます。重要文化財の指定範囲は、建物や美術工芸品など多岐にわたりますが、2017年9月現在、指定されている重要文化財の数は、全部で13,160点あります。
国宝とは、そんな「重要文化財」の中でも「国の宝」となるような、最重要な文化財に与えられる称号です。こちらはわずか1,108点。毎年、数点ずつ追加されていきます。まさに日本中の美術館・博物館(または個人)が所蔵する貴重なアイテムの中から選びに選び抜かれた「超レアアイテム」であると言えると思います。
左:金剛寺 大日如来坐像(2017年国宝へ昇格)
では、なぜ「国宝」がこんなに注目されるのでしょうか?それには、以下の3つの理由が考えられます。
・歴史的に見て、意義ある価値の高い資料だから。
・世界にわずかしか現存しないレアアイテムだから。
「国宝」と指定された文化財を見た時、必ず上記のどれか、または複数に該当しています。逆に言うと、全ての国宝=美術品というわけじゃないんですね。
正直なところ、「この汚い布切れがなんで国宝?」「この絵、特に上手じゃないのになぜ国宝?」と思ってしまうものも中にはあるかもしれません。そういう時は大抵、美術的な価値よりも歴史的価値や稀少性が評価されて、「国宝」に指定されていることが多いかもしれません。ちょっと考えてみればわかりますが、1000年前とか1500年前に作られた紙や布の作品が現存すること自体、奇跡みたいな凄いことなんですよね。
だから、国宝を見る時、この作品はきっと「美しいか、歴史が感じられるか、珍しいか」どれかにあてまるんだろうな?!と思って気楽に眺めるといいかもしれませんね。
2.国宝展とは
今回の国宝展は、まさに記録づくしの国宝展です。
「京都で41年ぶりに開催される」
「200点を超える国宝が集結」
「開館120周年、国宝制定120周年」etc・・・。
図録の尋常ならぬ分厚さを見ても、数年がかりで綿密に企画された、過去最大級の展覧会であることは間違いありません。
ところで、「国宝」や「重要文化財」は、文化財保護法によって、展示できる期間が限られているということをご存知でしょうか?近いうちに、劣化に強い陶磁器などの一部工芸品は、展示可能期間が延長されますが、基本的には1年のうち、約1ヶ月間しか展示できないのです。
▼陶磁器や彫刻類は比較的劣化に強い
火焔型土器(新潟・十日町市)
そのため、今回出展される200点を超えるアイテムは、期間中、頻繁に展示替えが発生します。主に1期~4期に分けて、少しずつ入れ替えられますので、予め出品リストをよく見て、お目当てのアイテムがいつ展示になるのかチェックしておきましょう。
3.国宝展の見どころは?
「国宝展」で展示されるアイテムは、実に多岐に渡ります。絵画・彫刻・金工・墨跡・陶磁器・刀剣・考古・染織・・・。正直、バリエーションがありすぎて、何が注目点で、どう見たらいいのか面食らうこともあるかもしれません。そこで、ここでは実際に展覧会を見てきて、僕が感じた今回の「国宝展の見どころ」を書いてみたいと思います。
見どころ1:贅沢な組み合わせ展示を楽しむ!
長谷川等伯「楓図壁貼付」/志野茶碗 銘 卯花墻
「国宝」の中で、最も国宝指定作品が少ない陶磁器は、本展でもわずか「8点」と、出展点数が一番少ないジャンルとなっています。それを逆手にとって、陶磁器に関しては他の展示室のそれぞれ中央部分に分散して展示されました。
これにより、「陶磁器」と「絵画」や「陶磁器」と「書跡」など、同じ展示部屋の中で、違う種類の国宝が組み合わせて展示されるという風流な空間が実現しました。国宝同士がコラボレーションするゴージャスな空間は、「国宝展」ならではです!
見どころ2:レアアイテムを見逃すな!
本展では、通常は門外不出とされて、めったに博物館・美術館へ貸し出されない作品がいくつも展示されています。例えば、その独特の文様と光から、茶碗の中に宇宙が見えると絶賛されている「曜変天目」。中国の汝窯などで製作され、中世期に日本へ輸入された高級品です。しかし、生産国中国では、すでに工房・製作ノウハウ、そして現物が全て失われました。2017年現在、現存する曜変天目茶碗は、わずかに日本の国宝3点のみとなります。
今回はその3つのうち、これまで一番公開頻度が低かった大徳寺(龍光院)保有の「曜変天目」が出品されました。まさに激レア中の激レアアイテムがご開帳されるのです!(第2期:10月17日~29日)
曜変天目 京都 龍光院
引用:「国宝展」公式図録P224-225
また、東京では根津美術館にて毎年定期公開される尾形光琳「燕子花図屏風」ですが、京都ではなんと100年ぶりの公開。関西以西在住の方には、またとないチャンスです!
燕子花図屏風(右隻)
引用:Wikipediaより
こうしたレアアイテムは、他にも調べれば一杯あります。是非、見逃さないようにしてくださいね。
見どころ3:圧巻!雪舟づくし!
▼奇跡の雪舟部屋を2F階段の踊り場から眺める
「国宝展」第1期、第2期の目玉の一つが、雪舟の国宝指定作品全6作品が一つの展示スペースに集結した「雪舟」の展示コーナー。担当した博物館の学芸員が、展示期間中、ここに布団を敷いて寝泊まりしたい・・・と嘆いたという、まさに奇跡の展示スペースであります。全作品、同時期の作品と比べても状態がいいですし、これは凄い展示でした!
見どころ4:気に入ったアイテムだけ気楽にチェックすればOK!
最後に、これは「見どころ」というか「楽しみ方」に近いのですが、個人的には、こうしたごった煮的な展覧会は、全部「見なきゃいけない!」と肩肘張る必要はないんじゃないかな、と思います。
▼筆者は結構刀剣は苦手。でもファンは本当に多い!
太刀 銘 備前国友成造
不得意な分野は別にスルーしても、その分お目当てのアイテムを見逃さなければ、すでにそれでモトは十分取れているはずですから。
僕も、正直「茶色く変色した古い書画」はしんどいのであんまり見ませんし、「ボロボロ」に傷んだ刀剣や絹織物、木簡なんかは、見てもよくわからないので割りとスルーしてしまいます(汗)
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4.個人的に見ごたえのあった作品を幾つか紹介
4-1.怖い国宝!「雪舟/慧可断臂図」
引用:Wikipediaより
雪舟の絵の中で、ダントツに有名な国宝作品がこの「慧可断臂図」(えかだんぴず)。禅宗の開祖、達磨大師への弟子入りを断られ続けた「慧可」が、やる気を示すために、自分の腕を切り落として師匠の目の前に持ってきた・・・という壮絶なエピソードを、なんのオブラートにも包まず描いた衝撃の作品。指じゃなくて腕をツメるとは武闘派ヤクザも真っ青なオトシマエであります。
▼慧可断臂図(部分拡大図)
引用:Wikipedia
慧可断臂図とは今回が3度目の対面となるのですが、この絵を見て、いつも思うのはその美術的センスより、「うわっ、グロい」という感想(笑)切り取った腕の断面まで見えてます(笑)そして、なんだか慧可の目もどことなく座ってて怖いし・・・「怖い絵展」に出てきてもおかしくないよなぁといつも思うのです。この強烈な絵は一度見たら忘れられません・・・。
4-2.神秘的?!宇宙人のような妖しい土偶たち!
今回、まず会場入口でお出迎えしてくれるのは、「考古」コーナーのエース、土偶たちです!古代の人たちのイマジネーションが大爆発した抽象芸術、本当に大好きなんです!
▼まずは土偶がお出迎え!
長年、単なる歴史的資料として位置づけられ、美術品としての文脈で評価されることがなかった土偶。しかし、1990年台に入って一気に4点が国宝指定を受けた頃から、そのプリミティブながら妖しい造形がアートマニアたちに再評価されて今に至ります。こうして見ると、まるで現代アートみたいですよね。
▼古代ギリシャ版土偶に似てる?!
前期キクラデスII期の群像
引用:Wikipediaより
面白いのは、同時期の古代ギリシャでも土偶に似たような作品が多数出土していること。超古代の人々には、なにか共通した感性があったのでしょうか・・・。
4-3.奈良時代の最古クラスの絵画!吉祥天像
引用:Wikipediaより
8世紀に描かれた、日本で最古の麻布に描かれた美人画。奈良時代独特の、大陸の香りがする中性的な顔立ちの女性像は非常に印象的。内覧会で、最も人が群がっていた人気作品でした。昭和50年台前半までに生まれた、「旧一万円札」「旧五千円札」の聖徳太子像で見慣れている世代には、結構しっくりくるお顔なんじゃないでしょうか?!
4-4.松林図屏風だけじゃない!長谷川等伯「楓図壁貼付」
豊臣秀吉の愛息、鶴松の急死を弔うために建立された祥雲寺(後、智積院へ統合)の客殿を飾っていた障壁画。息子、長谷川久蔵「桜図壁貼付」と共に制作されたそうです。
長谷川等伯といえば、松林図屏風があまりに有名ですが、今回の展覧会ではそれ以外の作品も味わえるのです。2度の火災と盗難事件をくぐり抜け、智積院に伝えられてきた等伯全盛期の作品、目にしっかり焼き付けました。
4-5.平等院鳳凰堂「雲中供養菩薩像」三体
仏師定朝とその工房の弟子たちの合作によると見られる仏像。座像と違って、1体1体軽やかな動きが感じられる珍しい菩薩像です。道長・頼通の活躍した藤原氏全盛期の時代に作られた平等院鳳凰堂の阿弥陀堂上方に架けられた52体のうちの3体です。こんなのがあと49体もあるんだから、藤原氏の全盛期の勢いがいかに凄かったのかよくわかります。
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5.特設コーナーもあるグッズコーナー!激重だけど、おみやげの本命は図録!
本展は、1Fの常設の物販コーナーだけでなく、場外のテントでも臨時の特設会場が設置されており、あらゆるグッズが買えるようになっています。いくつか、目についたものを紹介しますね。
▼公式図録は買っておきたい!
まずは、絶対押さえておきたいのが「公式図録」。3000円と張り込みますが、恐らく今年度開催された大規模展覧会の中では、一番ページ数が多く、分厚い図録です。会場内のライティングではよく見づらかった中世以前の絵画作品なども鮮明にカラー印刷されており、あとからの復習にピッタリです。おすすめ!
▼充実していた書籍コーナー
さらに、国立博物館らしく、書籍コーナーは非常に充実。普段書店ではあんまりアート関連のコーナーで本を買わないのですが、ついつい美術館では購入してしまいます。
▼定番文房具系グッズも充実!
また、マスキングテープ、付箋紙、一筆箋、ブロックメモ、クリアファイル、チケットファイルなど、どの会場でも人気の定番文房具系グッズも、多数の種類・在庫が用意されています。
▼オフィシャルTシャツはまずまずのデザイン!
表地に仏像と「国宝展」の英語表記がプリントされたデザインは、落ち着いた雰囲気でまずまずでした。2回目行くときは買いたいと思います!
▼京博マスコット「とらりん」グッズ
内覧会当日も、等身大ぬいぐるみが会場入口付近にいましたが、ここ最近かなり売り出し中のマスコットキャラですね。どうなんでしょう。かわいい・・・かな?!
6.混雑必至!穴場は会期前半の平日か、夜間開館日!
▼館内は広いけど、混みやすい導線になってます!
わずか50日程度の開催期間、展示の充実度・注目度から、10月の3連休を過ぎたあたりから、基本的にずっと入場待ち時間が発生すると思われます。京都国立博物館の公式Twitterがかなり細かく混雑状況を伝えてくれていますので、出かける前にチェックしておくと良いでしょう。
10月5日10時02分:一部混雑している展示室がありますが、待ち時間は10分です。ご来館には公共交通機関をご利用くださいhttps://t.co/19Yficlxt1
— 京都国立博物館 (@kyohaku_gallery) 2017年10月5日
できるだけ混雑を避けて入場するためのオススメの日程・時間帯は、以下の通りです。
・会期前半の平日(朝一は避ける)
・午後16時以降の入場
・夜間延長開館日の午後19時以降(金・土)
日本美術系の大規模展覧会は、朝一番の会館前が行列のピークになりやすいです。その後、11時~12時頃に待ち行列が解消し、昼食後の時間帯にもう一度混雑するパターンが多いため、朝一と14時~15時の時間帯はできれば避けたいところ。
ただし、会期後半になると、基本的にはいつ行っても並びます。せめてチケットだけでも前売りで入手し、混雑状況を見ながら一番並びやすい時間帯で入りましょう。
7.まとめ
これほどの規模で、京都・奈良のアイテムを中心に国宝が一つの展覧会に集結する機会は、恐らく我々が生きている間はもう2度とないと思います。200点以上の日本最高レベルのレアアイテムが、博物館の行き届いた空間の中でじっくり味わえる絶好の機会ですし、また京都・奈良との旅行とセットで計画してもいいですね。オススメの展覧会です!
それではまた。
かるび
関連書籍・資料などの紹介
「週刊ニッポンの国宝100」シリーズ
国宝制定120周年を記念して、2017年秋、小学館から刊行がスタートした分冊百科雑誌。1号で2つずつ国宝を徹底的に掘り下げて特集するスタイルで、全50号で100アイテムを取り上げる予定。美麗なカラー写真・充実したコラム・情報量などが、濃いアートファンをも唸らせる良書。2017年10月5日現在、すでに3冊が出版されましたが、特に第1号&第2号は付録つきでコスパ良いです!
BRUTUS(ブルータス) 2017年 10/15号[特集 国宝。]
国宝展の前日に合わせて最後に出版された「国宝」特別号。100ページ以上にわたる、写真・コラム・解説付きの総力特集は、他のどの雑誌より物量ともに優れた決定版でした。これで680円というのは破格の値段ですね。国宝展にこれから行く!という人にまずは1冊勧めるとしたら、文句なくこれです。
子供向けと侮れない入門書!「こども国宝ずかん」
全国の主要展覧会のほとんどに足を運び、熱心にブログを更新する吉本所属の「アート芸人」とにーさんが上梓した2冊目の書籍。豊富な情報量、楽しい内容は、さすが芸人らしい視点と着想。本の中で紹介される作品は、その大半が国宝展で出展されており、国宝展の予習・復習として十分使える隠れた良書でした。子供向けの児童書として作られていますが、中途半端なガイドブックよりよほど使えるし、頭に入ってきます。これはオススメ!
「知識ゼロからの国宝入門」
国宝とは何なのか?文化財保護法の前身となった古社寺保存法制定から、国宝の歴史・背景を日本美術史との関係性を含めてゼロから易しく解説してくれます。また、1000点以上ある国宝の中から、建物・工芸・絵画・書跡など各分野で、特に人気のある絶対に見ておきたい国宝をピックアップして特集しており、まさにタイトル通り「知識ゼロ」の状態から国宝についてしっかり学べる良書。軽いので旅行にも持っていけます!
展覧会開催情報
◯展覧会名
「特別展 国宝」
◯美術館・所在地
京都国立博物館
〒605-0931 京都府京都市東山区茶屋町527
◯交通機関
バス利用の場合
JR京都駅下車、市バス京都駅前D1のりばから100号、D2のりばから206・208号系統にて博物館・三十三間堂前下車、徒歩すぐ
京阪電車利用の場合
七条駅下車、東へ徒歩7分
タクシー利用
京都駅からならほぼワンメーター550円
◯会期・開館時間・休館日
2017年10月3日~ 11月26日
Ⅰ期 10月3日(火)~10月15日(日)
Ⅱ期 10月17日(火)~10月29日(日)
Ⅲ期 10月31日(火)~11月12日(日)
Ⅳ期 11月14日(火)~11月26日(日)
月曜日休館
※ただし10月9日(月)は開館、10日(火)休館
午前9時30分から午後6時まで(入館は午後5時30分まで)
※毎週金・土曜日は午後8時まで(入館は午後7時30分まで)
◯公式HP
http://www.kyohaku.go.jp/jp/index.html
◯Twitter
https://twitter.com/kyohaku_gallery